USA Standard Express vol.147 -君はどのプレインズウォーカーを選ぶべきか-

Kenta Hiroki

みなさんこんにちは。

新環境のスタンダードを楽しんでいますか? 『灯争大戦』がリリースされ、SCGO Richmondや『灯争大戦』環境初陣戦、また各地でMCQが開催されましたね。

今回の連載ではSCGO Richmondと先週末にMagic Onlineで開催されたStandard MCQの入賞デッキを見ていきたいと思います。

SCGO Richmond
新環境を焼き尽くすMono Red Aggro

2019年5月4-5日

  • 1位 Mono Red Aggro
  • 2位 Mono Red Aggro
  • 3位 Mono Red Aggro
  • 4位 Esper Control
  • 5位 Selesnya Tokens
  • 6位 Bant Midrange
  • 7位 Esper Control
  • 8位 Bant Midrange
Will Pulliam

Will Pulliam

StarCityGames.com

トップ8のデッキリストはこちら

大会直前のMOリーグの結果からSimic Nexusが有力な選択肢とされていましたが、苦手なMono Red Aggroが多く勝ち残り、旧環境で相性が良かったEsper Controlも以前ほど有利でなくなったこともあり、2日目のラウンドで失速していきました。

Mono Red Aggroは環境初期で勝ちやすい傾向にあり、速度に加えて《実験の狂乱》《炎の職工、チャンドラ》によってロングゲームにも対応できます。新セットからの収穫は少なかったものの今大会の勝ち組でした。

新しいカードを多数採用したデッキでは、Bant MidrangeとEsper Midrangeがトップ16以内に入賞していました。

SCGO Richmond デッキ紹介

「Mono Red Aggro」「Esper Control」「Bant Midrange」「Esper Midrange」

Mono Red Aggro

旧環境からお馴染みのMono Red Aggro。速いクロックと火力は《根の罠》ではカバーしきれず、Simic Nexusにとって非常に不利なマッチアップとなります。

☆注目ポイント

炎の職工、チャンドラ

今大会で見事に優勝を果たしたWill Pulliam選手は、メインから《炎の職工、チャンドラ》をフル搭載していました。《実験の狂乱》と同じ4マナのアドバンテージ源ですが、《実験の狂乱》と異なり2枚目以降も腐りにくく、《屈辱》などで破壊されないのが強みです。同型戦では《実験の狂乱》と比べ、より確実なフィニッシャーとして機能します。Esper Controlなどに強い《危険因子》と一緒に使うことを考えると、《炎の職工、チャンドラ》の方が主流になりそうです。

実験の狂乱危険因子

アドバンテージ源となるカードの枚数、選択は各プレイヤーによって差異があります。同型戦を意識していた選手はメインから《実験の狂乱》《炎の職工、チャンドラ》採用していたのに対し、今大会で準優勝したCollins Mullen選手は、コントロールに強い《危険因子》をメインから採用していました。

無頼な扇動者、ティボルト

《無頼な扇動者、ティボルト》はEsperカラーのデッキが使う《永遠神の投入》《黎明をもたらす者ライラ》《ケイヤの誓い》などのライフゲインを対策可能で、今回上位入賞していた全てのMono Red Aggroのサイドに採用されていました。

Esper Control

SCGO RichmondではMono Red Aggroが猛威を振るいましたが、Esper Controlもプレイオフに2名入賞しています。『灯争大戦』から追加されたカードが多く、旧環境で苦手としていたNexus系のデッキとのマッチアップも以前と比べると改善が見られます。

モダンのSCGOをEsper Controlで入賞していたZach Allen選手は、スタンダードのSCGOでもEsper Controlで結果を残したコントロールデッキの名手です。《危険因子》型のMono Red Aggroに惜しくも敗れましたが、構成次第で互角以上に戦えます。

☆注目ポイント

戦慄衆の将軍、リリアナ覆いを割く者、ナーセット

《戦慄衆の将軍、リリアナ》は、《ドミナリアの英雄、テフェリー》と共にこのデッキのフィニッシャーを務めます。[-4]能力はこのデッキにとって厄介な《殺戮の暴君》に対する回答になります。

レガシーやモダンでも活躍している《覆いを割く者、ナーセット》は、クリーチャーデッキに対して《ケイヤの怒り》を探してこれたり、ドロースペルを多用するIzzet Drakeやコントロール同型に強いプレインズウォーカーです。

時を解す者、テフェリー

《時を解す者、テフェリー》は環境のほとんどのマッチで活躍します。コントロール同型では、相手がカウンターを使えなくなるので確実に脅威を通せるようになり、Nexus系の《荒野の再生》もまともに機能しなくなります。[-3]能力でテンポ面でも有利になり、[+1]能力によってインスタントタイミングで《ケイヤの怒り》《思考消去》をキャストできるので、速攻クリーチャーやトップデッキにも対応しやすくなります。

人知を超えるもの、ウギン

サイドの《人知を超えるもの、ウギン》は、どちらの能力も使いやすく《戦慄衆の将軍、リリアナ》と同様にこのデッキのフィニッシャーとして採用されています。

Bant Midrange

《成長室の守護者》《培養ドルイド》といった「順応」持ちのクリーチャーや《ハイドロイド混成体》など、Sultai Midrangeでも使われたカードが多く見られますが、黒の代わりに白を足すことで《時を解す者、テフェリー》などにアクセスできるようになりました。

《ハイドロイド混成体》《時を解す者、テフェリー》などにより、ほかのミッドレンジやコントロールに強い構成ですが、今大会で多数入賞していたMono Red Aggroのようにクロックが速いデッキを苦手とします。

☆注目ポイント

時を解す者、テフェリー野獣の擁護者、ビビアン

《時を解す者、テフェリー》《野獣の擁護者、ビビアン》《ラノワールのエルフ》から2ターン目に展開できれば、相手ターンに自由に動けるのでプレッシャーをかけやすくなります。場に出たときの能力を持つクリーチャーを多数採用しているので、《時を解す者、テフェリー》の[-3]能力で使い回すことによってさらにアドバンテージを稼ぐことができます。特に《ハイドロイド混成体》を使い回せばアドバンテージに大きな差を付けられます。

永遠神オケチラ

フィニッシャーの《永遠神オケチラ》は、中盤以降に引いてきたマナクリーチャーを有効活用する手段になり《成長室の守護者》ともシナジーがあります。

時の一掃

サイドの《時の一掃》は、《ハイドロイド混成体》《エリマキ神秘家》などを回収しつつ場を一掃するので、このデッキと相性が良い全体除去です。

Esper Midrange

ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019でもプレイオフ進出を果たし、好調のBrian Braun-Duin選手。今大会ではプレインズウォーカーを多数搭載したEsper Midrangeで惜しくもプレイオフ進出は逃したものの、トップ16という好成績を残していました。

ほとんどのスペルが多色で《第1管区の勇士》とのシナジーを重視した構成になっています。『灯争大戦』からのカードが多く、多色カードが中心なのでデッキパワーが高めです。

☆注目ポイント

第1管区の勇士正気泥棒永遠神の投入

Esper Controlと異なりEsper Midrangeは、2ターン目《第1管区の勇士》、3ターン目《正気泥棒》と能動的に動きます。メインから採用された《永遠神の投入》によってMono Red Aggroに対して有利にゲームを進めやすくなっています。

戦慄衆の将軍、リリアナ復讐に燃えた血王、ソリン

フィニッシャーとして《戦慄衆の将軍、リリアナ》が2枚採用されています。[-4]能力で《第1管区の勇士》のトークンをドローに変換しつつ相手の場を捌く動きは強力です。6マナと重いので土地の枚数はミッドレンジとしては多めの26枚となっています。

《復讐に燃えた血王、ソリン》は、除去されやすい《第1管区の勇士》《正気泥棒》を場に戻したり、[+2]能力で相手のプレインズウォーカーに対して牽制することができます。また、常在型能力のライフゲインも無視できません。

灯の燼滅

新たに加入した《灯の燼滅》は、《戦慄衆の将軍、リリアナ》《ドミナリアの英雄、テフェリー》《人知を超えるもの、ウギン》などフィニッシャー級のパーマネントをわずか2マナで追放できる非常に優秀な除去です。

Standard MCQ
Izzet Phoenixが2週連続で予選通過

2019年5月13日

  • 1位 Izzet Phoenix
  • 2位 Esper Midrange
  • 3位 Azorius Aggro
  • 4位 Esper Midrange
  • 5位 Mono Red Aggro
  • 6位 Azorius Aggro
  • 7位 Mono Red Aggro
  • 8位 Grixis Midrange

トップ8のデッキリストはこちら

今回おこなわれたStandard MCQは、先週末から引き続いてIzzet Phoenixが優勝を果たしました。《肉儀場の叫び》が減少傾向にあったのも追い風です。Esper Midrangeは優勝こそ逃したものの、今大会ではプレイオフに3名と安定した成績を残していました。

Standard MCQ デッキ紹介

「Izzet Phoenix」「Azorius Aggro」

Izzet Phoenix

2週連続で予選通過者を出し注目を集めているIzzet Phoenix。《ショック》など軽い火力除去や優秀なブロッカーである《ボーラスの占い師》のおかげで、SCGO Richmondで猛威を振るったMono Red Aggroに対しても強いデッキです。

☆注目ポイント

ボーラスの占い師

再録された《ボーラスの占い師》は、軽いスペルを多数採用したこのデッキに合ったクリーチャーで、Mono Red Aggroの序盤の猛攻を食い止めます。

約束の終焉

《約束の終焉》は墓地が肥える中盤以降に強力なアドバンテージ源として機能します。墓地にソーサリーとインスタントが2枚以上あれば、このカード1枚で《弧光のフェニックス》を墓地から戻すことができます。

軍勢の戦親分Niv-Mizzet, Parun

サイド後は《軍勢の戦親分》《パルン、ニヴ=ミゼット》が投入され、多角的な攻めができるのもこのデッキの特徴です。《終局の始まり》は、過去のスタンダードで活躍していた《奔流の機械巨人》《天才の片鱗》を彷彿とさせます。カウンターされないのでコントロールとのマッチアップで切り札になります。

Azorius Aggro

フォーマットを跨いで活躍している《時を解す者、テフェリー》は、Azorius Aggroでも採用されています。

Azorius Aggroは、小型クリーチャーを展開しながら《敬慕されるロクソドン》《議事会の裁き》といった「召集」スペルを活用し、相手を速やかに倒すことを目的としたデッキです。《ベナリアの軍司令》《ベナリア史》といった全体強化によって押し切りやすく、弱点である《ケイヤの怒り》《肉儀場の叫び》といった全体除去をカウンターできるよう青をタッチしたバージョンが主流です。

☆注目ポイント

時を解す者、テフェリー黒き剣のギデオン

環境の様々なデッキに採用されている《時を解す者、テフェリー》は、このデッキでも《残骸の漂着》《根の罠》といったカードの対策になり、特にSimic Nexusやコントロールとのマッチアップで活躍します。[-3]能力で《議事会の裁き》を使い回せることは覚えておきましょう。《黒き剣のギデオン》《時を解す者、テフェリー》を並べられれば、安全に《黒き剣のギデオン》の攻撃を通しに行くことができます。

法ルーンの執行官ドビンの拒否権

《ゴブリンの鎖回し》をケアしてタフネス1のクリーチャーの採用は最低限に留められています。《法ルーンの執行官》はタフネス2であり、能力で《黎明をもたらす者ライラ》など大型クリーチャーを止められる優秀なクリーチャーです。

《否認》に変わって採用された《ドビンの拒否権》は、能動的な戦略であるこのデッキにとっては大きな収穫です。《時を解す者、テフェリー》がメイン、サイドと合わせてフル搭載されているので、追加の青マナ源として《島》がサイドに忍ばせてあります。

総括

『灯争大戦』は前評判通り、環境を激変させる強力なセットでした。Mono Red AggroやEsper Controlなど既存のデッキも強化されていますが、Esper MidrangeやBant Midrangeなど旧環境では比較的マイナーな立ち位置だったデッキも、各種プレインズウォーカーなど新戦力を多数獲得し大きな大会でも結果を残しています。

今週末にはアメリカではSCGO SyracuseMOCS2019が開催されるのでスタンダード好きの方はお見逃しなく。

以上USA Standard Express vol.147でした。

それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら