決勝:朴 高志(黒緑) vs.北山 雄哉(緑白)
晴れる屋メディアチーム
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By Tsutomu Date
『灯争大戦』発売からわずか2日後の本大会。MTG Arenaでの早期リリースこそあれ、環境の理解に費やす時間はあまりに少ない。また、『灯争大戦』はマジック史上初のプレインズウォーカーをフィーチャーしたセットであり、その特殊性ゆえに未知の領域も大きく、従来のセオリーが通用するかもわからない。
リミテッドに慣れ親しんだプレイヤーであっても、どこまで本来の力を発揮できるのか。全員が環境に対する理解を得ていない環境初期であれば、ルーキーが頂点まで駆け上がることも大いにあり得ると言えよう。
しかし番狂わせは起きなかった。
決勝の場に臨んだ二人は、プレミアイベントで多くの実績を重ねるプロプレイヤー朴 高志と、第2期リミテッド東海王の北山 雄哉。誰もが認める強者だったのだ。
スイスラウンドを4位で通過した朴は、先日のミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019出場、グランプリ横浜TOP8と活躍の舞台は愛知のみにとどまらず、世界を股にかけるプレイヤーだ。スタンダード、モダン、レガシー、リミテッド、全てのフォーマットで実績を持ち、GPは2回、Big Magic Openはなんと4回ものTOP8入賞回数を誇る。マジックプレイヤーなら彼の実力を知る者も多いのではないだろうか。
本大会に臨むにあたっての取り組みと『灯争大戦』のリミテッド環境についてインタビューしたところ、次のように答えてくれた。
朴――「黒と赤が特に強く、次いで青が強いですね。レアが強い環境ですが、黒と赤は除去が強いのでコモンで対抗できます。白と緑は組むのがピーキーで、クリーチャーの+1/+1カウンターを増やすような”点”を強化すること、クリーチャーを多数展開して”面”で攻めること、その両方をこなさなければなりません」
朴――「ドラフトはミシックチャンピオンシップと昨日で2回ずつやりましたが、特にミシックチャンピオンシップの経験は大きなアドバンテージになりましたね。どのプレイヤーも明確な意思を持ってピックを行い、デッキを組んでいるので参考になる部分は多かったです」
決勝ドラフトでは黒緑に白の除去をタッチしたデッキを構築した。
朴――「《デヴカリンのリッチ、ストーレフ》から入って、3パック目の初手で《虐殺少女》が取れたのがよかったですね。白黒の流れかと思っていたのですが、途中で白が流れてこなくなったので緑に寄せています」
一方の北山はスイスラウンドを7位で通過。愛知に在住しているものの、東海ではいわゆる「岐阜勢」と言われるプレイヤーで、カードショップ『フェイズ』や『晴れる屋名古屋店』を主な活動の場としている。第2期リミテッド東海王と聞けば、その実力を疑う余地はないだろう。環境初期の情報が出揃わない現段階において、一歩も二歩も進んだ環境分析をしていることに驚かされるばかりだ。
本環境への見解と練習量についてはこう語る。
北山――「朴さんの言われていることに加え、ビートダウンをやるなら黒赤をやりたいですね。この環境で20点を削る構築は相手のプレインズウォーカーではまってしまいますが、黒赤は別格で攻める能力が高いです。それ以外のプランとしては多色のプレインズウォーカーデッキですね」
北山――「(本環境の)ドラフトは、卓上では今回が初めてです。MTG Arenaでは10回ぐらいやりましたが、AIのピック基準が人間とは違うので今回はMTG Arenaで組むようなデッキは難しいかな、と思っていました。特に除去の点数は極端に違いますね」
決勝ドラフトでは白緑に強力な飛行クリーチャーのため青をタッチしたデッキを構築した。
北山――「ファーストピックは《ヴィトゥ=ガジーの目覚め》でした。その後は白が流れてきていたので白緑に進んでいったのですが、実は上家も白をやっていたり、卓内は色決めで混乱していたようです。強いカードは沢山出ていましたが、多色化を強いられてまとまりが欠けるデッキが多くなっていたようですね」
環境初期の混迷したドラフトの中、双方が認める青黒赤をメインとしたデッキではなく、奇しくも黒緑と白緑のマッチアップとなった決勝戦。勝敗はいかに。
《花粉光のドルイド》、《灯を刈り取る者》、《叫ぶ落下兵》と続けて展開する朴に対して、北山のファーストアクションは《鉄の暴漢》。
先手の利を生かしたまま攻勢を続ける朴。《花粉光のドルイド》は《鉄の暴漢》で相打ちを取られるものの、依然として優位は揺るがない。続いて北山は《ビヒモスを招く者、キオーラ》、《奉謝の亡霊》と召喚するが、盤面への影響は少ない。北山のライフを11にまで落とし込むと、《ヴラスカの懐刀》を増援に加える。
ここまで戦場を掌握されていた北山だが、巻き返すプランがあった。《轟く角獣》で地上をシャットアウトし、《精鋭護衛魔道士》で空中を止めると、相打ちに使わず温存していた《奉謝の亡霊》に《瀬戸際の勇気》をプレイ!
アタックして更に「増殖」を重ね、1/1だった《奉謝の亡霊》は一気に4/4にまで成長する。さらには戦闘後に《ビヒモスを招く者、キオーラ》でアンタップと、事実上警戒と飛行を持つ大型クリーチャーを作り上げる。
朴も《力線をうろつくもの》を追加してはいたが、2体目の《轟く角獣》が立ち塞がり、空中からは毎ターン強化される《奉謝の亡霊》が襲い掛かりライフが削られていく。地上からの突破か、空中への対処を果たさなければ朴の勝利はない。
《デヴカリンのリッチ、ストーレフ》、《始源のワーム》、《挑戦するトロール》と続けるが、《始源のワーム》は《連帯》で除去され、潤沢なマナと《ビヒモスを招く者、キオーラ》のアンタップ能力から《ウギンの召喚体》X=9が立ち塞がる。
《奉謝の亡霊》への回答を引くことができない朴は、気持ちを切り替えるようにカードを畳み始めた。
朴 0-1 北山
朴は一回り大きいクリーチャーとのコンバットを制するための《予期せぬ助力》と、カードパワーが高く、マナコストが重めのカードを手札破壊で削ぎにかかるプランで《ダブリエルの影忘》をサイドイン。また、軽量クリーチャーが少ないと判断したか、《ソリンの渇き》をサイドアウトする。
一方の北山は朴の入念なインアウトを見て「そんな都合のいいサイドはないで」と呟きながらインアウトを行わない。
先手の有利を生かして攻め手に回りたい朴だが、ファーストアクションは3ターン目の《楽園のドルイド》と、クロックとしては心もとない。しかも北山は2ターン目に1/3の《罠紡ぎ》を展開しており、容易に突破を許さない構え。
朴は《灯を刈り取る者》を追加するが、こちらも2/3と突破には至らない。さらに北山は《新たな地平》で1/3の《罠紡ぎ》を2/4へと強化。
地上が固まり長期戦となると、Game1のように飛行クリーチャーが勝敗を決する流れとなる。しかし朴も歴戦の強者らしく《放浪者の一撃》でそれを断ち切り、2/1と2/3でアタック。
更地を駆け抜ける朴の軍勢。ここから朴の攻勢が始まるかと思いきや、北山の場には《石の嵐、ナヒリ》が降臨。これには流石の朴の表情にも曇りが。朴の頼みのアタッカーである2体は都合プレインズウォーカー1体と相打ちとなる。
双方、盤面にパーマネントはなくなりここからは仕切り直しとなるが、マナフラッド気味の朴に対し、攻勢を捌いた北山は手札に潤沢な有効牌を残していた。
まず《ビヒモスを招く者、キオーラ》を呼び出すと、続いて《精鋭護衛魔道士》、そして《野獣の擁護者、ビビアン》!《鉄の暴漢》までも増援に加え、一気に盤面を自軍へ傾ける。
朴も《挑戦するトロール》で対抗するが、北山は駄目押しとばかりに《混種の頂点、ロアレスク》を召喚、《精鋭護衛魔道士》を4/5へ強化する。
強力な飛行軍団がそのまま朴を蹂躙し、見事北山は第2期から、第6期リミテッド東海王の座へと返り咲いた。
朴 0-2 北山
『第6期リミテッド東海王決定戦』、東海王の座を手に入れたのは、北山 雄哉!おめでとう!