「マルドゥ『機体』」、「サヒーリコンボ」、そして「黒緑」。
現在のスタンダードは、この三強が支配している。それぞれが「異なった強さ」を持ち、現環境を語るならば、まずはこの三つから、となるであろう。
この支配図は、【プロツアー『霊気紛争』】の頃から変わらない。とはいえ、それぞれのデッキが、現在のメタゲームに合わせて徐々に変化を遂げているのも事実だ。
プロツアー『霊気紛争』は「マルドゥ『機体』」の勝利で幕を閉じたが、そこからトッププロたちは研鑽を積み重ね、各デッキをアップデートさせている。スタンダード神挑戦者決定戦で彼らが使用しているデッキには、彼らの思考が詰まっている。
会場で、【Dig.cards】に所属するプロプレイヤー、行弘 賢に本日のデッキについて伺ってみると、
行弘「プロツアーで使用していた『黒緑』のアップデート版です」
という答えが帰ってきた。プロツアーから変化を遂げた「黒緑機体」、ご覧あれ!
■ 行弘 賢の「黒緑機体」
――「早速ですが、プロツアーで使用されたもの、そしてそこに至るまでは【プロツアーレポート】にまとめられていますが、どのようなアップデートを遂げたのでしょうか?」
行弘「大きな変更点としては、《光袖会の収集者》が抜けて、除去を《致命的な一押し》のみに絞ったことですね」
――「《光袖会の収集者》は、”現代に蘇った《闇の腹心》“と言われていますが、これが抜けたのはどうしてですか?」
行弘「たしかに強力なカードで、《闇の腹心》を彷彿とさせますよね。このドローに救われる場面もあるのですが、現在の環境は、想定よりも《歩行バリスタ》が多いんです。『黒緑』も増えていますし、同型戦も頻繁に起こりますよね。そうなると、タフネス1はすぐに除去されてしまうので、ドローに繋がらないこともあります。そして、『機体』を相手にするときは、支払うライフ1点が大きく響くことがあるので、抜いてしまいました」
――「そして代わりに採用されたのが、最強の2マナ枠、《キランの真意号》なわけですね」
行弘「そうですね。どのマッチアップでも、地上は膠着状態になることが多いので、飛行は貴重な戦力です。それから、相手がマナを立てたまま、つまり除去を構えてターンを渡してきたときにも『機体』は役に立ってくれます。対象ににならずに、相手のプランを崩しながら自分のテンポを作りやすいんです」
――「『黒緑』には様々なタイプがありますけど、《キランの真意号》が採用されているのは珍しいですね」
行弘「あまり見ないタイプかもしれませんね、この『黒緑機体』は。プロツアー以降のメタゲームを考慮して、色々と試している最中なんですよ。例えば、《顕在的防御》も珍しい選択かもしれません」
――「これも、現在のメタゲームを考慮した上での採用なのですか?」
行弘「はい。様々な場面で役に立つ1枚なのですが、大きく意識しているのは、やはり『機体』です。相手の《無許可の分解》を呪禁で一度でも防ぐことができれば、プランを崩せますよね。そして、1ゲーム目に見せておくと、相手が2ゲーム目以降も意識してくるので少し動きを制限できるんですよ」
■ 「黒緑」は、柔軟に対応できるデッキ
――「なるほど。行弘さんはプロツアーから引き続き『黒緑』を使用されていますが、このデッキの魅力を教えていただけますか?」
行弘「『黒緑』は、メタ次第で柔軟に対応できるデッキです。基本的なコンセプトはそのままに、エネルギーに寄せてみたり、『昂揚』に寄せてみたりもできますからね。現在のメタゲームで言えば、同型がとにかく多いので、少し重めに、どっしりと構えるほうが良さそうだとは思います」
――「マナコストが大きいカードが重要、ということですか?」
行弘「そうですね。序盤は除去の打ち合いになって、ひたすらお互いに交換を繰り返すようなことが多いんです。その中で、しっかりと土地を引いて、4~5マナのカードにアクセスできるかどうかで勝負が決まりやすいので、この点を意識すると良いかもしれません。もちろん、あくまでも”現在の環境では”、という話ですけどね」
■ 少し意表を突く意味もある
――「プロツアー以降、様々なことを試されているんですね」
行弘「今回も色々と試しながら対戦をしているような状態ですね。グランプリ・静岡2017(春)に向けて、という意味でも。あと、今回調整を加えたのは、私が使用しているデッキは知られている、ということも意識しているんです。【プロツアーのレポート】も書きましたし、”『黒緑』を使ってくるだろう”と思っている人に対して、少し意表を突く意味もあるんですよね」
――「なるほど……私も『あ、行弘さん、引き続き黒緑使ってるんだ』と思いましたよ。その上で《キランの真意号》が出てきたら、びっくりするでしょうね」
行弘「そうでしょうね(笑) そういった中で、少しでも変化を見せられる、というのは、やはり大事だと思うので……今回実戦の中で得た経験もありますので、次に活かしたいと思います」
「トッププロが何を使っているのか?」という情報は、瞬く間に拡散されていく。その中で、「見られている」ということを認識した上でデッキに調整を加えること。これこそが、トッププロの覚悟、そして言葉であろう。
このDeck Techで、行弘が”現在使っているデッキ”は、広く知られることとなった。さて、次はどのようなデッキを見せてくれるのだろう? 一人のファンとして、非常に楽しみである。
6 《森》 4 《沼》 4 《霊気拠点》 4 《花盛りの湿地》 3 《風切る泥沼》 -土地 (21)- 4 《歩行バリスタ》 4 《緑地帯の暴れ者》 4 《巻きつき蛇》 4 《牙長獣の仔》 4 《ピーマの改革派、リシュカー》 4 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (24)- |
4 《致命的な一押し》 4 《霊気との調和》 2 《顕在的防御》 2 《キランの真意号》 3 《霊気圏の収集艇》 -呪文 (15)- |
3 《精神背信》 2 《闇の掌握》 2 《造命師の動物記》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 1 《害悪の機械巨人》 1 《自然のままに》 1 《人工物への興味》 1 《殺害》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 1 《生命の力、ニッサ》 -サイドボード (15)- |
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