Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/06/07)
《世界を揺るがす者、ニッサ》を使ったデッキの模索
みなさんこんにちは!ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019が終わり、モダンから距離を置くことになりました。それからはずっと『灯争大戦』が加わったスタンダードで遊んでいたのです。そしてここ数週間でほとんどのデッキ・アーキタイプを試した結果、強く確信したことがあります。今の環境で最強のカードは《世界を揺るがす者、ニッサ》です。
たったの5マナであるにも関わらず、《世界を揺るがす者、ニッサ》が盤面に与える影響は甚大です。着地したターンから相手のプレインズウォーカーにプレッシャーをかけ、警戒を持つ3/3の土地が忠誠度6もある彼女を守ります。また、基本土地タイプ「森」を持つカードと緑の2マナ域を潤沢に採用しているデッキならば、彼女が戦場に出たターンに追加で唱えることも可能です。彼女の強みはまだあります。何と言っても最大の魅力は、《世界を揺るがす者、ニッサ》と数枚の「森」が戦場にある状態でターンを迎えれば、(X)マナの呪文を莫大なマナで唱えられることです。
《世界を揺るがす者、ニッサ》を軸にした構築を色々と試しましたが、《集団強制》はほぼ間違いなく入っていました。当初の環境は遅かったため、《世界を揺るがす者、ニッサ》の相棒として、最もマナコストの重い(X)マナの呪文を選択することは理にかなっていたのです。
それから僕は白を加え、《時を解す者、テフェリー》を採用しました。青緑の2色では3マナ域が手薄でしたし、序盤のクリーチャーへの介入要素をある程度確保したかったのです。それでもアグロとの相性は好ましくなかったため、オールインのランプデッキからミッドレンジ寄りの構築へと調整を続けました。
そしてついに気づいたのです。《集団強制》は今の環境の速度についていけていないだけでなく、マナベースを複雑にする要因になっていると。《世界を揺るがす者、ニッサ》の常在型能力を活かすには「森」が必要であり、他方で《集団強制》は青マナを4つも要求するのです。このソーサリーを抜いてしまえば、青の呪文の採用枚数は一気に減り、色拘束も非常に緩くなるため、緑が濃いデッキでも負担が大きくありません。
白を足すことによる恩恵は気に入っていたため、マナベースに若干の変更を加え、以下のような構成にたどり着きました。
Took a new approach of the Ramp archetype this week and got to Mythic in two days. Total record for the deck is 38-6! White offers better payoff for the Ramp (So many Turn 5-6 Finale for X=10) and better removal against cheap creatures. Still splashing for Krasis of course! pic.twitter.com/Qy8Pxxb9Fv
— Fabrizio Anteri (@Anteri_F) 2019年6月5日
「今週はランプの新たな形を試したところ、2日間でミシックへ到達しました。デッキの総合成績は38-6です!白を足すことによって、マナ加速先のカードも軽量クリーチャーへの除去も質があがります(5ターン目、6ターン目に(X)=10の《栄光の終焉》を唱えられたことも多々ありました)。当然この構築でも《ハイドロイド混成体》をタッチしていますよ!」
1 《平地》
4 《繁殖池》
4 《神聖なる泉》
4 《寺院の庭》
4 《陽花弁の木立ち》
2 《氷河の城砦》
-土地 (26)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《ハイドロイド混成体》
4 《培養ドルイド》
4 《楽園のドルイド》
2 《僧帽地帯のドルイド》
2 《翡翠光のレインジャー》
2 《豊潤の声、シャライ》
2 《不和のトロスターニ》
-クリーチャー (24)-
カードの選択理由:メインボード
土地
マナに飢えるデッキならば、土地は26枚は必要です。大抵は6枚目、7枚目の土地すら歓迎ですし、4枚目までにつまづくようなことがあってはなりません。《森》は《世界を揺るがす者、ニッサ》や《ラノワールのエルフ》のために枚数を多めに確保してあります。青白の2色土地を多めに採用しているのは、青のタッチを実現しつつ、《森》を《内陸の湾港》にしたくなかったからです。
マナ加速
初手にあると最も嬉しいカード群です。《成長のらせん》を採用している構築もありますが、上記のマナベースでは青マナ源が10しかないため、2ターン目に安定して唱えられません。そこで、必須である12枚のマナクリーチャーに《僧帽地帯のドルイド》を2枚加えることにしました。
このデッキにはマナの使い道となるカードがライブラリーに多く眠っているため、初手に土地とマナクリーチャーがあれば必ずキープです。よって、14枚のマナクリーチャーが1枚も初手にないなら、原則的にマリガンをします。初動が《翡翠光のレインジャー》であっても、先手なら例外的にキープします(ただし、コントロールとの2戦目以降は、ゲームが長引くことが目に見えているので、マナクリーチャーや《翡翠光のレインジャー》がいなくてもキープします)。
マナの使い先
4x 《世界を揺るがす者、ニッサ》
デッキの中核ですから、当然4枚です!
4x 《ハイドロイド混成体》
膨大なマナの最善の使い道であり、カードパワー・柔軟性を兼ね備えています。
2x 《豊潤の声、シャライ》
概して《豊潤の声、シャライ》は非常に強力なカードです。3/4飛行というだけで悪くないですし、プレイヤーが呪禁を持てば手札破壊呪文や赤単の火力呪文への耐性ができます。また、クリーチャーやプレインズウォーカーに呪禁が付与されれば、《集団強制》で複数のコントロールを奪われることもなくなるのです。
起動型能力もマナの使い道として優秀で、《世界を揺るがす者、ニッサ》の常在型能力が無駄になることがなくなり、マナクリーチャー全員が大きな脅威へと育ちます。《時を解す者、テフェリー》や《溶岩コイル》は《豊潤の声、シャライ》に強いですが、最近は数を減らしています。
2x 《不和のトロスターニ》
以前はこの枠に《狼の友、トルシミール》が入っていましたが、《幻惑の旋律》や《集団強制》を採用しないなら《不和のトロスターニ》の方が優秀だと思います。というのも、《不和のトロスターニ》はそういった呪文にコントロールを奪われたクリーチャーを取り戻せるからです(《戦慄衆の指揮》や《人質取り》に対しても耐性がつきます)。
また、全体を強化する能力は《世界を揺るがす者、ニッサ》がクリーチャー化した土地を4/4というサイズにできるため、《轟音のクラリオン》で大損害を被ることもなくなります。
1x 《不滅の太陽》
こちらもゲームへの影響力が大きい1枚です。プレインズウォーカーを抑止されて困り果てるデッキも多いでしょう。《世界を揺るがす者、ニッサ》が土地をクリーチャー化できなくなりますが、大した問題ではありません。大抵は常在型能力の方が重要でしょうし、毎ターン《不滅の太陽》で2枚ドローしていればマナの使い道も豊富に用意されるはずです。
2x 《栄光の終焉》
青よりも白の要素を濃くした主たる要因です。緑のミラーマッチは、往々にしてこのような展開になります。クリーチャーによるマナ加速から《世界を揺るがす者、ニッサ》が着地し、盤面に続々とクリーチャーが展開され、どちらのプレイヤーも攻撃を通しづらくなってしまう。《栄光の終焉》はそういった状況から勝てるカードであり、(X)=10も見た目よりも遥かに達成しやすいのです。
また、柔軟性にも富んでいます。(X)が2や3なら時間を大きく稼げますし、(X)を4や5にすればフィニッシャーになるときもあるのです(《不和のトロスターニ》など、全体を強化する術が潤沢にあれば、フィニッシャーになる確率は高まります)。
中盤を支えるカード
マナクリーチャーと派手な呪文だけで構成するのは好ましくありません。序盤に唱えられる呪文でありながら、ゲームプランの遂行に役立ったり、相手の速度を落としてくれるカードも必要なのです。
2x 《翡翠光のレインジャー》
《翡翠光のレインジャー》は、序盤では土地を探しだし、土地が必要なくなった段階ではマナ加速先のカードを見つけ出します。ただ、あまり多すぎても仕方のないカードですし、常に欲しいものでもありません。それでも、デッキの両極端な性質を仲立ちする呪文を入れて置くことは重要です。
2x 《牢獄領域》、1x 《時を解す者、テフェリー》
初期のデッキリストには《牢獄領域》を3枚採用していましたが、重ね引きたくないと感じるようになりました(サイドボードには《不可解な終焉》がすでに入っていたことも一因です)。また、より能動的に動けるデッキにしたかったので、相手の盤面に対象となるものがなくても唱えられる3マナ域のカードが欲しくもありました。
そこで、《牢獄領域》の3枚目を《時を解す者、テフェリー》と入れ替えることにしたのです(《時を解す者、テフェリー》の方が基本的に優れていますからね。もちろん色拘束が厳しいことは承知していますよ)。
カードの選択理由:サイドボード
1ゲーム目から、大抵のミッドレンジには非常に相性が良いです。欲張ったサイドボーディングをしたり、構築を歪めたりするまでもなく、普通は相手を上回ることができるでしょう。今回ご紹介している構築はアグロとの相性が飛躍的に向上していますし、サイドボードの除去も追加すればさらにその傾向は強まります。純粋なコントロールはおそらく当たりたくない相手なのですが、勝ち目がないとは思いません。それに何よりも、コントロールには今の環境を戦うツールが不足しているため、信頼できるデッキにならないはずです。コントロールがいたとしても、メタゲーム上ではごくわずかなものでしょう。
カード選択や採用枚数は非常に個人的なものであり、自分自身の経験やMTGアリーナのランクマッチで実際に使用したものに基づいています。ですから、サイドボードの構成はみなさんが想定するメタゲームに合わせて調整してみてください。
みなさんの事情は異なるでしょうから、僕が「絶対的に正しい」答えを提示することはできません。僕がサイドボードに3枚目の《不和のトロスターニ》を入れているのは、アグロにも《集団強制》デッキにもサイドインできるからです。もしみなさんが青単との対戦を想定したり、《集団強制》が使われる環境ではないと予想するならば、《不和のトロスターニ》ではなく《黎明をもたらす者ライラ》の方が優れているでしょう。
ですが、僕たちが「サイドボードガイド」の世界に生きていることも承知しています!というわけで、基本的なサイドボーディングをご紹介しましょう。
サイドボードガイド
赤単
対 赤単
グルール
対 グルール
グルールはさまざまな構成がありますが、上記のサイドボーディングは最もアグロに寄せたタイプを想定しています。相手の構築はサイドボード前後で大幅に変わるため、2ゲーム目以降に相手がどんなプランを取ってくるのかを識別しましょう。
《ショック》に弱い《培養ドルイド》、おそらくサイドインされる《溶岩コイル》に弱い《豊潤の声、シャライ》はサイドアウトします。
相手が《楽園のドルイド》や重めの呪文を採用している構築ならば、《不可解な終焉》は3枚も入れません(特に先手の場合)。《再燃するフェニックス》は間違いなく4枚採用されていますし、《主無き者、サルカン》や《スカルガンのヘルカイト》も何枚か入っているでしょうから、《強制着陸》はおすすめです。
エスパーミッドレンジ
対 エスパーミッドレンジ
(対戦相手が《正気泥棒》を使用している場合には、《否認》の代わりに《不可解な終焉》をサイドインしてもいいでしょう。)
グルール同様、構築方法が多岐に渡ります。《正気泥棒》を採用した最もアグロな形に対しては《不可解な終焉》を数枚入れますが、ほとんどの場合《否認》を優先させます。《栄光の終焉》は、全体除去や《拘留代理人》を警戒してサイドアウトしましょう。《正気泥棒》や《人質取り》を確認したら《不和のトロスターニ》をサイドアウトする必要はありません。
《戦慄衆の指揮》
対 《戦慄衆の指揮》
とても相性が良いです。基本的にゲームプランが相手よりも優れており、相手を上回ることができます。
白単/アゾリウスアグロ
対 白単/アゾリウスアグロ
シミック《集団強制》
対 シミック《集団強制》
大抵は巨大な《ハイドロイド混成体》を出すと勝てるのですが、このマッチは数少ない例外のひとつです。いかに早く相手の《世界を揺るがす者、ニッサ》を対処できるかにかかっています。こちらには《幻惑の旋律》や《集団強制》に強い《不和のトロスターニ》や《豊潤の声、シャライ》がいるため、相手はキーカードを唱えられず、膨大なマナだけが手元にある状況もたまに発生します。
ジェスカイプレインズウォーカー
対 ジェスカイプレインズウォーカー
エスパーコントロール/エスパープレインズウォーカー
サイドボーディングに悩む相手です。おおよその構築は似通っているのですが、たまに《第1管区の勇士》が入っていたり、《ケイヤの怒り》の代わりに《聖堂の鐘憑き》がメインデッキに採用されていたりします。《ケイヤの怒り》はメインデッキに入っていなくても、サイドボードには採用されているでしょう。打ち消し呪文や《ヴラスカの侮辱》が多めに採用されている構築すらあります……。ですから、相手のデッキを正確に把握するのは非常に難しいのです。ここでは、ほぼ間違いなく行うサイドボーディングだけご紹介しましょう。
対 エスパーコントロール/エスパープレインズウォーカー
おわりに
今回の記事は以上です。このデッキは本当に楽しいですし、今のメタゲームに非常にマッチしていると思います。ぜひ試してみてください。デッキに関する質問、コメント、提案をお待ちしています。
お付き合いいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。
ファブリツィオ・アンテリ (Twitter)