みなさんこんにちは。
先週末はSCG Invitational Season One、グランプリ・台北2019などスタンダードの大会が充実していました。
今回の連載ではグランプリ・カンザスシティ2019、SCG Invitational Season One、グランプリ・台北2019の入賞デッキを見ていきたいと思います。
グランプリ・カンザスシティ2019
環境を牽引するSuperheroes
2019年6月2日
- 1位 Esper Superheroes
- 2位 Gruul Midrange
- 3位 Simic Nexus
- 4位 Boros Feather
- 5位 Bant Ramp
- 6位 Bant Midrange
- 7位 Mono-Red Aggro
- 8位 Izzet Phoenix
Ben Friedman
トップ8のデッキリストはこちら
モダンやレガシーの環境にも影響を与えた強力なセットと評価されている『灯争大戦』。『灯争大戦』加入後のスタンダードの環境は大きく変化し、今大会でもプレイオフに8つの異なるデッキが勝ち残っていました。
グランプリ・カンザスシティ2019 デッキ紹介
「Esper Superheroes」「Gruul Midrange」「Boros Feather」
Esper Superheroes
1 《沼》
4 《神無き祭殿》
4 《神聖なる泉》
4 《湿った墓》
4 《水没した地下墓地》
4 《氷河の城砦》
4 《孤立した礼拝堂》
-土地 (26)- 4 《第1管区の勇士》
4 《聖堂の鐘憑き》
-クリーチャー (8)-
3 《暴君の嘲笑》
1 《灯の燼滅》
1 《古呪》
1 《戦慄衆の指揮》
1 《アズカンタの探索》
3 《ケイヤの誓い》
4 《時を解す者、テフェリー》
3 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
1 《戦慄衆の将軍、リリアナ》
-呪文 (26)-
2 《黎明をもたらす者ライラ》
2 《強迫》
2 《古呪》
2 《肉儀場の叫び》
1 《喪心》
1 《灯の燼滅》
1 《戦慄衆の指揮》
1 《イクサランの束縛》
-サイドボード (15)-
Martin Muller選手がArena MCQで使用したデッキリストをサイドボードガイドも含めて自身のツイッターのアカウントにシェアし、拡散されたものを参考にしたリストで、メインから《戦慄衆の指揮》や《古呪》などが採用されているなど、ほかのミッドレンジとのマッチアップを意識した構成になっています。
《正気泥棒》が不採用で、プレインズウォーカーが多めのSuperfriends寄りの構成になっています。多色のスペルが多めのこのデッキではトークンを多数生成することが容易で、相手のプレインズウォーカーを対策しやすくなるため《第1管区の勇士》はメインからフルに採用されているなど、Esper SuperfriendsとEsper Herosのハイブリッド版となっています。
☆注目ポイント
同型やJeskai Superfriendsなどに対抗するために、メインから《古呪》が採用されています。Mono-Red Aggroとの相性の改善に貢献している《聖堂の鐘憑き》と《ケイヤの誓い》のライフゲインにより、《戦慄衆の指揮》も有効活用できます。ミラーマッチ、Izzet Phoenix、《ハイドロイド混成体》を使用したデッキなど様々なマッチアップで活躍する《覆いを割く者、ナーセット》がメインに昇格しています。
Esper Midrangeでメインから採用されていた《正気泥棒》はMono-Red Aggro、Gruul、Jeskai、Izzetなどメインから軽量除去の《ショック》などを採用したデッキが多く、ミッドレンジミラーでも《時を解す者、テフェリー》でバウンスされてテンポ面で損をすることになるので、採用率は減少傾向にあります。最近はこのデッキにおける、コントロールやミッドレンジとのマッチアップ用の3マナ域は《覆いを割く者、ナーセット》が定着しています。
《時を解す者、テフェリー》が幅を利かせている現環境では打ち消し呪文の信頼性も落ちているため、コントロールデッキはこのEsper Superherosのようなタップアウトスタイルが主流となりそうです。
Gruul Midrange
7 《森》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《根縛りの岩山》
1 《グルールのギルド門》
-土地 (25)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《茨の副官》
4 《グルールの呪文砕き》
3 《生ける竜巻》
4 《再燃するフェニックス》
4 《スカルガンのヘルカイト》
-クリーチャー (23)-
マナクリーチャーによって、《グルールの呪文砕き》や《スカルガンのヘルカイト》といった「暴動」持ちのクリーチャーやプレインズウォーカーを高速展開してプレッシャーをかけるミッドレンジアグロ。
緑と赤の優秀なクリーチャーとプレインズウォーカーによる多角的な攻めができるのがこのデッキの強みで、速攻持ちのクリーチャーは《時を解す者、テフェリー》によるバウンスの影響を受けにくく、Mono-Red Aggroよりもクリーチャーのサイズと質の面で有利です。
☆注目ポイント
《生ける竜巻》は色拘束が強くなりますがタフネスが5と固く、中盤以降に余った土地をダメージソースに変換させる起動能力を持っているので、いつ引いてきても戦力になります。
《ボーラスの壊乱者、ドムリ》は全体強化、マナ加速、クリーチャー除去とこのデッキの方向性にフィットしたプレインズウォーカーで、特にパワー強化の常在能力と[-2]能力は相性が良く、タフネスの高い《生ける竜巻》を格闘させることによって相手のクリーチャーを一方的に打ち取ることもできます。
プレインズウォーカーを多用するSuperfriends系とのマッチアップに強く、相手の行動を制限しつつアドバンテージを稼ぐことができる《不滅の太陽》は、《ボーラスの壊乱者、ドムリ》などプレインズウォーカーと入れ替えでサイドインされます。サイドに4枚積まれている《軍勢の戦親分》は除去が少ないBantとのマッチアップで、強力なクロックとして機能します。
Boros Feather
5 《山》
4 《聖なる鋳造所》
4 《断崖の避難所》
-土地 (21)- 4 《アダントの先兵》
4 《戦慄衆の秘儀術師》
4 《第10管区の軍団兵》
4 《贖いし者、フェザー》
3 《ブリキ通りの重鎮、クレンコ》
-クリーチャー (19)-
3 《溶岩コイル》
2 《軍勢の戦親分》
2 《治癒の恩寵》
1 《軍勢の切先、タージク》
1 《無謀な怒り》
1 《防護の光》
1 《黒き剣のギデオン》
-サイドボード (15)-
自軍クリーチャーを対象にしたスペルを再利用させる《贖いし者、フェザー》を軸にしたデッキで、テーロスブロックのスタンダードで活躍したHeroicを彷彿とさせる戦略です。
使われているクリーチャー強化スペルも《果敢な一撃》や《サムトの疾走》といった軽いものが中心で、それらを再利用することで追加のアドバンテージをもたらします。
《ショック》や《無謀な怒り》といった軽い除去を採用しており、それらを《贖いし者、フェザー》や《戦慄衆の秘儀術師》などで再利用できるので単色アグロに強く、強化スペルによるクロックでミッドレンジとのマッチアップも互角以上に渡り合えます。
☆注目ポイント
《無謀な怒り》は《贖いし者、フェザー》とのシナジーが強力で、カードを消費することなくクリーチャーを除去します。《ブリキ通りの重鎮、クレンコ》はそれ単体ではタフネスが2と《ショック》で落とされてしまうほど貧弱ですが、《戦いの覚悟》などで強化することで手が付けられないほどの脅威となります。
Mono-Red Aggroにはサイドの《治癒の恩寵》を《贖いし者、フェザー》で使い回す動きが強く、このデッキがMono-Red Aggroと相性が良い理由の一つです。《トカートリの儀仗兵》は《翡翠光のレインジャー》などの「探検」クリーチャーや《聖堂の鐘憑き》、《エリマキ神秘家》などのETB能力をシャットアウトするので、各種ミッドレンジとのマッチアップで役に立ちます。
グランプリ・台北2019
すべてを奪い去る《集団強制》
2019年6月9日
- 1位 Bant Ramp
- 2位 Esper Superfriends
- 3位 Boros Feather
- 4位 Jund Warriors
- 5位 Grixis Bolas
- 6位 Simic Nexus
- 7位 Bant Ramp
- 8位 Grixis Bolas
Kim Seok Hyun
トップ8のデッキリストはこちら
日本と近いこともあり日本人プレイヤーも多数参加していた今大会のプレイオフは、安定した成績を残し続けているEsper SuperfriendsやGrixis、Bant Rampといった中速デッキが中心で、Mono-Red Aggroなどアグロデッキは不在でした。
グランプリ・台北2019 デッキ紹介
Bant Ramp
2 《島》
4 《繁殖池》
4 《神聖なる泉》
4 《寺院の庭》
4 《内陸の湾港》
3 《陽花弁の木立ち》
2 《氷河の城砦》
-土地 (25)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《楽園のドルイド》
4 《培養ドルイド》
3 《ハイドロイド混成体》
2 《エリマキ神秘家》
2 《豊潤の声、シャライ》
-クリーチャー (19)-
2 《切り裂き顎の猛竜》
2 《狼の友、トルシミール》
2 《不和のトロスターニ》
2 《幻惑の旋律》
2 《否認》
2 《イクサランの束縛》
1 《不滅の太陽》
-サイドボード (15)-
《ラノワールのエルフ》や《培養ドルイド》、《楽園のドルイド》といったマナクリーチャーから、プレインズウォーカーや《ハイドロイド混成体》、《集団強制》など強力なスペルをプレイするビッグマナ寄りの戦略で、Esperなどミッドレンジをデッキパワーで圧倒します。
《楽園のドルイド》は除去耐性があるので信頼性のあるマナ加速となります。しかし、《ラノワールのエルフ》と同様にタフネスが1なので《ゴブリンの鎖回し》で流されてしまうためMono-Red Aggroと当たった際は注意が必要となります。Mono-Red Aggroとのマッチアップは決して得意ではないものの、最近はEsperが《聖堂の鐘憑き》をメインからフル搭載していることなどが理由で、Mono-Red Aggroは減少傾向にあります。Esper Superfriendsや《戦慄衆の指揮》を使うミッドレンジと当たることの方が多いので、このデッキにとって有利なメタになりつつあります。
☆注目ポイント
マナを伸ばして《集団強制》で相手のプレインズウォーカーやクリーチャーを奪い取るのがこのデッキの主なゲームプランとなりますが、《集団強制》よりも少ないマナで相手のクリーチャーを奪える《幻惑の旋律》も、時間を稼ぐことに貢献する重要なスペルとなります。
このデッキの主力のプレインズウォーカーである《世界を揺るがす者、ニッサ》は初期忠誠度が高めで、[+1]能力は相手のプレインズウォーカーに対するプレッシャーとなり、Esper Superfriendsなどプレインズウォーカーを多用するミッドレンジとのマッチアップで活躍します。
同型も意識していたようで、メインから《豊潤の声、シャライ》も採用されています。自軍のプレインズウォーカーに呪禁が付くので同型の《集団強制》以外でも、Esper Superfriendsなど黒いミッドレンジの《古呪》も当たりません。
サイドの《不和のトロスターニ》は同型や《戦慄衆の指揮》を使うデッキとのマッチアップでサイドインされます。コントロール奪取に耐性を付けるこのクリーチャーの能力により相手は《戦慄衆の指揮》や《集団強制》といったビッグスペルが使いづらくなります。
SCG Invitational Season One
最強はEsper
2019年6月7日
- 1位 Esper Superheroes
- 2位 Sultai Dreadhorde
- 3位 Esper Superheroes
- 4位 Sultai Dreadhorde
- 5位 Boros Aggro
- 6位 Simic Mass Manipulation
- 7位 Esper Superheroes
- 8位 Esper Superheroes
Brian Coval
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予選ラウンドはスタンダードとモダン、二つの構築フォーマットで競われたSCG Invitational Season One。多くのプレイヤーは今大会の前の週に優勝を収めたBen Friedman選手が使用していたEsper Superherosを使用していました。
Mono-Red Aggroは今大会でも最大勢力でしたが上位には残らず、Esperなどフェアデッキに強いとされているBant Rampやプレインズウォーカーを上から攻めることができるIzzet Phoenixがスタンダードラウンドで高い勝率を出していました。
SCG Invitational Season One デッキ紹介
Sultai Dreadhorde
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
4 《湿った墓》
4 《内陸の湾港》
4 《森林の墓地》
1 《水没した地下墓地》
-土地 (24)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《マーフォークの枝渡り》
4 《野茂み歩き》
3 《ハイドロイド混成体》
4 《翡翠光のレインジャー》
-クリーチャー (19)-
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《強迫》
2 《否認》
2 《古呪》
1 《虐殺少女》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《ヴラスカの侮辱》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
-サイドボード (15)-
今大会惜しくもEsper Superherosに決勝戦で敗れたものの、「探検」クリーチャーと《戦慄衆の指揮》による組み合わせとプレインズウォーカーにプレッシャーをかけることに長けている《世界を揺るがす者、ニッサ》によってほかのフェアデッキに強い構成のSultai Dreadhorde。
マナクリーチャーからプレインズウォーカーを速い段階から展開するところはBantと変わらないものの、黒は除去やハンデスなどが採用可能で、相手のプレインズウォーカーを一掃する《古呪》を使えることもこのバージョンの強みです。
重いスペルが多いのでマナクリーチャーが除去されてしまうともっさりしてしまうこともあり、Mono-Red Aggroなどはやや不利なマッチとなりますが「探検」クリーチャーと《野茂み歩き》、除去も採用されているのである程度までは凌ぐことが可能です。
☆注目ポイント
《戦慄衆の指揮》で《伝承の収集者、タミヨウ》をリアニメイトした後に[-3]能力により《戦慄衆の指揮》を回収する動きが可能なことがEsperと異なる点です。墓地に落ちた探検クリーチャーと《野茂み歩き》もリアニメイトすることで失ったライフも回復できるので、《戦慄衆の指揮》を複数回使うことも比較的容易で、さらにライフが減ったところを火力や《主無き者、サルカン》で削り切られることも少なくなります。
《ハイドロイド混成体》は中盤はアドバンテージ源となりつつ《戦慄衆の指揮》のための追加のライフゲイン手段として機能すると同時に、ゲーム後半ではエンドカードとなります。
Bantの項でもご説明したように、[+1]能力によって土地をアタッカーへと変えられる《世界を揺るがす者、ニッサ》は《時を解す者、テフェリー》を始めとしたプレインズウォーカー対策として有力なことで株を上げている、現環境の最高のプレインズウォーカーの一体となります。マナクリーチャーを利用することで3~4ターン目から展開することも可能で、多くのミッドレンジにとって脅威となります。今後はEsperも《ケイヤの怒り》などスイーパーをメインから採用する必要が出てきそうです。
総括
《時を解す者、テフェリー》が中心の環境にもほかのデッキも徐々に対応してきており、ここ数週間は《世界を揺るがす者、ニッサ》を使ったBant Rampなど緑のビッグマナ系が台頭してきました。Esper Superfriendsは環境のデッキの中でも対応力が高く、対策されながらも今回ご紹介したすべての大会で結果を残していることからも今後も環境の変化に合わせてトップメタに留まりそうです。
USA Standard Express vol.149は以上です。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!