読者諸賢、好きな色はあるか?
私は、白が好きだ。白への愛を語らせると、貴重なカバレージスペースを《ハルマゲドン》してしまうので、ここでは《謙虚》に《停戦》して、白への《啓蒙》は《沈黙》しておこう。
誰にでも、好きな色がある。単色でも、多色でも。
その“好きな色”を突き詰める勇姿が、このスタンダード横綱選抜バトルに参加している。
縣 武。
知る人ぞ知る、赤単の名手である。
晴れる屋のTwitterが「本日の大会結果」をつぶやき、その中に「赤単」という文字を見つけると、数日後に「Agata Takeru」の名がデッキ検索に載る。これは一種の“様式美”だ。
筆者は何を隠そう彼のファンである。今から1年前、『戦乱のゼンディカー』末期、世界がタルキール次元の3色に飽き足らず、フェッチランドとバトルランドを酷使して「ダークジェスカイ」「マルドゥグリーン」「4色ラリー」といった超多色化に走る中、縣が使用していたデッキは……。
22 《山》 -土地 (22)- 4 《ケラル砦の修道院長》 2 《稲妻の狂戦士》 4 《僧院の速槍》 2 《無謀な奇襲隊》 2 《鐘突きのズルゴ》 -クリーチャー (14)- |
4 《焦熱の衝動》 4 《タイタンの力》 4 《乱撃斬》 4 《ドラゴンの餌》 4 《極上の炎技》 4 《軍族童の突発》 -呪文 (24)- |
4 《引き裂く流弾》 4 《焙り焼き》 4 《弧状の稲妻》 2 《前哨地の包囲》 1 《山》 -サイドボード (15)- |
《山》22枚、スペルは4枚×6、サイドボードも単純明快。
赤単に対する愛が詰まっているレシピを見たとき、とにかく大きな感動を受けた。ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が、かつて“信心”という言葉を使ったように、縣のレシピには信仰にも似た“赤単愛”が詰まっている。
縣「まずは『赤単』から」
――「縣さんといえば『赤単』を使用し続けていますが、いつ頃から使用しているのですか?」
縣「昔から好きですね。『イニストラード』、『ラヴニカへの回帰』の頃から使用しています」
――「そうなんですね。使用したきっかけは何ですか?」
縣「『ラヴニカへの回帰』が発売された頃にマジックに復帰したのですが、当初は友人にカードを借りてスタンダードをやっていました。ですが、途中から借りられなくなってしまって、『じゃあ自分でカードを揃えよう』と思ったときに、一番安いスタンダードのデッキが『赤単』だったんです」
――「なるほど。そこからはずっと『赤単』なんですね。他の色を使用することはないんですか?」
■ Deck Tech: 赤黒
――「今回使用されているのは、赤黒、ですね」
10 《山》 6 《沼》 4 《燻る湿地》 4 《凶兆の廃墟》 -土地 (24)- 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《殺戮の先陣》 4 《ピア・ナラー》 3 《ゴブリンの闇住まい》 -クリーチャー (15)- |
4 《致命的な一押し》 4 《焼夷流》 3 《集団的抵抗》 4 《無許可の分解》 3 《高速警備車》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (21)- |
4 《ショック》 4 《精神背信》 2 《グレムリン解放》 2 《失われた遺産》 1 《沼》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード (15)- |
縣「赤単色ももちろん試しました。ただ《密輸人の回転翼機》が使えなくなって、続けていくのは不可能だな、と。そこで、少しデッキを重くして、黒をタッチしてみたんです」
――「主な黒の要素は、《無許可の分解》《屑鉄場のたかり屋》《致命的な一押し》ですね」
縣「そうですね。《屑鉄場のたかり屋》は使いたかったので、黒マナは必要です。結果、《致命的な一押し》も使用できるので、かなり強化されました」
――「なるほど。その他に注目ポイントはありますか?」
縣「《ゴブリンの闇住まい》を使ってアドバンテージを稼ぐ、という強い動きを可能にしたいので《無許可の分解》だけでなく、《集団的抵抗》を採用しています。このデッキを簡単に説明すると、“赤黒ビートダウンに《ゴブリンの闇住まい》を突っ込んでいる”という形なので、少し歪んでいるんですね。それを解消するわけではありませんが、《ゴブリンの闇住まい》がフラッシュバックできる対象を増やす意味で、採用しています」
――「縣さんの考える強い動きを実現するために、調整されているのですね。デッキの使用感はいかがですか?」
縣が語る「単色の魅力」
――「改めて縣さんにお聞きしたいのですが、単色が好きな理由、魅力って何でしょうか?」
縣「やはりシンプルさが好きなんですよね。できるだけ、デッキはシンプルにしたいんです。そして、一番シンプルなのは単色、ですよね」
――「縣さんのデッキに4積みが多いことも、シンプルさが良いから、ですか?」
縣「良い意味で、マジックと離れられると良い」
――「なるほど。そうやってマジックを楽しんでいる縣さん式の”マジックとの上手な付き合い方”ってありますか?」
縣「私自身探していることでもあるのですが、別の趣味を持つことって大事だと思います。マジックばかりだと、負けが続いて荒んでしまうこともありますよね。それではやはり楽しくないので、勝ち負けではない趣味があると私生活のバランスを上手く取れると思います。良い意味で、マジックと離れられると良いかな、と」
――「長く楽しむからこそ、ですね。縣さんの場合、どのような趣味をお持ちなんですか?」
縣「映画を見ることなど、自室でできることが趣味です。マジックも含めてインドア派だと思われるかもしれませんが、大会はコミュニケーションの場でもありますし、晴れる屋まで行くことも必要ですから。自室でできる趣味とは少し違うと思っています。今後も、バランスを取りつつ楽しんでいきたいと思います」
インタビューを行うのはラウンドの合間であり、非常に短い時間だ。それでも、縣の持つ「赤単」、そしてマジック愛が強く伝わってきた。
ただ闇雲に愛するのではなく、そのデッキで勝利するために。縣は自分の愛するデッキを磨いていく。その結果は、これまで彼が晴れる屋のデッキ検索で刻んできた見事なまでの戦績と、今回のトップ8入賞が示している。
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