7月8日、モダンに激震が走る!
2019年7月8日、新しい禁止改定が発表されました。今回の禁止改定は、いつも以上に大きな注目を集めていたのではないでしょうか。「ネオブランドやホガークヴァインのパーツが禁止になるのではないか」、「何かを解禁することでバランスを取るのではないか」。巷ではそんな予想が飛び交っていましたが、実際に発表されたその内容は、モダン環境を席捲していたホガークヴァインの重要なパーツの一つである《黄泉からの橋》の禁止というものでした。
公式の記事によると、ホガークヴァインはMagic Online上で最もプレイされたデッキであり、次点のデッキの3倍以上も5-0を達成していたのだそうです。また、なんと1ゲーム目の勝率が約66%あったことが明かされています。こうして数字を並べられると、いかにホガークヴァインというデッキが強かったのかがわかりますね。
今回の禁止改定がモダン環境を大きく揺るがす変更であることは間違いないでしょう。では、具体的にモダン環境はどのように変化していくのでしょうか?
モダンのスペシャリストたちには今回の禁止改定が、また新しい環境が、どのように見えているのか。気になるその内容をインタビューしてみました!
ネオブランドマスター・伊藤 敦
Q1.今回の禁止改定の発表内容は、事前に予想していたものと比べてどうでしたか?
- 《黄泉からの橋》: 80%
- 《信仰無き物あさり》: 20%
- 《魔力変》: 20%
- 《アロサウルス乗り》: 20%
事前の禁止予想
結果は予想通りで、妥当な禁止改定だと思う。《石鍛冶の神秘家》の解禁もありうると思っていたが、さすがに青白一強のリスクが高すぎたか。ただ今後もし青白がメタゲームから追い出されたタイミングでの禁止改定があれば、依然として選択肢に入りうると考えている。
《信仰無き物あさり》・《魔力変》については、影響を受けるアーキタイプが多すぎることが禁止を検討するに際してのネックとなっており、そう簡単には禁止にできないものと思われる。ただこれらを使用したデッキのパワーレベルが手が付けられないほどになり、他の候補が見当たらないときは、禁止候補になりうるだろう。
ネオブランドのカードについては勝率ベースで考えて禁止にならないのは妥当なのだが、あまりにゲームとして不健全なことは確かなので、少しでも活躍の兆しを見せたら遠慮なく禁止になるのは間違いない。
Q2.今回の禁止改定を受けて、今後のメタゲームはどう変わっていくと思いますか?また、それに伴いネオブランドはどのような立ち位置になるでしょうか?
『灯争大戦』発売後、『モダンホライゾン』発売前の環境はドレッジ・青白コントロールが2トップで、5色人間・トロン・フェニックス系がそれに続く形だった。墓地コンボ系のアップデートでありながら例外的に他のデッキほとんどすべてに有利が付いていたイレギュラー=ホガークヴァインが弱体化したことで、環境は再び『モダンホライゾン』前の形に近づくだろうと思う。
具体的には、ドレッジorホガークヴァインという墓地コンボ、青白コントロールor5色人間というフェアデッキ、緑トロンorエルドラージトロンという土地コンボ、イゼットフェニックスor赤単フェニックスという《弧光のフェニックス》デッキといったメジャーアーキタイプ(5%超え)に、鱗親和やウルザソプター、ジャンド、感染などが続くといった具合に、バランスを保った多様なメタゲームが取り戻されることだろう。
ネオブランドはヘイトベア・置き物・カウンター・手札破壊のどれでも対策を受けうるデッキだが、これまでホガークヴァインがオーバーパワーすぎたためにインタラクションの価値がほぼ無だったため、誰も手札破壊を打たない、かつインタラクションヘビーな人間やスピリットが減少傾向の環境だったのが、逆に追い風だった。
しかし、今はちょうどメタゲームにジャンドやエルドラージトロンが復権してきているタイミングで、フェアデッキ側も青白コントロール一強ではなくなってきたことにより、5色人間やスピリットの立ち位置も相対的に上がっている。
しばらくはフェアデッキと墓地コンボとの叩き合いのような状況になると予想されるため、インタラクションの価値も復帰しており、純粋に立ち位置だけでいうと、ネオブランドのポジションは悪くなるものと思われる。
Q3.今回の禁止改定を受けて、「ネオブランド」のデッキリストに変更を加えたいところはありますか?
ジャンドの復権に合わせ、再び手札破壊をケアする必要が出てきた。メインボードは変わらないと思うが、サイドボードは《神聖の力線》をとるか、《夏の帳》を増量するかもしれない。
『マジック基本セット2020』でネオブランドが得た最大の収穫が《夏の帳》で、《秋の帳》ではできなかった手札破壊対策が緑のカードでできるようになったことは地味ながら強化となっている。《ドビンの拒否権》や《狼狽の嵐》といった特殊なカウンターにも対応できることを考えると、メタゲーム次第だが《殺戮の契約》や《酸化》の4枚目より優先するシチュエーションがあるかもしれない。そうなると、スロットの都合で相手次第でキャントリップにもなる《夏の帳》が1枚程度メインにスライドしてくる展開も考えうる。
ホガークヴァインの先駆者・宇都宮 巧
Q1.今回の禁止改定の発表内容は、事前に予想していたものと比べてどうでしたか?
予想通りでした。最近の禁止改訂には、下記のような傾向があると思っています。
- 特定のデッキを崩壊させてしまうことはしない
- 他のデッキに影響を与えにくいカードを選ぶ
これらを踏まえると、今回はデッキの専用パーツであり『モダンホライゾン』に収録されたカードではない《黄泉からの橋》が禁止の対象だろうと予想していました。ホガークヴァインの圧倒的なTOP8進出率とそれに伴う異常な墓地対策の量は、健全な環境ではなく歪んだ環境だったと言えます。
『モダンホライゾン』発売前と比べて、デッキの多様性もなくなってしまっていたとも感じていました。ブリッジヴァイン愛好家としては残念ですが、禁止されてしまったのは仕方がないと感じてしまうほどに強力なデッキだったと思います。
Q2.今回の禁止改定を受けて、今後のメタゲームはどのように変わっていくと思いますか?
フェアデッキと土地コンボ(アミュレットタイタンやトロン)が増加するかなと思っています。フェアデッキは妨害手段こそあれ実際に勝つまでの速度が遅いので、ゲームを長引かせることはできてもいずれ《黄泉からの橋》を含めたホガークヴァインの多角的な攻撃に耐え切れなくなり、押し切られてしまうといった展開が多く環境から数を減らしていました。また、土地コンボは基本的にホガークヴァインよりも速度が遅く、それでいて妨害も薄いので最近はめっきり姿を見なくなっていました。ホガークヴァインの衰退によってフェアデッキが復権するとなると、それに伴いフェアデッキを得意とする土地コンボも増えるのではないかと予想しています。
また、この禁止改定を受け墓地デッキも大きく様変わりしていくと思います。これまでのホガークヴァイン一択という状況ではなくなったので、以前のようにドレッジデッキを使う人も増えるでしょうし、ホガークヴァインを使う場合にもさまざまなリストが考案されていくのではないでしょうか。
Q3.今回の禁止改定はホガークヴァインの圧倒的な勝率を顧みてということですが、《黄泉からの橋》を失ったこのデッキは第一線から退いてしまうのでしょうか?それとも、新たな形を模索し生き残る可能性はあるとお考えですか?
ホガークヴァインの圧倒的な強さの根源は、(1)《狂気の祭壇》と《黄泉からの橋》のコンボによってライブラリーアウトでも勝てる点と、(2)《黄泉からの橋》のおかげで全体除去耐性が高く、粘り強い点にあったと思います。
《黄泉からの橋》の禁止は、上記ふたつの長所をどちらも失ってしまう結果となりました。
例えば、ライブラリーアウトコンボルートがなくなった影響で《罠の橋》がかなり強烈なヘイトカードになってしまいましたし、《黄泉からの橋》を失ったために全体除去呪文を擁する青白コントロールへの勝率は落ちてしまうでしょう。
以上の理由から環境No.1のデッキのままではいられない可能性が高いと予想していますが、とはいえ依然として2ターン目ホガークに代表される強力な動きは健在なので、少なくともtier2くらいには残ると考えています。
《甦る死滅都市、ホガーク》、そしてデッキのポテンシャルが高いことには疑いの余地がないため、あっさりと最適な構築が発見されてトップに舞い戻る可能性があるとも思っているので、これからの変化が楽しみです。
モダン神・高橋 優太
Q1.今回の禁止改定の発表内容は、事前に予想していたものと比べてどうでしたか?
《甦る死滅都市、ホガーク》・《狂気の祭壇》の加入によって新登場したばかりのホガークヴァインそのものを禁止させるのではなく、弱体化させるような禁止改定が行われると予想していました。出たばかりの新セットから禁止を出したり、他のデッキをなくしてしまう《信仰無き物あさり》を禁止にするよりも妥当な判断だと思います。
それでも2ターン目に《甦る死滅都市、ホガーク》+《復讐蔦》を出す動きは可能であり、依然として強いデッキには変わりないので墓地対策は欠かせないでしょう。欲を言えば、禁止カードを解禁することで他のデッキを強くして欲しかったですね。《石鍛冶の神秘家》・《欠片の双子》あたりは、そろそろ無罪放免でも良いと思っています。
Q2.今回の禁止改定を受けて、今後のメタゲームはどう変わっていくと思いますか?
ホガークヴァインに対抗できていた数少ないデッキが、青白コントロールとジャンドの2種。ホガークヴァインの弱体化により、まずはこの2つが環境の定義になり、メタゲームがスタートすると予想しています。また、ホガークヴァインに抑えつけられていた青黒フェアリーのようなコントロールデッキにもチャンスがありそうです。
クリーチャーが少ないコントロールデッキを使用する場合、相手の墓地に《黄泉からの橋》が落ちてしまうと大量のゾンビトークンに対応しきれないことが問題でした。ただ《黄泉からの橋》での大量ゾンビパターンさえなければ、コントロールでもホガークヴァインと五分の戦いができると思います。禁止により《狂気の祭壇》の採用率は下がるため、単純にクリーチャーを捌いていけば戦えます。
とは言えホガークデッキは除去耐性のあるクリーチャーが多いので、《流刑への道》のような追放除去が重宝されるでしょう。《否定の力》のバックアップにより、自ターンでプレインズウォーカーを出しても、相手のターンに妨害が可能になった青白コントロールに可能性を感じています。《流刑への道》と《否定の力》を使う所からデッキを考えたいですね。
Q3.青黒フェアリーや、前回のモダン神で見事優勝された青白コントロールのイメージが強い高橋選手ですが、先日のGPダラスでは渦中のホガークヴァインを使用されていました。
モダン神である高橋さんの目にホガークヴァインというデッキはどのように映っていましたか?過去にモダンを席捲していたデッキと比べても、ホガークヴァインは強力すぎたのでしょうか?
ホガークヴァインは他の追随を許さないほどの最強デッキでした。2ターン目にクリーチャーの合計パワーが14という状態も頻発し、そのまま投了されるので実質2ターンキルのような状況が多々起こります。《狂気の祭壇》が絡めば、モダンで禁止されているはずの3ターンキルも可能です。
僕も実際に使用しましたが1ゲーム目の勝率は異常に高く、7割を超えていました。2ゲーム目以降も、相手が墓地対策を引けなければそのまま勝利です。《甦る死滅都市、ホガーク》のコスト支払いの仕組み上、1回の墓地対策では対応しきれず2ターン目の《甦る死滅都市、ホガーク》でそのまま勝つことも起こります。かといって墓地対策を取らなければ圧倒的なデッキパワーによって蹂躙されてしまうので、相手に過剰に対策を強いるデッキでした。
過去に禁止されたデッキの例で言うと、《猛火の群れ》入り感染や、《花盛りの夏》入りアミュレットタイタンに近いかも知れません。初手にAとBかCが揃えば2ターンキル。プレイではほとんど介入できないため、面白くないゲームの印象が残ってしまいます。《黄泉からの橋》の禁止により弱体化はしましたが、依然として2ターンキルに近いパターンがあるのが心配です。
Q4.次のモダン神決定戦まであと2週間あまりとなりました。禁止改定を受け、現時点で気になっているデッキやギミックはありますか?
《否定の力》入りのデッキを研究したいです。このカードはモダンの先行有利をかなり緩和してくれると考えています。特に《信仰無き物あさり》・《硬化した鱗》・《霊気の薬瓶》・《探検の地図》・《虚空の杯》なんかは先行でゲームを支配する強さがあります。これらを後手でも対処できるのは素晴らしい!
気になっているのはギミックは《発掘》ですね。僕の愛する《瞬唱の魔道士》と相性が良く、合計2マナで《瞬唱の魔道士》+何かを釣り上げられます。《ヴリンの神童、ジェイス》でもOK!このカードのために各色の3マナ以下のクリーチャーを検索しています。《大爆発の魔道士》とも相性が良くて、トロンを倒しやすくなりました。
新たな環境で
今回はモダンに精通したお三方にインタビューを行い、今後のモダンについてお話していただきました。皆さん共通して次の環境がどうなっていくか、デッキがどう変わっていくかに対してきちんと展望を持っているのが印象的でしたね。
これから、今回の禁止改定を受け、モダン環境は多様性を取り戻すかもしれません。彼らの意見がきっと、新しいモダン環境の解明の糸口になることでしょう。
そして、晴れる屋トーナメントセンターでは7月20日(土)に第14期モダン神挑戦者決定戦が行われます!新たな環境で新たな神を目指して、ぜひご参加ください!