プレイヤーインタビュー: 篠原 厳 -カードパワーを落とさないで自分の色を出すことが大事-

晴れる屋

By Atsushi Ito

 晴れる屋ポイントランキングの月間上位5名もしくは年間上位50名に入ったプレイヤーしか出場することしかできない、精鋭揃いの横綱選抜バトル。先週のスタンダードに続き、今日はモダンでの開催となった。

 平日なら3-0、休日ならトップ8の常連であろう42名の強豪たち。そしてその中でも栄えある年間ランキング1位のプレイヤーが、知る人ぞ知る異才のデッキビルダー・篠原 厳 (東京)だ。

 モダン環境で斬新なアイデアを発信し続ける篠原のデッキはどのようにして生まれるのか、話を伺ってみた。

最初はネタデッキばかり組んでいました

--「篠原さんはどういったきっかけでマジックを始められたんでしょうか?」

篠原「最初は違うカードゲームをやっていたんですが、『ニクスへの旅』が出たころ、既にマジックをやっていた知り合いから『青単信心』を丸ごと買い受けたのが始まりですね。なのでマジック歴はまだ3年弱といったところです」

--「いつごろからオリジナルデッキを作り始めたんでしょうか?」

篠原「モダンに参入したばかりのときにコントロールデッキが使いたいと思ったんですが、ただ色々モダンのデッキを調べた結果、やっぱり打消し呪文の弱さが際立つなー、《対抗呪文》使えないんかー!ってなったんですよね。それで、《禁忌の錬金術》《堀葬の儀式》があるし、昔のスタンダードにあった『太陽拳』みたいなコンセプトをモダンでできないかな、と頑張って作ったのが初めてのオリジナルデッキだったと思います」

禁忌の錬金術知識の渇望堀葬の儀式

--「そのデッキは成績としてはどうだったんでしょうか?」

篠原全然ダメでしたね。今思えばモダンの墓地対策の厚さをわかっていませんでした。《大祖始の遺産》とか《外科的摘出》とかやられまくりました(笑)」

--「はじめからデッキ構築がうまくいっていたわけではないんですね」

篠原「そうですね、最初はネタデッキばかり組んでいました。それからは青系のコントロールを中心に組むようになって、《残酷な根本原理》と、あとは《ボーラスの工作員、テゼレット》をよく使いましたね」

残酷な根本原理ボーラスの工作員、テゼレット

--「《ボーラスの工作員、テゼレット》は最近もよく使われていますよね」

篠原「まあやっぱり今も昔も使いたいカードを使うのがほとんどですね。ロマンカードにせよ強いカードにせよ、1枚のカードに焦点を当てつつ、どうにかしてデッキをモダンのレベルに引き上げられないか試行錯誤してやっているので。それもあって、晴れる屋のデッキ検索でモダンで『Shinohara Gen』で検索すると色々と黒歴史が出てきます(笑)」

カードパワーを落とさないで自分の色を出すことが大事

--「篠原さんはモダン以外のフォーマットはプレイされていないんでしょうか?」

篠原「そうですね、今のところ基本的にはモダン専です。というのも、モダンは一番遊びながら勝てるフォーマットなんですよね。スタンダードは相手の出してくる《サヒーリ・ライ》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》といった相手のプレインズウォーカーを跳ね返す解答を用意しつつ勝つ必要があるので、オリジナルデッキを作ろうにも制約が強いですし、レガシーもオリジナリティを出す分には簡単ですが、勝つのはかなり難しいです。その点モダンは全部に勝とうとせずにある程度割り切れば、オリジナルで勝つのもそう難しくはないですね」

--「モダンで新しいデッキを作って勝つためには、どういったことが大事になってくるでしょうか?」

篠原切るべきところは切って見るべきところは見る、要はメタ読みですね。メタさえ読んでいれば、どんなカードでも使えるフォーマットだと思います」

--「見るべきところとは、具体的にどういうことでしょうか?」

篠原「いわゆるTier1のデッキですよね。その大会によくいるデッキは、遭遇率からしてチェックする必要があります。10回あって3回当たるデッキがあるとすればモダンでは多い方なので、そういうデッキ相手には負けないようにしないといけない。そしてそのためには、強いサイドボードを採ることが大事ですね。グリクシスカラーだったら、《仕組まれた爆薬》《滅び》《神々の憤怒》《外科的摘出》《大祖始の遺産》など、そういうカードをしっかりとっていれば、全然戦えないというようなことはないはずです。それからメインボードに関して言えば、コンセプトブレイクせずにカードパワーを落とさないで自分の色を出すことが大事だと思います。58枚をしっかり組んでいれば2枚は遊べる、というイメージですね」

--「ものすごく色々なことを考えてデッキ構築されてるんですね」

併合死の雲

篠原「いや、でも毎回うまくいくわけではないです。一番ひどかったのが2日連続0-9した『アネックスデスクラウド』で、トロンが憎すぎてトロンだけを殺そうと思って《併合》《死の雲》でメタメタにするデッキを持ち込んだら1回も当たらないという(笑)」

--「最近では『ゴンティ忍者』が快作だったと思うんですが、あれはダメだったんでしょうか?」

豪華の王、ゴンティ深き刻の忍者

篠原「面白いデッキだったんですが、動きがもっさりしすぎていて、初手にマナクリ引かないと手札が3マナと4マナばっかりになっちゃうんですよね。それでも、暇つぶしで使う分には楽しいですよ。『アドグレイス』相手に《豪華の王、ゴンティ》《天使の嗜み》パクって勝てたりします(笑)」

--「そういえば『ニクスへの旅』から始められた割には、《対抗呪文》とか《併合》とか古いカードも良くご存じですね」

篠原「わからん殺しはしたいけどわからん殺しをされたくなかったので、一時期暇してたときにモダンのカードについて片っ端からMTG Wikiを読んでたんですよね(笑) それでモダンで使用に耐えうるカードはひととおり覚えました。おかげで『絶対このカード/コンボ覚えてるやついないだろ』みたいなのをデッキに仕込んで、よく効果を聞かれたりしますね」

やるからにはてっぺんを獲りたい

--「今後の目標がもしあれば教えてください」

篠原「やはり来月モダンの国内グランプリがあるということで、そこで勝ってチームとして箔を付けたいですね」

--「篠原さんが所属しているという『ミギノテ☆ソリューション』というのは時折耳にする名前ですが、どういったチームなんでしょうか?」

篠原「元々は僕が移ってきた元のカードゲームで結成されたチームで、それが形に残るものとしてカードゲームをやりたいということでマジックを始めたんです。要は自己顕示欲ですね(笑) 始めのうちは高田馬場でモダンやっておいしいご飯食べようというノリだったんですが、最近では競技マジックにも関心を持ってきていて、メンバーも増えて今では関東支部、関西支部、名古屋支部まであります」

--「では、今後カバレージなどで見かける機会も増えるかもしれませんね」

篠原「そうですね。みんなでワイワイ集まってフリーで遊ぶのも楽しいですが、やっぱりやるからにはてっぺんを獲りたいじゃないですか。その上で、自分の色を出して勝てたらなおさら嬉しいですね」

--「ありがとうございました」


 深いモダン知識とカードパワーを疎かにしないデッキ構築こそが、斬新なだけでなく勝てる新デッキを作り出す鍵となる。

 グランプリをはじめ、今後の篠原の活躍に注目だ。

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