みなさんこんにちは。
『基本セット2020』がリリースされて2週間が経ちますが、新環境のスタンダードを楽しんでいますか?
今回の連載ではSCGO Worcester、SCGO Philadelphia、グランプリ・デンバー2019の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Worcester
新環境に強いMono Red
2019年7月13-14日
- 1位 Mono Red
- 2位 Mono Blue
- 3位 Temur Elemental
- 4位 Orzhov Vampire
- 5位 Orzhov Vampire
- 6位 Bant Ramp
- 7位 Boros Feather
- 8位 Esper Hero
Aaron Barich
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『基本セット2020』リリース直後に開催された本大会を制したのは、Mono Redでした。
他のデッキには新戦力を獲得したOrzhov VampireやBoros Featherが結果を残していました。
Esper Heroはそこまで恩恵を受けなかったようですが、旧環境のトップメタということもあり安定した成績を残していました。
SCGO Worcester デッキ紹介
「Mono Red」「Temur Elemental」
Mono Red
-土地 (20)- 4 《ギトゥの溶岩走り》
4 《狂信的扇動者》
4 《遁走する蒸気族》
4 《燃えさし運び》
4 《ゴブリンの鎖回し》
4 《チャンドラの吐火》
-クリーチャー (24)-
以前から上位でよく見られたMono Redは、新環境に入り苦手なマッチアップだったEsper Heroが数を減らし、Simic NexusやVampireなどがメタゲームの中心になったことで、極端に相性の悪いデッキが少なかったのが勝因です。
『基本セット2020』からも少数ですが、強力な色対策スペルの《丸焼き》を含めた新戦力を獲得しておりさらに強化されています。
☆注目ポイント
今大会で見事に優勝を果たしたAaron Barich選手のリストは、従来の《実験の狂乱》や《炎の職工、チャンドラ》を多数メインから採用した構成ではなく、1-3マナ域のクリーチャーと火力が中心で全体的に軽めの構成になっています。
《チャンドラの吐火》は火力スペルや《狂信的扇動者》、《ゴブリンの鎖回し》、《燃えさし運び》などダメージを与える能力を持つクリーチャーが多いので、7点以上のダメージを狙って叩き出すことが可能です。
《炎の侍祭、チャンドラ》は[+0]能力で継続的に攻め手を用意することができます。もうひとつの[+0]能力では、《無頼な扇動者、ティボルト》の忠誠値も一緒に上げることが可能で、3マナなので《灯の燼滅》で処理されることもありません。[-2]能力は火力を使いまわすことができ、速やかに相手のライフを削りきれます。
《丸焼き》は、《大嵐のジン》、《贖いし者、フェザー》、《時を解す者、テフェリー》、《ドミナリアの英雄、テフェリー》、《黎明をもたらす者ライラ》などフィニッシャー級のクリーチャーやプレインズウォーカーをカウンターされる心配なく処理できる強力なスペルです。EsperやMono Blueとのサイド後の相性改善に貢献しています。
Temur Elemental
1 《森》
4 《繁殖池》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《蒸気孔》
4 《根縛りの岩山》
3 《内陸の湾港》
2 《神秘の神殿》
-土地 (24)- 4 《枝葉族のドルイド》
4 《這い絡む火跡》
2 《はびこる精霊》
4 《発現する浅瀬》
2 《生ける竜巻》
4 《乱動の座、オムナス》
3 《茨の騎兵》
-クリーチャー (23)-
エレメンタルクリーチャーのシナジーを活用したミッドレンジ。《発現する浅瀬》や《乱動の座、オムナス》といった単体でも十分な性能のクリーチャーがいるので、エレメンタルクリーチャーの部族に寄せる必要はそれほどなく、プレインズウォーカーや《培養ドルイド》、《ハイドロイド混成体》、《集団強制》といった各色から強力なカードを集めたグッドスタッフに仕上がっています。
マナクリーチャーが多数搭載されているので《ハイドロイド混成体》によって多大なアドバンテージを獲得できます。《世界を揺るがす者、ニッサ》に加えて、新たに《目覚めた猛火、チャンドラ》も加わりました。《目覚めた猛火、チャンドラ》は打ち消されないためコントロールとのマッチアップで活躍し、全体火力能力もあるのでクリーチャーデッキに対しても使えるプレインズウォーカーです。
《発現する浅瀬》と《乱動の座、オムナス》によってアドバンテージを稼ぐ手段が豊富で、デッキパワーが高くMono RedやMono Blueなど単色のアグロデッキには強いデッキですが、相手のゲームプランに干渉する手段に貧しいのでSimic Nexusなどを苦手とします。
☆注目ポイント
プレビュー段階から話題となっていた《発現する浅瀬》は、期待通り緑系のミッドレンジの主力として活躍しています。場に出ただけで確実にアドバンテージを獲得することができ、除去されずに生き残ればさらにアドバンテージを稼ぎ続けることができるので、相手にとっては非常に厄介なクリーチャーとなります。
《茨の騎兵》は到達持ちでタフネス6と固くブロッカーとしても優秀です。場に出たときと死亡したとき両方の能力でアドバンテージを稼げるのが魅力で、土地を伸ばす能力も《乱動の座、オムナス》で追加のドローができるようになるシナジーがあります。
『基本セット2020』は優秀なサイドボードカードが多く収録されているセットです。《紺碧のドレイク》はMono Redとのマッチアップで除去されにくいブロッカーとして機能するだけでなく、直接火力対策にもなります。《霊気の疾風》はMono Red、Boros Feather、Simic Flash、Simic Nexusなど多くのマッチアップで使えるスペルで、今後もサイドボードのレギュラーとして活躍することが予想されます。《夏の帳》は打ち消しを多用するMono BlueやSimic Flash以外でも、ハンデスや単体除去に対しても疑似的なカウンターのように機能するのでEsperに対してもサイドインできます。
SCGO Philadelphia
新環境を踏み鳴らす恐竜
2019年7月20-21日
- 1位 Jund Dinosaur
- 2位 Boros Feather
- 3位 Simic Nexus
- 4位 Bant Scapeshift
- 5位 Bant Scapeshift
- 6位 Esper Hero
- 7位 Orzhov Vampire
- 8位 Jund Dinosaur
Baumeister / Soorani / Ingram
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チーム戦で競われたSCGO Philadelphiaは、SCGO Worcesterから一週間という短い期間でしたがメタゲームに大きな動きが見られました。
対策が厳しかったのか単色のアグロデッキは上位に少数で、Esper HeroやJund Dinosaurを選択したチームが勝ち残っていました。
SCGO Philadelphia デッキ紹介
Jund Dinosaur
4 《草むした墓》
3 《血の墓所》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《手付かずの領土》
4 《根縛りの岩山》
2 《森林の墓地》
1 《竜髑髏の山頂》
-土地 (24)- 4 《無法の猛竜》
4 《オテペクの猟匠》
1 《大物群れの操り手》
4 《朽ちゆくレギサウルス》
4 《変容するケラトプス》
4 《切り裂き顎の猛竜》
3 《レギサウルスの頭目》
3 《原初の飢え、ガルタ》
-クリーチャー (27)-
《原初の飢え、ガルタ》や《レギサウルスの頭目》といった恐竜クリーチャーを軸にしたデッキは旧環境でも見られましたが、『基本セット2020』から3マナ7/6という規格外のマナレシオを持つ《朽ちゆくレギサウルス》を獲得したことにより、黒をタッチしたバージョンが主流になっています。
ほかにも《無法の猛竜》や《変容するケラトプス》といった新戦力にも恵まれ、一気にトップメタの仲間入りを果たしました。
☆注目ポイント
《大物群れの操り手》や《オテペクの猟匠》、《無法の猛竜》を利用することによって恐竜クリーチャーを速い段階から展開してプレッシャーをかけていきます。《無法の猛竜》はダメージを受ける度にドローできる《切り裂き顎の猛竜》とシナジーがあります。
《朽ちゆくレギサウルス》は3マナパワー7という強力なクリーチャーですが、回避能力を持たないので《凶暴な踏みつけ》でブロッカーを排除したり、《争闘/壮大》でトランプルを付けるなどしてサポートしていきます。
《変容するケラトプス》はプロテクション(青)で打ち消されない能力により、Mono BlueやSimic Flashとのマッチアップでは攻守に渡って活躍します。プロテクション(青)を持つということは《時を解す者、テフェリー》のバウンス能力にも耐性があり、速攻も付けられるのでプレインズウォーカーに対してプレッシャーをかけやすくなります。
《炎の一掃》はタフネス3以上のクリーチャーが主力のこのデッキには大きな被害がなく、大抵は一方的な全体除去として機能します。単色アグロのほかにもグランプリ・デンバー2019の上位を支配した《風景の変容》デッキのゾンビトークン対策にもなります。
グランプリ・デンバー2019
スタンダードでも大活躍の《風景の変容》
2019年7月19-21日
- 1位 Bant Scapeshift
- 2位 Simic Nexus
- 3位 Bant Scapeshift
- 4位 Orzhov Vampire
- 5位 Bant Scapeshift
- 6位 Feather Aggro
- 7位 Jeskai Superfriends
- 8位 Bant Scapeshift
Luis Scott-Vargas
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『基本セット2020』から登場した《死者の原野》によって実現するに至ったスタンダード版の土地コンボ。今大会では優勝も含めてプレイオフに半数と大ブレイクを果たしました。
ほかにはSimic Nexus、Vampire、Feather Aggro など『基本セット2020』からの新カードの恩恵を受けたデッキが中心でSCGO Worcesterで活躍していた単色のアグロは上位では見られませんでした。
グランプリ・デンバー2019 デッキ紹介
Bant Scapeshift
序盤は土地を伸ばしていき、土地が8枚以上場にある状態で《風景の変容》が通れば、返しのターンにゾンビ軍団を処理されない限りゲームを決めることができます。スイーパーを持たれていたとしても土地をプレイする度にゾンビトークンが出るので、相手にとっても対策するのは容易ではありません。
デッキのほとんどのカードがランプスペルやマナ加速、コンボパーツで占められているため動きにあまり干渉できないSimic Nexusなどは苦手なマッチとなります。
☆注目ポイント
《迂回路》はこのデッキの主要なランプスペルです。序盤は土地を伸ばす役割を果たし、中盤以降は《死者の原野》の誘発に貢献します。《エルフの再生者》はこのデッキの土地サーチカードの中でもキーカードである《死者の原野》も探せます。
マナが大量に出るデッキなので追加の勝ち手段として《ハイドロイド混成体》は最高の選択肢となります。アドバンテージを取りつつライフも回復できるので、《風景の変容》をキャストするまでの猶予も確保することができます。
《時を解す者、テフェリー》の能力により、打ち消しや《炎の一掃》のようなカードを気にする必要がなく、相手のエンド時に《風景の変容》をキャストして勝負を決めることができます。《荒野の再生》も無力化することができるため、苦手なSimic Nexusとのマッチアップも有利とまではいかないものの相性が多少改善されています。
今大会を見事に制したLuis Scott-Vargas選手のリストは、同型対策としてメインに《廃墟の地》、サイドには《廃墟の地》を再利用する《世界のるつぼ》が採用されています。《廃墟の地》は同型戦以外でも、Simic Nexusの数少ない《時を解す者、テフェリー》対策カードである《爆発域》を割ったり、基本地形が少ない多色ミッドレンジのマナ基盤を狙ったりと多くのマッチアップで活躍します。サイドの《拘留代理人》は、相手に先にコンボを決められてもゾンビトークンを一掃する手段になります。
総括
エレメンタルや吸血鬼、恐竜を始めとした優秀な部族クリーチャーと強力なサイドボードカード、そして短い期間ながら強力な土地コンボデッキを生み出した《死者の原野》など『基本セット2020』は環境に大きな影響を与えました。
あまり警戒されていなかったことも、Bant Scapeshiftが結果を残した理由のひとつなので、今後は対策が厳しくなることが予想されます。主な対策としては《夢を引き裂く者、アショク》や《漂流自我》が挙げられます。《夢を引き裂く者、アショク》は、《迂回路》などサーチスペルや《風景の変容》そのものを封じることができます。《漂流自我》は、《死者の原野》を追放することでBant Scapeshiftの主な勝ち手段を摘むことができます。しかし、Bant Scapeshift側もサイド後は《変容するケラトプス》など追加の勝ち手段を用意していることが多いので注意が必要です。
USA Standard Express vol.152は以上になります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!