スタンダード観点から見た『アモンケット』

Oliver Polak-Rottmann

Translated by Yoshihiko Ikawa

やあ!元気かい?『モダンマスターズ 2017年版』があちこちで話題になっていたり、記事にするほどでもないトーナメントに参加したりしていたから、久しぶりの記事となるね。私はこの環境のフォーマットを十分楽しんだ、君もきっとそうだろう。 てなわけで、次はもうすぐ発売される『アモンケット』について話そうじゃないか。

私がこの記事を書いているのはプレリリースの一週間前–カードリストが全部公開される前–ではあるが、すでにキーワード能力や神話レアといった注目すべき点はすべて公開されている。そこで、それらについて詳しくみていこうと思う。『アモンケット』には古いメカニックと新しいメカニックがフィーチャーされているが、どちらも私の好きなメカニックなのだ。

サイクリング

個人的には、この能力が一番好きな能力なんだ。なぜなら「サイクリング」は、マナスクリュー/マナフラッド両方に対して受けがあり、マジックというゲームをより面白いものにしてくれるからだ。また、有用なカードを「サイクリング」するかどうか温存しておくかといった決断には熟練した技術が必要にもなる。

私が最初に「サイクリング」が帰ってくることを知ったとき、《誤算》の再録を強く望んだ。《誤算》が再録されれば、打ち消し呪文を楽しむことができただろう。最終的に《誤算》は帰ってこなかったようだが、その代わり多くの興味深い「サイクリング」カードが収録された。土地以外で、本当に私に印象づけた「サイクリング」カードを見ていこうじゃないか。

誤算検閲

《誤算》はなかったが、《検閲》というよく似たカードが登場した。打ち消し呪文としての機能はわずかに低下しているが、それでもなお最初の5-6ターンの間は有用だろう。しかも「サイクリング」コストが青マナ1つに減ったので、もし複数枚の《検閲》を手札に抱えているときは1枚を「サイクリング」によって新しいカードに変えることができる。そして相手はそれを見て2枚目をケアしながら動く羽目になるのだ。まだ1ゲームしかプレイしていないが、このように精神的トリックを仕掛けることができるのが、既に私がこの《検閲》というカードの大ファンである理由だ。

秘法の管理者

続いて紹介する《秘法の管理者》は、私は優れたカードだと考えているが、まだ過小評価されている1枚だ。4/4飛行クリーチャーはそれだけでコストパフォーマンスが良いのに、その上不要なタイミングでさえ「サイクリング」があるので良いカードであり続けている。新しいカードの大半が《奔流の機械巨人》とあまり相性が良くないのもあり、このカードはいくつかのコントロールデッキで使われるだろうと予想している。《致命的な一押し》のことを考えるとマナコストは1マナ重い(3)(青)(青)だった方が良かったかもしれないが、それでもきっと十分なほどトーナメントシーンで見かけることになるだろう。

新たな信仰

その昔私をときめかせた《新たな信仰》が帰ってきた!《新たな信仰》は良いカードでありつつも、とてもフェアに見える。

「サイクリング」の多くが青いカードではあるが、他の色のカードにも構築フォーマットで使用されるであろうカードが十分に収録されている。

シェフェトのオオトカゲ

《シェフェトのオオトカゲ》は青でない優秀な「サイクリング」カードのうちの1枚だ。カウンター不可の4マナで1枚カードを引きつつ戦場に土地を出すというだけでも強いのに、ときには構築でも6マナ6/5クリーチャーとしてゲームを終わらせてくれる。

造反者の解放

もう1枚は、一瞥しただけではその価値が分かりづらい《造反者の解放》だ。旧環境では、4色サヒーリ以外のすべてのデッキに有効な対象が採用されていたため、《自然廃退》がメインボードから採用していた。《造反者の解放》は基本的に《自然廃退》同じ効果である上に、必要ない場合は「サイクリング」して他のカードに変えることができる、《自然廃退》の完全なアップデート版といえるだろう。

最後に、私が一番好きなカード、《排斥》の出番だ。

排斥

《英雄の破滅》がスタンダードを去ってからクリーチャー/プレインズウォーカー問題を解決してくれるカードが不足していたが、ついにインスタントタイミングでプレイできる《忘却の輪》が登場した。初見では少し重すぎるカードに見えるかもしれまないが、とてもバランスの良いカードであり、今後よく見ることになるだろう。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《電招の塔》《屑鉄場のたかり屋》、そして相手の《排斥》を除去できるからな。

除去であり《タルモゴイフ》のサイズアップや「昂揚」にも寄与するので、私はこの《排斥》モダンの《死の影》デッキのいくつかのタイプで使われるのではないかとすら思っているんだ。

タルモゴイフウルヴェンワルド横断

みんなが思っている通り、モダンにおいて4マナは重いが、1-2枚はデッキに入れるかもしれない。レガシーの奇跡コントロールですら、《相殺》のために4マナの呪文を増やしたいなら、腐らない万能除去として1枚採用する可能性があるだろう。(※編注:この記事の原文は4/19に公開されました)

相殺

余波

「分割カード」が帰ってきたが、今回のデザインはとても興味深く、かつ評価するのはなかなか難しそうだ。もし自分自身でライブラリーを削ったり手札を捨てたりできるなら「フラッシュバック」呪文のようにプレイできるし、そうでないなら手札からプレイした後に第二の矢として唱えることになる。個人的には《貧窮+裕福》のデザインが一番好きだが、それでも特別壊れてると思う人はいないんじゃないかな。

貧窮+裕福

不朽

これは『アモンケット』の新キーワード能力の一つだ。「頑強」や「蘇生」と似ているが、わずかに違った方法で戦場に帰ってくる。リミテッドにおいては自動的にクリーチャーの枚数を水増ししてくれるのでとても面白く、構築においてはまだ良い使い方を見出せていないが、それでも自分のライブラリーを削ったり、リアニメイトする戦略は常に注目されることだろう。

ナクタムンの侍臣、テムメト

督励

『アモンケット』の2つめの新キーワード能力であるこの「督励」は、間違いなくリミテッドと構築の両方に大きな影響を与えるだろう。素晴らしいカードがすでにたくさん登場しているが、中でも私が一番注目しているのは、場に出て即座に相手の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を退場させることができる《栄光をもたらすもの》だ。これは《嵐の息吹のドラゴン》《火炎舌のカヴー》という、過去のスタンダードで活躍した2種類のカードを足したような能力になっている。

嵐の息吹のドラゴン栄光をもたらすもの火炎舌のカヴー

「督励」のカードはどれもマナレシオとしてはそれなりだが、構築においても1ゲームに1度は「督励」できて、より高いパフォーマンスを発揮するんじゃないかと思っている。「督励」を使うのにマナを必要としないのは、神々の世界の素晴らしさを体現しているね。

神についての話をしよう。『アモンケット』には新しい神によって祝福されているが、『テーロス』の神とは大きな違いがある。まず1つめに、『アモンケット』の神はエンチャントではない。そして2つめに、『アモンケット』の神は常にクリーチャーである。『テーロス』の神にも当てはまった除去呪文に加えて、「常時クリーチャーである」ことによって少し対処されやすくなっている。《排斥》に加えて《石の宣告》ですぐに神を退場させることができるのである。

彼らはまた、攻撃/ブロックに参加するために重要な条件を持っている。《熱烈の神ハゾレト》については、Pros仲間であるピエール・ダジョンがすでに記事で書いているので、再度話すなんて野暮なことはやめておこう。《信義の神オケチラ》《栄光の神バントゥ》はあまり使えるとは思えなかったが、《周到の神ケフネト》《不屈の神ロナス》には可能性を感じたんだ!

周到の神ケフネト不屈の神ロナス

《周到の神ケフネト》は古典的な構築向けのカードだが、かなり強いように見える。まず最初に《熱病の幻視》と一緒に使うことを考えた。コントロールデッキでカードアドバンテージ源になり、最終的にはゲームを終わらせてくれるのだ。土地を戻すことが「強制」ではないこの《周到の神ケフネト》のデザインは好きだね。良いプレイを生み出してくれそうだ。

このように《周到の神ケフネト》はあらかじめ準備が必要だが、《不屈の神ロナス》はそんな必要はなく、瞬く間にアクティブになってくれる。カードパワーも能力も、『テーロス』の神と非常に近い唯一の神である。《狩猟の神、ナイレア》は強大なカードだったが、《不屈の神ロナス》もとても速くて除去りづらい、強力な棍棒なのだ。私は《不屈の神ロナス》が将来とても使われるであろうと期待している。

プレインズウォーカー

次はどれも超強くみえるプレインズウォーカーたちの番だな。《自然に仕える者、ニッサ》は特に注目の1枚なんだ。

自然に仕える者、ニッサ

最初に《自然に仕える者、ニッサ》を見たときはとてもとまどったよ。なんせマナコストに「X」を含む初めてのプレインズウォーカーであり、コストを変えるとその効果も変動するから、評価するのが難しいからな。スタンダードで最もプレイされるであろう「X=1」で考えていこう。

次のターンまで盤面に残るかどうか賭けなければならない点が、このカードのデザインをちょうどいいものにしている。もし《自然に仕える者、ニッサ》が次のターンも生きていると思うなら、「+2=占術2」で土地を2番目に置けるからだ。そうすれば、欲しい呪文と土地が占術2で見えたときに、両方をトップにキープしつつ次のターンに土地加速ができる。もしデッキのトップを知らなければ、《自然に仕える者、ニッサ》の「0」能力はあまり良いものといえないだろう。

そして凄いのはここからだ。もし《自然に仕える者、ニッサ》を3ターン目に出した場合、出したターン以外は毎回「0」能力を起動した方がメリットがあるので、最終的にその《自然に仕える者、ニッサ》では「-6」を使うことはないだろう。しかしときには遅いターンに《自然に仕える者、ニッサ》を唱えて即座に「-8」をすることにより、対戦相手を一瞬で倒すことができる。8マナでの《火の玉》10点は、リミテッドと構築の両方でとても素晴らしいものだ。

奥義でどこからともなく負けてしまうのは悲痛に違いないので、《自然に仕える者、ニッサ》の可能性は非常に幅広いので、対戦する側ではなく自分が使う側に回りたいと考えている。マジックにおいて初の「Xマナ」を含むプレインズウォーカーが活躍するか見届けようじゃないか。

ニコル・ボーラスが『アモンケット』の3番目のプレインズウォーカーだと予想していたが、彼が来るのは次のセットまで待たなければならないようだ。

死の権威、リリアナ

その代わりに、新しいリリアナを手に入れた。この《死の権威、リリアナ》は高い忠誠度で戦場に降り立ち、毎ターントークンを生み出すことで自身を守ることができ、そしてそのトークンやリアニメイトしたクリーチャーにより勝利することができる。これらに加えて、戦場に出てから2ターン後には生み出したゾンビ・トークンだけを残して《神の怒り》を放つことができるので、対処するのは非常に困難だろう。《試練に臨むギデオン》《自然に仕える者、ニッサ》だけでなく、この《死の権威、リリアナ》もすぐ採用されることだろう。いくつかのデッキでは、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》が担っていたポジションを彼女が奪うことになると思われる。

デッキリスト

「サイクリング」カードでこの記事を始めたので、まずは「サイクリング」デッキがどのようなものになるかサンプルデッキをお届けしよう。もちろんこれは大まかな草案ではあるが、それでもこの戦略が有効であることが分かるだろう。


オリヴィエ・ポラック=ロットマン – 白青サイクリング
『アモンケット』入りスタンダード

6 《島》
5 《平地》
4 《大草原の川》
4 《灌漑農地》
2 《異臭の池》
2 《まばらな木立ち》
4 《港町》

-土地 (27)-

4 《秘法の管理者》

-クリーチャー (4)-
4 《検閲》
4 《新たな信仰》
3 《否認》
3 《明日からの引き寄せ》
2 《不許可》
3 《燻蒸》
4 《ドレイクの安息地》
2 《停滞の罠》
4 《排斥》

-呪文 (29)-
hareruya

もう1つの有効な「サイクリング」戦略は、スゥルタイ昂揚だ。


オリヴィエ・ポラック=ロットマン – スゥルタイ昂揚
『アモンケット』入りスタンダード

3 《沼》
2 《島》
1 《森》
4 《異臭の池》
2 《窪み渓谷》
4 《進化する未開地》
4 《花盛りの湿地》
2 《植物の聖域》
2 《伐採地の滝》

-土地 (24)-

3 《歩行バリスタ》
1 《不屈の追跡者》
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
3 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー (9)-
4 《ウルヴェンワルド横断》
4 《致命的な一押し》
4 《検閲》
3 《闇の掌握》
2 《過去との取り組み》
2 《明日からの引き寄せ》
2 《不許可》
1 《餌食》
1 《発生の器》
3 《自然に仕える者、ニッサ》
1 《死の権威、リリアナ》

-呪文 (27)-
hareruya

今日はここまで。この記事を楽しんでくれたかな?2週間後にはリミテッドの分析記事を書くから、楽しみに待っていてくれ。それではプレリリーストーナメントを楽しんでくれ!

Oliver

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