決勝:野瀬 恒二(青緑タッチ赤) vs. 林 眞右(青白)
晴れる屋メディアチーム
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By Tsutomu Date
第7期リミテッド東海王決定戦は、発売直後の『基本セット2020』を用いたシールド6回戦とTOP8によるブースタードラフト3回戦で行われた。リミテッド巧者たちが未知なる荒野で鎬を削る本大会、いよいよ頂上決戦に臨むプレイヤーを紹介しよう。
東海王の座をかけた最後の戦いに挑む一人は、東海で「古豪」という呼び名が最も似合うプレイヤー、野瀬 恒二。
古くは岡本 尋や大塚 高太郎、塩津 龍馬たちのレジェンドとともに、東海の競技マジックに君臨し今なお現役。経験に裏付けられたその実力は、多くのプレイヤーの尊敬を集める。東海最強の一人と言っていいだろう。
一方の林 眞右。プレイヤーとしては若手の印象だが、少年期からの経歴には天賦の才を感じさせる。
グランプリ香港2001では(当時)史上最年少の13歳にしてトップ8に進出。さらに3年後のグランプリ岡山2004でもトップ8進出と実績は野瀬に負けていない。 一時期マジックからは離れていたが、復帰後まもなく権利を獲得したプロツアー『破滅の刻』2017でブロンズプロとなり、『Hareruya Hopes』に加わったのは記憶に新しい。
競技マジックでの実績のみならず動画配信についても精力的で、TwitchにてMTGアリーナのプレイ配信も行っている。
特に『基本セット2020』のシールド戦の解説動画は視聴者からの評価が高く、本大会へ臨む上で参考としたプレイヤーも多いのではないだろうか。
本環境とドラフトで構築したデッキについて、両プレイヤーに尋ねてみると、以下のように答えてくれた。
野瀬「(この環境の速度については)割と速いと思っています。ピックは《新米紅蓮術師、チャンドラ》から入って、《溶岩族の喧嘩屋》、《北方の精霊》とピックして青赤のエレメンタルデッキを目指していましたが、上家が赤をやっていたようだったので、2パック目の初手の《変容するケラトプス》から緑も選択肢に入れました。その後、緑もある程度取れたので3色目を青にしようと思っていたのですが、《地下牢の霊》も取れたので青緑メインになりました。先ほど言った通り速い環境というのはわかっていたので、本当は多色にはしたくありませんでしたが」
林「ドラフトは青白をやりたいです。カード同士のギミックが多いので、対戦相手が警戒してミスプレイすることが多いのも大きいですね。(この環境は)シールドとドラフトではカードの評価が大きく違い、特に白はシールドよりもドラフトで強い色です。また前のラウンドではサイド後にカウンター2枚から《大襞海蛇》をプレイするムーブができて勝つことができました。サイドボーディングでそういったことができるかが重要ですね。ちなみに《大襞海蛇》は評価高いです。火力では焼けないですし、《シルバーバックの巫師》を止められますし、プレインズウォーカーにも直接攻撃することができます」
いずれも多くのプレミアイベントの実績を持つ、まさにトップクラスのプレイヤー同士が相まみえた決勝戦。東海王の座はどちらに。
両者ともに初手の7枚をキープ。
スイスラウンド上位の野瀬は先手を取っており、3色のマナベースがサポートされた下記の7枚を初手とした。
後手の林は以下の7枚。 3枚目以降の土地を引きこむことができれば、理想的な動きが期待できそうだ。
野瀬が《神秘の神殿》から、2ターン目に《森林の勇者》をプレイする幕開け。林も《ムーアランドの審問官》で返す。互いにスムーズな序盤の展開だ。
しかし野瀬の3ターン目のムーブは《山》から《報復のワンド》を設置して攻撃するのみで、色マナは確保できているが後続のクリーチャーを呼ぶことができない。
一方の林は《ムーアランドの審問官》でアタックし、後続として《不動の哨兵》を追加する。
土地をフルタップしている林に対して、野瀬は《森林の勇者》でアタック。《不動の哨兵》でブロックされたことを受け《混迷》をプレイして一方的に討ち取ることに成功するが、追加のドローをもってしても4枚目の土地を展開することができない。
林は3/3となった《ムーアランドの審問官》でアタックしつつ、2体目となる《不動の哨兵》を呼び出す。
3/3の《ムーアランドの審問官》と3/2の《不動の哨兵》が立ちはだかる盤面に対し、少なくとも盤面を拮抗状態にしたい野瀬だが、なおも土地を引くことができず、苦渋の表情を浮かべる。
芳しくない状況に追い込まれている野瀬に対し、悠々と攻撃を続ける林。《不動の哨兵》こそ相打ちを取られるが、その能力で《ムーアランドの審問官》は3/3から4/4に成長する。
戦闘後にさらなるクリーチャーを追加し、ついに最後まで4枚目の土地を引けない野瀬を蹂躙した。
「土地引かんのは無理ですね……」とこぼす野瀬。
野瀬 0-1 林
野瀬は1マリガン後、下記の7枚でキープを宣言。
《破壊的穴掘り》をライブラリの底に送ってスタート。
対して林は下記の初手7枚を迷わずキープする。
互いに《島》を置き合う1ターン目だが、野瀬はファーストドローで2色目の土地である《森》を引き当てる。これで緑のカードも順調にプレイできる算段がついた形だ。
3ターン目には《島》から《網投げ蜘蛛》を展開し、タフネス2のクリーチャーが多い林のデッキに対抗する。そのまま野瀬は《小走り犬》を展開するが、4枚目の土地を引くことができない。
一方の林はというと2ターン目の《ムーアランドの審問官》、3ターン目こそ動きはないが、4ターン目には《鼓舞する隊長》を呼び出す。
またもや土地をプレイできない野瀬、3マナを立ててターンエンド。Game 1の嫌な流れを思い出させる。
ここぞと攻勢に出る林。《鼓舞する隊長》を戦闘に送り込む。そのアタックは野瀬の《網投げ蜘蛛》と《小走り犬》でダブルブロックされ、《混迷》を《鼓舞する隊長》を対象にキャストされる。
対応がなければ一方的に討ち取られてしまうが、林はこの流れを読んでいた。サイドインしていた《否認》をこれに合わせるファインプレイ!
林「いやこれどっちを倒そうかなぁ!?」
と贅沢な悩みの末、林はマナを縛ることを優先し《小走り犬》を倒すことを選択する。
野瀬、念願の4枚目の土地を引いてくるも、これは《岩だらけの高地》でタップイン。対する林は攻勢を続けつつ、更なる増援の《ムーアランドの審問官》を加える。
タップインを経由して念願の5マナ目を確保した野瀬は、《北方の精霊》で盤面を傾けにかかる。
林はというとターン終了時の《急報》でクリーチャーの頭数を増やしながら、自ターンで《大襞海蛇》を召喚し、面とサイズ双方で圧倒する構えだ。
野瀬も負けじと《北方の精霊》を呼び出し、2体の大型飛行クリーチャーを並べる。
押し気味だった林も、これには「おお…」と感嘆の声を漏らす。
ここで盤面を整理しておこう。
野瀬のコントロールするクリーチャー
林のコントロールするクリーチャー
林は《北方の精霊》のテキストを確認し、詰めの局面と見たかここまでの素早い判断とは対照的に長考に入る。
そしてその決断は、《心臓貫きの弓》のプレイから《鼓舞する隊長》にこれを装備、《大襞海蛇》と2体でのアタックだった。
《心臓貫きの弓》の1点は片方の《北方の精霊》に。そしてそのアタックは2体ともブロックされずに、野瀬にダメージを与えていく。
返ってきたターン、野瀬は《北方の精霊》でアタックしつつ《変容するケラトプス》をキャストしブロッカーに据える。これでライフは落ち込んでいるものの、地上を固めることができた。
しかし林は初手から持っていた《永遠の疎外》を《変容するケラトプス》に合わせると、全軍でアタック!
「パイロ(《炎の一掃》)持ってるなら撃ってください!」と求める林に対し、野瀬は対応することができない。
林 眞右は狙い通りの構築を成功させ、冴えわたるプレイスキルとともに東海王の座を獲得することに成功した。
野瀬 0-2 林
『第7期リミテッド東海王決定戦』、東海王の座を手に入れたのは、林 眞右!おめでとう!