メタゲームブレークダウン雑感

晴れる屋

By Atsushi Ito

 初日のスタンダードラウンドの途中、今回のプロツアーのメタゲームブレークダウンが公開された。

 「再びプロツアー『機体』になるのではないか」

 そんな危惧も感じられていたところだが、蓋を開けてみるとそこには、当然予想された通りの結果と、全く予想外の結果の2つが混在していたのだ。

スタンダードは新たな三つ巴へ

マルドゥ機体: 99人/378人 26.2%

キランの真意号ゼンディカーの同盟者、ギデオン無許可の分解

 事前の予想通り、環境の王者はトップメタを譲らなかった。

 とはいえ《守護フェリダー》の禁止を受け、他に有力なデッキがなかったことを考えると、これほど意識されることが明確だったプロツアーもなかったはずである。

 にもかかわらずフィールドのおよそ4分の1のプレイヤーがこのデッキを選択したのは、《グレムリン解放》《マグマのしぶき》《光輝の炎》といった一種類だけの対策カードでは絶対に打ち破ることのできないタフさを持ち合わせているからだろう。

ティムール霊気池の驚異: 74人/378人 19.6%

霊気池の驚異絶え間ない飢餓、ウラモグ織木師の組細工

 《守護フェリダー》なき今、機体に対抗できるコンボデッキの筆頭として人気を集めたのは、こちらも予想通りの《霊気池の驚異》だった。

 基本的なコンセプトは以前と変わらないが、脇を固めるカードとして《検閲》《造反者の解放》が加入している。

黒単ゾンビ: 63人/378人 16.7%

戦慄の放浪者無情な死者呪われた者の王

 そして『アモンケット』で生まれた新たなコンセプトとして、このプロツアーの台風の目となったのが黒単ゾンビである。


Zrayneking「黒単ゾンビ」
Competitive Standard League(5-0)

23 《沼》
2 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地 (25)-

4 《墓所破り》
4 《戦慄の放浪者》
4 《金属ミミック》
4 《無情な死者》
4 《戦墓の巨人》
4 《呪われた者の王》

-クリーチャー (24)-
4 《致命的な一押し》
4 《闇の救済》
3 《リリアナの支配》

-呪文 (11)-
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
4 《精神背信》
2 《闇の掌握》
2 《没収》
2 《不帰+回帰》
1 《集団的蛮行》
1 《リリアナの支配》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-サイドボード (15)-
hareruya


 《戦墓の巨人》《呪われた者の王》という2種の3マナ域により横並べと全体強化を行うほか、《ウェストヴェイルの修道院》《リリアナの支配》で長期戦の受けもある。

 単色ゆえのサイドボードの狭さは否めないものの、「機体」に効果的ではないために全体除去が減らされている現状、かなり良いポジションのデッキであることに間違いはなさそうだ。

雑感、さらなるアイデアも

 霊気池はスゥルタイやバントまで合わせると25%程度、ゾンビも白黒のバージョンを合わせれば20%程度まで上昇することを考えると、上記の三つ巴だけで全参加者の70%程度をも占める計算だ。

 ここまで極端なメタゲームとなった背景には、機体と霊気池の両方に勝てるデッキを作るのは極めて難しいという当たり前の事実があるように思われる。機体と霊気池の支配率は誰でも予想できたであろうことから、それら2つに勝てるデッキを持ち込むのが望ましいところ、現実にはどちらか片方にきちんと勝ち越すことさえなかなかに難しいからだ。

 そこへきて、プロツアーの一週間ほど前からマジック・オンライン上でにわかに勝ち始めた黒単ゾンビに多くのプレイヤーやプロコミュニティが飛びついたのは、無理からぬところだろう。

 これにとどまらず、残りの3割の中にも挑戦的なアイデアはいくつも見受けられている。

謎の石の儀式生類の侍臣栄光の神バントゥ

 たとえば一部のグループが持ち込んだ《謎の石の儀式》デッキ。全貌は不明だが、上手く回ったときのガチャガチャ感が楽しそうなコンセプトだ。

新たな視点葬送の影

 ”ゼウス”浅原 晃が原案の《新たな視点》コンボも7名が使用している。

 はたしてトップ8はどのような内訳となるのか、前環境から続投する機体と霊気池を、『アモンケット』からの新勢力たちは打ち破ることができるのか?

 2日目のスタンダードラウンドの結果を楽しみに待つとしよう。

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