USA Modern Express vol.2 -GP神戸迫る!荒れ狂うモダン環境-

Kenta Hiroki

 皆さんこんにちは。

 今月末には日本国内では久々のモダンのGPが神戸にて開催されます。モダンはアメリカではスタンダードよりも人気のあるフォーマットで、GPやSCGではもちろんのこと、ショップの開催するFNMといったローカルのイベントでも30以上の参加者を出すほどです。

 今回の連載ではSCG Classics Atlantaの入賞デッキを見ていきたいと思います。

SCG Classics Atlanta
~Ad Nauseamコンボが優勝~

4月30日

Doug Lambert
※画像はStarCityGames.comより引用させていただきました。


1位 Ad Nauseam
2位 Skred Red
3位 Burn
4位 Burn
5位 Elves
6位 Elves
7位 WR Prison
8位 Eldrazi Tron

トップ16のデッキリストは【こちら】


 スタンダードで開催されたSCGO Atlantaと併催して行われたイベントですが200人以上の参加者を出し、大きな盛り上がりを見せました。上位を見渡してみると環境のTier1とされているDeath’s shadowはトップ16にわずか一名で最近あまり見られなくなっていたBurnが復権してきています。

 今大会で優勝を飾ったのは最近モダンの代表的なコンボデッキとして度々上位で見られるようになってきているAd Nauseamでした。Eldrazi TronやGift Stormといった比較的最近のセットの恩恵を受けているデッキも見られます。

SCG Classics Atlanta デッキ紹介

「Burn」「Eldrazi Tron」「Jund Death's Shadow」「Gift Storm」
ゴブリンの先達僧院の速槍

 Burnは《ゴブリンの先達》《僧院の速槍》など軽い速攻持ちのクロックで攻めつつ、直接火力で相手のライフを攻めていきます。フェッチランドやショックランドなどライフをリソースとするデッキや戦略が環境に多いことからも有効な戦略の1つで、TronやScapeshiftなどの遅い土地コンボに特に強いデッキです。

 ライフを自ら減らしまくるDeath’s Shadowは一見すると相性の良いマッチアップに見えますが、ハンデスによる妨害やクリーチャーのサイズの差により厳しくなります。

☆注目ポイント

大歓楽の幻霊

 《大歓楽の幻霊》は速攻はないものの、軽いスペルを多用するデッキが多いモダンではほぼマスト除去となり最低でも2ダメージはほぼ確定です。

焼尽の猛火

 《焼尽の猛火》はクリーチャーを採用しないデッキが少ないモダンでは有効な火力で相手の厄介なクリーチャーを焼きつつ本体にもダメージがとおり、「上陸」させることによって1枚のカードで《稲妻》2枚分の働きをします。フェッチランドを多用するこのデッキでは条件を満たすことも容易です。

頭蓋割り

 《頭蓋割り》はこのデッキにとって致命的となり得るライフゲインを阻止しつつダメージを与える火力で、相手の《台所の嫌がらせ屋》《稲妻のらせん》にレスポンスして使うことが多くなります。

ボロスの魔除け

 《ボロスの魔除け》はこのデッキの火力の中で最も多くのダメージを与える火力で、インスタントスピードの4ダメージは相手の戦略に大きな影響を与えます。多くの場合は相手に4ダメージを与えますがコンボデッキなど相手の戦略や状況によっては《大歓楽の幻霊》を除去から守る手段としても使います。

流刑への道

 サイドの《流刑への道》《タルモゴイフ》《ワームとぐろエンジン》《死の影》《台所の嫌がらせ屋》といった火力では対処し難い高タフネスのクリーチャー対策で、《波使い》《コーの火歩き》といったプロテクション(赤)のクリーチャーに対して数少ない対処法となります。

血の手の炎

 《血の手の炎》は追加のライフゲイン対策で《ボロスの魔除け》と同様に4点のダメージは相手の計算を狂わせるには十分な数字です。

摩耗+損耗

 《摩耗+損耗》《神聖の力線》《虚空の杯》といった厄介な置物対策で、主に《頭蓋囲い》対策としてもカウントされます。

跳ね返す掌

 《跳ね返す掌》は構える必要がありますが、Death’s shadow、Bogles、Affinityなど1体のクリーチャーで大きなダメージを与えてくるデッキに対して決まれば一発逆転も不可能ではありません。

 デッキの動きに一貫性があり特に難しい所も少ないので、これからモダンを始めようと考えている方にもお勧めです

 昨年開催されたプロツアー『ゲートウォッチの誓い』で大暴れしたことも記憶に新しく、その後の環境も支配したEldrazi。マナ加速にもなり中盤以降はフィニッシャーをサーチする《ウギンの目》が禁止カードに指定されました。

ウギンの目

 これにより弱体化を余儀なくされましたが、新たなマナ加速として《貴族の教主》を加え、ミッドレンジ寄りのBant Eldraziが主力となりつつありました。無色のEldraziは、同様に《ウギンの目》の退場により打撃を受けていたTronとハイブリットすることで環境に留まり続けています。

☆注目ポイント

難題の予見者
 《難題の予見者》は相手のプランを妨害し4/4という無視できないクロックであり、Tronが苦手としたコンボデッキに対して特に有効なクリーチャーで、《エルドラージの寺院》による加速によって最速2ターン目に展開することが可能です。モダンの代表的な除去である《稲妻》1枚では死なず《突然の衰微》で処理されないのも強みです。

現実を砕くもの

 《現実を砕くもの》《難題の予見者》と同様に環境の多くの除去に耐性があり、《流刑への道》《終止》で除去するにも相手にカードを1枚捨てることを要求します。速攻、トランプル、5/5はゲームを終わらせるのには十分です。

終末を招くもの

 《終末を招くもの》のすべての能力はゲームを有利な方向に進めることを可能にします。6マナというコストもこのデッキなら軽い方でしょう。

歩行バリスタ

 新顔である《歩行バリスタ》はこのデッキが環境に存在する理由の1つで、序盤は《貴族の教主》といった小型のクリーチャーを除去する手段となり、Tronが揃う中盤以降はフィニッシャーとして活躍します。《バジリスクの首輪》との組み合わせはクリーチャーデッキをシャットアウトします。

全ては塵

 相手の戦場のみを更地にする《全ては塵》はこのデッキにとって最高のスイーパーで、このデッキならば最速で3ターン目にキャスト可能です

虚空の杯

 サイドの《虚空の杯》は多くのコンボデッキやBurn、1-2マナスペルの多いDeath’s shadowのアクションをかなりシャットアウトします。

外科的摘出

 《外科的摘出》は主にGrixis、Dredge、Abzan Company、Goryo’s Vengence、Gifts Stormなどの墓地をリソースとして使うデッキ対策として使われますが、土地コンボに対してもサイドインされます。

真髄の針漸増爆弾

 《真髄の針》《漸増爆弾》は多目的に使っていけるカードです。《漸増爆弾》《血染めの月》《罠の橋》といった置物対策になると同時にAffinity、Death’s shadowなど多くのクリーチャーデッキに対してサイドインされます。《真髄の針》《大爆発の魔道士》《ヴェールのリリアナ》《グリセルブランド》《忘却石》、各種プレインズウォーカーと、環境には指定先が多数存在するので、多くのマッチアップでサイドインされます。

 《死の影》を主力としたJundカラーのアグロコントロールです。一時期は環境を支配していましたが、除去の多いAbzanやハンデス対策にコンボの多くがサイドインしてくる《神聖の力線》、Eldraziなどがサイドインしてくる《虚空の杯》《タルモゴイフ》やDeliriumを無力化する《安らかなる眠り》、各種墓地対策、特殊地形に頼ったこのデッキにとって致命的となる《血染めの月》など環境には多くの対策が用意されており、人気はあるものの最近はそこまで高い勝率をあげておらず、環境の強いデッキの1つにとどまっています。

死の影

 しかしデッキパワーが高いことは変わらず、《死の影》のクロックにより土地コンボや各種コンボやBurnとの相性がミッドレンジのJundと比べると良くなっており、モダンの新しいJundの型として定着しています

☆注目ポイント

ミシュラのガラクタウルヴェンワルド横断タール火

 《ミシュラのガラクタ》《タール火》などにより「昂揚」の条件を満たしやすく、《ウルヴェンワルド横断》は1マナの《エラダムリーの呼び声》となり《死の影》《タルモゴイフ》をサーチします。強化スペルのように使っていける《ゴーア族の暴行者》が抜けて、コンボやミラーに強い《ヴェールのリリアナ》と、クリーチャーを墓地から戻す能力により消耗戦に強い《最後の望み、リリアナ》が両方メインから採用されています。

ティムールの激闘

 《ティムールの激闘》は各種コンボとのマッチアップでゲームを速やかに終わらせる手段となり、「獰猛」することでトランプルも付くのでチャンプブロックも許しません。

大爆発の魔道士

 サイドの《大爆発の魔道士》はTronやScapeshiftといった土地コンボ対策で、ミッドレンジのJundと比べると《死の影》というクロックの存在により土地破壊はより脅威となります。

未練ある魂イーオスのレインジャー

 サイド後は《未練ある魂》《イーオスのレインジャー》といった白いカードが投入され、消耗戦になりやすいミッドレンジやミラーに備えます。また、白をタッチするメリットとしてAffinityやLantern Controlに対して有効な《戦争の報い、禍汰奇》やStormといった1ターンに多数のスペルをキャストするコンボ対策になる《弁論の幻霊》といったカードにアクセス可能なことも挙げられます。

集団的蛮行

 追加のハンデスの《集団的蛮行》はBurnに対して特に有効なカードで、サイド後に注意する必要がある《跳ね返す掌》を落としつつ《大歓楽の幻霊》といったクリーチャーを除去していきます。

 マジック史上最も壊れたメカニックの1つと言っても過言でない「ストーム」を使ったコンボデッキはモダンにも存在します。《炎の儀式》《定業》《思案》《煮えたぎる歌》といったマナ加速や儀式スペル、ドロースペルの多くが禁止カードに指定されながらも形を変えて常にTier2以上の立ち位置にあり、『霊気紛争』から加わった《遵法長、バラル》により強化され現在の形に至ります。

巣穴からの総出ぶどう弾手練

 「ストーム」を稼いで《巣穴からの総出》によって大量のゴブリントークンクリーチャーで相手を殴り倒すか、《ぶどう弾》で相手のライフを削ることがこのデッキの主な勝ち手段となります。かつて存在した《定業》《思案》ほどではないものの、キーカードを探す助けになる《手練》《血清の幻視》が4枚ずつ採用されているので、デッキの動きも安定しています。

☆注目ポイント

遵法長、バラルゴブリンの電術師

 インスタントとソーサリースペルのコストを1マナ軽くする能力を持つクリーチャーである《遵法長、バラル》《ゴブリンの電術師》を利用することで《発熱の儀式》《捨て身の儀式》《暗黒の儀式》と同様の効果になり、特に《捨て身の儀式》は「連繋」を利用することでより多くのマナを生み出すことが可能になります。

魔力変

 《遵法長、バラル》《ゴブリンの電術師》の恩恵で《魔力変》は赤マナを青マナに変換しつドローを進め、さらにマナブーストすることも可能にします。

けちな贈り物

 多くの場合《炎の中の過去》によって使用済みの儀式スペルやドロースペル、《魔力変》を再利用して「ストーム」を稼ぐことが必要になり、そのために墓地を肥やす手段となるのが《けちな贈り物》です。儀式スペルと《炎の中の過去》をサーチすることでコンボのセットアップをして行きます。4マナですがインスタントスピードで《遵法長、バラル》《ゴブリンの電術師》を利用すればコストが軽くなるので問題になりません。

血染めの月

 サイド後はDeath’s shadowなど墓地対策をしてくる多色のデッキに刺さる《血染めの月》で相手をロックするプランも追加されます。

総括

 グランプリ・神戸2017が開催されるということで前回と合わせてSCGのモダンのイベントで結果を残しているデッキを中心に、主要なデッキの解説をしてきました。ですが、これまで挙げてきたデッキ以外にも環境には様々なデッキが存在します

 環境に存在するすべてのデッキを使いこなすのは難しいので、モダンで成功する近道としては"好きなデッキや得意な戦略を見つけ出し、使い続けて、可能な限り多くの種類のデッキとのマッチアップをテストし経験値を上げていくこと"が重要です。1マナの黒い13/13や、強大なEldraziクリーチャーで圧倒するのも、環境に存在する効率的なスペルを利用したコンボを使うのも自由なフォーマットが、現在のモダンです。

 以上USA Modern Express vol.2でした。

 それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

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