By Yuya Hosokawa
人には、好みがある。
好きな食べ物、好きな顔、好きな匂い。人の数だけ好みがあり、千差万別だ。
マジック一つとっても、その好みはプレイヤーによって実に異なる。
ビートダウンが大好きなプレイヤーがいれば、コントロールが好きな者もいる。コンボデッキを信奉する人だっているのだ。コントロール一つとっても、パーミッションが好きだったり、除去コントロールを愛しているなど、それこそ語り尽くせない。
そして。
特定のアーキタイプを好むプレイヤーがいるように。
一つのカードを愛してそれを中心としたデッキを使い続けるプレイヤーがいるように。
一つの色に魅せられ続けた者もいる。
20年間黒を愛し続けた、足立 了亮のように。
関西で有名なレガシーの大会『KMC』の常連である足立。漆黒のシャツに身を包み、黒単を華麗に使いこなすその姿を見たことのある人は、関西のプレイヤーならずとも多いのではないだろうか。
今日は、そんな足立の愛する『マジック』を、余すことなく語ってもらった。
マジックとの出会い
--「マジックを始められたのはいつだったんですか?」
足立「ミラージュが発売した時に始めたから、20年前ぐらいになりますかねぇ」
--「ミラージュですか! 随分と懐かしいですね」
足立「そうですね。で、それからずっとマジックを続けています」
--「え!? 休止時期などはなかったのですか!?」
足立「なかったですね。なんだかんだでずっとやってました」
--「普通は休止を挟むプレイヤーが多いですよね。特に学生の頃からやっていると。例えば急に周りがやめてしまったりして遊ぶ場所がないと、やめちゃうじゃないですか。そういうことはなかったのですか?」
足立「ありましたね。特に実家が田舎の方やったんで、カードショップなんかとてもいけないんですよね(笑)だから地元で何とか遊ぶ場所探して、大会とかに足を運んでました」
--「昔から精力的に活動されていたのですね」
黒単への愛
--「足立さんと言えば黒単ですよね。やっぱり昔から黒単がお好きだったのですか?」
足立「そうですね。正確に言うと4版かな。4版の《ゾンビ使い》がかっこよくて、黒っていいなって」
--「《ゾンビ使い》、懐かしいですね。再生つけるんですよね」
足立「それです。後、沼渡りも付きますよ! 今考えるとめちゃめちゃ弱いんですけどね(笑)とにかくかっこよくて」
--「わかります。あの雰囲気、黒って感じしますよね」
足立「はい! それからずっと黒が好きで、使い続けてますね」
--「今日お使いになられているデッキも黒単ですよね。《ヴェールのリリアナ》が光っていてこだわりが感じられました」
足立「《ヴェールのリリアナ》、大好きなんですよ。昔はスタン、モダン、レガシーで《ヴェールのリリアナ》を使っていたぐらいです(笑)」
レガシーを始めたきっかけ
--「フォーマットの話が出たところで気になったのですが、足立さんがレガシーを始めたきっかけはなんですか? やっぱり使いたいカードがあったのでしょうか。《暗黒の儀式》とか」
足立「いや、違いますね。ずばり就職したからです(笑)」
--「そんな現実的な理由!」
足立「就職して、どうしても京都のイエローサブマリンのFNMに間に合わなくなっちゃって。そんな中、唯一間に合うのが19時からのレガシーだったんですよ。だからレガシーを始めたんです」
--「それは意外な理由でした」
足立「でもそのおかげでレガシーにハマることになったわけですから、わからないものだなって」
関西のレガシー強豪が集まる大会、KMC
--「それで足立さんはレガシーにはまっていった、と」
足立「そうですね。KMCというレガシーの大きな大会があるんですけど、それによく参加するようになって、どんどんレガシーにのめり込むようになっていったんです」
--「KMC勢という言葉もよく耳にします」
足立「僕もいわゆるKMC勢です。KMCはすごいんですよ。月に1回以上は開催していて、参加者も大体60人は超えます」
--「とても活気のある大会ですね!」
足立「しかもKMCに来る人達、やたら強いんですよ。猛者が多いんです。レガシーのレベルは日本一高いと言っても過言ではないぐらいですよ!」
--「おお! それはまた大きく出ましたね(笑)」
足立「いやもう(笑)皆さんKMCに1回遊びに来て下さい。本当に」
マジックへの愛
--「改めて思いますけど、足立さんって本当にマジック好きですよね」
足立「それは間違いないですね(笑)」
--「だって普通は就職してFNM出られなくなったら、マジックから離れますよ。それをFNM出るために新しいフォーマットに手を出すのですから」
足立「そうですね(笑)。多分世界中に、『俺は世界で一番マジックが好きだ』と思っている人たくさんいますよね。この会場の人だって多分みんな同じ考えだと思うんです。でも僕、世界の誰よりも一番マジック好きな自信あります。いや多分、みんな自信あると思いますが(笑)でも負けないですよ!」
--「負けてないと思います(笑)」
マジックの一番の魅力
--「足立さんをそこまで惹きつけるマジックの魅力って、一体なんですか?」
足立「僕ね、昔魔法使いになりたかったんですよ」
--「魔法使い、ですか」
足立「はい。でも魔法使いになるのって無理じゃないですか。火とか手から出せないじゃないですか」
--「出せませんね」
足立「そんな時に、マジックの設定に惹かれたんですよ。『魔法使いになって戦う』っていうところに。なんだかんだ、それが好きなんです。マジックで戦うだけで、魔法使いになれるって、なんかかっこいいじゃないですか」
--「きっかけであり、最も好きな部分、と」
足立「そうですね。イラストもいいし、面白い。他にもたくさんマジックには魅力があると思います。それでもやっぱり、どこが一番好きなのかと聞かれたら、魔法使いになれるところ、なんですよね」
そう言って、足立は歯を見せて笑った。
20年以上をMTGと、そして黒と共に過ごし続けた足立。ショップがなければ積極的に大会に足を運び、就職という最大の危機ですら、足立にとっては新たなフォーマットを遊ぶきっかけに変えてしまった。そんな足立の根幹にあるのは、『魔法使いになれる』という子供の頃からの夢。
魔法使いになることが夢で、MTGをプレイすることで夢が叶うのならば、足立がマジックを愛し続けるのも納得だ。
これからも、足立はマジックをプレイし続けるだろう。
「魔法使いになる」というその夢は、今も変わっていないのだから。
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