Deck Tech: 森 一晃の「青白奇跡」

晴れる屋

By Yuya Hosokawa

 2017年、4月24日。レガシー界に激震が走った。

 長年に渡りレガシーでトップに君臨し続けた「青白奇跡」。そのキーパーツとなっていた《師範の占い独楽》が、ついに禁止カードに指定されたのだ

師範の占い独楽

 『青白奇跡』における《師範の占い独楽》は、デッキの心臓、いや奇跡というデッキそのものだった。この1マナのアーティファクトは、序盤にスペルや土地を供給する役目を持ち、中盤は有効牌をもたらし続け、全体除去をインスタントタイミングで唱え、終盤はフィニッシャーとして活躍していた。

 《師範の占い独楽》の禁止。それは実質的な『青白奇跡』の消滅だった。

 はずだった

 だが、奇跡は死んでいなかった。禁止改定から一か月が経ち、新たな奇跡が世に産み落とされていた

 そしてこの『日本レガシー選手権』でも、独楽なき奇跡をシャッフルするプレイヤーが確かにいて、しかもまさに今、3連勝目を上げたところだった。

 その奇跡使いの名は、森 一晃

 決勝ラウンド進出が早速見え始めるという幸先の良い滑り出しを見せた森に、奇跡について聞いてみたい。

レガシー、奇跡との出会い

――「奇跡はいつから使われているのですか?」

「実はまだそんなに長くないんです。奇跡を組んだらすぐに《師範の占い独楽》が禁止になってしまいまして(笑) 結構ショックでした」

――「え! そうなのですか。てっきりずっと奇跡を使い込んでいるのかと思いました!」

「いえいえ。そもそもレガシーを始めたのが最近だったんです。元々はモダンを遊んでいて、そこからハマってしまってそのままレガシーに」

――「モダンからレガシーっていうと参入の障壁が高そうですよね。スタンダードからモダンよりも更に」

「はい。でもエターナルマスターズが発売したのが大きかったですね。レガシーに参入するには十分な理由になりました。順調に沼に足を踏み入れている感じです(笑)」

《師範の占い独楽》を失った奇跡

――「そもそも《師範の占い独楽》がないわけですが、奇跡って本当に回るんですかね?」

「僕もそれが一番不安でした。というか本当は石鍛冶デッキに移行しようとしていたんですよ」

――「確かに石鍛冶デッキは青白奇跡と基本パーツが同じですからね。そのまま青白石鍛冶に行く人は多そうですし、現にテーブルを見回していると石鍛冶をよく見る気がします」

石鍛冶の神秘家

「でも時間がなくて(笑)だからとりあえず、最近《先触れ》をいれた奇跡が勝っていると聞いたので、お試しで2枚だけ入れた奇跡を使うことにしたんです」

――「《先触れ》は今話題ですよね。それでどうでしょうか? 《先触れ》、強いですか?」

「よくわかりません(笑) 可もなく不可もなくってところですかね。ただ《師範の占い独楽》がないことによる不便さは、《予報》がカバーしてくれています」

先触れ予報

――「《予報》、3枚も入っていますね!」

「今までは《師範の占い独楽》によるトップ3枚が第二の手札みたいな感じでしたが、今は普通に手札を多く保てるという感じですね」

《相殺》の不在

――「《師範の占い独楽》がないことによる弊害はドロー面だけではないですよね」

《相殺》ですね。独楽相殺はもちろん強力ですけど、実は僕、あんまり《相殺》が好きじゃなかったんですよ」

相殺

――「どうしてですか?」

「効く相手に強力なのはもちろんなのですが、後手だと置けるターンが少ないのですよ。2ターン目までに独楽相殺が揃っても後手なら間に合わないことがありますし。《突然の衰微》で割られもします」

――「一長一短なのですね」

「そうですね。今は《相殺》がなくなったおかげで裏目が少なくなっていて、それは良いかな、と思いました。コントロールしたいのに、カードを引きたいのに、《相殺》しかないみたいな、ちぐはぐな手札が来ることがなくなったので」

今のリストのセールスポイント

――「現在の奇跡のリストですが、何か工夫した点はあるのでしょうか?」

「さっきも言った通り、間に合わせで組み上げたという感じなのでそこまではないのですが……《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を追加のフィニッシャーとして入れたぐらいです。《相殺》不要説を唱えた後に言うのもなんですが、ハーフロックがなくなったことでフィニッシャーがほしかったんです」」

ゼンディカーの同盟者、ギデオン

――「なるほど。ちなみにその強さはいかほどでしょうか?」

とても強いです。入れて良かったと思いました!」

――「3枚目はどうですか?」

「2枚もあれば十分です!(笑)」

これからの奇跡

――「先ほどは石鍛冶を作るまでの繋ぎとおっしゃられていましたが、奇跡のままでも強いのではないでしょうか?」

「実はそう思っています(笑) もう少し奇跡を使おうかなって思えましたよ! ガードも下がっていますし、今やれると思います」

――「ここまで3勝0敗と良い調子ですからね。決勝ラウンドがもう目の前ですね」

「はい! ですがゲームがとにかくしたいので、IDはせずに対戦を選ぼうと思います。今はとにかく奇跡が回したいんです」

――「それはすごい情熱! どうか頑張って下さい! 応援しています」

「ありがとうございます!」


 《師範の占い独楽》無き『青白奇跡』。青白奇跡の強いリストはまだ未知数だ。《先触れ》の適正枚数、《予報》、そしてまだ誰も試していないカードがデッキに入る可能性もある。

 それでも、奇跡というデッキがレガシーから消えたわけではないということは、明らかな事実と言えるだろう。

 《師範の占い独楽》をそっと置き、今一度、奇跡を手に取ってみて欲しい。


森 一晃「青白奇跡」
日本レガシー選手権

5 《島》
2 《平地》
3 《Tundra》
1 《Volcanic Island》
4 《沸騰する小湖》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《乾燥台地》

-土地 (20)-

3 《瞬唱の魔道士》
1 《ヴェンディリオン三人衆》

-クリーチャー (4)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
3 《剣を鍬に》
2 《先触れ》
1 《呪文嵌め》
3 《対抗呪文》
2 《予期せぬ不在》
3 《予報》
1 《天使への願い》
4 《意志の力》
3 《終末》
1 《仕組まれた爆薬》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (36)-
2 《狼狽の嵐》
2 《外科的摘出》
1 《山》
1 《封じ込める僧侶》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《侵襲手術》
1 《紅蓮破》
1 《赤霊破》
1 《摩耗+損耗》
1 《コジレックの帰還》
1 《灰からの再興》
1 《基本に帰れ》
1 《無のロッド》

-サイドボード (15)-
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