USA Modern Express vol.32 -沈むホガーク、隆盛する石鍛冶-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

甦る死滅都市、ホガーク信仰無き物あさり

すでにご存知だと思われますが、先月末に禁止改定が告知されました。環境を荒らし尽くした 《甦る死滅都市、ホガーク》 と、多くのデッキで使われていた《信仰無き物あさり》が禁止カードに指定されました。

《甦る死滅都市、ホガーク》ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019や、その後のグランプリでの驚異的な勝率から禁止を予想していた方も多かったと思います。《信仰無き物あさり》もIzzet PhoenixやDredgeの隆盛により、メインから《外科的摘出》などが散見されていたこともあり、元々禁止を望む声が多かったので妥当な判断だと言えます。

石鍛冶の神秘家

この2枚のカードが禁止になるだけでも環境は十分にシェイクアップされましたが、今回は禁止カードだけでなく、モダンフォーマットができて以来、禁止リストに留まっていた《石鍛冶の神秘家》の禁止が解除されました。

さて、前置きが長くなりましたが、今回の連載では新環境でおこなわれたSCGO Dallasグランプリ・インディアナポリス2019の結果を見ながら解析していきたいと思います。

SCGO Dallas
モダンホライゾンの新鋭Urzaが新環境の頂点に

2019年9月1日

  • 1位 Urza ThopterSword
  • 2位 Burn
  • 3位 Titan Shift
  • 4位 Grixis Death’s Shadow
  • 5位 Burn
  • 6位 Burn
  • 7位 Rakdos Midrange
  • 8位 Mono Green Tron
Harlan Firer

Harlan Firer

StarCityGames.com

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SCGO Dallasは、新環境突入直後の大規模な大会なこともあり注目を集めていました。

フェアデッキが好きなプレイヤーに人気の《石鍛冶の神秘家》の禁止が解除され、どのバージョンの《石鍛冶の神秘家》デッキがベストなのかとツイッター上でも話題になっていました。結果的にプレイオフには不在で、勝ち残ったのはTitan ShiftBurnDeath’s ShadowTronといったモダンらしく直線的でプロアクティブな戦略が多くを占めました。

そんな中優勝を果たしたのは、ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019でも活躍していたUrza ThopterSwordでした。

SCGO Dallas デッキ紹介

「Urza ThopterSword」「Titan Shift」

Urza ThopterSword

ソプターコンボを使ったデッキ自体は、《弱者の剣》の禁止解除がされた時から少数ながら存在していましたが、『モダンホライゾン』から《最高工匠卿、ウルザ》《ゴブリンの技師》が登場したことにより大幅に強化されました。禁止改定前の環境でもよく結果を残していたデッキのひとつで、禁止改定によって失ったカードがなかったこともあり注目を集めていました。

《石鍛冶の神秘家》の禁止が解除され、装備品を対策するために《石のような静寂》《溜め込み屋のアウフ》《大いなる創造者、カーン》といったアーティファクト対策が多かった中の優勝でもあり、デッキの地力の高さが証明されました。

このデッキはソプターコンボと《最高工匠卿、ウルザ》によるコンボで勝利するデッキです。《発明品の唸り》から《罠の橋》《真髄の針》などを状況に応じてサーチすることで相手の行動を制限したり、《溶接の壺》でアーテイファクト除去から保護したりと、コントロールデッキのようにも振舞うことができるのがこのデッキの強みで、UW ControlやJundのような相手を得意とします。

☆注目ポイント

ゴブリンの技師罠の橋胆液の水源

《ゴブリンの技師》《弱者の剣》をサーチできるので、安定してソプターコンボを揃えることができます。リアニメイト能力を利用して、《罠の橋》《胆液の水源》などをサーチすることもあります。

最高工匠卿、ウルザ

《最高工匠卿、ウルザ》はこのデッキのフィニッシャーです。ソプターコンボを利用することでなんと無限にマナとトークン(ソプターコンボによってライフも無限に)を生み出すことができるようになり、3つ目の能力によってデッキ内のすべてのスペルをキャストすることができるようになります。

このデッキならば、自身が生み出す構築物トークンでも十分フィニッシャー級のサイズになり、盤面にプレッシャーをかけることができます。アーティファクトをタップすることでマナを得られる能力は、《最高工匠卿、ウルザ》自身の能力なので《石のような静寂》《溜め込み屋のアウフ》《大いなる創造者、カーン》といった効果の影響を受けないのも大きく、ほかのアーティファクトデッキと異なり対策されにくい理由のひとつです。

暗殺者の戦利品集団的蛮行

Harlan Firer選手は、サイドの《暗殺者の戦利品》のために緑をタッチしています。また、新環境でBurnが多くなることを想定していたようで、《集団的蛮行》も2枚採用されています。Burnは今大会の最大勢力で、Tronなど土地コンボに強く環境の多くのデッキと互角以上に渡り合えることから、今後も人気が出ることが予想されるデッキなので《集団的蛮行》は必ず採用しておくことを推奨します。

Titan Shift

HogaakとPhoenixの退場、そして《石鍛冶の神秘家》の禁止が解除されたことによって環境のスピードが低速化したため、土地コンボも復権してきています。

スタンダードのScapeshiftのフィニッシャーとして活躍している《死者の原野》は、モダンでも通用することが証明されました。

☆注目ポイント

死者の原野

《死者の原野》は、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》《外科的摘出》で追放されたり、《神聖の力線》など対策カードを置かれた際に追加の勝ち手段として活躍します。異なる名称の土地が6枚ある状態で《原始のタイタン》をキャストすれば、ゾンビトークンを生み出すことができるのでクロックも強化されます。中盤以降はフェッチランドやランプスペルが2/2を生み出すので、《風景の変容》コンボに頼らずにフェアなゲームでも勝負がしやすくなりました。

活性の力

Titan Shiftが復権してきた理由として、禁止改定によるメタの移行ももちろんそうですが、最近のセットで強化されたことでこれまで抱えていた問題が解決されたことが大きいです。『モダンホライゾン』で登場した《活性の力》は、《血染めの月》《神聖の力線》《ルーンの光輪》など厄介な置物や、《石鍛冶の神秘家》の影響で増加した装備品、そして今大会を制したUrzaにも効くことからこのデッキの必須スペルとして定着しています。

夏の帳丸焼き

《夏の帳》を獲得したことにより、カウンターを多用するデッキとのマッチアップで《原始のタイタン》《風景の変容》といったキースペルを安全に通しやすくなりました。JundやDeath’s Shadowなどが多用するハンデスも無効化できるので、多くのマッチアップで活躍するカードです。

《丸焼き》は、《精神を刻む者、ジェイス》《時を解す者、テフェリー》といった青白のプレインズウォーカーや、《石鍛冶の神秘家》など対象となる範囲が広く大変フレキシブルな除去として機能します。

グランプリ・インディアナポリス2019
石鍛冶の時代

2019年9月7-8日

  • 1位 Urza ThopterSword、Jeskai Stoneblade、Burn
  • 2位 UW Stoneblade、Humans、Burn
  • 3位 Jund、Urza Stoneforge Combo、Mono Green Tron
  • 4位 Urza ThopterSword、Grixis Death’s Shadow、GW Eldrazi Stoneblade
Qadi/Karani/Brown

Qadi/Karani/Brown

PlayerLink Coverage

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前週に開催されたSCGO Dallasでは、禁止改定直後ということで《石鍛冶の神秘家》を使ったデッキの勝率はそこまで高いものではありませんでしたが、今大会ではトップ4に入賞したすべてのチームが《石鍛冶の神秘家》デッキを選択していました。

SCGO Dallasでも高い勝率を出していたBurnやUrza ThopterSword を選択したチームのすべてが結果を残していたことから、これらのデッキは現環境のTier1として見て間違いなさそうです。

グランプリ・インディアナポリス2019 デッキ紹介

「Jeskai Stoneblade」「UW Stoneblade」「GW Eldrazi Blade」

Jeskai Stoneblade

直前にMOで開催されたMCQでも結果を残していたJeskaiバージョンです。ほかのStoneblade系を意識し、《稲妻》《稲妻のらせん》など軽い火力スペルが多数搭載されているのが特徴です。

Stonebladeといってもコントロールではなく、クリーチャーが多めで全体的に軽いテンポ寄りの構成になっています。

☆注目ポイント

稲妻瞬唱の魔道士

《稲妻》はほかの《石鍛冶の神秘家》デッキに強く、相手に追加の土地を渡してしまう《流刑への道》と比べ使いやすい除去として機能します。軽い火力スペルを活かすために《瞬唱の魔道士》も4枚採用されており、相手によってはBurnのように振舞うこともできます。

ルーンの与え手時を解す者、テフェリー

このタイプのデッキには珍しく《ルーンの与え手》がメインから採用されています。《石鍛冶の神秘家》《呪文捕らえ》を除去から守る手段となり、このクリーチャーに除去を使ってくれれば後続も生き残りやすくなります。《時を解す者、テフェリー》もメインから3枚と多めに採用されており、安全に装備品をつけたクリーチャーの攻撃を通すことに重点が置かれています。

否定の力

3色デッキということもあってか《廃墟の地》が不採用で、それゆえにTronやTitan Shiftなどの土地コンボやNeoformのような速いコンボとのマッチアップを苦手とするので、サイドには《否定の力》などカウンターが多めに採用されています。

精神を刻む者、ジェイス流刑への道

サイド後は、《精神を刻む者、ジェイス》も投入されコントロール寄りにシフトしていきます。《流刑への道》の枚数を減らした弊害として、《タルモゴイフ》《死の影》など高タフネスのクリーチャーの処理方法が限られてしまっているので、今後Death’s ShadowやJundといったデッキが増えるようなら《流刑への道》を追加してもよさそうです。筆者も早速このデッキをローカルのモダンの大会で試してみたところ、Urza ThopterSword、Grixis Death’s Shadow、Jund Death’s Shadowに勝利して3-0と好感触でした。

UW Stoneblade

先ほどのJeskaiバージョンと異なり、今までの青白コントロールに《石鍛冶の神秘家》パッケージを加えてアップデートした構成で、レガシーでもお馴染みのStonebladeを彷彿とさせます。

《石鍛冶の神秘家》《殴打頭蓋》のパッケージによってクリーチャーデッキとの相性がさらによくなり、ゲームを速やかに終わらせる手段が手に入ったのは大きく、このデッキの弱点のひとつであった勝ち手段が薄いことによる引き分けも減りそうです。

☆注目ポイント

饗宴と飢餓の剣

《殴打頭蓋》以外の装備品の選択ですが、《謎めいた命令》を構えたりプレインズウォーカーを出したりとマナの使い道が多いこのデッキでは、土地をアンタップできる《饗宴と飢餓の剣》が最適なチョイスとなります。

否定の力

レガシーの《意志の力》のように、モダンの青白にも《否定の力》が採用されています。Tronが最速で《解放された者、カーン》などをキャストしてきても対処がしやすくなりました。また、《石鍛冶の神秘家》と装備品のスペースを確保するために、《覆いを割く者、ナーセット》が解雇されています。

呪文嵌め

《瞬唱の魔道士》《石鍛冶の神秘家》《レンと六番》《飛行機械の鋳造所》《ボロスの魔除け》《大歓楽の幻霊》など環境の多くの脅威は2マナなので、《呪文嵌め》は現在のモダンでは非常に優秀な確定カウンターとして機能します。

GW Eldrazi Stoneblade

《石鍛冶の神秘家》+装備品のパッケージは、エルドラージ系のアグロデッキの強化にも貢献しています。

《貴族の教主》《エルドラージの寺院》といったマナ加速に加えて、除去耐性のある《現実を砕くもの》や妨害能力を持つ《難題の予見者》を搭載したエルドラージ戦略にフィットしているのです。

元々サイズの面で勝るエルドラージクリーチャーは装備品と相性が良く、特に剣を握った《現実を砕くもの》は非常に脅威となります。

☆注目ポイント

大いなる創造者、カーンマイコシンスの格子

エルドラージ+装備品によるビートダウンプラン以外に、《大いなる創造者、カーン》《マイコシンスの格子》によるロックプランもあります。ビートプランとコンボプランの両方に対応することは困難で、多角的な攻めが展開できるのがこのデッキの強みです。《石鍛冶の神秘家》《古きものの活性》によってデッキの動きも安定しています。

秋の騎士減衰球

緑を使うことで、1ターン目に《貴族の教主》、2ターン目に 《エルドラージの寺院》から《難題の予見者》という強力な動きが可能です。サイドにも相手の装備品対策になる《秋の騎士》にアクセスできるようになります。Tronが流行ることも想定していたようで、《減衰球》が多めに採られています。

総括

石鍛冶の神秘家解放された者、カーンゴブリンの先達最高工匠卿、ウルザ

《甦る死滅都市、ホガーク》《信仰無き物あさり》が禁止になり、DredgeやIzzet Phoenixなど墓地を使ったデッキが減少しました。そして、《石鍛冶の神秘家》の禁止が解除された影響でフェアデッキが増加し、同時にそれらに強い土地コンボも増えました。現在のメタゲームは、さらにその土地コンボに強いBurnやUrza ThopterSwordなどが中心の環境のようです。

装備品を採用したフェアデッキの増加により《コラガンの命令》の価値も向上し、JundやGrixis Death’s Shadowといったデッキも勝ち残っています。

今週末にはグランプリ・ヘント2019が開催されるので、モダンファンの方はお見逃しなく。

それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら