By Yuya Hosokawa
4月24日に発表された、《師範の占い独楽》の禁止。
これが意味するところは言うまでもなく、王者『青白奇跡』の陥落だ。もう誰も、ライブラリーのトップ3枚を実質手札のように扱うことはできない。フェッチランドを駆使して更なる3枚を見ることもできない。
そして。
唱えられた呪文を、《師範の占い独楽》を動かすだけで打ち消すことも、もうできない。
《相殺》の実質的な禁止は、多くのレガシーのデッキに影響を与えた。1マナや2マナのカードを大量に入れたコンボデッキ、ANTやエルフは、さぞ戦いやすくなったことだろう。
だが、『第9期レガシー神挑戦者決定戦』のトップ8にはそれらのデッキの姿はない。
そこには、《秘密を掘り下げる者》が大量発生していた。
《秘密を掘り下げる者》デッキが苦手とするのは除去。《剣を鍬に》、《終末》と除去がてんこ盛りの青白奇跡はとにかく厳しかった。
そしてデッキに入っているカードの大半が1マナと2マナ。ということは、《相殺》も突き刺さることになる。
青白奇跡消滅後に最も強くなったのは、《秘密を掘り下げる者》だったのだ。
この準々決勝を戦うのは、そんな「デルバーデッキ」を使用する二人。
まずは片川 創太(神奈川)。
ドロースペルと打ち消しの青、《死儀礼のシャーマン》を使える黒、そして《石鍛冶の神秘家》と《剣を鍬に》の白というエスパーカラーのデルバーを使用している。
一方、白の代わりに赤を選択したのが、平野 雅幸(静岡)だ。
青と黒は同じで、3色目として選んだ赤からは《稲妻》、《若き紅蓮術士》というアグレッシブなカードを採用している。そして《若き紅蓮術士》と相性の良い《陰謀団式療法》を入れることで、コンボに対しても耐性が付いている。
デルバー対デルバー。軽い呪文の応酬となるこの戦い。一つのミスが、命取りとなる。
Game 1
片川が唱えた《思案》が、この準々決勝の最初の呪文となった。返す刀で平野は《ギタクシア派の調査》で片川の手札をのぞき込み、そこに《目くらまし》と《不毛の大地》を見つけて渋い顔。
土地の1枚しかない初手をキープした平野。《不毛の大地》はまず起動されるだろう。《死儀礼のシャーマン》を打ち消されて《不毛の大地》を受けてしまうと土地がなくなってしまう。
そこで平野は悩みながら《思案》に手を伸ばす。もちろんそんなことなど知る由もない片川は《思案》をスルー。これは平野の計算どおり。
平野にとって誤算だったのは、《思案》で土地を見つけられないことだった。ライブラリーをシャッフルしてドローしても、次のターンの通常ドローでも、土地に辿り着けない。
この事故につけ込みたい平野だが、こちらも土地が2枚でストップ。しかもドロースペルもなく、ターンを返すしかない。
ゲームが動いたのは次のターン。まずは平野が《Volcanic Island》に出会い、《思案》へと手を伸ばす。片川は《目くらまし》を使うか一瞬悩むも、結局これを通す。
対照的に、片川が唱えた《思案》には《目くらまし》を使う平野。1マナ払える状況だが、ここでの狙いは打ち消すことでもなければ、1マナを要求することでもない。手札に《Volcanic Island》を逃がすことで、《不毛の大地》の魔の手から逃れたのだ。
この好プレイでもう1ターン《Volcanic Island》を使えるようになった平野は、《秘密を掘り下げる者》をキャスト。片川はこれを《目くらまし》で打ち消し、自分のターンはセットランドだけで終える。
一方、待望の土地を手に入れた平野は《死儀礼のシャーマン》をキャスト。片川はマナを伸ばされることを良しとせず、即座に《剣を鍬に》。続けて出てきた2枚目にも同じように除去を浴びせる。
気付けば土地の数もほとんど変わらず、手札の枚数も同じ。序盤の土地事故から完全に立ち直った平野。手札には潤沢に除去があるため、《死儀礼のシャーマン》や《秘密を掘り下げる者》なら問題にはならない。
そう、この状況で問題となるのはたった1枚だけなのだ。
その名は《真の名の宿敵》。
《意志の力》で抵抗を見せるも、片川の狙い済ました《呪文貫き》が文字どおり突き刺さってしまう。
片川 創太
《渦まく知識》をようやく引いた平野だったが、この状況を打破する手段は見つけられず。恨めしそうに手札の除去を 見つめながら、平野は次のゲームに移ることに決めた。
片川 1-0 平野
Game 2
このゲームの平野は少なくとも土地には困っていないようだ。《秘密を掘り下げる者》を唱え、2ターン目に《死儀礼のシャーマン》と続ける。
平野 雅幸
平野の攻勢に対して片川は落ち着いて、《目くらまし》に引っかからないように2ターン目まで待ち、《死儀礼のシャーマン》に《剣を鍬に》に。
平野は間髪入れずに2枚目の《死儀礼のシャーマン》をキャストする。
これに対して片川は《石鍛冶の神秘家》。もちろん《目くらまし》をケアして1マナを立てるのを忘れない。《殴打頭蓋》をサーチし、《秘密を掘り下げる者》ににらみを利かせる。
…そう、1ターン目に平野が唱えた《秘密を掘り下げる者》は、まだ《秘密を掘り下げる者》だったのだ。このターンでも変身させることができなかった平野は《石鍛冶の神秘家》を《稲妻》で焼き払い、1点のみ与える。
これは片川にとっては僥倖だった。何せ《盲信的迫害》で《秘密を掘り下げる者》を除去できたのだ。
クロックを失った平野。その手札は土地にまみれている。《死儀礼のシャーマン》1体をコントロールするだけで、手札は土地と《稲妻》のみ。
その《稲妻》も《石鍛冶の神秘家》に使い、いよいよ手札には土地のみ。そして現れる片川の《秘密を掘り下げる者》。しかも平野を嘲笑うように、即座に変身する。
ようやく平野が《グルマグのアンコウ》に辿り着くも、手札の多い片川は《渦まく知識》と《思案》を駆使して3枚目の《剣を鍬に》を入手。更に《死儀礼のシャーマン》を追加し、ダメ押しとなる《ヴェンディリオン三人衆》で、いよいよ平野は絶体絶命――かに見えた。
だが、状況は変わった。ここで平野が引いた《秘密を掘り下げる者》が、そのきっかけを作った。
次のターン、まずは《秘密を掘り下げる者》がようやく平野の味方をし、3/2飛行へと変身。しかもここで公開されたカードが《コラガンの命令》。
《死儀礼のシャーマン》を焼き、《秘密を掘り下げる者》を回収。そしてこのビッグアクションを前に、片川は《秘密を掘り下げる者》を並べるのみ。
平野の2枚目の《秘密を掘り下げる者》はすぐに《昆虫の逸脱者》へと変わる。その上空から攻撃する《昆虫の逸脱者》を、片川の《秘密を掘り下げる者》は地上から見上げることしかできないのだった。
片川 1-1 平野
Game 3
最後のゲームは、片川の《死儀礼のシャーマン》への攻防から始まった。平野の《致命的な一押し》を《目くらまし》で打ち消し、まずは片川に軍配が上がる。
追加された《秘密を掘り下げる者》には目もくれずに《死儀礼のシャーマン》に《稲妻》を打つ平野。だが片川は《狼狽の嵐》でこれを退ける。
さらにに、《秘密を掘り下げる者》がめくったライブラリーのトップは2枚目の《狼狽の嵐》。片川はメインでアクションを起こすことはなく、2枚の土地がオープンのまま、ターンは再び平野へ。
見えている《狼狽の嵐》に対して平野は《若き紅蓮術士》をプレイ。そしてここに片川から除去は飛んでこない。
この《若き紅蓮術士》が生き残ると、ゲームの主導権を握るのは平野だ。消耗戦となるデルバーミラーマッチにおいて除去のついでに生み出される1/1はあまりに大きい。手札には除去もあり、《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》の攻撃をもう1回受けるだけで良い。だからこそ平野は、ターンエンドに《若き紅蓮術士》が除去されなかったことで、僅かに安堵を覚えたはずだ。
3枚の土地をタップし、《真の名の宿敵》を唱えたその瞬間までは。「あなた」と宣言される、その時までは。
平野がどうしても戦場に出させたくなかった、ただ1体のクリーチャー。だが《狼狽の嵐》を片川が構えている以上、これを通すしかない。
平野の動きは悪くない。2枚目の《若き紅蓮術士》を唱え、《ギタクシア派の調査》でトークンを一気に2体増やし、《秘密を掘り下げる者》をキャスト。しかもこの《秘密を掘り下げる者》は《稲妻》をめくり、あっという間に3/2飛行へと化ける。
盤面をクリーチャーで埋め尽くし、飛行にも対処でき、除去もある。
それでも。
《真の名の宿敵》を止めることだけは、できないのだった。
片川2-1平野
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