Translated by Takuma Kusuzawa
(掲載日 2017/06/21)
チームリミテッドのグランプリはMTGファンのためにあるフォーマットです。テニスでいうデビスカップのような、本来一対一のゲームをチームゲームとして競うもので、楽しい要素がたくさんあります。三つのブレインが交錯する。チームメイトを祝福し、お互いを助け合う。チームを組むと、感情を共にでき、全てがより感動的になります。そして、共に勝つことができればそれはマジックで得られる最高の体験となるでしょう。
チームをGPトップ4に導くことのできた幸運の例:
そう、チームリミテッドでは、カードの選択もですが、誰とチームを組むかがより大切です。
1. チームメイトを決める際に
チームメイトを選ぶとき、大事にするべきなのは「お互いを尊敬できること」です。普段はいかに仲の良い友達であっても、チーム内で争ってしまうというミスを何度も見てきました。自分本位ではチームの勢いを殺してしまいます。個々が優れていること自体は問題にはなりません。チームメイトより上手くなろうとしたり、自分の腕を見せつけようとしてはいけないのです。チームスピリットとはそういうことではないのです。仲間を尊敬し、それをわざわざ示す必要すらないのが理想です。チーム戦では、チームメイトではなく、他のチームと競わないといけないのです。
もう一つのカギはチームメイトを信じることにあります。仲間を信頼し、自分のゲームだけを見ましょう。目の前の試合のことだけ考えれば、より集中できるはずです。お互いをいちプレーヤーとして尊敬し、心から信頼できれば、チームメイトがもしミスをしても受け入れることは容易いでしょう。彼らが強く、ベストを尽くしているとわかっていれば、結果にいちいち怒ることもないはずです。ただしそれだけでなく、チームメイトの信頼に応えるべく、持てる全てを出せるよう準備しましょう。
2. 個人でできること
いつも通りの練習も勝つためのカギとなります。集まってチームリミテッドの練習をできる時間はかなり限られるでしょう。チーム戦ではあるものの、結局は個人戦なので、一人きりでも強いプレイをできるよう、練習すべきなのです。
チームを信頼する、というのは、仲間が勝てるのを祈るということではありません。個人が勝つことよりも、チームで勝つことが目的のはずです。自分は負けてしまったけど、チームメイトが二人とも勝って、運良くラウンドを勝ち進むことができたものの、何かスッキリしない。こんな風になってはいけません。自分自身で勝てれば、もっと良いのは確かです。また、もし勝ったのがあなただけだったとしても、少なくとも自分は義務を果たしたぞ、と感じてしまうこともあるかもしれません。でも、大切なのはチーム全体のことを意識することなのです。
3. デッキ構築
チームでのデッキ構築はマジックで一番難しい取り組みです。組み合わせがとても多く、最高のデッキを組み上げるには到底時間が足りません。うまくやりくりし、本番でテストする時間は可能な限り抑えましょう。パックを開ける前に、誰がどういうデッキを組むか決めておくべきです。それぞれ得意な色やアーキタイプがあるので、それはお互いに尊重しましょう。自分の好きなデッキを使えば、良いプレイにつながると思います。もちろん、どのカードが出てくるかは誰にも分かりません。ゆえに、あらかじめチームシールドの練習をしておくべきなのです。本番で三人一緒にデッキを考えるのも良くないと思っています。もし、二色のデッキを三個作るとして、1色だけ分け合うとしても、色の組み合わせは30通りもあって、全てを時間内に試すのは不可能です。
各々が自分の担当するアーキタイプに集中し、できうる一番いい形を作りましょう。グランプリに出る前にそれぞれの担当する予定のアーキタイプが、どんなプールだったとしても組めそうか、確認をしておきましょう。もしできないことが多いようなら、プランBを用意しないといけません。2つのどちらかで構わないので、いつものデッキが安定して作成できるようになっているのが理想です。しっかり準備ができていれば、デッキができるまでの時間はかなり短くなっているはずです。一個デッキが出来れば、残りの色の組み合わせは9つになるので、残りを二人で考えても最適解を導きやすくなるはずです。
4. コミュニケーション
チーム戦ではチームメイトとのやり取りがとても重要になります。ただ闇雲に会話すればいいという訳ではありません。対戦チームにタダで情報を渡さないよう気をつけましょう。チーム内で意思疎通が取れるなら、ブラフをしかけることも可能です。
対戦相手の分からない言語で喋っているから、と油断しないでください。たまたま、あなたの喋ることを理解できる人がいて、相手に内容が筒抜けになっているかもしれません。
戦う中で、マリガンすべきか相談することが多いと思います。難しい問題ではあるのですが、かといって毎ゲーム相談するのはやめましょう。相談したいと思ったときは、なぜ悩ましいのか自分で分かっているはずです。リスクの確率を計算できるはずですし、そうすればいちいちチームメイトを煩わせることもないでしょう。自分で決断できるに越したことはないはずです。
序盤を見ていないゲームにアドバイスするのも難しいです。プレイしている本人の方が、過去のゲームや前のターンから見えているものが多いはずです。的外れなアドバイスをしてしまうとチームメイトへの悪影響も大きく、その後も信頼を失ってしまうかもしれません。チームメイトの援護に入る場合はしっかりと状況を確認するようにして、間違いなくミスをしそうなとき以外は中途半端なアドバイスをするのは避けましょう。
5. 他に気を付けておくべきこと
シャッフル
チームメイトが横から見ることになるため、シャッフルをするときに気をつけないと、隣の対戦相手にデッキの一番下のカードが見えてしまうかもしれません。B席に座るときは、特に気をつけましょう。
席順
デッキの速度や相性を気にして席を決めるチームが多いと思いますが、B席に座るのは自分の試合をしっかり回せつつ、隣のプレイヤーに的確なアドバイスをできる人が座ったほうがいい、というのが持論です。
時間切れ、引き分け
並行して3試合行うと、仲間とのやり取りで考える時間が伸びてしまい、引き分ける可能性も増えてしまいます。あなたも対戦相手も、状況に応じた速度でプレイするよう意識しましょう。
結論
実際には、ありとあらゆることを気にしてしまいがちです。ただチームで対戦するというのは、良いことこそあれど不利益はないはずです。チーム戦特有の罠をくぐり抜け、自分のため、チームのためにしっかりと勝つ気迫を持てれば、楽しくないはずがなく、つまらないことは自然と気にならなくなるものです。
私自身の話をすると、今のところチームグランプリでの成績が良かったのは、GPバルセロナとGPロッテルダムの2つです。どちらもデッキ構築を始める前に明確な戦略を決めていました。
バルセロナ: Raphael LevyとMelissa Detoraとのチーム
『テーロス』シールドでした。Raphaelは2013のワールドマジックカップでフランスチームとして勝ったところでした。チームシールドは彼の一番得意とするフォーマットで、チームシールドでのデッキ構築を極めていました。Melissaはプロツアーでのドラフトで24戦して19勝5敗という成績を残していました。彼女のリミテッドでの実力も疑う余地がありませんでした。
私は白含みのアグロデッキを担当し、白赤を第一候補で組む予定でした。プロツアー・ダブリンの『テーロス』ブロックドラフトではこの戦略が6-0へ導いてくれました。Melissaは黒含みのコントロール、Raphaelは残ったカードでデッキをまとめるジョーカー役でした。私たちは発売前にこの戦略を決めていたのです。
結果は7位でした。とてもよい経験になったと思っています。Melissaがウィザーズ・オブ・ザ・コースト社に就職し、MtGの大会へ出場することができなくなったので、これが彼女とチームを組んだ最後の大会になりました。
ロッテルダム: Raphael Levyと齋藤友晴とのチーム
当時、齋藤友晴はグランプリトップ8入賞が23回、うち4回優勝。Raphaelはトップ8入賞21回に6回の優勝。トップ8入賞が”たった”10回で優勝も2回しかしていない私が、彼らを信頼できないわけがありませんでした。
今回は『カラデシュ』のシールドでした。私が担当したのは青白のコントロール。二人は残ったジャンドカラーからそれぞれ最高のデッキを作る、ジョーカー二人体制で臨みました。
結果は3位フィニッシュでした。11月に開催されるGPリヨンでも、またチームを組もうと話しました。
6月の23~25日のGPシドニー: 齋藤 友晴とLee Shi Tianとのチーム
今までチーム戦のグランプリでRaphael Levyと組まないことはありませんでした。なので、今度の大会ではデッキ構築に関して不安があります。しかし、齋藤友晴はGPロッテルダムで、彼もまたデッキ構築に優れていると示してくれています。『アモンケット』環境のリミテッドは彼が一番強いと感じていますし、GP北京のトップ4入賞は然るべきものだと思います。
Lee Shi Tianも独自の練り込まれた戦略で『アモンケット』のリミテッドを極めています。私のMTG人生で、共に戦った中で最強のプレイヤーの一人ですし、彼の実力には圧倒的な信頼をおいています。
このチームでは、私が勝敗のカギとなるのではないかと感じています。このグランプリで、私さえうまくやれれば、チームが結果を残せないわけがないと思うのです。グランプリ当日までに『アモンケット』のチームシールドをすごく練習をしないといけませんね。
読んでくれてありがとう。
ジェレミー・デザーニ
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