by Yuya Hosokawa
ついに開幕した『アモンケット』環境名人戦。
スタンダードとドラフトによる混合フォーマットを戦う今大会。『アモンケット』参入後のスタンダード、そして『アモンケット』のドラフトと、『アモンケット』によってもたらされた現環境の二つに熟達していなければ、勝ち抜くことはできない。
文字どおり、『アモンケット』環境を極めた名人とならなければ、『環境名人』の称号は獲得できないのだ。
『The Last Sun』『神』に続く第三のプレミアムタイトルイベント、『環境名人戦』。その頂は高く、険しい。
そう、たとえそれが現『スタンダード神』である和田 寛也にとっても、だ。
第5期スタンダード神挑戦者決定戦の長いラウンドを勝ち抜き、神挑戦者権を獲得し、神決定戦当時の神である高橋 優太を倒して神となった和田。その後も向かってくる強豪達をすべて倒し、現在もスタンダード神として君臨している。
現在はトーナメントの第一線からは退きはしたものの、マルドゥ機体を駆りきちんとラウンド1を勝利しているのは、流石はスタンダード神だ。
そしてその神を倒すためにこのフィーチャーテーブルに現れたのが、佐藤 達郎。
その手に携えた得物はティムール・エネルギー。《霊気池の驚異》を失ったことでティムールカラーのエネルギーデッキは《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を4ターン目に出すデッキから、ミッドレンジへとシフトした。緑黒や機体と共に、今最も期待されているアーキタイプの一つである。
機体とティムール・エネルギー。共にこの環境のトップメタと目されている二つのデッキの戦いは、まさに『環境名人戦』。
和田 寛也 vs. 佐藤 達郎
闘いは静かに、そして厳かに始まった。
Game 1
ゲームの口火を切ったのは佐藤の《導路の召使い》。
手札に《致命的な一押し》を持ってはいる和田だったが《乱脈な気孔》からスタートしていたために唱えることは叶わず、2ターン目は《屑鉄場のたかり屋》を優先する。
そして《導路の召使い》を対処できなかったツケはすぐに返ってくることに。和田の目の前に現れたのは《逆毛ハイドラ》。
しかも和田の3ターン目のアクションは《苦い真理》。手札は増えていくものの、戦場にはブロックに参加できない《屑鉄場のたかり屋》。そして攻撃してくるのは、除去のほとんど効かない《逆毛ハイドラ》。
この《逆毛ハイドラ》を止めるためにはエネルギーを使わせるしかない。現在佐藤の所有するエネルギーは5個。ここでエネルギーが増えなければ、2枚の除去で《逆毛ハイドラ》を退場させられるのだ。幸い、和田は手札だけは豊富にある。
だが佐藤はここで《ならず者の精製屋》をキャストする。エネルギーとクロックが同時に増えるこのカードは、現状最も和田が見たくないカードだ。
仕方なく《屑鉄場のたかり屋》を攻撃に向かわせる和田だが、佐藤はただライフを17点に減らすだけ。
ダメージレースを覆す《栄光半ばの修練者》に一縷の望みを託す和田だが、佐藤が唱えたのは《栄光をもたらすもの》。
沢山の手札を抱える和田だが、それを使い切るだけのライフがなかったのだった。
和田 0-1 佐藤
Game 2
負けられない第2ゲームは、セットランドの前に始まった。オープニングハンドを見た和田は少考する。除去とクリーチャー、プレインズウォーカーとバランスよく揃った手札。ただ一つの問題は、土地が《感動的な眺望所》と《山》しかないということ。《スレイベンの検査官》があり、手がかりの起動を合わせれば3枚のカードを引くことができる。
和田 寛也
追加の土地を、できれば黒マナを引けるかどうかが鍵となる手札。和田は悩んだ末に、この手札をキープことに決める。その宣言を聞いて佐藤はすぐにマリガンし、ようやくゲームが開始した。
《スレイベンの検査官》、《霊気との調和》でお互いの1ターン目は終わり、和田は《栄光半ばの修練者》を唱え、佐藤はターンをパスする。
そして3ターン目。和田は手がかりを起動し、3枚目の土地を――持っていた!《霊気拠点》を置いて静かにターンを返す。
佐藤はようやく戦場に残るカード、《つむじ風の巨匠》をプレイ。これに対して和田は《栄光半ばの修練者》を「督励」で向かわせ、飛行機械トークンにチャンプブロックさせると、4枚目の土地を置いて《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》!
和田は見事、このギャンブルに成功した。
この《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が、獅子奮迅の活躍を見せる。
まずはジャブとばかりに2/2トークンを生み出し、次のターンには飛行機械トークンにチャンプブロックを強要させる。
その後も《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は攻撃し続ける。《栄光半ばの修練者》2体を含めた攻撃で佐藤のライフを6まで落とし、《ならず者の精製屋》もやがて餌食としていく。
一見すると押し続けている和田。だが《不屈の追跡者》や《ならず者の精製屋》などで《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》に抗い続けていた佐藤には、後続を繰り出すだけの手札が常にあるのだそして《逆毛ハイドラ》が同時に戦場に現れると、和田は長考する。
戦場には《栄光半ばの修練者》と《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》。佐藤は《逆毛ハイドラ》と《つむじ風の巨匠》。
トークンを出して攻撃に備えるか、アグレッシブに攻撃を仕掛けるか。
マジックにおいて最も難しいことの一つが、この押し引きだと言われている。攻めるべき時に攻め、守るべき時に守る。その見極めが上手いプレイヤーは強いのだ。
やがて神は結論を下した。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をクリーチャー化して、戦闘フェイズに入ろうとする。それを制して佐藤が《マグマのしぶき》を《栄光半ばの修練者》に向けるも、和田の表情は変わらない。
佐藤の次なる一手は《反逆の先導者、チャンドラ》。プラス能力を使い、《導路の召使い》をめくるも、唱えることなく《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》に2点。おもむろに立っている3マナ。
これに対して悩む和田だが、攻めるプランは崩さない。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を攻撃に向かわせる。ここに佐藤はチャンプブロックすべく飛行機械トークンを生み出し、和田は《致命的な一押し》を。あくまで攻撃的に除去を活用する。佐藤はそれを受け入れて最後のエネルギーでもう1度トークンを生み出し、今回はブロックが成立。
戦闘後に和田はチャンプブロック製造機である《つむじ風の巨匠》に《無許可の分解》を打つが、佐藤は《否認》でこれを退ける。
手札には役に立たない《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》があるのみの和田。静かにターンを返す。
だが、万策尽きてしまったのは佐藤も同じだった。《反逆の先導者、チャンドラ》は土地をめくり、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》にダメージを与えることしかできない。
《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の攻撃でついに《つむじ風の巨匠》を葬ると、2枚目の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》でトークンを生み出す。
このまま何も引かなければ《逆毛ハイドラ》でチャンプブロックしなければなくなってしまう佐藤。文字どおり絶体絶命だ。
だがここで値千金の《ならず者の精製屋》を《反逆の先導者、チャンドラ》でめくったことで、状況は変化した。
そう、《反逆の先導者、チャンドラ》の忠誠値は7。つまりこのターンの攻撃を躱すことで紋章を獲得することができる。呪文を唱えれば好きな場所に5点。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》もクリーチャーも薙ぎ払える。
そしてその呪文を引きに行きながらチャンプブロックという二つの役目を担うことができるのが、この《ならず者の精製屋》なのだ。
和田は手札の3枚目の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイするしかない。ここで紋章を獲得すれば、いよいよ佐藤の反撃が始まる。
……だが、佐藤は《反逆の先導者、チャンドラ》のプラスを選択。
ということはつまり、他に選択肢がないということだった。
見事に光る、神の攻め。
和田 1-1 佐藤
Game 3
最後のゲームは《霊気との調和》の詠唱から幕を開けた。和田は《乱脈な気孔》でターンを返し、佐藤は《導路の召使い》。
和田は2ターン目も土地をタップインすることになったが、《模範的な造り手》を添え、攻撃の姿勢は見せる。
展開が思うようにできない和田を後目に佐藤は《導路の召使い》、そして《牙長獣の仔》を連続で召喚。エネルギーは既に5個あり、《牙長獣の仔》を2度強化することができる。
佐藤 達郎
和田は悩んだ末、《模範的な造り手》で攻撃することはなく、《屑鉄場のたかり屋》と《スレイベンの検査官》を唱えてターンを返す。
これに対して佐藤は《導路の召使い》2体、《牙長獣の仔》で攻撃。これをすべて和田がスルーしたのを見て、《牙長獣の仔》に+1/+1カウンターを一つ乗せる。そして《つむじ風の巨匠》をキャスト。
ライフレースで先行されている和田はこの《つむじ風の巨匠》がとにかく厳しい。ならばと《屑鉄場のたかり屋》と《模範的な造り手》で攻撃を仕掛ける。和田の狙いは明白で、飛行機械トークンをブロッカーに回させることで、ダメージをクロックを抑えようとしているのだ。攻撃は最大の防御。守りのための攻めだ。
この目論見は成功し、飛行機械トークンが《模範的な造り手》をチャンプブロックする。それを見届けて、《栄光半ばの修練者》を戦場に送り出す。ダメージレースをひっくり返すカードはこれしかない。除去さえされなければ。
果たして佐藤の次のアクションは――サイクリング。そして《導路の召使い》1体のみでアタック。ということは、《栄光半ばの修練者》を戦闘で打ち取る算段ということだ。つまり除去はない。
それを瞬時に理解した和田。盤面を慎重に見つめると、《屑鉄場のたかり屋》だけで攻撃する。佐藤は攻撃をスルーし、和田は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を。マナを立たせている佐藤からは――《否認》の声はなし。
ようやく状況を五分に、いや有利に覆した和田。いや、覆した――はずだった。
佐藤が1枚のカードを唱える、その瞬間までは。
それは渾身の《バラルの巧技》!
《模範的な造り手》と《栄光半ばの修練者》、2/2トークンが戦場から消え、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と和田に佐藤の軍勢が襲い掛かる。
和田に抵抗する力は、もうない。
必殺の1枚で攻め切った佐藤が、見事“神討ち”を果たしたのだった。
和田 1-2 佐藤
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