By Yuya Hosokawa
環境名人戦は、プロツアーと同じスタンダードとドラフトの混合フォーマットで行われている。プロツアーの体験ができる場、それが環境名人戦だ。
そしてその環境名人戦には、本当のプロツアーを数多く経験したプレイヤーも参加している。
シルバーレベルプロプレイヤー、菅谷 裕信もその一人だ。
千葉の古豪プレイヤーにして二度のグランプリチャンピオンである菅谷は、一度目はスタンダード、二度目はリミテッドと、両フォーマットに長けたプレイヤーだ。この『アモンケット』環境名人戦の優勝候補の一人と言っても過言ではないだろう。
一方、強敵菅谷と3勝0敗を賭けて戦うのがパシス ジャック ニコルだ。
グランプリ・静岡2017春で見事に13勝2敗の成績を収め、来月に行われるプロツアー『破滅の刻』への参加権利を獲得しているパシスは、つい先週もPPTQを黒単ゾンビで突破しており、今ノリにノっているスタンダード巧者だ。
菅谷 裕信 vs. パシス ジャック ニコル
シルバーレベルプロの古豪と、勢いに乗る新鋭の戦い。エネルギーの飛び交う第三回戦をお届けしよう。
Game 1
先手の菅谷は《霊気拠点》、パシスは《獲物道》タップインと、互いにアクションのない1ターン目。
菅谷は2枚目の《霊気拠点》を置き、エネルギーを1個使用し、唱えるカードに迷いながら結局《牙長獣の仔》をキャスト。対照的に色マナの潤沢なパシスは《植物の聖域》から《導路の召使い》。
この《導路の召使い》を《蓄霊稲妻》で焼き払った菅谷。《牙長獣の仔》の攻撃でひとまずエネルギー問題は解決したが、次のパシスからの刺客である《つむじ風の巨匠》の前には少考。
結果、《牙長獣の仔》で攻撃することにした菅谷。3つのエネルギーを持った上でのこの攻撃にパシスは《つむじ風の巨匠》で生み出したトークンを捧げる。
追加の土地がない菅谷は《導路の召使い》を唱えてエンド。
一方のパシスも《牙長獣の仔》をキャストするのみで、防戦に備える。
土地をまだ引かない菅谷。《ならず者の精製屋》を唱えてエネルギーが枯渇することはないものの、根本的に土地が足りない。
ここでパシスの逆襲。《栄光をもたらすもの》が《導路の召使い》を焼き払いながら、強烈な一打を菅谷に与える。
祈るような菅谷のドロー。ようやく引いたのは土地……ではなく《霊気との調和》。《山》をサーチし、《牙長獣の仔》で攻撃すると、エネルギーを生み出して2マナを立たせてターンを終了。
パシスは《逆毛ハイドラ》をキャスト。この時点で元々エネルギーが3つあるため、菅谷はこれをスルー。だが攻撃してきた《牙長獣の仔》には《ならず者の精製屋》と《マグマのしぶき》の合わせ技で対処する。
さらに《牙長獣の仔》を強化するためにエネルギーを使用していたこの機を狙い、菅谷は《逆毛ハイドラ》に《蓄霊稲妻》を向ける。続けて《牙長獣の仔》を5/5まで強化し、《栄光をもたらすもの》の射程圏外へと送り、ライフレースでは依然として先行。
事故に見舞われながらも素早く状況に対応した最善手を選ぶ菅谷。老練なプレイだ。
だが、新鋭はさらにその上を行った。
菅谷のターンが始まったと同時に、パシスから発せられる「アップキープ」の声。
そして「現出」する《老いたる深海鬼》。
菅谷が手をかけたのはライブラリーではなく、サイドボードだった。
パシス 1-0 菅谷
Game 2
今度は《獲物道》から《霊気拠点》、《導路の召使い》と順調な滑り出しを見せる菅谷。これは《蓄霊稲妻》で焼かれてしまうが、次のターンには《つむじ風の巨匠》をプレイし、3ターン目のパシスのアクションが《ならず者の精製屋》だったのを見て、すぐに飛行機械トークンを生み出す。
そして《逆毛ハイドラ》をキャスト。これに対してのパシスは2枚目の《ならず者の精製屋》でカードを引き、表情を歪めた。
そう、4枚目の土地がなかったのだ。
この隙を逃す菅谷ではない。《不屈の神ロナス》を着地させ、次のターンからは《逆毛ハイドラ》を相棒に戦場へと駆ける。
菅谷 裕信
ようやく《霊気との調和》を引いたパシスだったが、《ならず者の精製屋》を追加することしかできない。
《不屈の神ロナス》の攻撃を受けて早くもライフは10。
《慮外な押収》で《不屈の神ロナス》を奪うという好プレイを見せるパシスだったが、菅谷が《栄光をもたらすもの》をレッドゾーンに送り込むと、ライフはぴったり0点となったのだった。
パシス 1-1 菅谷
Game 3
最後のゲームはお互いに仲良くマリガンとなったが、6枚の手札に対して、両者は正反対の反応を見せた。
パシスはノータイムでキープし、菅谷はうめきをあげながら悩む。結局、そのまま6枚同士により、全勝対決の最終戦は始まった。
《植物の聖域》を置き合うスタートから、後手の菅谷だけが《霊気との調和》で土地をサーチする。遅れて2ターン目に《霊気との調和》をパシスも唱えるが、3ターン目にもアクションはなく、3マナを立たせて菅谷を見やる。
さて、長考の末のキープとなった菅谷だが、展開は順調だ。
《導路の召使い》、《ならず者の精製屋》と展開し、エネルギーとパーマネント、手札を増やしながら、アクションのないパシスを追い詰めていく。
だがパシスには策があった。ここに突き刺さる《焼けつく双陽》。返しのターンでアクションのない菅谷はこちらも《焼けつく双陽》を使うことしかできない――こちらはサイクリングで。
パシス ジャック ニコル
そしてパシスの戦場に現れる《不屈の神ロナス》。神を前にして菅谷にできることはなく、ただカードを引いてターンを終えるのみ。
この《不屈の神ロナス》が止まらない菅谷。パシスは引いたクリーチャーを場に出しては《不屈の神ロナス》で攻撃していく。《導路の召使い》を出して攻撃。《牙長獣の仔》を唱えて攻撃。
菅谷は5点のダメージを甘んじて受けながら、後から出てきた生物たちに除去を浴びせていく。攻撃が止むことを信じて。
果たして祈りは――通じた。パシスは追加のクリーチャーを用意できず、《不屈の神ロナス》は動かない。
さらに《不屈の神ロナス》をチャンプブロックできる《つむじ風の巨匠》をキャスト。菅谷の持つ潤沢なエネルギーに視線を向けるパシス
この《つむじ風の巨匠》に対して虎の子の《慮外な押収》を使用するパシスだが、菅谷はきっちりとここに《否認》を合わせる。
そしてこれが、ゲームの流れを決定付けた。
ターン終了時に菅谷はエネルギーをすべてつぎ込んでありったけの飛行機械トークンを出すと、《反逆の先導者、チャンドラ》のプラス能力と合わせて一気にパシスのライフを削りにかかる。
パシスのドローは土地。《不屈の神ロナス》は、レッドゾーンに現れない。
最後のドローでも土地を引いたパシスは、敗北を認めて手札を公開したのだった。
パシス 1-2 菅谷
パシス「ゲーム2、1回チャンプブロックできたかな……」
菅谷「ああ、《不屈の神ロナス》のところね」
パシス「ですね。あそこがミスだったかもしれないです」
菅谷「たしかに、あそこはちょっと勿体なかったかも」
試合後、二人は意見を交わす。
プロツアーへ初挑戦する新鋭と、プロツアーを経験するレベルプロ。両者が真剣勝負をできる場所、環境名人戦では、このような感想戦がそこら中で繰り広げられているのだ。
この記事内で掲載されたカード
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする