加茂 里樹(東京)の「緑多色」ドラフトのすゝめ

晴れる屋

By Hiroshi Okubo

 ついに開幕した『アモンケット』環境名人戦。スタンダードとドラフトの混合フォーマット(※スタンダード3回戦+ドラフト3回戦+スタンダード3回戦)で競われる本イベントは、正午を過ぎるころには1回目のスタンダードラウンド3回戦が終了し、中盤戦のドラフトラウンドが開始された。

 そしてドラフトといえば、ピックに際しての細やかなテクニックやデッキの構築力をはじめとして、プレイ中もライフ管理はもちろん除去やコンバットトリックのケアなど常に絶妙な判断が求められるフォーマットだ。

華麗な苦悶蜘蛛の掌握

 構築フォーマットとはまた違った意味での“日ごろの走り込み”を問われるこの戦い。果たしてここではどのような技巧が見られるのだろうか……ふと目をやったフロアではドラフトポッドが公開され、プレイヤーたちが続々と席を移動していた。そしてその中に、まさしく“日ごろ走りこんでいる1人”がいた。

 加茂 里樹(東京)。

 上述の通り『第1回ドラフトマニア』でも優勝を収めていた(※そのときのレポートはこちら)加茂は、先月開催されたグランプリ・北京2017でもベスト8入賞を収めたリミテッド巧者だ。

 本記事では加茂のドラフトピックに密着し、この『アモンケット』リミテッド環境での勝利の秘訣と、ドラフト上達のコツを伺った。

加茂 里樹(東京)

加茂 里樹(東京)

ドラフトピック 1パック目

順目 ピック内容 他のピック候補
1-1 《象形の守り手》 《強制的永眠》
《呪われた者の王》
《活力のカルトーシュ》
1-2 《強制的永眠》 《徹頭+徹尾》
1-3 《マグマのしぶき》 《活力のカルトーシュ》
《燃えさし角のミノタウルス》
《戦場のゴミあさり》
1-4 《感電》
1-5 《食餌+給餌》
1-6 《オナガトカゲ》 《死後の放浪》
1-7 《道拓きの修練者》 《洞察の探求者》
1-8 《開拓+精神》
1-9 《採石場の運び屋》
1-10 《採石場の運び屋》
1-11 《花粉のもや》
1-12 《造反者の解放》
1-13 《ヘクマの歩哨》
1-14 《陽焼けした砂漠》

--「初手は《象形の守り手》でしたが、《呪われた者の王》よりも優先されるんですね」

象形の守り手呪われた者の王

加茂「ここは単純なカードパワーを重視しました。『白黒ゾンビ』は非常に強くて人気のアーキタイプなので『3-0以外に価値がない』という伸るか反るかの局面では良い選択ですが、それ以外だとややリスキーな選択だと思います」

--「たしかに1-2で《強制的永眠》をピックしていましたが、その後の白の流れはよくありませんでしたね。ピックの方向性が定まったのはどのタイミングですか?」

加茂「1-5の《食餌+給餌》です。1-3で《活力のカルトーシュ》が流れてきていたため緑が空いているような気はしたのですが、1-5で確信しました。1-3と1-4で赤い除去も取れていたので、赤緑を軸にした『緑多色』が組めればいいなと」

食餌+給餌

--「他に何か気になった点などはありますか?」

加茂「7手目の《道拓きの修練者》は明確にミスでした。よりデッキの方向性に合う《洞察の探求者》をピックしておけばよかったですね……」

道拓きの修練者洞察の探求者

--「ありがとうございます。引き続き2パック目のピックの解説をお願いします」

ドラフトピック 2パック目

順目 ピック内容 他のピック候補
2-1 《驚天+動地》 《ケンラの戦車乗り》
《死後の放浪》
《野望の試練》
2-2 《異臭の池》 《無慈悲な投槍手》
《激情のカルトーシュ》
2-3 《開拓+精神》 《感電》
《採石場の運び屋》
2-4 《ネフ一門の鉄球戦士》 《野望の試練》
《激情のカルトーシュ》
2-5 《色彩の断崖》
2-6 《突風撃》 《ター一門の散兵》
2-7 《打擲場のマンティコア》
2-8 《苦しめる声》 《飛びかかるチーター》
2-9 《ケンラの戦車乗り》 《ミノタウルスの名射手》
2-10 《飛びかかるチーター》
2-11 《ナーガの神託者》
2-12 《蜘蛛の掌握》
2-13 《栄光の探究》
2-14 《苦しめる声》

加茂「2パック目のピックが終わった時点で「あ、これヤバいな」と焦り始めました(笑) リミテッドはデッキの中にいかに勝ちパターンを盛り込むか、というイメージが大切ですが、この時点ではデッキには勝ちパターンがありません」

--「2-1で爆弾レアである《驚天+動地》をピックできているので、そこまで悪くはないかと思うのですが……」

驚天+動地

加茂「逆に言えば、特筆すべきことはそれだけですからね。3パック目でしっかりと勝ち筋になるカードをピックしていきたいところです」

--「デッキの完成形を意識しながらピックを進めていく、ということですね」

ドラフトピック 3パック目

順目 ピック内容 他のピック候補
3-1 《燃えさし角のミノタウルス》 《試練に臨むギデオン(Foil)》
《ドレイクの安息地》
《激情のカルトーシュ》
3-2 《名誉あるハイドラ》 《活力の試練》
3-3 《サンドワームの収斂》 《感電》
3-4 《戦場のゴミあさり》 《楽園の贈り物》
3-5 《巨大百足》 《うろつく蛇豹》
3-6 《ナーガの生気論者》 《ケンラの戦車乗り》
3-7 《死後の放浪》 《無慈悲な投槍手》
3-8 《ター一門の散兵》 《採石場の運び屋》
3-9 《叱責の風》
3-10 《オアシュラの耕作者》 《打擲場のマンティコア》
3-11 《粉骨+砕身》
3-12 《楽園の贈り物》
3-13 《飛びかかるチーター》
3-14 《力ずく》

--「濃い3パック目でしたね。特に3-1……」

加茂「さすがに本番じゃなければ《試練に臨むギデオン》取ります(笑) 《ドレイクの安息地》もほしかったのですが……デッキに入らない爆弾レアよりも堅実な優良コモンですね」

試練に臨むギデオンドレイクの安息地

--「さきほどおっしゃっていた“勝ち筋になるカード”ですね。その観点ですと3パック目は全体的に非常に良い流れでしたね」

加茂「3-2と3-3の《名誉あるハイドラ》《サンドワームの収斂》は出来過ぎですが、『緑多色』に必要なフィニッシャーは一気に充実しました。その後も《巨大百足》などをピックできたので何とかデッキになりそうです」

名誉あるハイドラサンドワームの収斂

--「3-12では『緑多色』のキーカードである《楽園の贈り物》も拾うことができましたね」

楽園の贈り物

加茂「たしかに一周してきてもおかしくないカードではあるのですが、4手目で取ろうかどうか少し悩んだところだったので僥倖でした」

--「実際に組み上がったデッキがこちらです」


加茂 里樹「緑多色」

7 《森》
6 《山》
1 《島》
1 《異臭の池》
1 《色彩の断崖》

-土地(16)-

1 《オアシュラの耕作者》
1 《戦場のゴミあさり》
1 《ナーガの生気論者》
1 《ネフ一門の鉄球戦士》
1 《ケンラの戦車乗り》
1 《オナガトカゲ》
1 《燃えさし角のミノタウルス》
2 《採石場の運び屋》
1 《打擲場のマンティコア》
1 《巨大百足》
1 《象形の守り手》
1 《名誉あるハイドラ》

-クリーチャー(13)-
1 《マグマのしぶき》
1 《突風撃》
1 《蜘蛛の掌握》
1 《感電》
1 《驚天+動地》
1 《粉骨+砕身》
1 《食餌+給餌》
2 《開拓+精神》
1 《楽園の贈り物》
1 《サンドワームの収斂》

-呪文(11)-
hareruya

ドラフトの勝利の秘訣

--「今回は『緑多色』を組まれていましたが、このアーキタイプで必要となる要素はどういったものになるのでしょうか?」

加茂《開拓+精神》《楽園の贈り物》《ナーガの生気論者》といったマナランプカードはもちろんですが、盤面ががら空きになりやすいので除去も重要です。今回は1-3と1-4で《マグマのしぶき》《感電》を取れていたため、そこからスムーズに『緑多色』に入れました」

マグマのしぶき感電

--「『アモンケット』環境は強烈なアーキタイプ環境だと聞いていますが、この環境のドラフトの秘訣は何かありますか?」

加茂「まず各色の組み合わせでのアーキタイプを理解し、組めるようになることと、今回僕が組んだような『緑多色』をやってみることだと思います。」

--「『緑多色』をやってみる、ですか。理由をお聞かせいただけますか?」

加茂「『緑多色』では3色以上のデッキになるため他のアーキタイプで使用されるテクニックや構築スキルも活かしやすく、正しい『緑多色』を構築できるようになれば環境の理解が深まると考えています。強いカードは取れたけど色がきれいにまとまらない、といった困ったときに頼れるアーキタイプでもあるので、組み方を覚えておいて損はないと思いますよ」

加茂 里樹(東京)

--「なるほど、他のアーキタイプでも応用が利く技術が身につくと……。最後に、ドラフトというフォーマットそのものの上達のコツなどがあれば教えてください」

加茂6人ドラフトをやることですね」

--「6人ですか。8人ではなく?」

加茂「8人でもいいのですが、その場合も4人4人でチームに分かれたほうがいいでしょう。つまり、チームドラフトをやることが上達のコツです。チームドラフトではお互いに構築やピックについて意見を交換することになるので、具体的に何が成功(失敗)だったか、といった事柄を理解しやすいです。弱いデッキを組んだときに、叱ってくれる人(?)がいた方が上達の助けになりますよね」

--「たしかに、1人で8人ドラフトに参加していても『今日はうまくできた』とか『うまくできなかった』で済ませてしまい、なかなか具体的にどこが失敗だったかを考える機会は多くないかもしれません……ためになりました。お話ありがとうございました!」


 終始丁寧に自身のピックや構築について解説してくれた加茂。彼は最後に「ドラフトがもっと流行ってくれるといいな」と言っていた。

 「なんだか難しそう」「レアが強ければ勝つんでしょ」といったイメージを持たれがちなドラフトだが、みなさんも試しに一度周囲の友人に呼び掛けてチームドラフトで遊んでみてはいかがだろうか? きっと新たな発見とドラフトフォーマットの奥深さを感じられることだろう。

Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする