Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/10/29)
自分の日
やぁみんな!
マジックの大会に出る人なら「自分でできる限りのことはほとんどやった」と思いながら会場を去ることがあるだろう。ただ今日は自分の日ではなかったと。でもその逆も起こり得る。それがまさにミシックチャンピオンシップ・ロングビーチ2019(MC V)に参加していた自分の身に起きた。
ゴロスを使うか、倒すか
今回一緒に調整したのは、アンドレア・メングッチ/Andrea Mengucci、リー・シー・ティエン/Lee Shi Tian、カルロス・ロマオ/Carlos Romao、ルーカス・エスペル・ベルサウド/Lucas Esper Berthoud、マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalho、アンソニー・リー/Anthony Lee、ベアトリス・グランチャ/Beatriz Granchaだった。いつもは15人ほどの調整グループだが、今回MC Vに参加できるのは6人だけであり、それぞれ使用するデッキは分かれた。バントゴロス2人、バントフード2人、アグロが2人(赤単とグルール)だ。
今回のMCは、デッキ提出の締め切り時間という点で以前のプロツアーに似ていた。新セットの発売からおよそ2週間でデッキを作らなければならなかったんだ。当時を知らない人のために言っておくと、プロツアー/MCは新セットの名前を冠していた(たとえば、プロツアー『テーロス』)。だから今回のMCは”ミシックチャンピオンシップ『エルドレインの王権』”のような印象が強かった。MTGアリーナで『エルドレインの王権』がリリースされてから2週間足らずでデッキを提出する必要があったんだ。
計算してみればわかるけど、デッキ提出の締め切りは本番のおよそ9日前だった。当日の運営が円滑に進むようにするためだ。時間が非常に限られていたため、参加者たちはベストデッキを見つけようとデッキ構築に全神経を集中させていた。
しかし、マジックを取り巻く環境は数年前と大きく異なっている。昨今は情報の拡散が驚くほど速い。プロの調整チームが”秘蔵のデッキ”を持ち込むであろう未知のメタゲームではなく、倒すべき相手が明確なメタゲームが存在しているんだ(今回はバントゴロス)。こうなった原因はいくつかあるはずだけど、世界中でマジックのゲーム数が増加していること、マジックのコミュニティがより密接になってきているのが大きな原因に含まれていると思う。
俺の記事をよく読んでくれている人なら、ゴロスデッキを使うだろうと思ったかもしれない。実際そのつもりだった。デッキ提出直前の週末には、MOCS Playoffでバントゴロスを使ってトップ8に入賞した。この大会はレベルが高く、参加者の多くはスタンダードを非常に得意としている。そこでトップ8に入れたのはバントゴロスの評価を高める要因となった。
バントゴロスを使っていくほど、そのデッキのパワーの高さに気づいていった。しかし同時に、このデッキを対策した相手には弱いという印象が強まっていった。バントゴロスは突出した強さを持っているが、ほとんどの相手がこのデッキを意識した調整になっているという問題点に気づいてしまったんだ。徐々に、有利な相手がやや有利な相手になり、不利な相手は相変わらず不利なままという状況が生まれていった。
特に超高速デッキとの相性は大きな問題だった。こういったデッキは《王冠泥棒、オーコ》に非常に弱いという事実が唯一の頼りだったんだ。
《王冠泥棒、オーコ》がゴロスデッキを強力なものにしているというのが自分なりの結論だった。ゴロスデッキに強い構成にしようとするとオーコデッキに弱い構成になってしまうため、ゴロスデッキを狩ろうとするデッキに多少の歯止めをかけていた。
締め切りの2日前。オーコデッキがバントゴロスと十分に戦える構成になったことが非常に気がかりになり、別の選択肢を探し始めた。上位卓のおよそ50%がゴロスデッキになると予想していたため、もしかしたら対ゴロスデッキが功を奏するかもしれないと考えた。
ゴロスデッキを使い込んできたため、その弱点も十分に把握していた。速攻クリーチャーや直接ダメージが厄介で、飛行クリーチャーもやや問題となる。しかし、ほぼどうしようもないカードがあった。
この考えを活かし、グルールを試してみることにした。これまでに《エンバレスの宝剣》を使ってきた相手は、ほとんどグルールだったからだ。
グルールの第一印象はかなり残念なものだった。マナベースは安定しておらず、速攻クリーチャーでできるだけ早くライフを削りきるというプランに合致しないカードが多かったんだ。
見切りをつける前に、最後にグルールにもう一度だけチャンスを与えようと決めた。ただし、今回はバントゴロスで得た教訓を活かすことにした。
《むかしむかし》は”壊れている”。
グルールはマナベースが弱く、1ターン目に《生皮収集家》がぜひとも欲しいデッキだ。《むかしむかし》はどちらの側面にも対応できる。このアイディアを実践に移し、まずは2枚だけ入れて試してみた。そして数ゲームやっただけで《むかしむかし》が4枚欲しいデッキだと確信した。デッキの動きを非常に円滑にしてくれたからだ。マリガンに強くなるだけでなく、爆発的な初動を決めやすくなるため、不利なマッチアップを改善する手段にもなっていた。
ゴロスデッキを食い物にすることに特化させたかったため、そのマッチアップで少なくとも弱くないカードだけでメインデッキを構成することに決めていた。だからこそ《ドムリの待ち伏せ》やプレインズウォーカーのドムリを入れないようにした。また、攻撃を目的とするクリーチャーは《樹上の草食獣》で止まらないことが必須だった。ランク戦で実際にバントゴロスに当たるまでに時間がかかったものの、4回連続で対戦した際にはグルールは期待通りの働きを見せてくれた。
こうしてゴロスデッキに強いものが用意できた。そうなることを意図して作ったものであり、1ゲーム目からサイドボード後のような構成で戦えるように実際に構築したため、当然だろう。
ところが、その調整過程であることに気づき、それがグルールの使用を決定づける大きな要因となった。グルールは生来的にゴロスデッキを倒すことに特化させたデッキに強かったんだ。昔から、ロングゲームに強いデッキを倒す最善の策は、単純に手数で圧倒することであり、今回も例外ではなかった。しかし、《グルールの呪文砕き》や《スカルガンのヘルカイト》といったカードが攻撃も守備もこなす一人二役であったのは思わぬ収穫だった。手数で圧倒しようとするアグロは、5/5の除去能力を持つドラゴンの対処に苦戦しやすいんだ。
締め切りは目前まで迫っており、選択肢は2つに絞られていた。バントゴロスかグルールか。最終的に下した判断は、ゴロスデッキと対ゴロスデッキを足し合わせた使用率を考えればグルールが合理的な選択になるだろうというものだった。《むかしむかし》で安定感が増したことでテンポ良く動くことが十分に可能だと感じ、相性が悪いマッチアップも勝てる見込みがあると言えるだろうと考えた。
グルールに心を決めたときに考慮していなかったメリットがもうひとつあった。チームメイトが俺のデッキ選択をからかって楽しんでくれたことだ。こんなことで笑ってくれるなら最高さ!
ミシックチャンピオンシップ V
初日
初日に向け、自分のデッキ選択にあまり満足ができない心境だった。デッキ構築の段階からフードデッキではなく、ゴロスデッキを倒すことを意識してきたため、できれば当たりたくないフードデッキが多かったからだ。
計画は思うように運ばなかった。初戦はメングッチと当たり、あっという間にやられた。その後、同じくフードデッキを使用していた市川ユウキに敗北し、開始早々に0-2となって窮地に追いやられてしまったんだ。開幕2連敗スタートはふつうはタイブレイカーが低くなってしまうため、2日目に進出するにはこの後5連勝しなければならないだろうと予想していた。その後のミラーマッチなどでは調子を取り戻し、総合成績は4-2となったが、勝てば2日目という最終戦で構築マスターであるセバスティアン・ポッツォ/Sebastian Pozzo(バントゴロス)が立ちはだかった。相性が良い相手ではあったが、試合の流れが良くなく、ポッツォが勝利を手にした。ちょっとした幸運に恵まれ、2日目進出の24名の枠に23位で滑り込むことができた。翌日になればスタンディングはリセットされる。初日はジェットコースターのような日だったが、終わり良ければすべて良しだ。
2日目
2日目はMPL所属のオータム・バーチェット/Autumn Burchettに勝利する幕開けだった。クリス・カヴァルテク/Chris Kvartekの操るシミックフードにまたもや負けてしまったものの、アグロを使うリー・シー・ティエン/Lee Shi Tianや行弘 賢に勝ち、総合成績を3-1として、トップ8進出に向けて良いポジションにつけた。
次なる相手はセス・マンフィールド/Seth Manfield(バントゴロス)。ロンドンでの出来事を彷彿とさせるものだった。バントゴロス自体は相性が最も良かったが、セスや彼と同等のプレイヤーと大会で当たって歓喜するプレイヤーなどいないだろう。
コラム:デッキかプレイヤーか
良き友人であるゼン・タカハシ/Zen Takahashiはかつてこう言っていた。セス・マンフィールドはおそらく世界で最もドレッジを使うのが上手く、バーンも同様だと。個人的な見解では、マジックは互いのデッキだけではなく、ゲームを実際にプレイする2人が重要だ。相手が何を使っているのかよりも、相手が誰なのかを重視することが多い。デッキ構築に関する判断はマッチ相性に大きな影響を与えるが、マジックはゲーム内での判断も極めて重要だと思うからだ。
この考え方は大会中にはあまり関係がない。というのも、誰とペアリングされるか選べないからだ。とはいえ、この考え方は競技プレイヤーにひどく過小評価されがちであると昔から思ってきた。特定のマッチアップは相手が違えばゲーム展開も違ってくる。相手によって構築を変えるということはときとして正しい。
閑話休題
バントゴロスに対する勝率は、MCのような大会に参加するトッププレイヤーに対して最も高い数値だったはずだ。だからその他のデッキと当たるよりも状況としては好ましいものだった。実際のマッチではセスのデッキが全く機能せず、あっさりと4-1になり、トップ8が現実的になっていた。残る2試合で1勝でもすれば良い。
勝てばトップ8の初戦は、調整メンバーであったメングッチ(バントフード)との再戦で、彼はまた俺を食い物にしてトップ8進出を決めた。
ここで勝たなければならない最終戦。ゴロスデッキに当たることを強く願ったが、殿堂プレイヤーのガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassif(シミックフード)とペアリングされた。非常に相性が悪い相手だ。緊張感あふれる2ゲームを終え、俺は勝てばトップ8の試合を落としてしまった……。ところが、タイブレイカーで8位に入ることができた。4-3で3日目進出できたのは一人だけであり、実際には最終戦は勝てばトップ8の試合ではなかった。
厳しいタイブレイカー争いの結果、プロツアーで9位に入賞した経験が2回もある自分からすれば、非常にラッキーな出来事だった。タイブレイカーで滑り込んだことを知ったときは大興奮してしまったが、その数分後には実際の結果を知らせるトップ8アナウンスが行われた。
精魂尽き果ててしまったが、リー・シー・ティエンとメングッチと夕食をともにし、3人全員がトップ8に入ったことでとても幸せな時間を過ごすことができた。全員で3日目のブラケットを確認し、各々の相手との相性はどうかを検討してみると、俺とリーが勝てる確率は非常に低いものの、メングッチは十分に可能性があるという結論を出した。
3日目
3日目は全試合の模様がカメラに収められていると思うので、ここでは深入りしない。最初の2試合はフードデッキとの戦いだったが、何度かドローに恵まれてやっとフードデッキに勝つことができた。続いて、ジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Depraz(バントゴロス)に勝利し、3日目の成績を3-0とした。決勝で2回中1回でもマッチに勝利すれば良いことになる。
ドゥプラはメングッチを倒し、決勝まで登り詰めてきた。相手は再び最も相性の良いバントゴロスだ。しかし、ドゥプラはグルールに対して非常に有効なサイドボードプランを用意している手ごわい相手だ。一筋縄では行かないだろうとわかっていたし、実際にその通りになった。ドゥプラは最初のマッチをものにし、小休憩をはさんだ後に決勝の2マッチ目が行われた。この試合の勝者がMC Vの覇者となる。
最終マッチはこちらが先手の最後のゲームまでもつれ込んだ。そして、強力な装備品である《エンバレスの宝剣》が駆けつけてくれた。その数分後、俺はMC Vの勝者となっていた。
喜びが爆発した後、信じられないという気持ちになった。全てのことが自分にとって有利に運び、ブラケットを見る限りでは勝てる見込みが低い大会を制覇したんだ。
最高の気分だった。
世界選手権を優勝した後にMCに勝つというのはどんな気分なんだと何度か訊かれた。もし世界選手権を優勝していなかったらわからなかった感覚だろうけど、MCを勝つことも感極まるものだった。この感覚に慣れている人がいるのか知らないけど、いるとすればカイ・ブッディ/Kai Buddeかもしれないね。
自分はというと、いつになってもこう思ってしまう。「これは現実か?」ってね。
でも現実なのは間違いない。そうじゃなきゃ、この記事を何で書いているんだって話になる。
サポートしてくれた人、道中で手を差し伸べてくれた人。改めてみんなに感謝したい。今大会のあらゆる瞬間が人生で二度と味わえない経験だった。その過程で多くの人にいただいたサポートがなければ得ることができなかった体験だ。
FERVENT CHAMPION #GRUUL #MythicChampionshipV pic.twitter.com/OMmQqD6kXR
— Javier Domínguez "Thalai" (@JavierDmagic) October 21, 2019
「《熱烈な勇者》」
グルール!
9 《山》
4 《踏み鳴らされる地》
-土地 (23)- 4 《生皮収集家》
4 《ザル=ターのゴブリン》
3 《楽園のドルイド》
2 《クロールの銛撃ち》
4 《グルールの呪文砕き》
4 《砕骨の巨人》
4 《探索する獣》
3 《スカルガンのヘルカイト》
-クリーチャー (28)-
グルールを使うに至った経緯については簡単に触れた。ここからはグルールそのものについて少し話そう。《死者の原野》が禁止になったことでメタゲームは変化しているが、デッキのコンセプトは大部分が今もなお顕在だ。
このデッキはマナカーブ通りに動くことを狙いとしている。そのため、この狙いが達成されない手札はふつうはマリガンだ。土地と呪文の比率が良い手札でもね。別の言葉で言うなら、マナカーブ通りにプレイしない限り、グルールのカードは相手のカードに劣るだろうということだ。
グルールのマナベースは常に問題だった部分であり、《むかしむかし》がなければ今も大きく改善されることはなかっただろう。このデッキが使える多色土地は《踏み鳴らされる地》しかない。毎ターンマナを無駄なく使いたいため、《寓話の小道》のようなタップインの土地は本当に残念なカードだった。
《生皮収集家》
《生皮収集家》はマナカーブ通りに動くために最も重要なカードであり、最も重要なクリーチャーでもある。常に1ターン目に展開したいため、このクリーチャーを含む機能的な手札は大抵はキープに値するだろう。先手1ターン目の《生皮収集家》からマナカーブ通りに動けば、相手はなかなか勢いを止めることはできない。《生皮収集家》を4枚、《むかしむかし》を4枚採用すれば、1ターン目に《生皮収集家》を着地させられる確率を上げられる。同時に、デッキ内の1マナ域の数を減らすことができるため、トップデッキの平均的な質を高くすることができる。
《ザル=ターのゴブリン》
デッキの枠を埋める平凡なカードにも思えるが、《ザル=ターのゴブリン》は良いカードだと思う。というのも、2/2の速攻モードが有用であるこのデッキでは《番狼》の上位互換だからだ。「暴動」は+1/+1カウンターのモードを選ぶことがほとんどだが、《轟音のクラリオン》の可能性を考えたり、相手のライフが少なかったりする場合は速攻モードが魅力的なものになる。
《クロールの銛撃ち》
先ほど簡単に触れたように、攻撃に回るクリーチャーは《樹上の草食獣》を乗り越えられるようにしたかった。そのため、《義賊》や《僻境生まれの保護者》といったカードはすぐに候補から外れた。実際に試したこともあったが、いずれも非常にがっかりさせられた。《樹上の草食獣》で止まらないアタッカーのなかでは、《クロールの銛撃ち》が最も強力であり、《金のガチョウ》を落とせるのは今後も非常に重要な要素となるだろう。フードデッキが一番人気であるなら、《クロールの銛撃ち》は4枚まで増やす可能性がある。
《楽園のドルイド》
《楽園のドルイド》はデッキを安定させるために採用している。3ターン目まで攻撃的に動きたいゲームもあるが、ときにはそのプランが機能しないこともある。2ターン目は3ターン目の動きを強化するという選択肢を持っておけば、《探索する獣》は良いバックアッププランとなる。サイドアウトしやすいカードは決して特別優れているわけではないが、《楽園のドルイド》はマナカーブを埋めてくれる点で満足しているカードだ。
《砕骨の巨人》
《砕骨の巨人》がベストな手札に必要なカードであることは滅多にないものの、完全に腐ることもなく、必要に応じてマナカーブを埋めてくれる。《王国まといの巨人》で除去されないのは魅力的なおまけだ。《王国まといの巨人》が環境に多くなくとも、《砕骨の巨人》は強いときは非常に強いカードであり、決して弱すぎる場面はない。
「出来事」の火力モードを介さずに《砕骨の巨人》を3ターン目に出すことはよくあるので覚えておこう。
《グルールの呪文砕き》
《グルールの呪文砕き》は柔軟性に富んだカードであり、MC Vで難しいと感じた判断はこのクリーチャーの「暴動」が関わっていることが多かった。速攻モードが基本だが、自分のデッキや環境全体には4/4にさせたいと思うカードが多く存在する。たとえば、《生皮収集家》や《エンバレスの宝剣》、あるいは相手の《王冠泥棒、オーコ》でさえ”守備的な”《グルールの呪文砕き》をプレイする合理的な理由となる。
《探索する獣》
《探索する獣》はグルールで非常に強い。今も昔も《探索する獣》が大好きというわけではないが、このデッキのゲームプランにとても噛み合っているんだ。そのため、相手が《探索する獣》をできるだけ早く対処するのが多いことを踏まえれば、伝説のクリーチャーだったとしても複数枚引いて困らない。グルールに対して《時を解す者、テフェリー》のようなカードの評価を下げつつ、《争闘/壮大》と相性が良いカードでもある。
《エンバレスの宝剣》を《探索する獣》に装備させたことはあるだろうか?これこそグルールのコンボさ!
《スカルガンのヘルカイト》
《スカルガンのヘルカイト》は調整期間中に決して好きになれなかったクリーチャーだったが、このデッキが機能するための必要悪であるとも思っていた。やや重いことが多いため4枚目は喜んで不採用にしたものの、巨大な速攻のドラゴンさえいれば勝てるという状況があまりにも多かった。
優秀なアタッカーでもあるが、攻撃的な戦略に対しても大活躍する。緑でない5/5のクリーチャーは《害悪な掌握》や《溶岩コイル》といった人気の除去を回避できるため、ほぼ対処できない脅威になりやすい。《スカルガンのヘルカイト》はMC Vで予想以上の活躍をしてくれたカードの1枚であり、単独で何度が勝利をもたらしてくれた。《ドムリの待ち伏せ》でもこのドラゴンを”目覚めさせる”ことができるから覚えておこう。「暴動」でなくても+1/+1カウンターが置かれていれば能力が起動できる。
《むかしむかし》
グルールはクリーチャー以外の呪文が少ないが、採用されているものは非常に重要なものだ。
《むかしむかし》はデッキ内で最強のカードであり、スタンダード全体でもそうかもしれない。MC Vで最も使用枚数が多かったのも偶然ではないだろう。グルールで《むかしむかし》を複数枚採用するのはナンセンスに思えるかもしれないが、決してそうではないと確信している。
グルールは毎ゲーム1~4マナ域を順序良く展開していくことを狙いとしていて、そのためには4枚の土地とマナ域ごとのクリーチャーが必要になる。《むかしむかし》はトランプのジョーカーのような働きをし、それなりの確率でいずれかに成り代わることができる。初手に土地が1枚しかないけど《むかしむかし》がある?余裕でキープだ!強力な初動を決めるには1マナ域が必要な少し遅めの手札がきた?《むかしむかし》があるなら上手くいく確率は十分にある!他の例も挙げればキリがない。中盤で《むかしむかし》をドローするのは理想的ではないが、もはや影響力を失った1~2マナ域をドローするよりかは良いだろう。《むかしむかし》ならば《スカルガンのヘルカイト》のような大型クリーチャーも手札に加えられる。
《むかしむかし》はローテーションで使えなくなるまでにいくつかの新しいデッキを生み出していく力があると思う。
《争闘/壮大》
《争闘/壮大》は本大会で採用した妨害要素だ。決して腐ることがなく、相手にブロックを強要できれば除去としても機能する。トランプルを付与できるため、大型クリーチャーとの相性も良い。《壮大》だけしか効果がなくとも1枚か2枚は採用していただろう。とはいえ、巨大な《ハイドロイド混成体》を除去したり、2ターン目に《金のガチョウ》を破壊したりできる能力はこのカードに柔軟性を与えているね。
ミラーマッチで《スカルガンのヘルカイト》を落とすのも1つの魅力だった。
《エンバレスの宝剣》
《エンバレスの宝剣》は大会が始まったばかりのころはあまり顔を見せてくれなかったが、ありがたいことに求めているときに現れてくれた。3枚に増やした方が良かったかはわからないが、1枚展開されて生き残れるデッキは多くないため、試してみる価値はあると思う。重ね引いてしまうと最悪だから、断言はできないけどね。
この装備品が得意とするのは、強い手札を圧倒的な手札に変えることだ。序盤の展開に大きく寄与するカードではないため、攻撃的な戦略に対しては立場が悪くなりやすい。プレインズウォーカーが増え、メタゲームが守備的なものになっていくならば、《エンバレスの宝剣》はより強力になっていくだろう。
サイドボードガイド
こんにちは!ここから読み始めたひともいるだろうからね!グルールのサイドボードガイドへようこそ!
グルールはモダンの能動的なデッキと少し似ている。全く別のデッキにしたい場合を除いて、あまり入れ替えをしないんだ。
ゴロス (禁止)
入れ替えはなし。以上。
フード
対 フード
フードとの相性は良くないが、クリーチャー数枚を適切なカードに入れ替えれば戦いやすくなる。メタゲーム次第では、《ドムリの待ち伏せ》を4枚採用したり、メインデッキに1~2枚入れても良いかもしれない。総じて《ドムリの待ち伏せ》は特別優れたカードではないものの、強いときは極めて強い。プレインズウォーカーにもダメージを与えられるので、2枚引けば《世界を揺るがす者、ニッサ》のようなカードに対して大打撃を与えられることもある。
(全体除去がある)コントロール
対 (全体除去がある)コントロール
ここでもゲームプランに変わりはないため、変更は少ない。相手が《轟音のクラリオン》や《創案の火》を使ってくる場合は、《砕骨の巨人》のような穴埋めのカードよりは《打ち壊すブロントドン》の方が良いだろう。
ゴルガリアドベンチャー
対 ゴルガリアドベンチャー
アグロ
アグロ戦略に対するサイドボードは、相手のゲームプランに依存する。相手がクリーチャー除去を非常に多く搭載しているのならば、より太いミッドレンジデッキに変身する選択肢を持っていた方が良い。もちろん、《争闘/壮大》や《クロールの銛撃ち》といったカードが欲しくなるような、攻めの戦略を取る場合もあるが、そういったケースは比較的わかりやすいはずだ。《ショック》は必ずしもアグロに有効ではないので気をつけよう。
大まかな指針を示しておく。
対 アグロ(アグロプラン)
《レッドキャップの乱闘》が有効な相手には、《楽園のドルイド》と《むかしむかし》を1枚ずつ減らす。
対 アグロ(ミッドレンジプラン)
《楽園のドルイド》を残すことが多いのは、クリーチャーの枚数が少ない構成になった場合に《ドムリの待ち伏せ》と相性が良いからだ。
《レッドキャップの乱闘》は赤でないデッキに対してサイドインしても全く問題ないので覚えておこう。グルールが得意としないゲームプランを可能にしてくれる。例を挙げよう。
シミックフラッシュ
対 シミックフラッシュ
こちらのクリーチャーたちはシミックフラッシュに対して有利な立ち位置にいる……《夜群れの伏兵》をプレイしてこなければ。
赤以外のデッキに対して《レッドキャップの乱闘》を進んでサイドインする例だ。他のマッチアップでもこの戦略が使えないか注意しておこう。大きな違いが生まれる!
おわりに
今回の内容は以上だ。
ここまで読んでくれてありがとう!
グルール!!!!!