みなさんこんにちは。
年末にはThe Last Sun 2019が開催され、モダンはさらに盛り上がっていきそうです。今回の連載では、『エルドレインの王権』リリース後のモダン環境がどのように変化したのかを、先月開催されたSCGやMOのイベントの入賞デッキから見ていきたいと思います。
SCGO Indianapolis
Stormの復権
2019年10月12-13日
- 1位 Gifts Storm
- 2位 Amulet Titan
- 3位 Amulet Titan
- 4位 Burn
- 5位 Jund Death’s Shadow
- 6位 Urza Ascendancy
- 7位 Selesnya Eldrazi
- 8位 Dredge
Drake Sasser
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禁止改定や『エルドレインの王権』により激変したモダンの環境でしたが、個人戦で行なわれたモダンの大規模なイベントは今大会が初でした。
今大会では、Amulet TitanやUrza、Jundが高い2日目進出率を出していました。Amulet Titanは優勝こそ逃したものの、準優勝とトップ4入賞を果たし安定した成績を残し続けています。
SCGO Indianapolis デッキ紹介
Gifts Storm
大会で上位で見るのは久々のGift Storm。禁止改定による環境の変化により復権してきたデッキの一つで、Tronなど土地コンボに強いこともあり再び注目を集めていました。
《甦る死滅都市、ホガーク》や《信仰無き物あさり》が禁止され、墓地デッキが減少したおかげで環境全体的に《外科的摘出》のメイン採用が少なくなったのもこのデッキの復権の後押しをしています。
☆注目ポイント
メインは過去のリストと比べると大きな変化はないようです。基本的な動きはソーサリーとインスタントのコストを減少させる《ゴブリンの電術師》、《遵法長、バラル》や儀式スペルからマナ加速し、《けちな贈り物》によって《炎の中の過去》などキーカードをサーチします。ストームを稼いでいき最終的に《ぶどう弾》や《巣穴からの総出》によって勝利を目指していくデッキです。
サイドの《炎のアリア》は、置物を対策する手段に貧しいデッキとのマッチアップで追加の勝ち手段として有用です。相手にライフゲインさせる能力も、Death’s Shadowデッキに対しては高い効果が望めます。墓地の状況に依存しないので墓地対策にも耐性があり、異なる角度から攻める手段となります。
カウンター対策として《神秘の論争》が《払拭》 よりも優先されています。カウンターだけを対策するなら確定で打ち消せる《払拭》の方が信頼性がありますが、《最高工匠卿、ウルザ》や《時を解す者、テフェリー》なども打ち消せる《神秘の論争》のフレキシブルさも捨てがたいところです。
SCGO Atlanta
モダンの環境も支配する《王冠泥棒、オーコ》
2019年10月26-27日
- 1位 Grixis Death’s Shadow
- 2位 Simic Whirza
- 3位 Simic Whirza
- 4位 Simic Whirza
- 5位 Amulet Titan
- 6位 Simic Whirza
- 7位 Urza Midrange
- 8位 Devoted Devastation
John Holland
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SCGO Indianapolisから2週間後に開催された今シーズン最後のSCGOであるSCGO Atlanta。スタンダードだけでなく新フォーマットのパイオニア、レガシーやヴィンテージでも活躍している《王冠泥棒、オーコ》を採用したSimic Whirzaがプレイオフの半数を占めるという圧倒的な強さを見せました。
優勝こそ逃したものの、《王冠泥棒、オーコ》のカードパワーの高さを証明するには十分な結果となりました。
SCGO Atlanta デッキ紹介
Simic Whirza
1 《冠雪の森》
1 《繁殖池》
1 《湿った墓》
4 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《沸騰する小湖》
2 《神秘の聖域》
-土地 (19)- 4 《金のガチョウ》
4 《湖に潜む者、エムリー》
4 《最高工匠卿、ウルザ》
-クリーチャー (12)-
2 《金属の叱責》
3 《謎めいた命令》
4 《オパールのモックス》
4 《ミシュラのガラクタ》
3 《仕組まれた爆薬》
4 《アーカムの天測儀》
1 《上天の呪文爆弾》
1 《飛行機械の鋳造所》
1 《弱者の剣》
4 《王冠泥棒、オーコ》
-呪文 (29)-
《湖に潜む者、エムリー》で《ミシュラのガラクタ》を再利用することでアドバンテージを稼ぐところはほかのバージョンと変わりませんが、今大会の上位を支配したこのSimic Whirzaはメインから《王冠泥棒、オーコ》が採用されており、《ジェスカイの隆盛》や《逆説的な結果》を搭載したバージョンと異なりミッドレンジ寄りの構成になっています。
ソプターコンボと《発明品の唸り》、《最高工匠卿、ウルザ》によってほかのフェアデッキを圧倒し、マナ基盤も《オパールのモックス》や《アーカムの天測儀》、そして《金のガチョウ》の恩恵で安定しています。
☆注目ポイント
《金のガチョウ》がモダンでも通用するのかどうか話題になっていましたが、今回の結果でこのカードの強さが証明されました。アーティファクトである食物・トークンを生み出す能力があるため、《王冠泥棒、オーコ》のほかにも《最高工匠卿、ウルザ》、《金属の叱責》、《発明品の唸り》ともシナジーがあり、生き残れば1マナとは思えないほどの活躍をします。
《王冠泥棒、オーコ》は必要とあらば《オパールのモックス》や《アーカムの天測儀》を3/3にしたりと活躍の幅が広く、忠誠値も高いので処理されにくいのもこのプレインズウォーカーの強みです。
メインはSimicカラーですが、サイドのカード用に黒もタッチされています。《湖での水難》はGrixisなどでも使われているスペルです。モダンではフェッチランドなどで序盤でも墓地に2枚以上のカードがあることも多く、《思考囲い》などハンデスと合わせれば確定カウンター兼除去として機能しやすくなります。《致命的な一押し》や《暗殺者の戦利品》も汎用性が高い除去で、黒を足す価値があるスペルです。
Modern Challenge #12006978
勝ち続ける《王冠泥棒、オーコ》
2019年11月3日
- 1位 Simic Eldrazi
- 2位 Bant Snow Control
- 3位 Burn
- 4位 Simic Whirza
- 5位 Zombievines
- 6位 Eldrazi Tron
- 7位 Grixis Death’s Shadow
- 8位 Burn
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MOで毎週末に開催されるModern Challengeでも、《王冠泥棒、オーコ》を使ったデッキが結果を残していました。
SCGO Atlantaの上位を支配したSimic Whirza以外に、トップ4入賞を果たしたBurnや決勝戦にまで勝ち残ったBant Snow ControlとSimic Eldraziなど様々なデッキで採用されていました。
Modern Challenge デッキ紹介
「Simic Eldrazi」「Bant Snow Control」
Simic Eldrazi
1 《冠雪の島》
1 《荒地》
1 《繁殖池》
3 《霧深い雨林》
3 《虹色の眺望》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
1 《魂の洞窟》
4 《エルドラージの寺院》
1 《ウギンの聖域》
-土地 (21)- 4 《貴族の教主》
2 《金のガチョウ》
4 《作り変えるもの》
2 《空中生成エルドラージ》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
1 《希望を溺れさせるもの》
3 《老いたる深海鬼》
-クリーチャー (24)-
《石鍛冶の神秘家》が禁止解除された直後はSelesnya Eldraziが結果を残していましたが、『エルドレインの王権』から《むかしむかし》と《王冠泥棒、オーコ》という新戦力を獲得したことで、Simic Eldraziの時代が来たようです。
Bant Eldraziも結果を残していましたが、Simic Eldraziの方がマナ基盤が安定しています。MOPTQでも5位に入賞していたことからも、その高いポテンシャルは証明済みです。
☆注目ポイント
《むかしむかし》はデッキの安定性を高める最高の潤滑油として機能し、このデッキにとって重要なカードである《エルドラージの寺院》を序盤に引き込める確率が上がりました。これにより1ターン目にマナクリーチャー、2ターン目に《エルドラージの寺院》から《難題の予見者》というこのデッキにとって最高のスタートも実現しやすくなります。サイド後もUrzaなどに刺さる《溜め込み屋のアウフ》を探しやすくなります。
新戦力である《王冠泥棒、オーコ》は、このデッキが今まで苦手としていた《罠の橋》を効率よく無力化してくれます。また、多角的な攻めができるようになったことで、除去に弱かったエルドラージ戦略の弱点をカバーすることに貢献しています。覚えておきたい小技として、[+1]能力によって《難題の予見者》を3/3に変えてしまえば除去されても相手にドローされることがなくなります。EldraziはJundやUW Controlといったフェアデッキとのマッチアップで有利でしたが、《王冠泥棒、オーコ》によって相性はさらに良くなりました。
Amulet Titanなどアンフェアなコンボデッキを苦手とするので、サイドには《軽蔑的な一撃》などカウンターが多数採用されています。Urza OutcomeやDredgeなどもこのデッキが苦手とする相手なので、《溜め込み屋のアウフ》や《墓掘りの檻》は欠かせません。
Bant Snow Control
2 《冠雪の森》
1 《冠雪の平地》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《寺院の庭》
3 《溢れかえる岸辺》
3 《霧深い雨林》
3 《虹色の眺望》
2 《廃墟の地》
-土地 (22)- 4 《氷牙のコアトル》
3 《瞬唱の魔道士》
-クリーチャー (7)-
3 《選択》
2 《呪文嵌め》
2 《マナ漏出》
3 《否定の力》
1 《神秘の論争》
2 《謎めいた命令》
1 《至高の評決》
4 《アーカムの天測儀》
3 《王冠泥棒、オーコ》
3 《時を解す者、テフェリー》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (31)-
『モダンホライゾン』で登場した《氷牙のコアトル》や《アーカムの天測儀》を使ったBantカラーのコントロールは『エルドレインの王権』以前からも存在しましたが、《王冠泥棒、オーコ》によってさらに強化されています。
☆注目ポイント
氷雪土地と《アーカムの天測儀》を採用したこのデッキでは、《氷牙のコアトル》の接死を持つ条件を満たすことも容易で、キャントリップ付きの疑似的な除去として機能します。
《時を解す者、テフェリー》、《王冠泥棒、オーコ》、《最高工匠卿、ウルザ》、 《発明品の唸り》、《逆説的な結果》など環境の脅威に青いカードが多いので《神秘の論争》はメインからでも十分使えるスペルです。
サイドの《夏の帳》はJundやDeath’s Shadow系のハンデスや同型のカウンター対策です。《突然の衰微》に対してもドローしつつ無力化できる優秀なスペルで、緑を足す理由の一つとなっています。しかし、色を足したことで《廃墟の地》が使いにくくなり、Tronなど土地コンボデッキとのマッチアップは不利になり、ショックランドなど土地からのダメージも増えたのでBurnとの相性も若干悪くなっています。
総括
『エルドレインの王権』が環境に与えた影響は大きく、特にスタンダードの環境を支配し様々なフォーマットで活躍している《王冠泥棒、オーコ》はモダンでも上位入賞デッキの主力として定着しています。
現環境のベストデッキはSCGO Atlantaで多数の入賞者を輩出していたSimic Whirzaと見て間違いなさそうです。そのほかのデッキでは、Burnが選択肢として挙げられます。《大歓楽の幻霊》は軽量アーティファクトを多用するUrzaにとっては厄介なクリーチャーで、TronやTitan系の土地コンボに対しても速さで勝るのが理由です。
以上、USA Modern Express vol.34でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!