決勝:加藤 翔也 (スゥルタイフード) vs. 後藤 洋昭 (シミックフード)
晴れる屋メディアチーム
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By Tsutomu Date
今回でいよいよ第8期となる、スタンダード東海王決定戦は10/26に開催された。東海地区では禁止改定が発効されて初めての大型スタンダード大会であり、また地元名古屋で行われる「グランプリ・名古屋2019」を1週間後に控えた大会でもある。
禁止改定の発表から数日にして研究は進み、スタンダードは《死者の原野》環境から《王冠泥棒、オーコ》環境へと姿を変えた。
《王冠泥棒、オーコ》を擁したシミック系のデッキがメタゲームの筆頭。ゴルガリアドベンチャー、ジェスカイファイアーズ、エスパースタックスがそれに対抗する構図である。
その環境の中で決勝まで勝ち上がったデッキは、シミックフードに黒を加えたスゥルタイフードと純正のシミックフードだった。
スイスラウンドを1位で通過した加藤 翔也は、「グランプリ・名古屋2018」ではTOP4、「第5期リミテッド東海王決定戦」で準優勝とその実績は十分。「いろいろやりますが、今はモダンが楽しいですね。パイオニアにも期待しています」そのオールラウンダーぶりで、本大会でも決勝まで勝ち上がってきた。
惜しくも「グランプリ・名古屋2019」ではジャッジ参加とのことだが、本戦出場での活躍を期待したギャラリーも多いのではないだろうか。「(MTGAの)MCQに出たいので早く帰るつもりだったのですが、ここまで勝っちゃいましたね」と、東海王の称号のかかった決戦を前に全く気負いを感じさせない。
使用デッキはスゥルタイフード。朝にツイッターでリストを見て決めたという。
フード系のミラーマッチで黒のカードが特に有効に働くのが強みで、特にサイドボード後は明確に有利が付くという。
スイスラウンドを6位で通過の後藤 洋昭は、幾度となく東海王を輩出しているいわゆる「岐阜勢」の一人。
マジックのキャリアは20年以上。最近ではスタンダードをプレイすることが主だが、競技プレイヤーの例に漏れずシーズンに合わせどのフォーマットでもプレイするとのこと。「The Limits 2008」ではTOP4に入賞、グランプリでも何度もマネーフィニッシュしている猛者だ。
来年2月の「グランプリ・名古屋2020」に採用される「パイオニア」もすでに視野に入れているという。
使用デッキは純正のシミックフード。
加藤の黒を足したリストと対照的に、青と緑の2色のみで構築されているのが特徴だ。色を足すことについて尋ねたところ、こう答えてくれた。
後藤「先週の大会(エルドレインの王権BOX争奪スタンダード杯)はシミックでTOP8に入賞して、そのままあえて色を足してないのですが、(GP前の本大会で)負けることで多色化の必要性を実感したかったですね」
という。敗北を前提とした参戦で決勝戦まで勝ち上がってくるのだから、後藤のプレイスキルはいかほどのものか想像に難くないだろう。
前述の通り、同系を意識して黒を足した加藤のスゥルタイフードが有利である、というのが双方の認識だ。黒の《害悪な掌握》は《王冠泥棒、オーコ》に触ることができる貴重な除去カードであり、また《虐殺少女》や《採取/最終》で押された盤面を返すこともできる。
果たして相性通りの展開となるか。はたまた番狂わせが起きるか。第8期スタンダード東海王の座をかけた最後の戦いを見守ろう。
先手の加藤は、土地が1枚しか含まれないものの、ほかはほぼ文句の付けようがない初手。
一方の後藤は、決して悪くはないが後手で間に合うか若干不安が残る。
初動は先手の加藤。土地をプレイする前に、《むかしむかし》を0マナでプレイしつつ「お、これはいいスタートじゃないですか?」と余裕を見せ、そのまま《森》を手に入れて《金のガチョウ》に繋ぐ。
そして「いいスタート」の言葉通り、先手2ターン目に《王冠泥棒、オーコ》が着地。本環境の最強ムーブを後藤に突き付ける。
対する後藤は2ターン目に小考に入る。後手番でこれを返すことができるか。まずは《楽園のドルイド》を展開。
加藤の3ターン目は3マナを構えて《王冠泥棒、オーコ》で「食物」を増やすのみ。
そして後藤は3ターン目、遅れて《王冠泥棒、オーコ》をプレイし「食物」を生成するが、すでにリソース差は大きい。エンド・ステップに加藤は《むかしむかし》をプレイ、「うーん難しいねえ」と熟考すると《寓話の小道》を手札に。
4ターン目を迎えた加藤は《世界を揺るがす者、ニッサ》をプレイし、そのマウントを強固とする。
その[+1]能力で《沼》を3/3クリーチャーとすると、さらに《王冠泥棒、オーコ》の[+1]能力でこれを「大鹿」に変えることで6/6に。反撃の目を摘むべく後藤の《王冠泥棒、オーコ》へとアタック。
後藤の選択肢は《楽園のドルイド》のチャンプブロックで《王冠泥棒、オーコ》を守るか、もしくはスルーか。後藤は前者を選択する。
その後も後藤は《意地悪な狼》で対抗するが、加藤が擁する2体のプレインズウォーカーを捌くことができず、Game1は加藤が終止盤面を掌握し勝利した。
加藤 1-0 後藤
ともに《王冠泥棒、オーコ》を巡る戦いを制するべく、『基本セット2020』の強力な色対策カードを投入する。
先手を取った後藤は、マナブーストこそないものの、《王冠泥棒、オーコ》と妨害手段のなかなかの手札。
加藤は1マリガン後、厳しめの手札をキープ。
ファーストアクションは後手の加藤が引き込んだ《金のガチョウ》。これで先手後手が入れ替わる形だが、後藤は慌てずに《霊気の疾風》でこれを対処。
続いて後藤は4ターン目に1マナを立たせた状態で《王冠泥棒、オーコ》をキャスト。
そして後藤はさらなる脅威として《世界を揺るがす者、ニッサ》を呼び出すと、その能力で《ギャレンブリグ城》を3/3に。
Game 1とは対称的に今度は後藤が《王冠泥棒、オーコ》、《世界を揺るがす者、ニッサ》でマウントを取る展開だ。
この状況に加藤は《意地悪な狼》で抵抗するが、この状況を挽回するには及ばない。Game2はまるでGame1の主客を変えた再現となり、勝負はGame3に持ち越された。
加藤 1-1 後藤
双方、サイドボーディング後の先手・後手を考慮した調整を行う。
再び先手となった加藤。
初手で《金のガチョウ》はプレイできないものの、スムーズに展開できれば先手の利を生かすことができるハンドをキープ。
後藤は1マリガンから以下を初手に。マナソースは潤沢だが決め手に若干不安が残る。
後手の後藤が《金のガチョウ》から展開し、遅れて先手の加藤が《金のガチョウ》をプレイ。
続いて後藤は《楽園のドルイド》をプレイして次ターンの5マナ到達を匂わせる。
《王冠泥棒、オーコ》が現れなかったのは加藤にとって僥倖ではあるが、次ターンに登場する可能性の高い《世界を揺るがす者、ニッサ》は看過できない。
それを妨げるべく加藤は《王冠泥棒、オーコ》から即[+1]で後藤の《金のガチョウ》を「大鹿」に変えてジャンプアップを妨害する。
後藤は5マナには届かなかったものの、こちらもと《意地悪な狼》で加藤の《金のガチョウ》を落とし、互いにマナベースを攻める展開だ。
加藤としては《王冠泥棒、オーコ》を擁してはいるが、4枚目の土地を引くことができず展開がおぼつかない。「食物」を「大鹿」に変えて防衛線を整える。
この隙を逃さない後藤。
なんとここで展開するのは《灯の分身》!《意地悪な狼》をコピーし、+1/+1カウンターを伴って加藤の「大鹿」を倒すと、総攻撃をしかける。
これで加藤の《王冠泥棒、オーコ》は落とされ、一気に天秤は後藤に傾いた。
そして加藤が最後のブロッカーに用意した《金のガチョウ》は《厚かましい借り手》の「出来事」でどかされ、そのまま後藤は加藤の戦線を蹂躙した。
加藤 1-2 後藤
『第8期スタンダード東海王』の称号を手に入れたのは、後藤 洋昭!おめでとう!
加藤「先手を取るためにスイスラウンド最終戦はIDせずに対戦しましたが、先行後攻、あまり関係ありませんでしたね」
後藤「先に《王冠泥棒、オーコ》を出した方が強いですね」
加藤「《王冠泥棒、オーコ》、盤面に与える影響大きすぎますね。モダンやレガシーでも使われてますし、早く手を入れてほしい」
互いに出せる手は出し切った。ミスと言えるような手もなかった。ベストを尽くしたその結果を淡々と受け入れていく2人の様子が印象的だった。