みなさんこんにちは。
先週末はアメリカのリッチモンドでミシックチャンピオンシップ VIとグランプリ・リッチモンド2019が開催され、スタンダードのイベントが充実していました。
今回の連載では、上記イベントの入賞デッキを見ていきたいと思います。
ミシックチャンピオンシップ VI
《王冠泥棒、オーコ》が支配する世界
2019年11月8-10日
- 1位 Simic Food
- 2位 Simic Food
- 3位 Simic Food
- 4位 Sultai Food
- 5位 Golgari Adventure
- 6位 Sultai Food
- 7位 Sultai Food
- 8位 Selesnya Adventure
Ondrej Strasky
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今大会直前のグランプリなどの結果からSimic Food(Sultai)一強の環境になることが予想されていました。すでにメタゲームが解明された環境だったのもあり、現環境トップメタのSimic Food系デッキは、初日のメタゲームの69パーセントを占めるという極端な結果となりました。
そんな中、Simic Food系以外のデッキを使用するという選択をしたプレイヤーも存在します。プレイオフ進出を果たしたAndrew Cuneo選手はSelesnya Adventure、Eli Kassis選手はGolgari AdventureとそれぞれAdventureデッキを使用していました。プレイオフには残らなかったものの、今回のスタンダード部門で好成績を残したJavier Dominguez選手が使用していたGruul Adventureは、Simic Food系に対して高い勝率を出していたことからも注目を集めていたデッキでした。
ミシックチャンピオンシップ VI デッキ紹介
「Simic Food」「Gruul Adventure」
Simic Food
7 《島》
4 《繁殖池》
1 《寓話の小道》
2 《神秘の神殿》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (26)- 4 《金のガチョウ》
4 《楽園のドルイド》
4 《ハイドロイド混成体》
2 《厚かましい借り手》
3 《意地悪な狼》
-クリーチャー (17)-
2 《大食のハイドラ》
2 《探索する獣》
2 《否認》
2 《神秘の論争》
1 《老いたる者、ガドウィック》
1 《意地悪な狼》
1 《世界を揺るがす者、ニッサ》
-サイドボード (15)-
Simic Food系のデッキは同型を意識して《害悪な掌握》や《ゴルガリの女王、ヴラスカ》のために黒をタッチしたSultai Foodの方が人気がありましたが、マナ基盤の安定する青緑の2色が今大会では結果を残しました。
☆注目ポイント
メインから採用されている《厚かましい借り手》は、《エンバレスの宝剣》や《荒野の再生》、《創案の火》といった厄介な置物が多数存在する現環境では優秀なクリーチャーとして活躍します。環境に多い《害悪な掌握》に当たらないクロックとしても優秀で、テンポ良く攻めることが可能です。
同型を意識してメインから《霊気の疾風》が採用されており、テンポの面で優位に立ち回ることができます。《霊気の疾風》も《厚かましい借り手》と同様に様々なパーマネントを対策する手段になるので、現環境ではメインからでも十分に使えるスペルです。今大会で上位入賞を果たした多くのリストがメインから採用していました。
Simic Foodが持つSultai Foodにはない必殺技が《集団強制》です。《世界を揺るがす者、ニッサ》による大量のマナを活かした《集団強制》は、劣勢の状態でも有利な場面に持ち込むことができます。
Gruul Adventure
10 《森》
4 《踏み鳴らされる地》
-土地 (24)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《クロールの銛撃ち》
4 《リムロックの騎士》
4 《砕骨の巨人》
4 《恋煩いの野獣》
4 《探索する獣》
-クリーチャー (24)-
スタンダード部門で高い勝率を出していたデッキで、環境トップメタのSimic Foodに強いデッキの一つとして注目を集めていたデッキです。
赤と緑の「出来事」持ちのクリーチャーを《エンバレスの宝剣》でバックアップしていくアグロデッキで、速さで勝り「出来事」パッケージによるカードアドバンテージのおかげでロングゲームでも渡り合えるデッキです。
☆注目ポイント
《ドムリの待ち伏せ》はクリーチャーを強化しつつ除去として機能するスペルで、戦闘以外でプレインズウォーカーを対策できる手段となる優秀なスペルです。
Adventureデッキの要となる《エッジウォールの亭主》。Gruulバージョンでは、「出来事」クリーチャーの枠に《砕骨の巨人》や《リムロックの騎士》などが採用されています。《砕骨の巨人》は除去としてもクロックとしても活躍するクリーチャーです。《リムロックの騎士》は《エンバレスの宝剣》と相性が良く、一撃必殺を狙うことができます。
突破力随一の《エンバレスの宝剣》はこのデッキのキーカードで、《探索する獣》に付けば1度に2体のプレインズウォーカーを除去することもできるようになります。伝説なので多数手札に来ると腐りやすく、除去が多いデッキとのマッチアップでは使いにくくなるので3枚のみの採用となっています。
グランプリ・リッチモンド2019
Simic Foodを倒す《王冠泥棒、オーコ》デッキ
2019年11月9-10日
- 1位 Sultai Sacrifice
- 2位 Sultai Food
- 3位 Sultai Food
- 4位 Sultai Sacrifice
- 5位 Sultai Sacrifice
- 6位 Sultai Sacrifice
- 7位 Temur Reclamation
- 8位 Jeskai Fires
Abe Corrigan
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Simic Food系が多くを占めていたミシックチャンピオンシップの結果と異なり、Sultaiカラーの《大釜の使い魔》と《魔女のかまど》のシナジーを活用したSultai Sacrificeが上位を支配していました。
Sultai Sacrifice デッキ紹介
「Sultai Sacrifice」「Jeskai Fires」
Sultai Sacrifice
今大会でプレイオフの半数を占めたSultai Sacrificeは、ミシックチャンピオンシップのスタンダード部門でも68.2パーセントという驚異の勝率を叩き出し、特にSimic Foodに対して高い勝率を出していたことでも注目を集めていました。
《金のガチョウ》や《王冠泥棒、オーコ》を擁するSultai Foodと《大釜の使い魔》、《魔女のかまど》のサクリファイスのシナジーをハイブリットした構成で、マナ加速によるテンポと《魔女のかまど》と《大釜の使い魔》のコンボによる多角的な攻めを展開できるのがこのバージョンの強みです。
☆注目ポイント
《金のガチョウ》と《王冠泥棒、オーコ》によって絶えず食物トークンが生成され、《魔女のかまど》も含め《大釜の使い魔》を復活させる手段に困ることがありません。《パンくずの道標》と《むかしむかし》のおかげでデッキの動きが安定しており、Simic Food系に対しても《虐殺少女》や《残忍な騎士》などを探しやすく、盤面を返しやすくなっています。
Simic Foodと異なり《世界を揺るがす者、ニッサ》と《ハイドロイド混成体》は不採用で、《パンくずの道標》がこのデッキの主なアドバンテージ源となります。
同型対策に《虚空の力線》がサイドに採用されています。そのほか追加の勝ち手段として《恋煩いの野獣》がサイドに忍ばせてあります。《大釜の使い魔》が1/1クリーチャーなので、《恋煩いの野獣》が攻撃に参加する条件を満たすことも比較的容易です。《魔女のかまど》、《パンくずの道標》、《虚空の力線》、《エンバレスの宝剣》、《荒野の再生》、《創案の火》など環境の様々な置物を対策できる《打ち壊すブロントドン》も採用しておきたいクリーチャーです。
Jeskai Fires
Simic Foodに対抗する手段は、《エンバレスの宝剣》を使ったGruulのような高速アグロのほかに、《創案の火》によるマナアドバンテージを活かしたJeskai Firesが考えられます。
☆注目ポイント
環境初期はプレインズウォーカーを多数採用したJeskai Superfriendsが主流でしたが、最近はJonathan Sukenik選手のように《風の騎兵》や《炎の騎兵》といった「騎兵サイクル」を採用したバージョンが見られます。
《創案の火》は環境初期から注目を集めており、《風の騎兵》と《炎の騎兵》のコストを踏み倒すことで多大なアドバンテージを得ることが可能です。マナコストを支払う必要がないため、そのまま《炎の騎兵》や《帰還した王、ケンリス》の起動型能力に繋げて速やかにゲームを終わらせることができます。
《創案の火》コンボをちらつかせつつ、《王国まといの巨人》や《轟音のクラリオン》といったスイーパーや《抽象からの抽出》などのドロー、各種カウンターと揃っているのでJeskai Controlとしても振舞うことができるのもこのデッキの強みです。
総括
過去のミシックチャンピオンシップやプロツアーで一つのデッキ、戦略が50パーセントを超えるのは非常に稀です。《頭蓋骨絞め》が使えた頃のAffinity、Caw Bladeなどが支配していた環境を経験しているプレイヤーの間でも、現環境のスタンダードはお世辞にも健全と言えないという意見が散見されています。
環境の多様性を取り戻すには《死者の原野》 の禁止だけでは不十分で、《王冠泥棒、オーコ》も禁止にした方がよかったのではという意見が多数を占めています。《王冠泥棒、オーコ》が退場することによってSimic Food以外のミッドレンジ、コントロール(Esperなど)、アグロなど様々なアーキタイプが復権してきそうです。
以上、USA Standard Express vol.160でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!