フロンティアからパイオニアへ
10月21日、マジック界に衝撃が走る。
みなさんもうすでにご存知の通り、Wizards of the Coastから新たなフォーマットとして「パイオニア」が発表されたのだ。
『ラヴニカの回帰』以降のセットに収録されたカードが使用できるフォーマットで、すでにオンライン上やリアルでも大会が盛んに行なわれている。来年の名古屋で開催されるプレイヤーズツアーやグランプリのフォーマットもパイオニアであり、今最も熱いフォーマットの一つであろう。
そしてこの発表を機に今まで親しまれてきた「フロンティア」はその役目を終え、今後は公式がサポートする「パイオニア」へと移行することになったのだ。
さらに、晴れる屋ではこの新フォーマットを盛り上げるべく『パイオニア神決定戦』を開催する!
【#神決定戦】『パイオニア神決定戦』開催決定!
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) November 5, 2019
11/23(土)に『パイオニア神挑戦者決定戦』が開催され、優勝者は挑戦者として、現フロンティア神・三科 良太選手(特別シード)と『パイオニア神決定戦』を戦うことになります!
詳細はこちらから→https://t.co/Yw0JLjXZUW pic.twitter.com/dYwtWm1jxH
『フロンティア神決定戦』に代わり開催される『第1期パイオニア神決定戦』では、現フロンティア神である三科 良太が挑戦者として特別シードで参加する。
フォーマット発足からフロンティアをプレイし続けた三科。
第12期フロンティア神決定戦では、神であり親友である石渡 康一を討ち見事フロンティア神へと就任した。そして、第13期フロンティア神決定戦では強豪・中道 大輔に敗れるが、その次の第14期フロンティア神決定戦で再び神の座へと返り咲いた。
また、10月22日に晴れる屋トーナメントセンターで行われたプレイヤーズツアー予選を突破しており、来年2月にあるプレイヤーズツアー2020#1への権利を獲得している。
フロンティア以外のフォーマットでもその実力を遺憾なく発揮する神・三科は、パイオニアついてどう考えているのだろうか。話を伺うべくインタビューを行った。
未知の領域へ
――「新フォーマット”パイオニア”が設立されましたね。発表されてからパイオニアの第一印象はどういったものでしたか?」
三科「僕としてはもちろんフロンティアを楽しんでプレイしてはいましたが、やっと解放されたなという感じです。嬉しいような悲しいような、何とも言えない気分になりましたね(笑)」
――「フォーマットの発足からまだ間もないですが、なにかパイオニアに対してすでに魅力に感じてるとこはありますか?」
三科「公式かつ競技フォーマットなのでプレイ人口が多いことが一番の魅力ですね。周りの友達と色々な話もできますし、人口が多ければメタゲームも成立するでしょう」
――「なるほど。来年の名古屋で開催されるプレイヤーズツアーやグランプリのフォーマットもパイオニアですし、これからどんどん盛り上がっていきそうですね。三科さん自身プレイヤーズツアーの権利をお持ちということで、今後の大会に向けてどういったデッキを試していくつもりでしょうか?」
三科「だいたい全部一通り試すつもりです。フロンティアと似ている部分もあるので、そこでの経験が生きればいいですね」
――「フロンティアにはなかったカードの中で注目カードはなんでしょうか?」
三科「かなり偏った紹介になってしまいますが、《漁る軟泥》《思考囲い》《突然の衰微》《ニクスの祭殿、ニクソス》です。どれもフロンティアにはなかった部類のカードで、とても強力です」
三科「《漁る軟泥》は、単色で汎用性の高いライフゲインかつ墓地対策カードで、緑色のデッキであれば75枚にとりあえず採用しても問題ないでしょう。《思考囲い》は説明する必要もなく強力なハンデスですね。パイオニアはスタンダードの次に浅いフォーマットとはいえ、《王冠泥棒、オーコ》や《密輸人の回転翼機》、《ヴリンの神童、ジェイス》など低マナで処理しづらい脅威も多く存在します。《思考囲い》は、それら低マナ脅威のバックアップを十全にこなしてくれるでしょう」
三科「《突然の衰微》は、少しメタ的な立ち位置で注目しています。前述した低マナ脅威全てに2マナで対処できるこのカードは、環境で最も強い除去の可能性すらありますね。《ニクスの祭殿、ニクソス》は、『信心』という今までになかったギミックを最大限に活用できるため注目しています。マナをズルできるカードは基本的に強力で、もうすでに脚光を浴びているようですが、大量のマナを有効活用できる緑信心での活躍を期待しています」
――「すでにパイオニアの大会に参加されたということで、実際にプレイしてみて感触はいかがでしょうか?」
三科「フロンティアとかなり似ているイメージでしたが、フェッチランドが禁止にされているゆえのズレが大きかったです。特に《致命的な一押し》や《時を越えた探索》のカードパワーがガクっと落ちた影響により、受けるデッキのデッキパワーが大きく落ちてしまいました」
――「フェッチランドの禁止はマナベースだけでなく、そういったカードへの影響もあるんですね。大会中に面白そうなデッキや強そうだなと感じたデッキはありましたか?」
三科「スゥルタイジャンクは《思考囲い》《突然の衰微》《王冠泥棒、オーコ》のマナカーブが綺麗でとても強そうでした。『昂揚』タイプでなければゲームの蓋に困りそうですが、スタンダードのように《世界を揺るがす者、ニッサ》と《ハイドロイド混成体》でも十分かもしれませんね」
試合でわかることは限りなく少ない
――「フロンティアでも『ティムール霊気池』など様々なデッキを構築されてきたかと思います。カードプールが広いフォーマットでは、どのようにデッキを構築していくのでしょうか?三科さんなりのやり方があれば教えて頂ければと思います」
三科「自分なりのやり方かはわかりませんが、基本的には一人回しをしながら作ることがほとんどです。大会に出てみて回したりもしますが、試合での調整はプランニングやインアウトの確認、細部数枚の入れ替えが主です。また、友人との意見交換は積極的に行っています。理由として、試合でわかることは限りなく少ないという持論があるからです」
――「それはなぜなのでしょうか?」
三科「実際の対戦ではデッキの半分も使用せず決着がつくことが大半ですし、お互いのミスや引きムラなど様々な要因で結果が変わります。お互いが全くミスをせずに百戦千戦行っていくのであれば話は別ですが、たかだか数十戦かつお互いミスをするような環境での結果に、歪みが生じない理由がありません。であれば、友人との意見交換や論理展開を十全に行った方が、より時間効率良くデッキのことを知れるということです」
――「なるほど。しっかりとした言語化や意見交換をすることで、対戦で得られるもの以上にデッキをちゃんと理解することができるんですね」
パイオニアでも《王冠泥棒、オーコ》
――「11月11日の禁止改定では《夏の帳》が禁止に制定されました。これを受けて、これからどんなデッキが活躍すると思いますか?またその理由はなんでしょうか」
三科「カードプール全体で飛びぬけて《王冠泥棒、オーコ》が強すぎると感じているので、いかに《王冠泥棒、オーコ》を上手く使うか、または捌くかが重要になってくると思います。《王冠泥棒、オーコ》を使用するのであれば、《思考囲い》と《突然の衰微》で捌きながら着地させるスゥルタイや、1マナマナクリーチャー2種類以上から早期着地を狙い、『大鹿』になっても困らないクリーチャーを展開していく緑単タッチ青(《硬化した鱗》や『信心』)などですかね」
三科「使用しない側に回るのであれば、《思考囲い》や《戦慄掘り》を《ヴリンの神童、ジェイス》で使いまわしていくグリクシスや、《精霊龍、ウギン》《女王スズメバチ》などで大きく盤面を作れるランプ、《呪文貫き》や《呪文捕らえ》で捌きつつ飛行クロックで詰められる青白スピリットなどが択に入るのでしょうか。また、《ジェスカイの隆盛》や《運命のきずな》などのコンボデッキは《王冠泥棒、オーコ》がただの3/3生成装置にしかならず、自分のゲームプランを押し通して勝利できるため少し魅力的ですね」
――「《王冠泥棒、オーコ》を中心としたメタゲームを予想しているんですね。毎週禁止改定が行なわれるということですが、三科さんが考える禁止候補などはありますか?」
三科「《王冠泥棒、オーコ》はMTG全体を見てもオーバーパワー気味なので、禁止になってもおかしくないと思っています。あとは正直わからないですね。《時を越えた探索》や《宝船の巡航》はフロンティアでほぼ常に唱えられる側だったので感覚が狂ってしまい、フェッチランドがないなら大して強くないなくらいには感じてしまいました。ただ、やはり《運命のきずな》や《ジェスカイの隆盛》、ドレッジなどのコンボデッキが使うこれらは以前と同じカードパワーを感じたので、今後刷るカードに悪影響を与えかねないとして禁止されてもおかしくはないのでしょうか」
――「来週行われる『第1期パイオニア神決定戦』では、特別シードとして参加されます。今の心境をお聞かせください」
三科「僕が最後のフロンティア神なので、フロンティアを骨の髄までしゃぶりつくたということで最高に良い気分です。知見の浅いフォーマットだからといって気負いせず、気楽に好きなデッキを使っていきたいと思います」
――「ありがとうございました!」
フロンティアと変わらぬ情熱でパイオニアについても語ってくれた三科。今後の競技シーンでも彼の活躍ぶりを見ることができるに違いない。
まずは来週の11月23日(土)に『第1期パイオニア神挑戦者決定戦』が開催される。フロンティア神・三科 良太へと挑み、初代・パイオニア神を目指して参加してみてはいかがだろうか。