Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/12/03)
今週末はMC VII
《王冠泥棒、オーコ》《夏の帳》《むかしむかし》が先日禁止となり、スタンダードのメタゲームに変革が起きました。今週末に開催されるミシックチャンピオンシップVII(MC VII)で注目を浴びそうなのは、《創案の火》などの《死者の原野》の禁止前から活躍していたカード、サクリファイスやイゼットフラッシュといった最近になって頭角を現し始めたデッキたちでしょう。
注目のデッキ
ジェスカイファイアーズ
“環境ベストデッキ”の最有力候補のひとつ。ジェスカイファイアーズにはライブラリーを掘り進めるカードが多く備わっており(《可能性の揺らぎ》《予見のスフィンクス》《天啓の神殿》《凱旋の神殿》)、《むかしむかし》に匹敵するほどの安定感があります。ミッドレンジ戦略でありながら、《炎の騎兵》や《帰還した王、ケンリス》の速攻能力によって手札から一気に相手のライフを削りきる戦力展開も可能で、多角的な攻め方ができます。デッキ名を冠している《創案の火》がなくとも勝てるほどです。
キーカード: 《創案の火》《炎の騎兵》《帰還した王、ケンリス》
ジャンドサクリファイス
3 《沼》
4 《血の墓所》
4 《草むした墓》
4 《踏み鳴らされる地》
3 《寓話の小道》
1 《ロークスワイン城》
-土地 (25)- 4 《大釜の使い魔》
4 《金のガチョウ》
4 《楽園のドルイド》
4 《波乱の悪魔》
1 《真夜中の死神》
1 《意地悪な狼》
1 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》
1 《虐殺少女》
-クリーチャー (20)-
前回のMCでは、スゥルタイサクリファイスは環境トップクラスのデッキでありながら、あまり警戒されていませんでした。《王冠泥棒、オーコ》が禁止となり、1色を青から赤に変更することで《フェイに呪われた王、コルヴォルド》と《波乱の悪魔》を使えるようになっています。《波乱の悪魔》とデッキ内のカードが織りなすシナジーはスタンダード環境に類を見ない強さであり、1点火力を複数回飛ばすことで盤面をひっくり返します。《パンくずの道標》もまた比類なきアドバンテージ源であり、コンボに必要なあらゆるパーツを探し出してくれます。
キーカード: 《魔女のかまど》《大釜の使い魔》《パンくずの道標》
ラクドス騎士
《エンバレスの宝剣》を使うデッキのなかでも特に強力。《朽ちゆくレギサウルス》と《エンバレスの宝剣》のコンボは高速でゲームを決める力があり、相手が勝利条件を揃えるだけの時間を与えません。このデッキの弱点は、序盤の《轟音のクラリオン》に弱いことです。盤面のクリーチャーを一掃して《エンバレスの宝剣》のマナコスト軽減を妨害してきます。このデッキが得意とする相手は、高速ビートダウン戦略に対してほとんど介入・妨害してこないデッキです。
キーカード: 《朽ちゆくレギサウルス》《エンバレスの宝剣》
ゴルガリアドベンチャー
《むかしむかし》が去り、1ターン目に《エッジウォールの亭主》を展開することに大きく依存していたデッキは失墜することになりました。その点、ゴルガリアドベンチャーは禁止告知前からゆったりしたゲームを展開しており、1ターン目の《エッジウォールの亭主》がいなくてもアドバンテージ戦略で戦えるようにしていました。上記のような《幸運のクローバー》入りの構築であれば、2ターン目《幸運のクローバー》から3ターン目《豆の木の巨人》というロケットスタートがあるだけなく、騎士が豊富に採用された構成を利用して《恋に落ちた剣士》で大きな直接ダメージを狙えるようになっています。
最近になって3色の《幸運のクローバー》デッキを見かけるようになりました。特に目立つのは、《砕骨の巨人》《厚かましい借り手》《願いのフェイ》を搭載したティムール型です。とはいえ、MC VIIでは使用率が高くないと予想しています。まずはこのデッキが本当に強いのかどうかを確かめる必要があるでしょう。
キーカード: 《エッジウォールの亭主》《幸運のクローバー》
イゼットフラッシュ
人気のシミックフラッシュを異なる趣にアレンジしたもの。イゼットフラッシュは《創案の火》が支配するメタゲームで活躍していました。イゼットとシミックとの大きな違いは、イゼットはすでに着地している脅威を対処する手段が多いということです。攻撃的で軽量の瞬速クリーチャーと打ち消し呪文を合わせた戦略は、1ターンに1枚しか呪文をプレイしないデッキに対して非常に効果的です。
ドロー・ゴー戦略でありながら《老いたる者、ガドウィック》でリソース回復できるので、中盤から終盤へスムーズに移行できますし、相手のクリーチャーをタップすることでとどめを刺せるようになっています。
キーカード: 《厚かましい借り手》《老いたる者、ガドウィック》《砕骨の巨人》
おまけ:シミックランプ
6 《島》
4 《繁殖池》
4 《神秘の神殿》
2 《ギャレンブリグ城》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (28)- 2 《樹上の草食獣》
4 《枝葉族のドルイド》
4 《ハイドロイド混成体》
4 《発現する浅瀬》
4 《茨の騎兵》
2 《裏切りの工作員》
1 《終末の祟りの先陣》
-クリーチャー (21)-
ミシックチャンピオンシップで誰も予期していないサプライズデッキを使うのであれば、シミックランプが良いのではないかと思っています。実際のところ、デッキ登録の直前まで上記のリストにしようと思っていました。シミックランプの方が良かったのかは不確かですが、心変わりする原因となったのは相性のバラつきがあったことでした。ゴルガリキャットオーブンを倒しつつジェスカイファイアーズと渡り合えるデッキを長い間探してきましたが、その両立を実現できるデッキは結局見つかりませんでした。そのひとつがシミックランプというわけです。
《世界を揺るがす者、ニッサ》と《発現する浅瀬》は影が薄くなっていますが、依然としてどちらも極めて強力です。《破滅の終焉》から《終末の祟りの先陣》をサーチすればトランプルを持った100点以上のダメージ源を用意することができ、キャットオーブン戦略を吹き飛ばすことができます。《エンバレスの宝剣》にはやや弱くなってしまいますが、使っていて楽しいですし、ゴルガリキャットオーブンに嫌気がさしている人にはおすすめです。
キーカード: 《世界を揺るがす者、ニッサ》《発現する浅瀬》《茨の騎兵》
MC VIIメタゲーム予想
禁止後のメタゲームがどうなるかは、我々の手にかかっています。MC VIIは新しいデッキのお披露目の場となることでしょう。環境のトップデッキたちにつけいる隙はあるので、タイトル獲得を狙ってさまざまなデッキがあふれるメタゲームとなるはずです。
私の予想では、一番人気がジェスカイファイアーズであり、それからジャンドサクリファイス、ゴルガリキャットと続いていくと思っています。数こそ少ないでしょうが、ティムール再生や攻撃的な《エンバレスの宝剣》戦略を選択するプレイヤーもいるでしょう。