Translated by Kohei Kido
(掲載日 2019/12/13)
はじめに
熱心なレガシーファンの皆さん、こんにちは!この記事はグランプリ・ボローニャ2019へ参加した僕の奮闘記で、主にボローニャに行く前週の準備について話していくつもりです。次回は昔ながらの1回戦ごとのトーナメントレポートになります。
僕が地球上で一番好きなのは、《渦まく知識》を唱えることです!悲しいことにいろいろな理由で、僕は競技的にレガシーをやるチャンスがそこまでありません。実のところボローニャも参加を見送ろうと考えていました。ティムールデルバーが絶対的王者に見える環境のままでメタゲームは見飽きたものでしたし、ボローニャと同じ週末には地元でPTQベルリンが開催予定となっていたためです。
状況が変わったのはウィザーズ・オブ・ザ・コースト社(WotC)が、これまでの2シーズンでプラチナ、ゴールド、シルバーレベルプロだったすべてのプレイヤーを2020年最初のプレイヤーズツアーに招待すると発表してからです。この発表により僕はベルリンでのPTQへ参加することはできなくなりましたが、同時にボローニャは魅力的になりました。
ヨーロッパ開催のグランプリが2ヵ月間の冬休みに入る前の、2019年最後のグランプリであり、3byeで参加できる最後の機会でもあります。それに加えてとても仲のよい友人3人が参加し、寝床まで提供してくれるというのです。彼らは僕のように超競技的でいることよりも、楽しい時間を過ごすことを優先しています。彼らと一緒に週末を過ごすことは、大会がどうなろうと僕は楽しいひと時を過ごせるということを意味していました。
それに僕が「マネー印刷機械」と呼んでいるミステリードラフトもあります。グランプリ・ボローニャに参加するにはいくつもの理由ができました。飛行機を予約した時には僕にとってボローニャは、競技的な大会というよりは休暇のような感覚でした。しかし、僕は絶対に敗北を受け入れない野心的なスパイク思考の持ち主なので、休暇としてグランプリを過ごすことに耐えられそうにありません。ということで、大会に向けていろいろなデッキを試しました。一部は配信もおこなったので、ここにある僕のTwitchチャンネルで見ることができます。
試したデッキたち
以下にあるのは僕がグランプリ・ボローニャ2019のために試したデッキのリストです(試した順)。
試した順のデッキのリスト |
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スゥルタイデルバー |
グリクシスデルバー |
スゥルタイタッチ赤氷雪コントロール |
黒緑デプス |
スニーク・ショー |
4色メンター |
ジェスカイメンター |
バント《自然の秩序》 |
僕には十分な時間がなかったので、すべてのデッキを洗いざらい試すことはできませんでした。間違いなく見落としたものはあり、それぞれのデッキのベストなリストも持ってはいませんでしたが、それでも僕はいろいろなデッキをさわる中で今のレガシーについてうまく把握することができました。《レンと六番》が一週間前に禁止されていて、支配的なプレインズウォーカーが去ったあとに何が一番強いのか、本当にわかっている人は誰もいなかったのです。
僕がすぐに気がついたことは《王冠泥棒、オーコ》と組み合わせた《アーカムの天測儀》は群を抜いて素晴らしいことでした。誰も驚かないでしょうが、歴史上最強のプレインズウォーカーはレガシーでもかなり強いのです。
スゥルタイデルバー
僕はスゥルタイデルバーから調整を始めてすぐにこれを諦めました。《死儀礼のシャーマン》がいなくなってから、このタイプのデッキは以前のようには使えなくなりました。《死儀礼のシャーマン》抜きでは、これは普通のアグロデッキか普通のミッドレンジデッキで、特に何かにすごく優れてるわけでもなく、普通なだけのデッキのように感じられるのです。打点を伸ばすための《稲妻》もなく、《アーカムの天測儀》を使ったデッキにゲーム後半で対抗できるわけでもありません。
スゥルタイデルバー自体はグランプリ・ボローニャで成功しましたが、これはデッキ自体が実際に強いというよりは、実力あるプレイヤーが何人もこのデッキを使うことを選んだからだと思います。勘違いしないでいただきたいことは、このデッキはカードパワーが高いカードが詰め込まれているため、このデッキが本当は弱いデッキで使わない方がいいと言いたいわけではありません。
グリクシスデルバー
グリクシスデルバーはもっといいデッキのように思えました。《致命的な一押し》と違い、コンボデッキ相手でも無駄にならない《稲妻》が使えます。《戦慄衆の秘儀術師》はとても強力な2マナ域であり、異論はあるでしょうが《タルモゴイフ》よりもいい場面がたくさんあります。たとえばコンボデッキ相手には自分の手札を打ち消し呪文で満たしたいですし、《悪意の大梟》相手に攻撃して相撃ちとなってもまだ何か得るものがあるかもしれませんしね。
デッキの感触はよいものでした。でも《目くらまし》と《不毛の大地》を採用しながら土地が15枚しかないデッキを使う気になれませんでした。《レンと六番》と《死儀礼のシャーマン》がレガシー環境から去り、デルバーデッキのマナ基盤はかなり悪いものになりました。現在、《不毛の大地》はデルバーデッキに対してとても効果的です。
さらに言えば、今までデルバーデッキを本当に好きになれなかった理由は、引き次第では非常に悪い展開になってしまうからです。カードはデッキの中で順序良く並んでいなければなりません。相手に対応するためのカードを引きすぎたり、相手の脅威になるカードを引きすぎたりするとうまく動けません。もちろん《渦まく知識》はこれらの問題をいくらか解決しますが、いつでもデッキの上から12枚に《渦まく知識》があるわけではありません。
《アーカムの天測儀》と氷雪基本土地を使う対戦相手が妬ましくなりました。僕はきちんと試合をできる可能性を高めたかったのです。レガシーの試合のために席へ着き、《不毛の大地》を《Underground Sea》に打たれてゲームが終わるのは嫌だったのです。
スゥルタイタッチ赤氷雪コントロール(チェコパイル)
早期に自分は氷雪コントロールをやりたいのだと理解しました。下にあるのは僕が最後に使ったチェコパイルです。サイドボードに少し赤いカードのあるスゥルタイカラーになっています。
1 《冠雪の沼》
3 《Underground Sea》
1 《Badlands》
1 《Bayou》
1 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
3 《沸騰する小湖》
3 《新緑の地下墓地》
2 《霧深い雨林》
-土地 (21)- 4 《悪意の大梟》
2 《瞬唱の魔道士》
1 《疫病を仕組むもの》
-クリーチャー (7)-
3 《思案》
2 《致命的な一押し》
2 《コジレックの審問》
1 《思考囲い》
3 《突然の衰微》
2 《湖での水難》
2 《トーラックへの賛歌》
1 《リリアナの勝利》
4 《意志の力》
4 《アーカムの天測儀》
2 《王冠泥棒、オーコ》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (32)-
初めは上手くいっていましたが、途中からそれ以上勝てなくなりました。このデッキの戦略は本当に好きだったので悲しい気持ちになりましたね。特に《アーカムの天測儀》を引かなかった場合は、《不毛の大地》に苦しめられることが多かったのです。
そして、《夏の帳》はこのデッキを全否定しました。多くのデッキが《夏の帳》のために緑をタッチするかメインカラーとして使用しているので、このデッキは不完全なコントロールデッキのように思えました。
僕の友人であるサシャ・シュワルツ/Sascha Schwarzもこのデッキタイプを好んでいましたが、彼も勝てずにこのデッキを諦めました。サシャはスニーク・ショーを使うことを選び、ボローニャではトップ64に入りました。僕が作ったチェコパイルのリストも完璧ではなく、このデッキタイプに関しては10位に入賞したのトーマス・マー/Tomas Marのリストを参考にするといいでしょう。
黒緑デプス
とうとう困り果てて《渦まく知識》のないデッキすら使い始めました!僕が精神的にどんなに追い詰められていたか想像できるでしょう。僕は人生のどん底にいました。
冗談はさておき、黒緑デプスはいろいろと筋が通っていました。早期の手札破壊、《突然の衰微》、《闇の腹心》と《エルフの開墾者》の柔軟性、そして早いコンボによる勝利。ボローニャに向けて試行錯誤した週で唯一の全勝をすることができましたが、早期にこのデッキをプレイするのは難しいと気づきました。最終的に使う気にならなかったのは、このデッキを使うことを楽しんでいなかったからでしょう。
スニーク・ショー
その後にスニーク・ショーでリーグ戦を開始して、ゴブリンとマーフォーク、ふたつの部族デッキに完全に打ち負かされました。4ゲームともチャンスはまったくなく、接戦ですらありませんでした。僕はこのデッキから降りることを決めました。サシャ自身は勝ち続けていると僕に教えてくれても、気持ちは決して変わりませんでした。僕は降りた!僕は降りたんだ!
以上のゲームはすべて配信されていたので、僕の酷い初手が見たかったら上にあるリンクから見てみてください。
4色メンター
今までの破滅的な出来事の後、夜の残りの時間は落ち着くために使うことにしてカードマーケットが開催するプラハでの大会の配信を視聴し始めました。友人のトラルフ・「トッフェル」・セベリン/Thoralf “Toffel” Severin、ジャミン・カウフ/Jamin Kauf、ライリー・ナイト/Riley Knightたちが面白い試合を繰り広げていました。そのあとにトップ8のデッキをチェックしていると、この輝く宝石を見つけたのです。ヨーロッパのレガシープレイヤーにして「奇跡」デッキの達人、さらにはいいやつであるトマーシュ・ヴルチェク/Tomas Vlcekが使った4色メンターのデッキリストです。
2 《冠雪の平地》
1 《冠雪の山》
1 《Tropical Island》
1 《Tundra》
1 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
2 《沸騰する小湖》
2 《虹色の眺望》
-土地 (19)- 3 《瞬唱の魔道士》
3 《僧院の導師》
-クリーチャー (6)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
2 《呪文貫き》
2 《否定の力》
1 《議会の採決》
2 《至高の評決》
4 《意志の力》
1 《マグマの陥没孔》
2 《相殺》
3 《アーカムの天測儀》
1 《仕組まれた爆薬》
2 《時を解す者、テフェリー》
1 《王冠泥棒、オーコ》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (35)-
そうこなくては!その頃僕は生活でトラブルを抱えていて、このデッキは現実のことを忘れさせてくれました。翌朝、僕はこのデッキの調整を始め、まずは《氷牙のコアトル》と4枚目の《アーカムの天測儀》を足しました。《氷牙のコアトル》はこのデッキと相性がいいように思えましたし、僕は《相殺》がそこまで好きではなかったからです。《基本に帰れ》より《血染めの月》を優先することも、僕にとっては当たり前のことでした。このデッキを使った最初の試合のスクリーンショットです。
このスクリーンショットは、僕がMTGとレガシーで何を愛しているのかが映っています。相手との駆け引きの末、最終的に僕の《僧院の導師》が盤面を支配するのです。残り時間と山札の残り枚数も見てください。この試合は久しぶりに体験した最高に楽しい試合であり、僕が再び調整に没頭するには相応しいデッキでした。
このデッキは僕にとっていろいろな意味で納得できるものでした。 このデッキに対して《夏の帳》は効果が薄く、《剣を鍬に》はマリットレイジへの解答になります。《時を解す者、テフェリー》は青のミラーマッチで驚異的な強さです。コンボデッキを相手にしても黒の手札破壊は恋しくなりませんでした。
何試合かリーグ戦をやったあと《氷牙のコアトル》はデッキから抜きました。対デルバーの《紅蓮破》、対デス&タックスの《摩耗/損耗》と《イゼットの静電術師》のために《山》の存在がいかに重要であるかに気がついたためです。《森》の代わりに《山》が入ると《氷牙のコアトル》は以前よりも使いにくくなりました。
その次は緑の入っていないただのジェスカイメンターを試しましたが、すぐに4色に戻しました。《王冠泥棒、オーコ》と《夏の帳》はタッチ緑に値するものであり、そのためにかかるデッキへの負担もかなり軽いものです。《アーカムの天測儀》がデッキに入っているため、《Tropical Island》1枚で十分なのです。
最終デッキリスト
4色の型でさらにプレイして、熱心なレガシーのファンであるステファン・シュッツ/Stefan Schuetzとトマーシュ・ヴルチェク/Tomas Vlcekと話した後に、ボローニャに持ち込むこのリストへ辿りつきました。
2 《冠雪の平地》
1 《冠雪の山》
1 《Tropical Island》
1 《Tundra》
1 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《沸騰する小湖》
1 《虹色の眺望》
-土地 (20)- 3 《瞬唱の魔道士》
3 《僧院の導師》
-クリーチャー (6)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
1 《呪文貫き》
1 《呪文嵌め》
1 《削剥》
2 《否定の力》
1 《議会の採決》
1 《至高の評決》
4 《意志の力》
4 《アーカムの天測儀》
1 《仕組まれた爆薬》
2 《王冠泥棒、オーコ》
2 《時を解す者、テフェリー》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (34)-
このデッキは4枚目の土地までどうしても伸ばしたいので、20枚目の土地を足すことにしました。そして、サイドボードについては用途の狭い《安らかなる眠り》よりも《封じ込める僧侶》の方が個人的には好きです。墓地利用デッキを始末するとともに《緑の太陽の頂点》、《自然の秩序》、スニーク・ショー、そして《霊気の薬瓶》に対しても役に立ちますからね。
まとめ
注意深く読んでいれば、僕が試したデッキの中でひとつだけ話していないデッキがあることに気づいたことでしょう。僕の良き友人でありレガシー専門家のジャスパー・グリマー/Jasper Grimmerの「バント《自然の秩序》」というアイデアです。僕に言わせれば期待できるデッキですが、それについては次回追って話します。大会がどのように進行して、現地の食べ物がどれほど美味しかったか、そしてバント《自然の秩序》がなんなのか、そのうちわかりますよ。
この記事を読んで楽しんでくれていたら幸いです。目を留めてくれてありがとう、また次回。