はじめに
みなさん新年あけましておめでとうございます。今年も、アメリカで開催されているSCG Tourの結果を中心に、みなさんに構築フォーマットの情報をお届けしていきますのでよろしくお願いいたします。
さて、今回の連載では新年早々に開催されたSCGO Columbus(チームモダン)の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Columbus
《王冠泥棒、オーコ》デッキを使ったチームが2020年初のSCGOを制する
2020年1月5日
- 1位 Bant Snowblade/Simic Urza/Sultai Titan
- 2位 Amulet Titan/Sultai Urza/Amulet Titan
- 3位 Gifts Storm/Gifts Storm/Simic Titan
- 4位 Temur Urza/Amulet Titan/Temur Urza
Firer/Allen/Jessup
トップ4のデッキリストはこちら
2020年初の大規模なイベントであるSCGO Columbusは、チームモダンで開催されました。各チームが選択したデッキはSultai、Temur、Simicなど色の組み合わせの差は見られるものの、各種UrzaデッキやBant Blade、比較的最近使われ始めたSultai Titanなど、《王冠泥棒、オーコ》を使ったデッキや《王冠泥棒、オーコ》を無視することができるAmulet TitanやStormといったコンボデッキが中心でした。
優勝したチームは、Bant Snowblade、Simic Urza、Sultai Titanという3つの異なるスタイルの《王冠泥棒、オーコ》デッキという大変極端な結果となりました。
SCGO Columbus デッキ紹介
「Simic Urza」「Bant Snowblade」「Sultai Titan」「Devoted Devastation」
Simic Urza
1 《冠雪の森》
1 《繁殖池》
2 《神秘の聖域》
4 《霧深い雨林》
3 《溢れかえる岸辺》
2 《汚染された三角州》
2 《沸騰する小湖》
-土地 (20)- 4 《金のガチョウ》
4 《氷牙のコアトル》
2 《湖に潜む者、エムリー》
4 《最高工匠卿、ウルザ》
-クリーチャー (14)-
1 《金属の叱責》
1 《冷静な反論》
3 《謎めいた命令》
4 《オパールのモックス》
4 《ミシュラのガラクタ》
2 《仕組まれた爆薬》
4 《アーカムの天測儀》
1 《上天の呪文爆弾》
4 《王冠泥棒、オーコ》
-呪文 (26)-
現環境のトップメタの一角であるUrzaは、環境の研究が進むにつれてリストも洗練されてきました。現在はソプターコンボや《発明品の唸り》などツールボックス的な戦略から、《大魔導師の魔除け》や《謎めいた命令》などドロースペルやカウンターを採用したミッドレンジ寄りの構成にシフトしていきました。
このデッキの《最高工匠卿、ウルザ》はフィニッシャー兼アドバンテージ源として使われており、《金のガチョウ》+《王冠泥棒、オーコ》による食物シナジーも搭載されています。
ミッドレンジ寄りの構成になっているため《石のような静寂》など対策カードにも耐性があり、環境の多くのデッキと互角以上に渡り合えるデッキに仕上がっていますが、Simicカラーなので除去が薄いのが弱点となります。そのため安定性は若干落ちるものの、相手の《王冠泥棒、オーコ》にも対策できる《突然の衰微》を採用したSultaiバージョンが使われることもあります。また、《湖に潜む者、エムリー》や《最高工匠卿、ウルザ》などを1マナで対策できる《感電破》をタッチしたTemurバージョンも結果を残しているなどバリエーションが豊富なのも特徴です。
☆注目ポイント
《ミシュラのガラクタ》との組み合わせによって毎ターン追加のドローができる《湖に潜む者、エムリー》ですが、伝説であるため最近のリストは枚数が減らされ、代わりに《氷牙のコアトル》が採用されています。接死が付く条件を満たすのも容易なので、《死の影》やエルドラージクリーチャー、感染クリーチャーなどと相打ちが取れる優秀なクリーチャーです。
《金のガチョウ》と《オパールのモックス》によって2ターン目から《王冠泥棒、オーコ》を展開しやすくなっています。《金のガチョウ》との食物シナジーやアーティファクトを多用するので、Simic Urzaは《王冠泥棒、オーコ》を最も強く使えるデッキの一つです。
今大会で優勝を果たしたDan Jessup選手のリストで最も注目に値するポイントは、サイドの《夢を引き裂く者、アショク》です。今大会では、《王冠泥棒、オーコ》を無視できるデッキとして《原始のタイタン》を使うデッキを選択したチームが多かったこともあり、サーチを封じる《夢を引き裂く者、アショク》はサイドボードのカードの中でも最も活躍したカードの1枚だったことが予想されます。
Bant Snowblade
2 《冠雪の島》
2 《冠雪の森》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《寺院の庭》
4 《霧深い雨林》
4 《吹きさらしの荒野》
1 《地平線の梢》
1 《冠水樹林帯》
2 《廃墟の地》
-土地 (21)- 4 《貴族の教主》
3 《極楽鳥》
4 《氷牙のコアトル》
4 《石鍛冶の神秘家》
4 《呪文捕らえ》
-クリーチャー (19)-
3 《否定の力》
3 《アーカムの天測儀》
1 《殴打頭蓋》
1 《饗宴と飢餓の剣》
4 《王冠泥棒、オーコ》
2 《時を解す者、テフェリー》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (20)-
2 《夏の帳》
2 《遺棄の風》
2 《神秘の論争》
2 《四肢切断》
2 《薄氷の上》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《軽蔑的な一撃》
-サイドボード (15)-
The Last Sun 2019でもPetr Sochurek選手が使用し、準優勝という好成績を残していたのが記憶に新しいBant Snowblade。
《石鍛冶の神秘家》パッケージが搭載されており、クリーチャーと装備品を《流刑への道》や《否定の力》、《呪文捕らえ》など軽い妨害手段でバックアップしていくプランにより安定したゲーム展開が望めます。
《王冠泥棒、オーコ》デッキの代表格とされているUrzaよりも各種プレインズウォーカー、装備品パッケージ、軽い除去、カウンターなど、単体でも優れたカードが多く現環境の代表的なフェアデッキの形として定着しています。
☆注目ポイント
3色になったことでマナ基盤の安定性を考慮して《廃墟の地》が減量されています。また、最近はMono Green TronよりもEldrazi Tronの方が使用率が高く、《現実を砕くもの》や《難題の予見者》などは《氷牙のコアトル》で対処することができます。このクリーチャーに除去を使わせることで、《呪文捕らえ》など重要なクリーチャーも生き残りやすくなります。
《呪文捕らえ》は、《最高工匠卿、ウルザ》を含めた様々な戦略に対してカウンター兼クロックとして機能します。そして、《王冠泥棒、オーコ》で大鹿クリーチャーにしてしまえば、能力が失われるのでスペルを永久に追放することが可能です。このカードの能力は打ち消しではないので、《夏の帳》にも耐性があります。
2ターン目から《王冠泥棒、オーコ》を展開する確率を上げるためにマナクリーチャーが多めに採られています。スイーパーに弱くなりますが、《否定の力》や《呪文捕らえ》でバックアップしていきます。マナクリーチャーを多数採用することで中盤以降のトップデッキが弱くなってしまうことが懸念されますが、《饗宴と飢餓の剣》などの装備品や《王冠泥棒、オーコ》の能力によって大鹿に変えることで十分に脅威として機能します。
追加の除去として採用されている《遺棄の風》は、マナが余る中盤以降は一方的なスイーパーになり、マナクリーチャーを多数採用しているこのデッキにも合っています。
Sultai Titan
《原始のタイタン》を使ったデッキはAmulet TitanやTitan Shiftといった土地コンボデッキが一般的ですが、最近は《死者の原野》 によるアドバンテージを活かしたビッグマナタイプの《原始のタイタン》デッキが台頭してきていました。
Sultai TitanはAmulet Titanと異なり、《精力の護符》や《迷える探求者、梓》、バウンスランドといった特定のパーマネントに依存していないので、 Bant SnowbladeやUrzaなどほかの《王冠泥棒、オーコ》デッキに強い構成となっており、《減衰球》など一部のサイドボードカードにも耐性があります。
☆注目ポイント
《夏の帳》や《魂の洞窟》といったカードのおかげで、ビッグマナ系のデッキの弱点である《軽蔑的な一撃》などカウンターも問題になりません。
このデッキで目を引くのは、なんといってもメインから1枚だけ採用されている《孔蹄のビヒモス》です。《死者の原野》から湧き出た2/2のゾンビや使用済みの《樹上の草食獣》、《エルフの再生者》といったクリーチャーがフィニッシャー級のサイズとなって最後の一押しとして活躍します。マナが揃ったら《召喚士の契約》でサーチしてきて一気に勝負を決めにいきます。
サイドの《暗殺者の戦利品》は、このデッキにとって厄介となる《夢を引き裂く者、アショク》対策になります。相手に土地を与えてしまうデメリットこそありますが、除去が少ないこのデッキにとって貴重な除去スペルなので4枚と多めに採られています。
Devoted Devastation
1 《冠雪の平地》
2 《寺院の庭》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
4 《吹きさらしの荒野》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
4 《剃刀境の茂み》
2 《地平線の梢》
1 《植物の聖域》
-土地 (19)- 1 《歩行バリスタ》
4 《ルーンの与え手》
4 《貴族の教主》
1 《極楽鳥》
4 《献身のドルイド》
3 《療治の侍臣》
2 《薄暮見の徴募兵》
2 《拘留代理人》
2 《永遠の証人》
1 《イーオスのレインジャー長》
1 《豊潤の声、シャライ》
-クリーチャー (25)-
2 《ブレンタンの炉の世話人》
2 《ガドック・ティーグ》
2 《流刑への道》
2 《統一された意思》
1 《ミラディンの十字軍》
1 《四肢切断》
1 《神秘の論争》
1 《王冠泥棒、オーコ》
-サイドボード (15)-
《献身のドルイド》+《療治の侍臣》によるコンボによって無限マナを得て、最終的に《歩行バリスタ》によって勝負を決めるDevoted Druidコンボは以前から見られましたが、《ルーンの与え手》、《エラダムリーの呼び声》、《むかしむかし》、《破滅の終焉》など新カードによって大幅に強化されています。
除去が少ないUrzaはこちらのコンボを止めることは難しく、Amulet Titanなど環境の多くのコンボデッキに対しても速度の面で引けを取りません。メイン戦で有利なマッチアップが多く、《王冠泥棒、オーコ》によってコンボに頼らずにミッドレンジとして渡り合うことも可能で、サイド後は《ガドック・ティーグ》など特定の戦略に刺さるカードにアクセスできます。
☆注目ポイント
《むかしむかし》のおかげで土地が少ない初手をキープしやすく、マナクリーチャーやコンボパーツである《献身のドルイド》や《療治の侍臣》を揃えやすくなります。《エラダムリーの呼び声》や《破滅の終焉》などサーチスペルに恵まれているので安定性も非常に高く、コンボパーツ以外でもDeath’s ShadowやSimic Urzaとのマッチアップに強い《ミラディンの十字軍》などもサーチしてこれます。
《豊潤の声、シャライ》は、《ルーンの与え手》との組み合わせが強力で、相手のハンデスや除去を腐らせることができ、《献身のドルイド》+《療治の侍臣》によるコンボによって自軍のクリーチャーを好きなだけ強化することもできるのでコンボパーツにもなります。
《破滅の終焉》は、Xの値を調節して《呪文捕らえ》をかわしたり、X=2の《虚空の杯》が場にあっても《献身のドルイド》+《療治の侍臣》のコンボを揃えることを可能にしてくれます。コンボが揃った後は、このカード1枚で勝負を決めることができるので、このデッキにとって最も重要なスペルとなります。
総括
先週末に開催されたSCGO Columbusの結果から、現在のモダンはUrza、Bant Snowblade、Devoted Comboなど《王冠泥棒、オーコ》を活用したデッキとAmulet TitanやStormなどの《王冠泥棒、オーコ》を無視できるデッキが中心となっています。
《王冠泥棒、オーコ》デッキが支配する環境を懸念する声も多く、今週末にモダンで開催されるSCGO Knoxvilleとグランプリ・オースティン2019の結果次第で何かしらのテコ入れがありそうです。
USA Modern Express vol.36は以上となります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!