はじめに
みなさんこんにちは。
今回から、USA Pioneer Expressも連載させていただくことになりました。スタンダード、モダン、レガシーの連載と同様に、SCG Tourやグランプリなどの入賞デッキを中心にパイオニアの情報をみなさんに提供していきたいと思います。
ご存じの通り、パイオニアはモダンよりもカードプールが狭くローテーションの存在しない構築フォーマットです。カードプールが広くなるにつれて敷居が高くなりつつあったモダンよりも参入しやすく、今月末に日本国内で開催されるグランプリ・名古屋2020のフォーマットということもあり、今話題のフォーマットです。
さて、今回はSCG Classic ColumbusとSCG Classic Knoxvilleの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCG Classic Columbus
単色アグロが支配する世界
2020年1月5日
- 1位 Mono Red Aggro
- 2位 Mono Green Ramp
- 3位 UW Control
- 4位 Mono Red Aggro
- 5位 Jund Sacrifice
- 6位 Hardened Scales
- 7位 Mono Black Aggro
- 8位 Hardened Scales
Kevin Hoang
トップ16のデッキリストはこちら
パイオニアフォーマットが発表された直後は禁止カードがフェッチランドのみで、MOの結果などのデータを参考に毎週禁止カードのリストをアップデートしていく調整方法が取られました。毎週のように禁止カードが出ていましたが、2019年12月16日に《王冠泥棒、オーコ》が禁止カードに指定されて以来禁止カードが出ることもなくなり、メタゲームも安定してきました。
現在はMono Green Ramp、Mono Red Aggro、Mono Black Aggroといった単色デッキが中心で、UW ControlやIzzet Ensoul、Lotus Stormなども見られます。
SCG Classic Columbusの結果も現環境の状況をはっきりと示す形となり、決勝にまで勝ち残ったのはMono Red AggroとMono Green Rampというふたつの異なる単色デッキでした。
SCG Classic Columbus デッキ紹介
「Mono Red Aggro」「Mono Green Ramp」「Mono Black Aggro」「UW Control」
Mono Red Aggro
4 《ラムナプの遺跡》
2 《エンバレス城》
4 《変わり谷》
-土地 (26)- 4 《損魂魔道士》
2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》
4 《砕骨の巨人》
4 《ゴブリンの熟練扇動者》
2 《軍勢の戦親分》
2 《朱地洞の族長、トーブラン》
4 《栄光をもたらすもの》
-クリーチャー (22)-
ミッドレンジ型からバーン型など様々なバリエーションの赤単が現環境には存在します。
今大会で優勝を果たしたKevin Hoang選手のリストは、土地が26枚と多めで《反逆の先導者、チャンドラ》や《朱地洞の族長、トーブラン》といった4マナ域が多数搭載されています。そして、《ラムナプの遺跡》や《変わり谷》といった土地はフラッド防止も兼ねてくれます。
過去のスタンダードで猛威を振るったRamunap Redを彷彿とさせる構成で、単色なので動きが安定しています。ロングゲームにも強く、Mono Green AggroやMono Black Aggroといったほかのアグロデッキに対してコントロールデッキのように振舞うことが可能で、中盤以降も息切れがしにくくなっているためコントロールとのマッチアップでも互角以上に渡り合えます。
☆注目ポイント
土地が多めのこのバージョンの強みとして、《反逆の先導者、チャンドラ》や《栄光をもたらすもの》といったカードを無理なく採用することができます。《鉄葉のチャンピオン》や《ゲトの裏切り者、カリタス》などタフネス4のクリーチャーを処理しやすくなっています。
《砕骨の巨人》はアグロデッキに対して軽い除去として機能し、本体も3マナでパワー4というマナレシオを持つ優秀なクリーチャーです。3マナ域の選択肢には、マナクリーチャーや黒単の1マナクリーチャーをまとめて流せる《ゴブリンの鎖回し》が挙げられますが、色拘束強く《変わり谷》との相性が良くないため、《ゴブリンの熟練扇動者》と《軍勢の戦親分》が選択されています。除去されずに生き残れば速やかにゲームを終わらせることができ、今大会でも決勝戦で緑単ランプに勝利し優勝を飾っています。
追加の3マナ域として《瘡蓋族の狂戦士》がサイドに採られており、こちらはコンボやコントロールとのマッチで活躍してくれます。
フェッチランドが禁止カードに指定されているパイオニアでは安定した多色デッキを構築することは難しく、アグロデッキは単色が主でコントロールやミッドレンジは基本2色となります。赤単は火力除去や《反逆の先導者、チャンドラ》、《栄光をもたらすもの》といった相手のクリーチャーを除去する手段も豊富で、プレイングも難しくないのでお勧めデッキの一つです。
Mono Green Ramp
4 《ギャレンブリグ城》
4 《ウギンの聖域》
4 《見捨てられた神々の神殿》
4 《光輝の泉》
2 《爆発域》
-土地 (27)- 1 《歩行バリスタ》
4 《金のガチョウ》
4 《樹上の草食獣》
4 《エルフの再生者》
1 《難題の予見者》
4 《茨の騎兵》
2 《忘却蒔き》
1 《ウルヴェンワルドのハイドラ》
4 《世界を壊すもの》
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
-クリーチャー (27)-
パイオニアバージョンのエルドラージ系ビッグマナデッキ。
モダンと異なりトロンランドや《エルドラージの寺院》がなく、2マナ以上出る土地が限られるパイオニアでは、《金のガチョウ》や《樹上の草食獣》、《エルフの再生者》といったクリーチャーがマナ加速の中心となっています。中盤以降は、《ギャレンブリグ城》や《見捨てられた神々の神殿》といった土地から《絶え間ない飢餓、ウラモグ》や《歩行バリスタ》といったフィニッシャーに繋げていきます。
緑単なので除去が少なく、赤単のように速いアグロデッキを苦手としますが、《樹上の草食獣》や《爆発域》、《光輝の泉》で序盤を凌ぎつつ《精霊龍、ウギン》にまで繋げます。
☆注目ポイント
このデッキの中堅クリーチャー的な存在である《茨の騎兵》は、マナ加速しつつ5/6というサイズで到達持ちなので、《弧光のフェニックス》やスピリットクリーチャーなど飛行クリーチャーも止めてくれます。
サイドにはアグロデッキとのマッチアップに備えて《次元の歪曲》が4枚採用されています。そのほかには、コントロールとのマッチアップ用の追加のフィニッシャーとして《約束された終末、エムラクール》、カードアドバンテージが稼げる《不屈の追跡者》なども見られます。《減衰球》は《ギャレンブリグ城》なども妨害してしまいますが、このタイプのデッキにとって厳しいLotus Storm対策になります。
Mono Black Aggro
4 《ロークスワイン城》
4 《変わり谷》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地 (24)- 4 《血に染まりし勇者》
4 《漆黒軍の騎士》
2 《どぶ骨》
2 《戦慄の放浪者》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《残忍な騎士》
2 《悪ふざけの名人、ランクル》
-クリーチャー (22)-
《密輸人の回転翼機》を失っても依然としてコンスタントに結果を残し続けているMono Black Aggro。
1マナ域のクリーチャーを多数採用した現環境のアグロデッキの代表格で、除去や《思考囲い》など優秀なスペルも揃っています。《屑鉄場のたかり屋》、《血に染まりし勇者》、《戦慄の放浪者》、《どぶ骨》といった墓地に落ちても復活できるクリーチャーを多数採用しているため、粘り強い構成となっています。
除去されても復活してくるクリーチャーや《ロークスワイン城》、ハンデスなどのおかげで除去やスイーパーを多用するUW Controlに対して強いデッキです。
☆注目ポイント
《密輸人の回転翼機》の枠を埋めるのは、《霊気圏の収集艇》と追加の除去の《闇の掌握》です。《霊気圏の収集艇》は3マナで3/5飛行となかなか良いサイズで、《悪ふざけの名人、ランクル》や《栄光をもたらすもの》を止めることができます。エネルギーをコストに絆魂を得られるので、アグロデッキとのダメージレースで有利になり、《ロークスワイン城》によって失ったライフの回復もできます。
《ロークスワイン城》は、軽いクリーチャーを多用するこのデッキでは手札の枚数によるライフロスも少なく、息切れを防止してくれる強力な土地です。
黒単の強みは、強力な除去である《致命的な一押し》とモダンやレガシーでも定番のハンデスとして活躍している《思考囲い》にアクセスできることです。フェッチランドが使えないパイオニアでは、モダンやレガシーと比べると「紛争」を達成する条件は少し厳しくなりますが、《ラノワールのエルフ》から《ゲトの裏切り者、カリタス》など4マナ域の脅威まで1マナで処理することができます。1マナと軽く受けの広い《思考囲い》は、パイオニアでは規格外の妨害スペルでほかの色では提供できない代物です。
UW Control
3 《平地》
4 《神聖なる泉》
1 《灌漑農地》
4 《氷河の城砦》
2 《アーデンベイル城》
2 《ヴァントレス城》
1 《廃墟の地》
1 《ガイアー岬の療養所》
-土地 (25)- -クリーチャー (0)-
2 《呪文貫き》
1 《中略》
4 《アゾリウスの魔除け》
2 《検閲》
1 《神聖な協力》
4 《吸収》
4 《至高の評決》
1 《残骸の漂着》
2 《時を越えた探索》
2 《排斥》
3 《時を解す者、テフェリー》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《思考を築く者、ジェイス》
2 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (35)-
《密輸人の回転翼機》、《王冠泥棒、オーコ》、《夏の帳》、《死者の原野》といったカードが退場したことにより、UW Controlにもチャンスが巡ってきました。
クリーチャーをメインに採用していないので、《致命的な一押し》など相手の除去を腐らせることができるのがこのタイプのデッキの強みです。クリーチャーのサイズにかかわらず除去できるスペルやスイーパーを多用するため、緑単アグロなどクリーチャーデッキに強いデッキです。墓地から復活してくるクリーチャーが多く、ハンデスによって《至高の評決》などをピンポイントに落としに来るMono Black Aggroなどは苦手なマッチアップとなります。
☆注目ポイント
《至高の評決》はどのリストを見ても4枚固定で、カウンターや除去の種類の選択、プレインズウォーカーの枚数などはプレイヤーの個性が出ています。多くのリストは、《覆いを割く者、ナーセット》+《時を解す者、テフェリー》+《ガイアー岬の療養所》によるロックを勝ち手段に採用しているようです。
《時を越えた探索》は、フェッチランドが禁止されているパイオニアでも《選択》や各種サイクリングカードによって墓地を肥やすことができるので、強力なドロースペルとして機能します。流石モダンやレガシーでも速い段階で禁止になったカードといったところです。
読まれるとハンデスで落とされてしまうのが難点ですが、《残骸の漂着》は墓地からクリーチャーを復活させてくるMono Black AggroやDredgeなどに刺さるスイーパーで、インスタントなので《変わり谷》や速攻クリーチャーを対策できるところがこのカードの魅力です。
メインはノンクリーチャーですが、サイド後は《僧院の導師》や《黎明をもたらす者ライラ》といったクリーチャーが追加のフィニッシャーとして投入されます。《ニクス毛の雄羊》はアグロデッキに対して時間を稼ぐ手段として有効で、攻撃を通すために相手はクリーチャーを並べざる得なくなるためスイーパーによってアドバンテージを得やすくなります。
《霊気の疾風》は赤や緑系のデッキに対して追加のバウンス、疑似的なカウンターとして機能しつつ、このタイプのデッキにとって厄介となる《反逆の先導者、チャンドラ》や《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》といったプレインズウォーカーを2マナという軽さで対策できる貴重なスペルです。
SCG Classic Knoxville
勝ち続ける赤き軍勢
2020年1月11-12日
- 1位 Big Red
- 2位 Sultai Dredge
- 3位 Hardened Scales
- 4位 Hardened Scales
- 5位 Big Red
- 6位 Big Red
- 7位 Mono White Aggro
- 8位 Izzet Phoenix
Tony Norton
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ミッドレンジ寄りの赤単が優勝を含めてプレイオフに3名と単色デッキが結果を残し続けています。
ほかには優勝こそ逃したものの、SCG Classic Columbusでも結果を残していたHardened Scalesが、今大会でもプレイオフに2名入賞していました。
SCG Classic Knoxville デッキ紹介
Hardened Scales
4 《草むした墓》
4 《花盛りの湿地》
4 《ラノワールの荒原》
1 《森林の墓地》
2 《ハシェプのオアシス》
-土地 (22)- 4 《搭載歩行機械》
4 《歩行バリスタ》
3 《エルフの神秘家》
3 《ラノワールのエルフ》
4 《大食のハイドラ》
4 《巻きつき蛇》
2 《漁る軟泥》
2 《ピーマの改革派、リシュカー》
-クリーチャー (26)-
《硬化した鱗》を軸とした戦略はパイオニアにも存在します。残念ながら《電結の荒廃者》は使えないのでモダンのようなアンフェアさは期待できませんが、《搭載歩行機械》や《歩行バリスタ》といったカードは健在です。過去のスタンダードでも活躍していた《巻きつき蛇》を始めとして、《大食のハイドラ》や《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》といったカードも使えるのでデッキとして十分に成立します。
1ターン目《硬化した鱗》、2ターン目《巻きつき蛇》、3ターン目に《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》か《ピーマの改革派、リシュカー》という動きが強力で、+1/+1シナジー以外にもマナ基盤が安定しており、軽い除去、ハンデス、優秀なクリーチャーにアクセスできるところがGolgariカラーの強みです。
☆注目ポイント
《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》は戦力の追加、全体強化とこのデッキに合ったプレインズウォーカーです。《アーク弓のレインジャー、ビビアン》はこのデッキではエンドカード級の強さで、[+3]能力もクリーチャーのサイズで勝るこのデッキでは強力な除去として機能します。
《鋼の監視者》を採用したバージョンもありますが、SCG Classics Columbusや今大会で結果を残しているバージョンは《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》や《アーク弓のレインジャー、ビビアン》といったプレインズウォーカーが多めのものでした。そのほか、《金属ミミック》や《実験体》などが不採用となっており、《硬化した鱗》と《巻きつき蛇》とのシナジーによる爆発力よりも安定性が重視されています。
《思考囲い》、《暗殺者の戦利品》、《致命的な一押し》などGolgariカラーは緑の優秀なクリーチャーと黒の軽い除去、ハンデスにアクセスできるので、サイド後はGolgari Midrangeに変形することも可能です。
総括
禁止改定の方も落ち着き、現在は各種単色アグロを中心にUW Control、Izzet Phoenix、Hardened Scales、Lotus Comboなど様々なデッキが見られる健全な環境のようです。
また、新セットの『テーロス還魂記』が環境にどのような影響を与えるのか要注目です。個人的にはすでに話題になっている《太陽冠のヘリオッド》+《歩行バリスタ》の無限ダメージコンボも気になるところです。
以上、USA Pioneer Express vol.1でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいパイオニアライフを!