マジックの大会で、マッサージが受けられる。
この言葉に違和感を覚えた方もいるだろう。しかし、グランプリ会場に足を運んだ人、グランプリのカバレージを読んだ人にはお馴染みだ。
「プレイヤーの安息所」
グランプリ・京都2016の会場内に設けられたスペースで、本格的なマッサージを受けることができるのだ。
施術を担当してくれるのは、大角 洋平さん。長蛇の列の合間を縫って、お話をお伺いすることができた。ぜひ、最後までご覧いただきたい。
■ マジックとマッサージ
--「では、よろしくお願いします。すっかりお馴染みになったマッサージブースですが、今回も大人気のようですね」
大角「ありがとうございます!多くの方にご来場いただいてます」
大角「実は、最初はジャッジの方に対するサービスだったんですよ。ジャッジの人は、硬い地面で何時間も立ちっぱなしなので、とても喜ばれました。そして『じゃあ、プレイヤーにもやってみたら?』という話になったんです」
--「そうだったんですね。でも、『マジックとマッサージ?』という疑問もあったのでは?」
大角「当初はありましたね。迷った部分もあったのですが、私も実はマジックプレイヤーなんですよ。そして『長い時間楽しませてくれるマジックに、何か恩返しができないかな』と考えていたんです。なので、やってみよう!と」
--「結果は御存知のとおり、大好評ですね」
大角「本当に嬉しいです。少しずつお客様も増えているので、マジック界に浸透してきたのかなぁ、と」
--「改めて、マジックプレイヤーにとってマッサージがどれくらい重要か、お聞かせ願えますか?」
大角「マジックプレイヤーで多いのは、腰、肩、そして首に違和感や痛みを覚える方が多いですね。そしてこれらの痛みは、集中力の低下に繋がります。集中できない状態ではプレイも間違えやすくなりますし、グランプリのように長丁場のラウンドを戦い抜くことは不可能ですよね。プレイヤーの皆さんには、そうなって欲しくないんですよ」
--「なるほど。どれだけ頑張って準備してきても、体調不良でドロップ、というのは悔しいですもんね」
大角「そうですね。準備という意味では、マジックで例えるならば、マッサージなどで体調を整えることは、デッキを構築・調整することなんです。マッサージを受けることで、身体を調整して、練習の成果を出して欲しいですね」
--「プロプレイヤーは、コンディションを大切にしますよね」
大角「一流のプレイヤーは、体調管理も一流ですよね。マジックのプロプレイヤーは頭脳を使うアスリートですから」
大角「前回の【グランプリ・東京2016】では、とても嬉しいことがありました。『初日抜けるか抜けないか』という人がマッサージに来たんですよ。『頑張ってくださいね!』と見送ったら、そこから5連勝したそうで、報告に来てくれましたよ」
--「5連勝!?それはすごい」
大角「嬉しかったですね。小さなことですが、マジックに恩返しができたかもしれません」
--「私も受けたくなってきました。プレイヤーに対して、大角さんからアドバイスはありますか?」
大角「大切なのは日頃の過ごし方です。よく寝て、よく食べる。どれだけ休息が取れているかどうかが大事です。大会の直前で健康になろうとしても、付け焼き刃になってしまいます。遠征だと、移動時間の疲労もありますからね。日頃は健康的に過ごしたほうが、ここぞ!という場面でエネルギーが出ますからね。もちろん、マッサージである程度の回復はできますよ!」
--「京都までの移動で疲れているプレイヤーも多いでしょうね。でも、ラウンドの間だと時間が足りなくなってしまいそうだ……」
大角「いえ、目安として『15分程度』とは言っていますが、そこは調整します。混雑具合にもよりますが、『もっと長時間やって欲しい』というお客様には延長もしますし、『ラウンドの合間で、あまり時間がない!』という方には、短時間で効果のある施術を行いますよ」
--「す、すごい……」
大角「プレイヤーの皆様の希望に、可能な限り合わせます。渡辺さんも、仕事の合間に来てくださいね。それが私なりの、マジックへの恩返しです」
そう言いながら、大角さんは明るい笑顔を筆者に向けてくれた。
「マジックに恩返しがしたい」
その力強くも優しい言葉が、グランプリ会場の喧騒に掻き消されないように、ここにもう一度記しておこう。
さて、読者諸賢の中には「大角」という名字に見覚えがある方も居るのではないだろうか?お気づきの方もいると思うが、【サイドイベントマネージャー・インタビュー】でお話を伺った、大角 圭吾さんと同じなのである。
そう、実はお二人、ご兄弟なのだ。
兄はマッサージ、弟は運営という違った形ではあるが、
「プレイヤーにグランプリを思いっきり楽しんで欲しい!」
という強い気持ちは一緒だ。グランプリ・京都2016は、この優しい兄弟の支えがあってこそ開催できている、と言っても過言ではないだろう。
マジックを心から愛する大角兄弟に感謝を表し、このインタビューを終わりにしたい。
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