サイドイベントの取材を続けていると、会場に不思議な空間を見つけました。
く、鎖!?
この一角だけ鎖が張られており、ギャラリーは遠巻きにプレイを眺めることしかできません。重々しい空気……と思いきや、プレイヤーたちは笑顔でプレイしており、向こうの席からは「あー、やっぱりそれかー!」といった声まで聞こえてきます。
取材のためにジャッジに確認を取り、その中へ……失礼しまーす。
あ!《Black Lotus》!
そう、このエリアは「東京MTG協賛 日本ヴィンテージ選手権2016 Summer」の真っ最中!
「パワー9」などの超強力なカードが躍動するフォーマット。カードの価格を考えれば、鎖の存在も頷けますね。
それにしても、本当にプレイヤーは楽しそうです。対戦が終わったあとも意見交換をしながらフリープレイをしている人も多いし、他のサイドイベントよりも、明るい空気が流れています。この空気だけでも魅力的なフォーマットだということが分かる……。
「よし、こういうのは実際に参加している人に聞くのが一番だ!」
ということで、ヴィンテージ選手権に参加中の中島 主税さんにお話を伺いました。
Hareruya Prosであり、ヴィンテージにも造詣が深い中島さん、ヴィンテージの魅力、教えてください!
■ ヴィンテージの魅力
--「よろしくお願いします。早速ですが、ヴィンテージの魅力って、何でしょうか?」
中島「まずは、マジックの歴史に存在する、あらゆるカードを使えるという点がありますね。昔のカードを思う存分使えるというのは、非常に大きな楽しみではないでしょうか」
--「ヴィンテージのゲームとしての特徴はありますか?」
中島「ヴィンテージの場合、『全力と全力のぶつかり合い』というゲームになりやすいですね。あっという間に終わるとしても、一方的にではなく、お互いがやりたいことをやった結果、負ける、ということがほとんどです」
--「『パワー9』が出てきて、あっという間に終わっちゃう、というゲームではないんですね」
中島「そうなんです。もちろん、他のフォーマットに比べてカードの強さが桁違いなので、速いときは速いですけどね(笑) でも、皆さんが思っているほど『瞬殺』という展開になることは少ないですよ」
--「自分のデッキをある程度は回すことができるんですね。自分も強力なカードを使ってるし、やられても清々しいという感じでしょうか」
中島「そうですね。『ブン回り』されたとしても、『そういうフォーマットだ』と理解した上で皆プレイして、それを楽しんでいますからね。『うわー!やられたー!』みたいに」
--「それがすごく印象的でした。対戦風景を眺めていたのですが、皆さん本当に楽しそうですよね。この雰囲気は、会場内でも独特というか、羨ましいというか」
中島「そうですね。数少ない大会に集うので、自然と顔見知りも増えてきますし、このコミュニティの仲の良さは特別だと思います。大会を欲しているので、遠征する人も多いですよ。今日も、『この選手権のために京都に来ました!』という人もいるくらいです」
■ 中島の『ボンバーオース』
--「では、中島さんの使用しているデッキについて、少しお聞きしたいと思います」
中島「『ヴィンテージだし、レガシーでは使えないカードを使いたい』ということで、最近は『ボンバーオース』を使用しています」
--「デッキの動きを教えて下さい」
中島「《ドルイドの誓い》を利用して、《グリセルブランド》か《オーリオックの廃品回収者》を呼び出す、という非常にシンプルなデッキです。クリーチャーはこの2枚しかないので、《ドルイドの誓い》で大量のカードが墓地に落ちていきます。《Black Lotus》が落ちて、《オーリオックの廃品回収者》が出れば、無限マナです」
--「シンプルですが、とっても強力な動きですね」
中島「そうですね。あと、ちょっとしたこだわりがありまして、僕は勝ち手段が多いデッキが好きなんです。もともと『ボンバーオース』は勝ち手段が多いデッキなのですが、更なる勝ち手段として、この2枚を入れてあります」
--「《通電式キー》と《Time Vault》!」
中島「意外と見落とされがちなんですよ、この2枚のコンボは。《通電式キー》が警戒されることはほとんどないので、カウンターされづらいです。あとは《Time Vault》さえ通してしまえば勝ちですね。さっきも、このコンボで勝ちました」
--「パワー9以外にも強力なカードが目白押し。これもまた、ヴィンテージ独特の魅力ですね」
中島「そうですね。デッキレシピなどは以前書いた【大会レポート】を見ていただければと思います。」
■ ヴィンテージは怖くない
--「ヴィンテージ、というと『ものすごく敷居が高くて、なんとなく怖い』という感じがしていたのですが、こうして大会を間近で見て、お話を伺うと印象がまったく変わりますね」
中島「そう言っていただけると、ヴィンテージプレイヤーとしては嬉しいですね。まったく怖くないですよ!一時期に比べれば『カードが市場にない!』ということも減りましたし、もっとプレイヤーに増えて欲しいなぁ、と思います。僕はレガシーで使えないカードを使うデッキを組んでいますが、ほとんどレガシーで、ちょっとパーツを足すというデッキでも十分楽しめますよ。パワー9など高価なカードも多いですが、『モダンやレガシーの延長上にある』というイメージがもっと広まると良いな、と思ってます。同じマジックですからね」
--「なるほど。ありがとうございます。では、最後にヴィンテージを始めてみようかな、という人にメッセージをお願いします」
中島「ヴィンテージは、『勝っても負けても楽しいフォーマット』という一言がぴったりだと思います。カードを揃えて大会に出てみると、また違ったマジックの良さに気づけるはずです。そして、思いっきり楽しんで欲しいですね」
--「ありがとうございます!……ヴィンテージのことで迷ったら、中島さんにご相談しても大丈夫ですか?」
中島「もちろんですよ!どんなことでも、相談してください」
インタビューを終えた中島さんは、「6ラウンドですからねー。長いなぁ」と言いながら、とても嬉しそうな顔で席を立たれました。
「まだまだヴィンテージ仲間と楽しくプレイできる」
そんな気持ちが、その笑顔には現れてたように思います。
ヴィンテージは、鎖で囲われた敷居の高いフォーマットに見えてしまいますが、その向こう側には他のフォーマットとは少し違った明るい空気が満ちています。そして、その鎖を跨ぐのに、プレス証のようなものは必要ありません。
このインタビューによって、筆者が味わった明るくて優しい空気が、少しでも伝わったのなら幸いです。
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