はじめに
みなさんこんにちは。
今回もスタンダードの最新情報をお届けしていきたいと思います。
マジックオンライン(以下:MO)で行われた、Standard Showcase Challengeとグランプリ・リヨン2020の入賞デッキを見ていきます。
Standard Challenge #12098092
Temur Cloverの隆盛
2020年2月29日
- 1位 Jund Sacrifice
- 2位 Temur Clover
- 3位 Temur Clover
- 4位 Temur Clover
- 5位 Bant Ramp
- 6位 Mono Red
- 7位 Bant Ramp
- 8位 Mono Red
トップ8のデッキリストはこちら
毎週末にMOで開催されるStandard Showcase Challenge。今大会の上位にはTemur Cloverが多数入賞しており、環境初期に数多くいたAzorius Controlは姿を消していました。
Bant Rampも勢力を拡大しつつあります。最近はビッグマナ戦略よりも《伝承の収集者、タミヨウ》など、プレインズウォーカーにフォーカスしたバージョンが主流です。
Standard Challenge #12098092 デッキ紹介
「Temur Clover」「Jund Sacrifice」
Temur Clover
4 《島》
2 《山》
4 《繁殖池》
4 《踏み鳴らされる地》
2 《蒸気孔》
3 《天啓の神殿》
1 《奔放の神殿》
1 《神秘の神殿》
-土地 (27)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《願いのフェイ》
4 《豆の木の巨人》
4 《砕骨の巨人》
4 《厚かましい借り手》
4 《恋煩いの野獣》
-クリーチャー (24)-
今大会で半数近くの入賞者を出したTemur Cloverは、《砕骨の巨人》や《厚かましい借り手》などの出来事クリーチャーを《幸運のクローバー》で効果を増幅させ、アドバンテージを稼ぎなら立ち回るデッキです。最序盤に出てくる《エッジウォールの亭主》や《幸運のクローバー》は、Azorius Controlにとっては対処が困難なこともあり、このデッキが勢力を拡大したことにより環境上位から締め出されるという結果となりました。
除去やブロッカーとして機能する《砕骨の巨人》や《恋煩いの野獣》など、クリーチャーのサイズや質で勝るためMono Redに対しても相性は悪くなく今大会での結果にも頷けます。
☆注目ポイント
《豆の木の巨人》と《幸運のクローバー》、《エッジウォールの亭主》の組み合わせによってマナ加速とカードアドバンテージの両方を稼ぐことが可能で、リソース切れが起こりにくいため、コントロールとのロングゲームにおいても互角以上に渡り合えます。同様にアドバンテージを稼いでくれる《僻境への脱出》は、5マナと重めですがその分多大なアドバンテージを稼ぐことができ、デッキ全体のマナコストが軽いので追放したカードを多く使えるこのデッキにマッチしたカードです。
《厚かましい借り手》は、プレインズウォーカーや《荒野の再生》、《エンバレスの宝剣》など環境に存在する多くの脅威を対処でき、テンポアドバンテージも稼いでくれます。Mono Redとのマッチアップは基本有利ですが、《エンバレスの宝剣》による負けを防いでくれる優秀なカードです。
《願いのフェイ》によって各マッチアップで必要なカードを調達すること可能で、《幸運のクローバー》を経由すればさらにサーチすることができます。
サイドの《霊気の疾風》と《自然への回帰》は、《エンバレスの宝剣》や《創案の火》、《荒野の再生》などに対する追加のアンサーとなり、《願いのフェイ》でサーチすることによって環境の多くの脅威に対してメインから対処できるのがこのデッキの強みです。《影槍》は地味ながらマナコスト、起動コストともに軽く、起動型能力により《夢さらい》や各種神といったカードを対策できる貴重なカードです。《ドムリの待ち伏せ》はブロッカーを排除したり、プレインズウォーカーを対策としても機能します。
Jund Sacrifice
3 《沼》
1 《山》
4 《血の墓所》
4 《草むした墓》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《寓話の小道》
1 《ロークスワイン城》
-土地 (25)- 4 《大釜の使い魔》
4 《金のガチョウ》
4 《波乱の悪魔》
2 《砕骨の巨人》
1 《真夜中の死神》
1 《残忍な騎士》
4 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》
1 《虐殺少女》
-クリーチャー (21)-
2 《強迫》
2 《壮大な破滅》
2 《害悪な掌握》
2 《焦熱の竜火》
1 《真夜中の死神》
1 《虐殺少女》
1 《アングラスの暴力》
1 《戦争の犠牲》
1 《戦慄衆の将軍、リリアナ》
-サイドボード (15)-
コンスタントに結果を残し続けているJund Sacrifice。
苦手なTemur Reclamationが淘汰され、Temur Cloverを含めたアグロデッキが上位に多数勝ち残っていたため、今大会ではポジション的にも有利で優勝を収めました。
☆注目ポイント
このデッキの主力である《波乱の悪魔》によって、《エッジウォールの亭主》など低タフネスクリーチャーを容易に対処可能なこともあり、今大会で多数の入賞者を出したTemur Cloverを始めとしたアグロデッキに強く現環境では良チョイスの一つです。
Azorius ControlやJeskai Fires、各種Ramp系のデッキを意識していたようでメインから《苦悶の悔恨》がフル搭載されています。メイン、サイドに1枚ずつ採られている《戦慄衆の将軍、リリアナ》は、6マナと重くなりますがトークンを生成する能力や常在型能力がデッキに合っており、[-4]能力は《夢さらい》対策にもなります。
アーティファクトの対処手段として、前の環境ではよく採用されていた《打ち壊すブロントドン》の代わりに《エンバレスの盾割り》が採用されています。こちらのほうがコストが軽く、《幸運のクローバー》を使うTemur Cloverを想定しての採用だと思われます。しかし、ソーサリーなので赤単の《エンバレスの宝剣》対策としてはやや信頼性に欠けます。
グランプリ・リヨン2020
アグロデッキが多数入賞、復権の兆しを見せるTemur Reclamation
2020年3月7-8日
- 1位 Mono Red
- 2位 Temur Reclamation
- 3位 Sultai Ramp
- 4位 Mono Red
- 5位 Bant Ramp
- 6位 Rakdos Sacrifice
- 7位 Bant Ramp
- 8位 Rakdos Sacrifice
Biagio Ruocco
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Mono Redは今大会において最大勢力でプレイオフに入賞、そして優勝を収めるなど安定した強さを見せました。
また、Mono RedやRakdos Sacrificeといったアグロデッキがプレイオフの半数を占めた今大会では、それらに相性のいいTemur Reclamationは有力な選択肢で、準優勝という好成績を残していました。
グランプリ・リヨン2020 デッキ紹介
「Rakdos Sacrifice」「Bant Ramp」
Rakdos Sacrifice
4 《山》
4 《血の墓所》
4 《寓話の小道》
4 《悪意の神殿》
2 《ロークスワイン城》
-土地 (24)- 4 《大釜の使い魔》
4 《ぬかるみのトリトン》
4 《忘れられた神々の僧侶》
3 《死の飢えのタイタン、クロクサ》
4 《波乱の悪魔》
3 《真夜中の死神》
3 《悲哀の徘徊者》
-クリーチャー (25)-
2 《レッドキャップの乱闘》
2 《害悪な掌握》
2 《焦熱の竜火》
1 《エンバレスの盾割り》
1 《真夜中の死神》
1 《残忍な騎士》
1 《アングラスの暴力》
1 《炎の侍祭、チャンドラ》
-サイドボード (15)-
Jund Sacrificeと同様に《魔女のかまど》+《大釜の使い魔》+《波乱の悪魔》を軸にしたデッキですが、Rakdosバージョンは中速のJundと異なり軽いクリーチャーを多数採用したアグロ寄りの構成となっています。
《波乱の悪魔》によって低タフネスのクリーチャーを容易に処理可能で、2色なので土地からのダメージも少なくアグロデッキとの相性も悪くありません。準優勝したTemur Reclamationに対しては苦手なマッチアップではありますが、まだまだ有力な選択肢の一つです。
☆注目ポイント
墓地から復活できる《どぶ骨》や《悲哀の徘徊者》、クリーチャーが死亡する度にドローできる《真夜中の死神》など、クロックとなりつつ何かしらのアドバンテージが発生するクリーチャーを多数採用しているためスイーパーに耐性があり、粘り強く戦えるデッキです。
モダンのJundでも採用されている《死の飢えのタイタン、クロクサ》は、スタンダードではあまり見かけないクリーチャーですが、墓地を肥やしやすいこのデッキでは「脱出」させやすく、特にコントロールとのマッチアップで強さを発揮します。
《忘れられた神々の僧侶》は、能力によってアドバンテージを得ることができ、《初子さらい》と組み合わせることによって除去としても機能します。《ぬかるみのトリトン》は、接死とライフゲインによりアグロデッキに強く、墓地も肥やせるので「脱出」しやすくなったりといぶし銀の活躍をしてくれます。
サイドにはデッキとの相性がいい《炎の侍祭、チャンドラ》が採用されています。2番目の[+0]能力で《忘れられた神々の僧侶》の生け贄要因を確保したり、終了ステップにトークンが生け贄に捧げられるので《波乱の悪魔》の能力を誘発させたりと様々なシナジーを形成してくれます。
Bant Ramp
1 《平地》
1 《島》
4 《繁殖池》
4 《神聖なる泉》
4 《寺院の庭》
2 《寓話の小道》
4 《神秘の神殿》
2 《啓蒙の神殿》
2 《豊潤の神殿》
1 《ヴァントレス城》
-土地 (28)- 2 《樹上の草食獣》
3 《ハイドロイド混成体》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
2 《秋の騎士》
2 《夢さらい》
-クリーチャー (12)-
2 《空の粉砕》
3 《エルズペス、死に打ち勝つ》
4 《時を解す者、テフェリー》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
2 《伝承の収集者、タミヨウ》
4 《世界を揺るがす者、ニッサ》
-呪文 (20)-
ランプとカテゴライズされていますが、最近は土地を伸ばして重い強力なフィニッシャーに繋げる戦略からスイーパーやプレインズウォーカーを多用するコントロール寄りの構成にシフトしています。
Bantは《世界を揺るがす者、ニッサ》、《伝承の収集者、タミヨウ》といったプレインズウォーカーが使えるので、それらを再利用できる《エルズペス、死に打ち勝つ》をより強く使える形になっています。
☆注目ポイント
《樹上の草食獣》、《成長のらせん》、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》といったカードで土地を伸ばしていき、《世界を揺るがす者、ニッサ》を速い段階で展開していけることがこのデッキの強みです。ランプデッキ定番の《世界を揺るがす者、ニッサ》+《ハイドロイド混成体》はこのデッキでも健在です。
《エルズペス、死に打ち勝つ》と《伝承の収集者、タミヨウ》のシナジーが強力で、《伝承の収集者、タミヨウ》の[-1]能力によって墓地を肥やし《エルズペス、死に打ち勝つ》が3章に達したときの選択肢を増やしてくれます。さらに、《伝承の収集者、タミヨウ》の[-3]能力によって《エルズペス、死に打ち勝つ》を使い回すことができるので、この2枚が揃えば多大なアドバンテージを稼ぐことができるのです。
Temur CloverやSacrifice系デッキなど現環境では、置物対策は必須です。それらの対策になる《秋の騎士》は、Temur CloverやJund(Rakdos)Sacrificeだけでなく、ライフゲインによりMono Redなどほかのマッチアップでも重宝するクリーチャーで、今大会でメインから採用されているのも頷けます。
総括
世界選手権2019で、Azorius Controlを使用したPaulo Vitor Damo da Rosa選手が世界を制した後もメタは変化し続け、Temur CloverやBant Rampといったデッキが結果を残していました。
さらにそこから進み、グランプリ・リヨン2020ではMono RedとRakdos Sacrificeがプレイオフの半数を占め、アグロデッキが増加しAzorius Controlが数を減らしたことでTemur Reclamationも復権してきています。今後のメタゲームにも注目です。
以上、USA Standard Express vol.167でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!