Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/3/12)
プレイヤーズツアー予選の相棒を探して
「スタンダードのベストデッキはアゾリウスコントロールだ!」
このようなセリフを世界選手権の前に何度も耳にしました。パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor damo da Rosaが優勝してからは一層増えたように思います。確かにアゾリウスコントロールは優れたデッキですが、多くの人が主張するような”断トツのベストデッキ”だとは思いません。参加する予定であったWPNプレイヤーズツアー予選(WPNQ)ではアゾリウスコントロールが多数いると覚悟していたため、それに相性良く戦える赤単が当初の第一候補でした。
ところがその後、私は金塊を発見することになります。マジック・プロリーグのメンバーであるアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciが自身の配信にてオルゾフ《予言された壊滅》(以下、オルゾフスタックス)を使用していたのです。アゾリウスコントロールへの適切な解答を潤沢に備えているだけでなく、その他のデッキとも渡り合えるだけのデッキであるように思えました。すぐに私は他のオルゾフスタックスのリストを漁り、デッキをまとめ上げ、数ゲーム調整し、これこそがWPNQで使うデッキだと確信したのです。
オルゾフスタックス
デッキリスト
4 《平地》
4 《神無き祭殿》
2 《寓話の小道》
4 《静寂の神殿》
3 《アーデンベイル城》
2 《ロークスワイン城》
-土地 (25)- 4 《ヤロクの沼潜み》
2 《残忍な騎士》
2 《暁の騎兵》
-クリーチャー (8)-
2 《ケイヤの怒り》
4 《メレティス誕生》
4 《ケイヤの誓い》
3 《裏切る恵み》
4 《予言された壊滅》
4 《エルズペス、死に打ち勝つ》
2 《はぐれ影魔道士、ダブリエル》
-呪文 (27)-
2 《灯の燼滅》
2 《敬虔な命令》
2 《害悪な掌握》
2 《肉儀場の叫び》
2 《黒き剣のギデオン》
1 《ヘリオッドの介入》
1 《食らいつくし》
1 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》
-サイドボード (15)-
カード選択
《ヤロクの沼潜み》 4枚
一般的なオルゾフスタックスのリストには納得がいっていたので、変更点は最小限にとどめました。そのひとつは、最近のお気に入りである《ヤロクの沼潜み》の採用です。
プレイヤーズツアー・名古屋に向けたパイオニアの練習中、《ヤロクの沼潜み》と《泥棒ネズミ》を搭載したオルゾフカラーの手札破壊デッキを組み上げたのですが、アゾリウスコントロールに非常に有利に戦えていました。
このデッキの背景にはこういう考えがありました。アゾリウスコントロールは3ターン目の《時を解す者、テフェリー》の[-3]能力でアドバンテージをとることに大きく依存している。それならば、2ターン目に戦場に出たときに手札を捨てさせるクリーチャーをプレイすれば、3ターン目の《時を解す者、テフェリー》を無効化できるのではないかと。実際、ディミーアインバーターが突如として誕生するまでは、アゾリウスコントロールを食い物にしてMagic Onlineのリーグで好成績を収めていました。
そこで、今回のスタンダードのデッキでも同じ考えを導入してみようと思ったのです。この考え方は間違いなくフォーマットを選ばず通じるものであり、実際にスタンダードのアゾリウスコントロールに対しても堅実に戦えました。《ヤロクの沼潜み》は2ターン目のアクションが弱いというデッキの弱点をカバーしつつ、相手のリソースを枯渇させるというゲームプランと噛み合っています。後々になればその起動型能力でパワーを3~4に引き上げることは容易であり、それが勝利につながることさえあるのです!
《太陽の宿敵、エルズペス》 0枚、《暁の騎兵》 2枚
ほとんどのリストで採用されていた《太陽の宿敵、エルズペス》は不採用にし、《暁の騎兵》を1枚追加しました。《太陽の宿敵、エルズペス》の入ったリストで何度かプレイしてみましたが、ほとんどのマッチアップで期待外れの活躍しかしませんでした。このデッキは彼女を守る手段が少なく、《エルズペス、死に打ち勝つ》や《暁の騎兵》で墓地から回収したいカードを「脱出」で追放したくないのです。
《暁の騎兵》が自分自身を対象にとれる点は非常に重要です。自身を破壊して《エルズペス、死に打ち勝つ》を墓地から戦場に戻せば、その後のIII章の能力で墓地から復活するため、ループを発生させられるのです!《暁の騎兵》はこれまで目覚ましい活躍を見せており、75枚のなかに3枚目を採用する可能性は十分にあります。
《裏切る恵み》 3枚
理論上は大好きなカードなのですが、使うほどに評価が下がっていきました。当初は4枚だったものの、重ね引いたときに動きづらくなって何度も負けることがあったため、間もなくして3枚まで減らしました。私の地元のWPNQではアゾリウスコントロールが多いと予想いていたために3枚のままにしましたが、メタゲームが動けば容易に2枚まで落すことでしょう。
土地25枚 + 《メレティス誕生》 4枚
土地25枚と《メレティス誕生》4枚では土地が過剰ではないかと思われるかもしれませんが、5枚の「城」がマナフラッド受けになり、終盤戦で大きく貢献してくれます。このデッキはマナを余すことなく使うことに長けていますので、毎試合で土地が多くても嬉しいぐらいです。付随的にライフを回復する呪文が多く、《ロークスワイン城》は手札を潤沢にしてくれますし、《アーデンベイル城》はいずれトークンの軍勢で相手を圧倒してくれます。
注意:《メレティス誕生》と《寓話の小道》のために5枚目の《平地》を採用する必要はありません。サーチできなくなるほどゲームは長引きませんし、仮にそうなったとしても追加の土地があったところで大した意味がない状況になっているでしょう。
デッキの調整 – マッチアップ別の戦い方
調整過程では主に世界選手権のトップ3のデッキと戦うことを意識しました。すなわち、アゾリウスコントロール、赤単、ジェスカイファイアーズです。いずれも地元のWPNQで一大勢力になると予想していました。ここからは、それぞれのマッチアップにおける一般的な戦い方をご説明しましょう。
アゾリウスコントロール
やや有利だと思っています。それこそがこのデッキを好む大きな理由です。能動的に相手の重要な呪文を対処する手札破壊がありますし、《予言された壊滅》を展開すれば《夢さらい》をあっさりと倒せます。《アーデンベイル城》と《ロークスワイン城》のいずれかを起動できる状況では、《アーデンベイル城》を優先させてください。《夢さらい》への解答を緊急で探す必要がない限り、盤面に脅威を並べる方が大切です。
サイドボードプラン
対 アゾリウスコントロール
赤単
1ゲーム目は不利です。勝てる可能性が最も高いのは、《ヤロクの沼潜み》《ケイヤの誓い》《予言された壊滅》というテンポの良い動きができたときでしょう。2ゲーム目以降は相性が改善されます。インパクトが大きいカードが何枚かありますし、単体でゲームを勝ち得る《太陽の恵みの執政官》がいます。《ケイヤの誓い》がない手札は積極的にマリガンしていきましょう。そうしないと《義賊》1枚に負けかねません。
サイドボードプラン
対 赤単
注意:《裏切る恵み》は1枚残すようにしています。序盤をやり過ごす呪文は多いですし、中盤戦でライフを回復する手段が2戦目以降は増量されているからです。
ジェスカイファイアーズ
有利に戦えます。序盤の手札破壊や《予言された壊滅》など、《創案の火》を対処する手段が豊富にあるからです。ジェスカイファイアーズの脅威はいずれも3マナ以上ですから、《予言された壊滅》で相手の盤面を壊滅させ、いずれ《エルズペス、死に打ち勝つ》と《暁の騎兵》のループで相手を完封することもそこまで難しくありません。
ジェスカイファイアーズは数多くの速攻クリーチャーで勝利をかすめとれるため、序盤であっても必要ならば《ヤロクの沼潜み》やトークンでチャンプブロックしてライフを温存するようにしましょう。消耗戦ならばこちらに分があります。
サイドボードプラン
対 ジェスカイファイアーズ
最悪の敵
残念ながらその他のデッキとの対戦経験が少ない状態で本番に臨み、痛い目にあわされて最悪の相手がバントランプであることを知りました。エスパーコントロールとジェスカイファイアーズに勝って2-0のスタートを切ったものの、バントランプに連敗してトップ8の可能性がなくなったのです。
バントランプは手札破壊に極度に耐性があるデッキでした。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が手札破壊戦略を無効化できますし、《伝承の収集者、タミヨウ》の常在型能力は自然と《予言された壊滅》への対策となっています。こちらは高速のクロックを持ち合わせていないため、結局《ハイドロイド混成体》を引き込まれ、ゲームを安定させ、立て直されてしまうのです。
現環境への適応
私はこれまで特定のメタゲームを叩くデッキを組み上げることを楽しみとしてきました。ですが、MTGアリーナの普及により、メタゲームの移り変わりが極端に速くなっています。オルゾフスタックスは今から2週間前に大好きだったものですが、バントやスゥルタイなどのランプデッキが頭角を現してきている直近のメタゲームでは苦戦するかもしれません。1ゲーム目は遅れをとることになるでしょうが、適切なサイドボードを組み上げていれば互角に渡り合えるマッチアップだろうと思っています。
昨今になって数を増やしてきているもうひとつのデッキがティムールアドベンチャーです。MTGアリーナで数えるほどしか対戦していませんが、勝てる見込みは十分にあると捉えています。ティムールアドベンチャーは《幸運のクローバー》が戦場にあるかないかで雲泥の差が出るデッキです。戦場にあるときはさながらモダンのようなデッキになり、戦場になければ平凡なリミテッドのデッキのように感じられます。
先手ならば《苦悶の悔恨》で捨てさせるチャンスがありますが、後手のときは《幸運のクローバー》から《豆の木の巨人》と動かれると厳しいです。幸運にも、ティムールアドベンチャーはトークン以外のパーマネントで戦場を埋めることがあまり得意ではありませんから、ゆくゆくは《予言された壊滅》で《幸運のクローバー》をどけられることでしょう。ゲーム序盤で優先すべきは、《幸運のクローバー》を戦場に出させないこと、隙あらばプレッシャーをかけていくことです。相手はゲームが長引いたときにトップデッキして強力なものを多く抱えています。
最新版のデッキリスト
バントランプとティムールアドベンチャーが隆盛しているため、今後はこのようにアップデートしたリストを使おうと思っています。
4 《平地》
4 《神無き祭殿》
2 《寓話の小道》
4 《静寂の神殿》
3 《アーデンベイル城》
2 《ロークスワイン城》
-土地 (25)- 4 《ヤロクの沼潜み》
2 《残忍な騎士》
2 《太陽の恵みの執政官》
2 《暁の騎兵》
-クリーチャー (10)-
2 《ケイヤの怒り》
4 《メレティス誕生》
4 《ケイヤの誓い》
2 《裏切る恵み》
4 《予言された壊滅》
4 《エルズペス、死に打ち勝つ》
1 《はぐれ影魔道士、ダブリエル》
-呪文 (25)-
2 《強迫》
2 《敬虔な命令》
2 《害悪な掌握》
2 《肉儀場の叫び》
2 《黒き剣のギデオン》
1 《ヘリオッドの介入》
1 《食らいつくし》
1 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》
-サイドボード (15)-
ゲームプランは有効に機能してきましたので、メインデッキにはあまり手を加えないようにしていますが、《太陽の恵みの執政官》はぜひともメインデッキに移したいと考えています。赤単に効果的であると同時に、その他のデッキに対しては頼りになるクロックとなるからです。サイドボードの枠を空けることにもなりますから、軽量の対策カードを入れることができます。たとえば、《時を解す者、テフェリー》《世界を揺るがす者、ニッサ》《幸運のクローバー》を前もって手札から捨てさせられる《強迫》などが候補です。
あるいは《エルズペス、死に打ち勝つ》で除去されないうえに優秀な脅威である《騒音のアフィミア》も面白いかもしれません。《赦免のアルコン》も試してみたいカードです。《エルズペス、死に打ち勝つ》や《時を解す者、テフェリー》の能力の対象にならず、《夢さらい》を延々とブロックし続けられます。
さいごに
環境は毎週のように移り変わっていきます。新しいデッキたちが本物のデッキであるかは、時間が教えてくれることでしょう。あるいはランプデッキやティムールアドベンチャーは”スタンダードのベストデッキ”であるアゾリウスコントロールに杭を打たれることになるのでしょうか?私は次のWPNQを戦い抜くサイドボードプランを練りなおそうと思っています。必ずやプレイヤーズツアー・北九州へのチケットを手にして見せます!
ジョー・ソー (Twitter)