はじめに
みなさんこんにちは。
3月9日に禁止制限告知があり、『テーロス還魂記』から登場して間もない《死の国からの脱出》が禁止カードに指定されました。《死の国からの脱出》《ライオンの瞳のダイアモンド》《思考停止》を組み合わせたストームコンボは、この短時間の間コンスタントに勝ち続けており、リストが研究されるにつれて将来的に環境を支配してしまうことが懸念されていました。
今回の連載では、禁止改訂直後にマジックオンライン(以下:MO)で開催されたLegacy Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Legacy Challenge #12106066
エルドラージが禁止改定後のレガシーの大会を制する
2020年3月15日
- 1位 Eldrazi
- 2位 4C Control
- 3位 Esper Midrange
- 4位 Temur Delver
- 5位 Titan Field
- 6位 Hypergenesis
- 7位 Sultai Zenith
- 8位 Elves
トップ8のデッキリストはこちら
禁止改定直後の本イベントでは、Delver系や多色コントロールなど定番のデッキから、Hypergenesis、Titan Field、Esper Midrangeといったローグデッキや珍しいデッキなどコンボ、フェア、アグロとバラけており、プレイオフに入賞したデッキのすべてが異なるアーキタイプでした。
優勝を果たしたのはEldraziで、《虚空の杯》で低コストのスペルをシャットアウトしつつエルドラージクリーチャーでプレッシャーをかけていく戦略は、様々なデッキと当たる可能性のある新環境ではベストチョイスの一つです。
Legacy Challenge #12106066 デッキ紹介
「Eldrazi」「4C Control」「Titan Fields」「Temur Delver」
Eldrazi
4 《古えの墳墓》
4 《エルドラージの寺院》
4 《不毛の大地》
3 《ミシュラの工廠》
2 《裏切り者の都》
3 《ウギンの目》
-土地 (24)- 4 《果てしなきもの》
2 《歩行バリスタ》
4 《エルドラージのミミック》
4 《Elvish Spirit Guide》
4 《作り変えるもの》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
-クリーチャー (26)-
今大会のように禁止改定直後の環境ではメタが定まっておらず、様々なデッキと当たる可能性があります。
新環境といってもレガシーでは、《渦まく知識》や《思案》《稲妻》《剣を鍬に》といった低マナ域のスペルが日常茶飯事のように飛び交い、主力として活躍していることには変わりません。
そのため、多くのデッキに刺さる《虚空の杯》を用いたデッキは、現環境においても非常に強力なデッキになり得ます。
☆注目ポイント
初動の安定性を支え、その強力さゆえに様々なフォーマットで禁止カードに指定された《むかしむかし》はレガシーでは健在です。このカードのおかげで高い確率で序盤から2マナランドを調達でき、1ターン目に《虚空の杯》をX=1で置ける確率も上がりました。
無色デッキですが《四肢切断》《歩行バリスタ》《梅澤の十手》などクリーチャーを除去する手段は意外と多く、サイド後は《漸増爆弾》にもアクセスできます。
コンボやコントロールに対しては、《難題の予見者》やサイドにフル搭載されている《アメジストのとげ》によって相手を減速させることができます。《死の国からの脱出》が禁止になったといってもDredgeやReanimatorなど墓地を使ったコンボデッキが多数存在するので、《虚空の力線》は引き続き採用されています。禁止改定後も《虚空の力線》をサイドに採用し続けているデッキは多く、結果的にDredgeやReanimatorといった墓地コンボは少数でした。
4C Control
2 《Tropical Island》
2 《Volcanic Island》
1 《Bayou》
4 《霧深い雨林》
4 《汚染された三角州》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《沸騰する小湖》
-土地 (20)- 3 《悪意の大梟》
3 《瞬唱の魔道士》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (9)-
3 《思案》
3 《稲妻》
3 《コジレックの審問》
2 《呪文貫き》
3 《トーラックへの賛歌》
2 《突然の衰微》
1 《湖での水難》
4 《意志の力》
2 《森の知恵》
3 《王冠泥棒、オーコ》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (31)-
最近では、多色コントロールといえば氷雪基本土地と《アーカムの天測儀》による強固なマナベースと、各色から強力なカードを集めたSnow Controlが主流ですが、多色コントロールの名手であるSvacaはデュアルランドを多数搭載したクラシックなスタイルを使用していました。
基本地形が0枚と非常に思い切った構成ですが、最近は多色コントロールに《アーカムの天測儀》と氷雪基本土地、《王冠泥棒、オーコ》のような軽い強力な勝ち手段により、《基本に帰れ》や《血染めの月》が依然と比べると高い効果が望めないため減少傾向にあります。
《アーカムの天測儀》の枠に追加の妨害スペルなどを採用できるためデッキパワーが向上しており、フェッチランドとデュアルランドによるマナ基盤によって色拘束が強い《トーラックへの賛歌》などもキャストしやすくなっています。
☆注目ポイント
『テーロス還魂記』からの新カードである《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は、レガシーでも通用するスペックで、ライフゲインしつつ追加の土地を置くことができるのでDelver系とのマッチアップで特に強さを発揮します。軽いスペルとフェッチランドを多用しているため墓地が肥えやすく、「脱出」させることも容易です。
デュアルランドが多数され、《トーラックへの賛歌》など色拘束の強いスペルを複数搭載した懐かしい形のリストではありますが、こういったタイプのコントロールには必ず多数採用されていた《精神を刻む者、ジェイス》はわずか1枚の採用となっており、代わりに《王冠泥棒、オーコ》が優先されているなど現在の環境に合わせた調整も施されています。
《森の知恵》は、《王冠泥棒、オーコ》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》によってライフゲインができるこのデッキでは多大なアドバンテージを稼ぎ出してくれます。《王冠泥棒、オーコ》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》という2種類のシミックカラーのパワーカードを搭載した多色デッキは、フェアデッキの代表格として今後のレガシー環境を牽引していく存在となりそうです。
Titan Field
2 《冠雪の森》
1 《Bayou》
1 《ドライアドの東屋》
2 《霧深い雨林》
2 《新緑の地下墓地》
2 《樹木茂る山麓》
1 《吹きさらしの荒野》
3 《魂の洞窟》
2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
1 《カラカス》
4 《不毛の大地》
2 《古えの墳墓》
2 《死者の原野》
1 《イス卿の迷路》
-土地 (27)- 1 《漁る軟泥》
4 《イリーシア木立のドライアド》
3 《ラムナプの採掘者》
2 《不屈の追跡者》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (14)-
モダンでも活躍している《原始のタイタン》と《死者の原野》を中心としたビッグマナデッキ。《イリーシア木立のドライアド》+《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》も搭載されています。また、このデッキにも《むかしむかし》が採用されており、動きの安定に貢献しています。
妨害要素が少ないのでコンボデッキは苦手なマッチアップとなりますが、2マナランドや《モックス・ダイアモンド》といったマナ加速から《虚空の杯》を1-2ターン目に置くことで相手の行動を著しく制限させることができます。土地が並ぶ中盤以降は、《死者の原野》によって土地を置くだけでアドバンテージを稼ぐことができるのでロングゲームに強く、コントロールとのマッチアップは特に有利が付きます。
☆注目ポイント
《緑の太陽の頂点》は状況に応じて緑のクリーチャーをサーチしてくることができる強力なカードです。マナが欲しい場合は《ドライアドの東屋》をサーチしたり、ゲーム中盤から終盤にかけては《イリーシア木立のドライアド》やフィニッシャーである《原始のタイタン》を持ってこれます。そのほかの選択肢として、墓地デッキ相手には《漁る軟泥》、またサイド後は《ライオンの瞳のダイアモンド》や《水蓮の花びら》を無力化する《溜め込み屋のアウフ》などがいます。
特殊地形を多用する相手には、《ラムナプの採掘者》+《不毛の大地》でマナをロックすることも可能で、4C Controlのように多色のフェアデッキに対して強い要因の一つです。
メインではコンボに不利な分、サイドには墓地対策の《虚空の力線》やスペルが中心のコンボデッキとのマッチアップ用に《精神壊しの罠》がそれぞれ4枚ずつ採られているなど対策が徹底しています。
Temur Delver
3 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
1 《焦熱島嶼域》
4 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《戦慄衆の秘儀術師》
2 《わめき騒ぐマンドリル》
-クリーチャー (10)-
Delver系のデッキで上位に残ったのはTemur Delverでした。ハンデスを有するGrixis Delverも捨てがたいところですが、歴代最強のプレインズウォーカーである《王冠泥棒、オーコ》を使えるTemur Delverのほうが魅力的なチョイスに思えます。
1マナ域が少なく《タルモゴイフ》も不採用で、《戦慄衆の秘儀術師》がフルに採用されており、既存のTemur Delverと異なりIzzet Delverに緑を足したバージョンといったところです。
☆注目ポイント
墓地のスペルを再利用する《戦慄衆の秘儀術師》と、墓地のカードを追放する「探査」クリーチャーの《わめき騒ぐマンドリル》を採用している関係上能動的にキャストできる軽いスペルが多めで、《もみ消し》など受動的なスペルは不採用となっています。
《虚空の杯》の影響で1マナ域のクリーチャーが少数になっていますが、《王冠泥棒、オーコ》という回答があるので、ほかのDelver系に比べて置物に耐性があります。また、《王冠泥棒、オーコ》は墓地に依存しないため《安らかなる眠り》など墓地対策の影響を受けない勝ち手段にもなり、高タフネスのクリーチャーも無力化できる点がIzzetとの明確な違いです。
Izzet Delverにも採用されている《厚かましい借り手》は、マリッドレイジや《虚空の杯》、高タフネスのクリーチャー、各種プレインズウォーカーなどに対する追加の処理手段になり、墓地の状況に依存しないアタッカーとしても活躍します。
総括
『テーロス還魂記』から加入したばかりの《死の国からの脱出》は、このカードを使ったコンボデッキが将来環境を支配してしまうことが懸念され、リリースから46日という記録的な速さで禁止カードに指定されました。
今回ご紹介した禁止改定後のLegacy Challengeでは、プレイオフに入賞した8人全員が異なるアーキタイプを使用しているなど多様性が戻ってきた印象です。
そして今週末には、第16期レガシー神挑戦者決定戦が開催されるのでレガシー好きな方はお見逃しなく。
USA Legacy Express vol.163は以上です。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!