安藤 英里子(アブザンアグロ) vs. 鷲見 和男(ダークジェスカイ)

晴れる屋

By Kazuki Watanabe


 今回のスタッフ交流会は参加者8名。スイスラウンド3回戦で行われた。結果、当然ではあるのだが「全勝卓」というものが生じる。


 プレインズウォーカーが向かい合ってテーブルに座れば、そこは真剣勝負の場と化す。それがたとえ、「スタッフ交流会」という名目であっても。

 そのことを、筆者は身をもって痛感した。



 多少裏話をすると、筆者は今回の交流会に関してカバレージを取るつもりなど欠片もなく、「フロンティアを楽しむスタッフの様子」を紹介して、文責を果たそうと考えていた。

 ところが、参加者が揃って1ラウンド目が始まり、それと同時に流れ出した空気に触れた瞬間、その考えを改めることになった。




 真剣そのものである

 そうとなれば、こちらも真剣勝負だ。



 お届けするのはスタッフ交流会全勝卓。安藤 英里子と、鷲見 和男の一戦である。



Game 1


 両者、マリガン。鷲見は6枚の手札を確認し、ダブルマリガンを選択する。


汚染された三角州吹きさらしの荒野


 先手の鷲見は《汚染された三角州》から《燻る湿地》。対する安藤は《吹きさらしの荒野》から《梢の眺望》。フロンティアでは、このライフ19からのスタート定番になるだろう。鷲見は《溢れかえる岸辺》から《平地》を持ってきて、《魂火の大導師》を唱えて、ターンを終えた。

 ここで安藤が唱えたのは、《始まりの木の管理人》だ。


始まりの木の管理人


 安藤が使用するのは、「アブザンアグロ」だ。かつてのスタンダードで猛威を振るった姿を鮮明に思い出せる人も多いだろう。フロンティアでも、やはりトップメタに名を連ねている。


秘密の中庭


 といっても、これは「過去のスタンダード」の話ではない。フロンティアという新たに開拓された地で、「アブザンアグロ」も小さくないアップデートを果たしている。《始まりの木の管理人》の着地を見届けてから安藤がプレイした《秘密の中庭》は、その証だ。『カラデシュ』で登場した「対抗色ファストランド」は、タルキールの楔三色をより一層強固なものとしている。



 対する鷲見の「ダークジェスカイ」も、「アブザンアグロ」としのぎを削ったスタンダードのトップメタだ。青白赤のジェスカイ・カラーに黒をタッチした4色で組まれている。

 4色のカードを使いこなすことができるのは、やはりフェッチランドの存在が大きい。1色増えるだけで、強力な呪文を採用できるようになるのもマジックの面白さであろう。鷲見が唱えた《苦い真理》は、その”強力な呪文”の一つだ。失ったライフは、《魂火の大導師》が癒やしてくれるに違いない。


はじける破滅


 安藤は土地を伸ばして《先頭に立つもの、アナフェンザ》を唱えるが、鷲見の《はじける破滅》で生け贄に捧げられる。これも黒をタッチしたことで使用できるようになった1枚だ。


ゼンディカーの同盟者、ギデオン


 次に安藤が唱えたのは、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》だ。ローテーションの変更によりスタンダードでもまだまだ活躍しそうだが、フロンティアでも強さは変わらない。トークンを出して、そのままターンエンド。鷲見は《集団的蛮行》でトークンを、そして2枚目の《はじける破滅》《始まりの木の管理人》を着実に除去していく。


不屈の追跡者


 ターンを受けて、安藤が唱えたのは《不屈の追跡者》だ。当時のスタンダードには存在しなかった、フロンティアだからこそ許される「アブザンアグロ」の新星である。

 鷲見が《ゲトの裏切り者、カリタス》をターンを終えると、エンドフェイズに安藤は手がかりを生け贄に捧げて《不屈の追跡者》をパンプアップ。そして、唱えられたのは《包囲サイ》


包囲サイ


 アブザンの本領発揮。その強力さは微塵も損なっていない。



 対して、鷲見もジェスカイの、否、「青」の本領を発揮しはじめる。


時を越えた探索


 《時を越えた探索》

 圧倒的なコストパフォーマンスを誇る、恐るべき呪文。フロンティアにおいて「青を使う」ということは、「《時を越えた探索》か、《宝船の巡航》が使える」ということでもある。



鷲見 和男


 鷲見は7枚のカードを見つめて長考し、この状況で最適な2枚を選びだす。ここで選ばれたのは《炎呼び、チャンドラ》《溢れかえる岸辺》だ。



 盤面には、《包囲サイ》《不屈の追跡者》。そして《ゲトの裏切り者、カリタス》《魂火の大導師》が並ぶ。



 先に仕掛けたのは安藤だ。《不屈の追跡者》をさらに追加し、土地を伸ばす。手がかりは3つ。そして《包囲サイ》《不屈の追跡者》で攻撃する。

 鷲見は合計パワーを確認して、ブロックに入る。《不屈の追跡者》《ゲトの裏切り者、カリタス》が相打ちし、ゾンビ・トークンが残った。そして、さらに《包囲サイ》が追加される。



 《包囲サイ》によって変動したライフを確認してターンを受けた鷲見は、ゾンビ・トークンと《魂火の大導師》で攻撃を仕掛ける。安藤は《包囲サイ》に一瞬手を伸ばしたが、悩んだ末にスルーを選択。


焙り焼き


 鷲見の盤面には、《山》《沼》《島》《平地》という基本地形が並んでいるが、そのすべてタップして《魂火の大導師》の能力を起動する。潤沢なマナが揃っている現在、これまでのライフレースは一旦リセットされると言っても過言ではない。《不屈の追跡者》《焙り焼き》で除去し、一気に5点ものライフを回復させる。

 安藤は手がかりを利用してドローを重ね、《先頭に立つもの、アナフェンザ》を唱えるが、「ダークジェスカイ」の豊富な除去呪文が戦線の維持を阻む。《先頭に立つもの、アナフェンザ》《焙り焼き》、そして《不屈の追跡者》《無許可の分解》によって居座ることを許されない。

 『カラデシュ』からの新たな戦力で強化された「ダークジェスカイ」が徐々に強さを見せ始めるが、「アブザンアグロ」も新戦力である《残忍な剥ぎ取り》を唱えて展開を継続。さらに《先頭に立つもの、アナフェンザ》も唱えられた。

 鷲見はここで再び《時を越えた探索》を唱えてから、ターンを受ける。まずは落ち着いて《魂火の大導師》の能力を起動し、手札から唱えられたのは《はじける破滅》だ。《先頭に立つもの、アナフェンザ》は、またもや生け贄に捧げられた。



 ただ一人、《魂火の大導師》だけが戦場を見つめている。《はじける破滅》によるライフ差は6点。決して小さい数字ではない。



 戦力を増強したい安藤は、ひとまず《始まりの木の管理人》を唱える。土地は9枚。パンプアップさせるマナは確保できている。


始まりの木の管理人残忍な剥ぎ取り包囲サイ


 土地を伸ばし、《始まりの木の管理人》の能力を起動したところで、安藤が仕掛ける。《残忍な剥ぎ取り》《包囲サイ》《始まりの木の管理人》の3体による攻撃だ。



安藤 英里子


 相手の墓地を確認し、「昂揚」が達成されていないことを確認した鷲見は、ゾンビ・トークンで《残忍な剥ぎ取り》をブロックする。


アブザンの魔除け


 ここで唱えられる、《アブザンの魔除け》。墓地にインスタントが落ちたことで「昂揚」も達成され、《残忍な剥ぎ取り》も4/4となった。

 鷲見は動揺することなくライフをメモに記す。そのままターンを受け、《ヴリンの神童、ジェイス》を唱えた。



 想像以上のロングゲーム。潤沢なマナを注ぎ込む先は、互いに事欠かない。安藤のライブラリーにはまだまだ強力なクリーチャーが残っているし、鷲見は《魂火の大導師》の能力を起動しつつ、呪文を唱えていくことができる。

 2体目の《残忍な剥ぎ取り》を唱えて安藤はターンを終えるが、エンドフェイズに《魂火の大導師》の能力が起動され、《はじける破滅》の餌食となる。

 《ヴリンの神童、ジェイス》の能力が起動され、そのまま変身。「-3」能力で選ばれたのは《はじける破滅》だ。すでに何度も戦場を襲っているが、《魂火の大導師》の能力もあるため、まだまだ唱えられる場面は多そうだ。


領事の旗艦、スカイソブリン


 ここで安藤が『カラデシュ』からの新兵器をプレイする。《領事の旗艦、スカイソブリン》だ。 《魂火の大導師》がようやく除去される。



 しかし、ここまで《魂火の大導師》が稼いだアドバンテージは、想像以上に膨大だった。


炎呼び、チャンドラ


 手札から《炎呼び、チャンドラ》が唱えられたところで、安藤はデッキを片付けた。


安藤 0-1 鷲見


安藤「《集団的蛮行》を引けていれば……」

 悔しそうにつぶやきながら、サイドボードに手を伸ばす。

 1ゲーム目、際立ったのは《魂火の大導師》の強さである。フェッチランドを含む序盤のライフ差を取り戻し、手札を減らすことなく呪文を繰り返し使用できる能力は、やはり強力だ。開始数ターンで登場し、ゲームが終わるその直前まで活躍を続けたその様子を見れば、否が応でも印象に残ってしまう。



Game 2


 両者、再びマリガンを選択。安藤は《梢の眺望》、鷲見は《神秘の僧院》からスタートする。

 《始まりの木の管理人》《集団的蛮行》《残忍な剥ぎ取り》《焦熱の衝動》と、クリーチャーを丁寧に除去していく鷲見。サイドインした《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》を唱えて、さらに盤面をコントロールしていく。


 クリーチャーを展開したい安藤は、鷲見のエンドフェイズに《大天使アヴァシン》を降り立たせる。

 互いに土地は6枚。鷲見はゆっくりと土地を倒して《僧院の導師》を唱えた!


僧院の導師


 《魂火の大導師》と同じ『運命再編』で登場し、レガシー、そしてヴィンテージでも活躍している《僧院の導師》も、やはりフロンティアで姿を見ることは多そうだ。《はじける破滅》によって《大天使アヴァシン》を除去し、早速モンク・トークンが現れる。さらに《ゲトの裏切り者、カリタス》まで姿を見せ、鷲見の盤面は非常に強固なものとなった。


 安藤は《始まりの木の管理人》を育てるが、2番目の起動型能力にたどり着いたところで《焦熱の衝動》に包まれてしまった。

 《ゲトの裏切り者、カリタス》が攻撃。《大天使アヴァシン》が降り立ち、安藤を守る。


包囲サイ


 そして、唱えられたのは《包囲サイ》

 CIP能力の3点ドレインももちろん強力なのだが、4/5という簡単に超えられないサイズの恐ろしさは、一度相手にすれば分かるはずだ。味方であれば、これほど頼もしい存在もない。



 そう、「味方であれば」


慮外な押収


 唱えられたのは、《慮外な押収》《包囲サイ》が、かつての主に牙を剥く!

 思わぬカードの登場に、ギャラリーからも驚きの声が漏れる。《大天使アヴァシン》でライフを削るが、鷲見はライフロスを恐れることなく《苦い真理》を唱える。



 このゲームを決めたのは、かつてのスタンダードで見慣れた《包囲サイ》による一撃だった。ただし、押収された状態で、だが。



安藤 0-2 鷲見