満員御礼、300人が集まった「BIGMAGIC協賛 フロンティアチャレンジカップ」。フロンティアでこれほどの規模の大会は初めてとなることから、いよいよ環境の真の姿が明らかになりそうだ。
他方でフォーマット黎明期といえば、挑戦的なアイデアが集まることでも知られている。
たとえばモダンフォーマットが初めてプレミアイベントに採用された【プロツアー・フィラデルフィア2011】は、《精力の護符》、《紅蓮術士の昇天》、《猛火の群れ》など、デッキビルダーたちそれぞれの自信作が集まる、「わからん殺し」の祭典となった(やりすぎたので、その後大量の禁止カードを生んだが)。
はたしてこのフロンティアチャレンジカップでも、デッキビルダーの才覚は発揮されているのだろうか?
そう思いながら会場を見回していると、見慣れないアーティファクトをプレイしているデッキが目に留まった。
《パンハモニコン》。
『カラデシュ』発売当初こそ話題となったものの、スタンダードにおいてはそれほど存在感を示せていないこのカードが、フロンティア環境でどのような悪さを行うというのだろうか?
《パンハモニコン》の強さに惚れ込み、3人でデッキをシェアしている大久保 寛、高野 成樹、久保 翔平に話を聞いてみた。
写真左から久保、大久保、高野 |
――「このデッキができた経緯はどういったものだったのでしょうか?」
大久保「最初は僕の『何とかして《パンハモニコン》をフロンティアで使えないか』という発想からスタートして、《森林の怒声吠え》が思いついたんです。それで《森林の怒声吠え》で持ってこれるクリーチャーで何とかして勝てないかと考えたところ、《群れのシャーマン》持ってくれば勝てる!ってなって。そうしてできたのがこのデッキです」
――「《パンハモニコン》がある状態で《森林の怒声吠え》を場に出すと、まず《森林の怒声吠え》の能力がコピーされて《群れのシャーマン》が2体サーチでき、それぞれの《群れのシャーマン》の誘発型能力も2倍になるので、結果《森林の怒声吠え》1体で《群れのシャーマン》の能力を4回誘発させられるというのは確かにすごいアイデアですね」
大久保「このアイデアをベースに自分で普通にエルフを組んでみたところで、【エルフマスター】である高野 成樹さんにお見せしたところ、気に入ってもらえたので今回の大会に向けて一緒に調整することになりました」
――「高野さんはデッキにどういった調整を加えたんでしょうか?」
高野「《パンハモニコン》を抜きました」
――「え?」
高野「単純にオーバーキルだなと思ったので……《集合した中隊》の方が安定ではあるんですよね。ただ最終的には夢があるということで《パンハモニコン》をデッキに戻すことにしました。一応合理的な理由もあって、モダンと違って《エルフの大ドルイド》と《背教の主導者、エズーリ》がないから《集合した中隊》は打っても弱いクリーチャーしかめくれないんですよね」
大久保「バントカンパニーとやってて、相手の《集合した中隊》は《反射魔道士》とか《不屈の追跡者》とかめくってきてすごく強いのに、こっちの《集合した中隊》は《ドゥイネンの精鋭》とか《エルフの幻想家》で喜ぶレベルですからね。マナクリーチャーだけで終わることもありますし。フロンティアは《時を越えた探索》と《奔流の機械巨人》とのシナジーに象徴されるようにかなりカードパワーが高い環境なので、それなら爆発力が必要だろうということで、《パンハモニコン》4枚に帰ってきました」
――「他にもかなり個性的なパーツが多く見受けられますね。ていうかよく見ると《ウェストヴェイルの修道院》4枚!?かなり思いきりましたね、フロンティアで《不敬の皇子、オーメンダール》はどうなんでしょう?」
高野「ライフを詰めてくるデッキに対しては明確に勝ち筋になるので強いです。フロンティアはアタルカレッドや《アーティファクトの魂込め》など、速いデッキはとにかく速いので……。もちろんバントカンパニー、ダークジェスカイやアブザンアグロに当たると、《反射魔道士》や《はじける破滅》、《アブザンの魔除け》があるので対処されやすく、そういう相手には《不敬の皇子、オーメンダール》はなかなか出しません」
久保「《ウェストヴェイルの修道院》は他にも《囁きの森の精霊》とのコンボが強力なんですよ。《囁きの森の精霊》の『予示』自体が相性が良いことはもちろん、《囁きの森の精霊》の生け贄能力を起動してからクリーチャーを5体サクると、『予示』が一気に5体並びますから」
――「なるほど、これはフロンティアならではのコンボですね。他にも様々なシナジーが隠されているんでしょうか?」
大久保「これはテキストに書いてある通りなのですが、《パンハモニコン》が置いてある状態での《森の伝書使》は緑の《時を越えた探索》、いやそれを超えた効果があります。8枚めくって、エルフが2枚と言わず全部手札に入りますから」
高野「これは本当にすごい快感ですよ。さっき場に《パンハモニコン》2枚で手札ゼロという状況から《森の伝書使》引いて、いつの間にか手札が7枚になってそれだけで勝ちましたからね」
――「《パンハモニコン》は複数枚設置すればその分効果が重なるのが良いですね。環境的な立ち位置はどうなんでしょうか?」
久保「ダークジェスカイは少し厳しいマッチアップになりますね。なんといっても《パンハモニコン》の返しで《コラガンの命令》を打たれると、脇のマナクリーチャーも死んで目の前が真っ暗になります。ただ《パンハモニコン》が割られなければアドバンテージ勝負で全然戦えますよ」
大久保「このデッキに興味を持った方は、見た目は怪しいかもしれないけど、ぜひ一度3ターン目に《パンハモニコン》を置いてみてから判断して欲しいですね。手札が溢れかえったり、《森林の怒声吠え》からの《群れのシャーマン》が30点以上を叩き出す様は超絶気持ちいいですよ!」
――「ありがとうございました」
フロンティア環境だからこそ通用する《パンハモニコン》からの《森林の怒声吠え》の楽しさ、ぜひご自身の手で確かめていただきたい。
6 《森》 4 《花盛りの湿地》 4 《ラノワールの荒原》 4 《霊気拠点》 4 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (22)- 4 《エルフの神秘家》 4 《導路の召使い》 4 《エルフの幻想家》 4 《ドゥイネンの精鋭》 4 《群れのシャーマン》 3 《巨森の予見者、ニッサ》 1 《再利用の賢者》 2 《森の伝書使》 1 《光り葉の将帥、ドゥイネン》 1 《難題の予見者》 1 《囁きの森の精霊》 1 《森林の怒声吠え》 -クリーチャー (30)- |
4 《召喚の調べ》 4 《パンハモニコン》 -呪文 (8)- |
3 《カル・シスマの風》 3 《トーモッドの墓所》 3 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 2 《再利用の賢者》 2 《残忍な切断》 1 《苦痛の公使》 1 《光り葉の選別者》 -サイドボード (15)- |
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