準決勝: 鈴木 亨(東京) vs. 平岡 拓(埼玉)

晴れる屋

By Kazuki Watanabe


 フロンティアというフォーマットは、まだまだ未知数な部分が多い。


溢れかえる岸辺大草原の川


 カードプールの都合上、“超多色環境”であることは間違いない。フェッチランド、バトルランドによって、「ダークジェスカイ」「4Cラリー」など、4色のデッキが当然のように存在し、多色のカードが活躍をするフォーマットである。

 300名が集った「BIGMAGIC協賛 フロンティアチャレンジカップ」でも、多色のカードを活かした様々なデッキが活躍している。ここで紹介するのは、鈴木 亨(東京)の「ジェスカイ」と平岡 拓(埼玉)の「5色《白日の下に》」による準決勝だ。



Game 1


 平岡はダブルマリガン。5枚になった手札を見て、深くため息をつく。悩んだ末にキープを選択し、占術で確認したカードを即座にボトムに送り込む。

 先手は鈴木。《シヴの浅瀬》から《霊廟の放浪者》。対する平岡は《窪み渓谷》をプレイ。次のターン、鈴木は《霊廟の放浪者》を追加し、更に《フェアリーの悪党》を唱える。

 平岡はドローを確認し、なにもせずにターンを返す。鈴木は《無私の霊魂》を追加し、2体の《霊廟の放浪者》が強化され、そのまま攻撃を仕掛ける。

 ライフを削られた平岡。次のターンも土地を引くことができず、再びそのままターンを終えた。

 鈴木は3体のスピリットと1体のフェアリーで攻撃を仕掛ける。

 メモに自分の残りライフを記した平岡は、ここでようやく土地を引き込む。あらゆるマナを生みだす、《霊気拠点》だ。エネルギーを利用して緑マナを産出し、《死天狗茸の栽培者》を場に呼び出す。

 ここから平岡のデッキが動き始めるか、と思われたが、土地を引き込めなかったことがやはり大きかった。スピリットとフェアリーが再び襲いかかり、そこに《稲妻の一撃》が合わさったことで、そのまま1ゲーム目が終わった。


鈴木 1-0 平岡


 いつの時代も我々を悩ませる、「土地事故」。この事故に遭遇したことがない人は、きっと少ないであろう。単色のデッキでさえも「土地を引けない、引きすぎた」という事故が存在するのだから、多色ならなおさらである。


白日の下にカマキリの乗り手包囲サイ


 平岡のデッキには《白日の下に》を始めとして、《カマキリの乗り手》《包囲サイ》といったフロンティア環境に存在する多色のカードが豊富に採用されている。


導路の召使い爪鳴らしの神秘家死天狗茸の栽培者


 《導路の召使い》《爪鳴らしの神秘家》《死天狗茸の栽培者》といったマナクリーチャーと5種類のバトルランド、そして5種類のフェッチランドが採用され、『カラデシュ』で登場した《霊気拠点》も採用されている。

 1ゲーム目、平岡は「土地事故」に見舞われた。しかし、その事故に遭遇せずにデッキのポテンシャルを発揮したならば?



 手早くサイドボードを終えて、デッキがシャッフルされる。2ゲーム目、両者、マリガンなし。


Game 2


 平岡は《霊気との調和》から《平地》、次のターンは《森》、そして《爪鳴らしの神秘家》と順調にマナを伸ばしていく。

 対する鈴木は《平地》《尖塔断の運河》から《密輸人の回転翼機》をプレイする。


密輸人の回転翼機


 スタンダードを席巻する「機体」も、やはりフロンティアの空を飛び交っている。「搭乗」要員は存在しないが、十分な存在感だ。

 順調に土地を伸ばしていく平岡は、《窪み渓谷》をプレイし、《軍族の解体者》を唱える。3ターン目の、4マナ、5/4、飛行。こちらも存在感を放ちながらの着地である。



 マジックでは、「4マナのカード」をプレイできるのは、土地が1ターンに1枚しかプレイできない都合上、通常の場合「4ターン目」である。そして「強い」と言われるカードは「4ターン目に出てくるとは思えないほど強い」と表されることが多い。

 マナ加速手段が強力なのは、ただでさえ「4ターン目に出てくるとは思えないほど強い」カードが、さらに1ターン早く出てくるからだ。ここで登場した《軍族の解体者》は、まさにその1枚である。



 鈴木は慌てることなく、《反射魔道士》によって《軍族の解体者》を手札に戻し、そのまま《密輸人の回転翼機》に「搭乗」させて、攻撃を仕掛ける。対する平岡も、《カマキリの乗り手》を唱えて、互いに「3/3、飛行」が戦場に存在する盤面になった。



 ターンを受けた鈴木は、ここで少しだけ手を止めて盤面を見つめる。《カマキリの乗り手》を放置すれば、ライフを削られ不利になるのは必定。《密輸人の回転翼機》を活躍させるためにも、ここでは《稲妻の一撃》《カマキリの乗り手》を除去することを選んだ。

 再び《密輸人の回転翼機》《反射魔道士》が「搭乗」。「機体」によって、ETB能力を使用したあとも《反射魔道士》の活躍は続く。



鈴木 亨


 平岡は相手の手札の枚数を確認する。そして《吹きさらしの荒野》から、《梢の眺望》を戦場に出し、唱えられたのは《新緑の機械巨人》


新緑の機械巨人


 《爪鳴らしの神秘家》が6/5となり、鈴木に襲いかかる!

 ライフを大きく削られた鈴木は、一旦手元のメモでライフを確認してから、《カマキリの乗り手》を唱える。《密輸人の回転翼機》と共に襲いかかり、あと一歩というところまで追い詰めたのだが、次のターンに《石の宣告》によって《カマキリの乗り手》が除去されたところで、投了を選んだ。


鈴木 1-1 平岡


 鈴木の使用する「ジェスカイ・ビートダウン」は、スタンダードで活躍している”「白青フラッシュ」のフロンティア版”といった印象を受ける。しかしながら、そのカード選択にはいぶし銀という言葉が似合うほど独特なものがあり、単なる”フロンティア版”と表現するのが躊躇われるほどの輝きを放っている。

 じつはこのデッキ、あの伊藤 光英が作り上げたものなのだ。その構築の妙をカバレージ内でお伝えするのは困難であるため、【Deck Tech】をご覧いただきたい。

 鈴木は、その伊藤謹製のデッキを手にスイスラウンドを勝ち抜き、いま、準決勝まで駒を進めている。

 サイドボードを終えて丁寧にデッキをシャッフルしながら時計を確認する。時間はまだ十分にある。平岡もシャッフルを終えて、準備ができたようだ。いよいよ3ゲーム目が始まる。


Game 3


 先手の鈴木は即座にキープを選択する。平岡は「考えます」と告げて手札を見つめる。悩んだ末にマリガンを選ぶ。

 《大草原の川》《感動的な眺望所》と繋げて、鈴木は早速《密輸人の回転翼機》を唱える。

 対する平岡も、《梢の眺望》《霊気との調和》から《島》と土地を伸ばし、さらに2枚目の《梢の眺望》をプレイ。こちらも順調に土地を伸ばし、「白青緑」の3色を用意した。



平岡 拓


 そのターンのエンドフェイズ。鈴木は《呪文捕らえ》を唱える。呪文は捕らえていないが、2/3、飛行というスペックはクロックとして優秀であり、さらに《密輸人の回転翼機》に「搭乗」することが可能だ。そして、相手の呪文を捕らえることよりも、”戦場にクリーチャーを出すこと”を優先させたのは、「さらに戦力を増強して、勝利に向かってゲームを動かす」という表明でもある。


ゼンディカーの同盟者、ギデオン


 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が唱えられたことによって、その表明は確固たるものとなる。

 「先攻4ターン目のギデオン」の威圧感は、フロンティアの地でも衰えることがない。このプレインズウォーカーこそ、「4ターン目に出てくるとは思えないほど強い」という表現が似合う1枚だ。

 トークンを呼び出しながら盤面に立つプレインズウォーカーを見つめ、平岡はドローを確認する。一呼吸を置いて《霊気拠点》をプレイする。そして収斂4で唱えられたのは《放浪する森林》だ。しかしながら、これは鈴木の《反射魔道士》によって、盤面に残ることを許さない。



 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は、強力なプレインズウォーカーだ。トークンを生み出して自身を守りながら戦力を補強する能力を持ち、そして好機となれば、クリーチャーとなって相手に襲いかかることができるのだから。

 《呪文捕らえ》とともに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が攻撃を仕掛け、残りライフは3。ここで平岡はデッキを片付け、投了した。


鈴木 2-1 平岡

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