挑戦者インタビュー: 大池 倫正 ~私が思考を囲う理由~

晴れる屋

by Hiroshi Okubo


 大池 倫正(東京)。


 当時まだ“最近出てきたローグデッキ”に過ぎなかった「ドレッジ」デッキを選択し勝利を収め、後の大ヒットの火付け役となった大池。

 彼のトーナメントでの実績はまだ浅いが、【第7期モダン神挑戦者決定戦】で中道 大輔や佐藤 健治、高野 成樹といった強豪プレイヤーたちを打ち破ってきたその実力は本物だ。

 はたして彼は何者なのか? 本インタビューでは大池の知られざる素顔に迫る――!






誰も知らないあなたの顔

--「大池さんはいつごろからマジックをプレイされているのでしょうか?」

大池「ええと、『タルキール覇王譚』の頃です。元々他のTCGをプレイしていたんですけど、そのときの友人に勧められて始めたのがきっかけですね」

--「比較的最近なんですね。お好きなカードやデッキはございますか?」


思考囲い


大池「手札破壊が好きで、最初に買ったシングルカードも《思考囲い》でした。特にモダンはカウンターこそ弱いですが、手札破壊はレガシー級のカードが揃っていて、相対的に手札破壊が強いフォーマットなので好きです。デッキだと『ランタンコントロール』や『カラスローム』のようなデッキをよく使用します」

--「なんとなく人となりが分かってきました(笑) 普段はどういった環境でマジックをプレイされているんですか?」

大池「東京MTGや晴れる屋でモダンのイベントに出ることが多いです。あまり競技志向ではなくて、PPTQにもほとんど出たことがありません。グランプリも【グランプリ・東京2016】が初参加です。そもそも思い立った日にフラッと大会に参加したいので、事前予約などが必要になる競技イベントにはあまり向かないのかもしれません(笑)」

--「それは分かります(笑) あまり競技イベントに参加されないということでしたが、【第7期モダン神挑戦者決定戦】では見事に勝利を収められていましたね」

大池「あれはたまたまです。そもそもトーナメントで優勝したのも今回が初めてだったので……でも、神になったら晴れる屋の大会に無料で参加できるようになりますもんね。神になれたらたくさん大会に出てみたいですし、がんばりたいです」

--「ありがとうございます。次は【第7期モダン神挑戦者決定戦】で使用されていたデッキに関してお話を伺いたいと思います」






名前のない怪物

--「【第7期モダン神挑戦者決定戦】では当時まだローグ扱いだった『ドレッジ』を使用して勝利を収めていらっしゃいました。これなら勝てる!という先見の明があったのでしょうか?」

大池「いえ、《トーラックへの賛歌》が使いたかったんです」


トーラックへの賛歌


--「……えっ?」

大池「ほら、デッキリストを見てください。ここに入ってるじゃないですか、《トーラックへの賛歌》



大池 倫正「ドレッジ」
第7期モダン神挑戦者決定戦(スイスラウンド5位)

2 《山》
1 《沼》
1 《森》
2 《血の墓所》
1 《草むした墓》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《樹木茂る山麓》
3 《銅線の地溝》
1 《ダクムーアの回収場》

-土地(20)-

4 《傲慢な新生子》
4 《恐血鬼》
4 《ナルコメーバ》
4 《臭い草のインプ》
4 《秘蔵の縫合体》
4 《ゴルガリの墓トロール》

-クリーチャー(24)-
4 《信仰無き物あさり》
4 《燃え立つ調査》
3 《壌土からの生命》
2 《暗黒破》
2 《燃焼》
1 《農民の結集》

-呪文(16)-
4 《古えの遺恨》
3 《記憶の旅》
2 《思考囲い》
2 《稲妻の斧》
2 《突然の衰微》
2 《骨までの齧りつき》

-サイドボード(15)-
hareruya



--「入ってないです

大池「まだ分かりませんか? ほら、これってモダン版の《トーラックへの賛歌》ですよね?」


燃え立つ調査


--「ああ、なるほど。たしかにランダムディスカードではありますが……これが使いたかったんですか?」

大池「ええ、そうです。僕はメタゲーム的に『ドレッジ』がどうこうっていうより、ただ手札破壊がしたかったんですよね。人が何もできずに倒れる姿が――ゲームプランがズタボロになって苦悶に歪む人の顔が見たかった。それだけなんです」

--「いい性格してますね……」

大池「何か言いましたか?」

--「ごめんなさい、刺さないでください」






深淵からの招待

--「モダンで勝利する秘訣などはありますか?」

大池「それは僕が知りたいです(笑) でも、分からん殺しっていうのはあるかもしれませんね。無数のアーキタイプが存在するフォーマットなので、その全ての挙動を知って正しくサイドボーディングを行うっていうのはかなり高度なことだと思います。なので、対戦相手が知らないカードを使用するというのはアドバンテージに繋がるはずです」

--「たしかにモダンフォーマットでの分からん殺しはイニシアチブを握れますね。話は変わりますが、対戦相手の松田さんにはどのような印象をお持ちですか?」

大池「向こうが覚えているかは分かりませんが、実は松田さんが優勝された【第6期モダン神挑戦者決定戦】でもスイスラウンドで1度当たったことがあるんですよ。そのときは瞬殺されてしまったんですけど、お互いけっこう雑談とかしながら楽しくプレイしていました。すごく人当たりが良くて、マジックもうまい方という印象ですね」

--「何か対戦に向けて秘策などがおありでしょうか?」

大池「今はカバレージやモダン関連の記事を読んでいろいろと考えていますが、真っ向から実力勝負したらまず厳しいと思いますし、結局モダンはじゃんけんのようなところもあるので、強いていうなら出たとこ勝負です」

--「ありがとうございます。本戦でのご活躍も期待しております!」








 虫も殺さないような落ち着いた立ち振る舞いで「手札破壊が好き、一生手札を捨てさせ続けたい」と対戦相手を苛め抜くことの愉悦を語ってくれた大池。

 その偏執的なまでのサディズムは松田に届くのか? 第7期神決定戦当日の試合が楽しみだ。