「金属製の巨像」と我がプロツアー

Oliver Polak-Rottmann

Translated by Tsubasa Tomita

今回、みなさんにホノルルで開催された 【プロツアー『カラデシュ』】のレポートを届けることができて、とてもうれしいよ。

プロツアー『カラデシュ』がホノルルで開催されると発表されたとき、とても興奮したよ。ハワイは本当に好きな場所なんだ。今までにもハワイで行われるプロツアーに3回ほど参加しているから、「何が楽しいか」は知っていたし、気分が高まったよ。

今回もTeam EUrekaの調整チームに加わることになり、最初のグループがハワイに到着したのはプロツアーから2週間も前だった。今回我々はハワイ島、通称ビッグアイランドで集まることになっていた。予算の問題も当然あるのだが、この地を選ぶことができ、そして新たな楽しみを見つけられるのは本当に楽しみだった。全員、ハワイに来たことにとても満足していたよ。浜辺から徒歩2分という立地で、少し頑張って泳げば自然のイルカにも出会える。さて、そろそろそんなハワイの美しさや魅力から話を変えて、今回のテストプロセスなどの話に移ろうか。

マジックオンラインでみんながおしゃれなことを試している中、私はいつもどおり、地元でリミテッドに何度も挑戦していた。

今回の環境について、私の見解では、スタンダードはとにかくパワー重視。感覚で話すならば、『ワイルド・ワイルド・ウエスト』のような昔の西部劇、といった感じだ。私は広く物事を捉える傾向があり、今回の環境ではモダンのプロツアーのように15種類ほどのデッキを選ぶことができそうだった。コンボデッキも3種類の戦略と共に帰ってきた。そして《密輸人の回転翼機》はそこら中に居たよ。

そしてリミテッドについてだが、今回の私にとって好ましいものだ。おそらく、今回のリミテッドがここ最近で一番楽しいものではないだろうか? 強いコモンがとてもアグレッシブで、速い戦略が一番強いのでは? かといってドラフトでコントロール戦略を取ることも不可能ではなく、「エネルギー」を使った面白いコンボも最初に期待されていた以上の働きをした。それぞれの色が大体同じ強さなので、今回は最強、最弱という色はなかったように思う。私たちのテストの結果も、以下のとおりだ。




私個人は「白黒『製造』」が一番好みで、青を使うのはあまり好きになれなかった。こうやって『カラデシュ』のカードを隅から隅まで確認したこともあって、今回のプロツアーで行われるドラフトがとても楽しみだった。

構築の部分では、少し状況が違った。一番強いデッキを明確にすることができなかったんだ。私たちは何種類もの「機体」デッキを試してみたし、《霊気貯蔵器》まで試したぐらいだ。《霊気池の驚異》、「《金属製の巨像》デッキ」まで、ありとあらゆるものを試したよ。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《大天使アヴァシン》を採用できるデッキと、私のお気に入りの「黒緑昂揚」には多く時間を割いてテストをしていた。私たちが考えたメタゲームの構造は、「ギデオン/アヴァシン」系はアグロに有利で、コンボは「ギデオン/アヴァシン」に、そしてアグロがコンボに有利、というものだった。

プロツアーのラウンドが進むにつれて気づいたことは、《奔流の機械巨人》の凄さを見落としていたことだ。いくつかデッキとして試してみたことはあったが、結果を残したデッキほどのものを作り上げることはできなかった。そして結果を残しているデッキリストを見たときに納得したよ……自分は心の中では「青の魔法使い」だからね。今回の環境を私たちで紐解いたとき、コンボかアグロのメタに属したいと考えたんだ。結果的に、私たちのほとんどの時間は、そのコンボかアグロに注ぎ込まれた。

私たちが作り上げた「《霊気池の驚異》デッキ」と「《金属製の巨像》デッキ」は確実性に欠けており、他のデッキはより良いパフォーマンスを見せていた。だが何かあのデッキについて解明しないといけないことは分かっていた。火曜日にハワイ島の火山を見に行く途中、Micheal Majorsが《金属製の巨像》をうまく使えるアイディアとして、《森の占術》を持ち込んできた。このカードが、すべての問題を解決してくれたよ。このため、私たちはいつでも《金属製の巨像》を2~3体ほど、5ターン目に投下できた。さて、これがプロツアーに登録したデッキリストだ。


Oliver Polak-Rottmann 《金属製の巨像》コンボ
プロツアー『カラデシュ』

4 《森》
4 《島》
3 《植物の聖域》
1 《尖塔断の運河》
4 《霊気拠点》
4 《ウギンの聖域》
2 《発明博覧会》
1 《ハンウィアーの要塞》

-土地 (23)-

4 《光り物集めの鶴》
1 《老いたる深海鬼》
4 《金属製の巨像》

-クリーチャー (9)-
2 《抜き取り検査》
4 《予言のプリズム》
4 《森の占術》
4 《織木師の組細工》
4 《耕作者の荷馬車》
3 《行き詰まりの罠》
4 《面晶体の記録庫》
3 《領事の旗艦、スカイソブリン》

-呪文 (28)-
4 《儀礼的拒否》
4 《光輝の炎》
2 《難題の予見者》
2 《慮外な押収》
2 《領事府の看視》
1 《金属紡績工の組細工》

-サイドボード (15)-
hareruya



金属製の巨像森の占術ウギンの聖域


デッキの基本戦術は《金属製の巨像》を4,5ターンで1体、そして複数体展開することにある。それを実現させるためには、クリーチャーではないアーティファクトが大量に必要だ。アーティファクトをなるべく早く唱えたいがために、マナ加速するカード、たとえば《耕作者の荷馬車》《面晶体の記録庫》を最大限に入れたんだ。

2マナ域には《予言のプリズム》を入れてあり、結果的にデッキは6色となっている。そして《織木師の組細工》《光り物集めの鶴》《森の占術》を採用してある。私たちは数多くのアグロが大会にいる、と予想していた。そのため、《金属紡績工の組細工》より《織木師の組細工》を選ぶことにしたのだが、これによって初動がかなり変わってくる。《光り物集めの鶴》はアーティファクト専用のルーターといった役割だ。《発明博覧会》《森の占術》で見つけることができれば、デッキからあらゆるアーティファクトを持ってくるようなものだからね。

行き詰まりの罠


3マナ域に《行き詰まりの罠》を追加したことでクリーチャーをタップ状態にしたり、プレインスウォーカーを何ターンか封じ込めたりできる。頼りになるように見えないかもしれないが、とても良い仕事をしてくれたよ。

それから、すこし変に思われるかもしれないが《鋳造所の検査官》を採用していない。このカードの問題点は、このデッキでは多少強引であってもゲームプランを遂行しようとするのだが、《鋳造所の検査官》はそういった意味としてはいい仕事ができないと判断した。もう一つの理由は、軽い除去に弱いことだ。もちろん「機体」を稼働させることもできるが、相手とはできるかぎり少ない干渉の中で最大限のインパクトを与えたいと考えたんだ。

領事の旗艦、スカイソブリン


《領事の旗艦、スカイソブリン》を採用していることについても、違和感があるかもしれない。なぜなら、このデッキで《領事の旗艦、スカイソブリン》に「搭乗」できるのは《金属製の巨像》のみであり、マナ加速を補助することもないからだ。このデッキでは《領事の旗艦、スカイソブリン》は「4ターン目に打てる除去」のようなもので、《領事の旗艦、スカイソブリン》を投下できるということは、もう少しで《金属製の巨像》はタダで投下できるということでもあるんだ。《金属製の巨像》をバイバックするのになるべく小さなアーティファクトを生け贄にしたいからそういったところでもこのサイズは助かるだろう。そして《金属製の巨像》を投下したターンにそのまま「搭乗」することで、6点のダメージを叩き込みながら3点の火力を飛ばすことができる。

老いたる深海鬼抜き取り検査


追加したカードは2種類だ。まずは《老いたる深海鬼》を1枚入れてある。これは《ウギンの聖域》経由で探すことができるんだ。《老いたる深海鬼》は、必要悪とでも言うべきだろうか。ゲームプランを手助けしてくれることは少ないが、勝ちの見えない試合で勝たせてもらえることもある。忘れてはいけないことだが、クリーチャー化した「機体」を生け贄に捧げることで、《老いたる深海鬼》を「現出」することも可能だ。

そして、もう一つ追加したのが、2枚採用している《抜き取り検査》だ。これが採用されている理由は、攻撃的なデッキに対する武器であり、《石の宣告》《ヴォルダーレンの下層民》のようなカードのためなんだ。少しおかしな動きだと思うかもしれないが、《行き詰まりの罠》を利用して《ヴォルダーレンの下層民》をタップしたり、《金属製の巨像》《石の宣告》に対応してタップしたりした上で、バウンスすることができる。もちろんただの仮説で、実際にそのような場面に出くわすことはなかった。そしてサイドボードの際に、必ずと言っていいほど抜いていたのも事実だ。もしも《抜き取り検査》を将来のトーナメントで使おうと考えているプレイヤーがいるのであれば、私は強く反対するよ。

マナ基盤はとてもしっかり作れていたと思っている。無色マナも必要でありながら、《霊気拠点》《耕作者の荷馬車》《予言のプリズム》が必要なマナをアシストしてくれる。そんな理由もあって、2枚の《発明博覧会》と1枚の《ハンウィアーの要塞》を採用したことで、驚くべき速度で《金属製の巨像》を投下できる。サイドボードの《難題の予見者》を援助してくれる。

実は、私はプロツアーが始まるまでこのデッキで一度も回すことがなかったのだが、大体の判断には納得していた。だがTeam EUrekaの半数以上ががこのデッキに乗らなかったことから、この判断が確かな物かは分からなかったが。

プロツアー当日は、比較的有利なテーブルに座ることができた。テーブル内で顔見知りだったのは、後に今大会でチャンピオンになる八十岡 翔太と、私の右から美味しいカードを流してくれると期待できるチームメイト、Thomas Hendriksだった。彼のアグロデッキへの解釈と傾向を知っていたので、青を使わないことも分かっていた。そして、運よく私が今回のリミテッドにおいて爆弾レアだと考えていた《領事の旗艦、スカイソブリン》を引き当てることができた。しかしながら、このデッキにはあと1, 2枚の除去、そしてパワーが強いクリーチャーを増やしたいと思う。デッキの完成度は、そこまで良いとは思わなかった。





第1ラウンドはコントロールとのミラーマッチだ。1ゲーム目は自分の《領事の旗艦、スカイソブリン》で、そしてもう1ゲームは相手の《密輸人の回転翼機》を奪取して勝つことができた。後半の動きが想像以上に良かったので、ミッドレンジ、もしくはコントロールよりのデッキに当たることを願っていた。

第2ラウンド目はチームメイトとの対戦だ。《領事の旗艦、スカイソブリン》を5ターン目に投下し、相手のクリーチャーを毎ターン処理していたのだが、相手があまりにもアグレッシブに動いてきたのでこれだけでは足りなかった。結果、土地を多く引きすぎて、そのゲームは落とすことになった。2ゲーム目は盤面が膠着したのだが、マナフラッドに悩まされてしまった。

第3ラウンドでは、悲しいことに前のラウンド目と同じ展開となってしまい、成績は1-2となった。デッキについては、壊れるほど強くはなかったが、安定感はあったと思っている。

構築の第1ラウンドで対戦したのは、今大会で一番優れたデッキを持ち込んだ、Hareruya Prosの顔である齋藤 友晴だった。彼が使用したデッキがとても強いことを対戦中に体感し、彼のデッキリストを見たときに、確信したよ。『彼らは「機体」やアグレッシブなクリーチャーに適した完璧な色を見つけ出した』と。大接戦の勝負を繰り広げ、私は辛うじて勝つことができたのだが、このラウンド以降、この日はお互いに負けることがなかった。初日の残りの対戦は既に内容をある程度把握していた「赤黒」、「赤黒ゾンビ」、「《霊気池の驚異》デッキ」、「青白テンポ」と対戦し、デッキを使い慣れていないことから来たいくつかの簡単なミスはあったが、使いこなすことができていたと思っている。

2日目のドラフトでは、Mike Hron山本 賢太郎と一緒のテーブルで、他にも顔見知りが何人かいた。知り合いの間に座って、お互い意思疎通ができていたこともあってか、結果みんなまともなデッキが完成していたようだったよ。





私の引いたレアたちは、確実に私を助けてくれた。第1ラウンドでは、相手を《新緑の機械巨人》で圧倒し、第2ラウンドでは《燻蒸》でゲームを制した。ドラフトラウンドの最終戦では、「赤黒アグロ」を使っている山本 賢太郎と対戦した。序盤をリードして勝ちに進んでいると思い込んでいたのだが、5枚目の土地を掘り当てることができず、《燻蒸》《新緑の機械巨人》《高木背の踏みつけ》が手札で今か今かと出番を待っている状態で、相手は残りライフ1点のまま耐えて、その1点が削るにはあまりに大きすぎて、この1戦を落としてしまった。

7連勝したあとの敗戦はとても辛かったが、上位に入るには十分だと思っていた。それと、ハワイ島に泊まっていたころからあまり体調が良くなったのだが、大会後半には具合が悪化していてプレイ中も気分が優れなかった。その後は「赤緑二段攻撃」に勝ち、次の対戦相手は、同じHareruya Prosのチームメイト、ピエール・ダジョンだった。

霜のニブリス


1ゲーム目は勝てたのだが、彼がサイドボード後に使ってきた《霜のニブリス》には驚いたよ。「搭乗」コストを支払えなくなるので、《領事の旗艦、スカイソブリン》をサイドアウトすることにしたんだが、今思い返せばサイドアウトせずに残すことで、もしかしたら2ゲーム目と3ゲーム目のどちらかを落とさずに済んだかもしないが、これは結局ミスの一つに過ぎず、体調のせいにもできたが、そういった試合があるからこそ成長できると考えている。その後の2試合で自信を取り戻そうとしたが、残念ながら2戦とも「赤黒」に潰されてしまった。

ジェットコースターに乗ったような気分だったよ。Top8に行けそうところから、一気に失速してしまい、X-6になったのだから。あまりの出来事に、最終ラウンドは賞金のためにプレイする、と考えてしまうほどだった。結局、最終ラウンドの相手であるSam Pardeeの「黒緑昂揚」には勝てて、Top64で終わることができた。そして、プロポイント6点をオーストリアに持って帰ることができたんだ。

プロツアーを追えた今、アップデートしたデッキリストがこれだ。サイドボードの入れ替えのガイドも載せておくよ。


Oliver Polak-Rottmann《金属製の巨像》コンボ(アップデート版)

5《森》
3《島》
4《霊気拠点》
4《植物の聖域》
4《ウギンの聖域》
2《発明博覧会》
1《ハンウィアーの要塞》

-土地 (23)-

4《光り物集めの鶴》
1《鋳造所の検査官》
1《老いたる深海鬼》
4《金属製の巨像》

-クリーチャー (10)-
4《森の占術》
4《予言のプリズム》
4《金属紡績工の組細工》
2《織木師の組細工》
4《耕作者の荷馬車》
3《行き詰まりの罠》
4《面晶体の記録庫》
2《領事の旗艦、スカイソブリン》

-呪文 (27)-
4《光輝の炎》
3《難題の予見者》
3《儀礼的拒否》
2《否認》
2《慮外な押収》
1《払拭》

-サイドボード (15)-
hareruya



見てわかると思うが、大きな変更点はない。デッキを少しだけコントロール寄りに変えただけだ。

サイドボードについて

vs. ジェスカイコントロールや、その他のコントロールデッキ:


Out

織木師の組細工織木師の組細工行き詰まりの罠
光り物集めの鶴光り物集めの鶴領事の旗艦、スカイソブリン


In

難題の予見者難題の予見者難題の予見者
否認否認払拭



vs. 《霊気池の驚異》:


Out

織木師の組細工織木師の組細工行き詰まりの罠
光り物集めの鶴光り物集めの鶴鋳造所の検査官
領事の旗艦、スカイソブリン領事の旗艦、スカイソブリン


In

難題の予見者難題の予見者難題の予見者
儀礼的拒否儀礼的拒否儀礼的拒否
否認否認



vs. 「4色機体」「赤黒アグロ」:


Out

金属紡績工の組細工金属紡績工の組細工
金属紡績工の組細工金属紡績工の組細工


In

光輝の炎光輝の炎
光輝の炎光輝の炎



vs. 「青白フラッシュ」:


Out

織木師の組細工織木師の組細工行き詰まりの罠
光り物集めの鶴光り物集めの鶴森の占術


In

難題の予見者難題の予見者難題の予見者
否認否認払拭



vs. 「黒緑昂揚」:


Out

織木師の組細工織木師の組細工行き詰まりの罠
光り物集めの鶴鋳造所の検査官


In

難題の予見者難題の予見者難題の予見者
慮外な押収慮外な押収


皆さん読んでくれてありがとう。

そして優勝した八十岡 翔太、そしてTop8に入賞したダジョン。改めておめでとう!


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