Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/4/21)
(編集者注:この記事は《深海の破滅、ジャイルーダ》がMagic Online上で一時的な禁止措置を受けているときに書かれたものであり、現在は禁止解除となっています。)
「相棒」の到来
『イコリア:巨獣の棲処』の新メカニズム、「相棒」はMagic Onlineで鮮烈なデビューを果たしました。発売週の大型大会を支配すると、最悪でも8枚目の初手として”無料の脅威”となり、上手く使えば手札破壊されない必殺コンボのパーツとなる「相棒」は、ほぼすべての主要なフォーマットでメタゲームのトップに躍り出たのです。
レガシーで躍動する「相棒」たち
《夢の巣のルールス》
『イコリア:巨獣の棲処』がMagic Onlineに実装されると、極度に大きな需要に対して供給量が少なかったことから、プレイヤーたちの手元にお気に入りの「相棒」が届くまで1~2日要しました。レガシーのエキスパートであるダニエル・ゲッチェル/Daniel Goetschelとエジガル・マガリャンイス/Edgar Magalhaesは《夢の巣のルールス》を搭載した強力なグリクシスデルバーを完成させると、レガシーリーグでそれぞれ15-0、20-0という成績を収め、ダニエルに至っては木曜日に開催されたLegacy Super Qualifierでトップ4に入賞しました。
3 《Volcanic Island》
2 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》
2 《沸騰する小湖》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《カラカス》
3 《不毛の大地》
-土地 (18)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《戦慄衆の秘儀術師》
2 《スプライトのドラゴン》
-クリーチャー (10)-
2 《ゴブリンのクレーター掘り》
2 《狼狽の嵐》
2 《紅蓮光電の柱》
2 《仕組まれた爆薬》
2 《虚無の呪文爆弾》
1 《トーモッドの墓所》
-サイドボード (14)- 1 《夢の巣のルールス》
-相棒 (1)-
《黎明起こし、ザーダ》
一方で、その他の「相棒」は昔ながらのアーキタイプを生き返らせるとともに、新たなデッキを生み出していました。xJCloudとして知られるジョン・ライアン・ハミルトン/John Ryan Hamiltonは《黎明起こし、ザーダ》の理想的な居場所をボンバーマンに見出しました。この狐を《厳かなモノリス》と《玄武岩のモノリス》と組み合わせることで、無限のマナを生み出すデッキです。
4 《オパールのモックス》
3 《ライオンの瞳のダイアモンド》
2 《ミシュラのガラクタ》
2 《ウルザのガラクタ》
4 《多用途の鍵》
4 《厳かなモノリス》
3 《玄武岩のモノリス》
3 《神秘の炉》
4 《ウルザの後継、カーン》
4 《大いなる創造者、カーン》
-呪文 (37)-
1 《歩行バリスタ》
1 《流刑への道》
1 《排斥》
1 《ライオンの瞳のダイアモンド》
1 《トーモッドの墓所》
1 《ガラスの棺》
1 《玄武岩のモノリス》
1 《罠の橋》
1 《三なる宝球》
1 《マイコシンスの格子》
-サイドボード (14)- 1 《黎明起こし、ザーダ》 -相棒 (1)-
《空を放浪するもの、ヨーリオン》
メインデッキを80枚にするという《空を放浪するもの、ヨーリオン》の「相棒」条件はデッキ構築の面白みを増すものですが、除去・打ち消し呪文・脅威を増量させることで奇跡や氷雪オーコで無理なく達成できます。グランプリ・ボローニャ2019の覇者であるマルク・フォークト/Marc Vogtの80枚で構成された奇跡は、《海の神のお告げ》《氷牙のコアトル》をフル投入して《空を放浪するもの、ヨーリオン》の戦場に出たときの価値を引き上げていましたが、Magic Onlineのプレイヤーであるlynnchaliceはこのデッキリストを使って土曜日のLegacy Challengeでトップ8に入賞。スイスラウンドでは無傷の7-0でした。
1 《冠雪の森》
1 《冠雪の平地》
2 《Tropical Island》
2 《Tundra》
2 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《霧深い雨林》
3 《沸騰する小湖》
2 《神秘の聖域》
2 《汚染された三角州》
1 《カラカス》
-土地 (28)- 4 《氷牙のコアトル》
2 《瞬唱の魔道士》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (8)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
2 《紅蓮破》
2 《夏の帳》
1 《先触れ》
1 《呪文嵌め》
3 《対抗呪文》
3 《否定の力》
4 《意志の力》
3 《終末》
4 《海の神のお告げ》
4 《アーカムの天測儀》
4 《王冠泥棒、オーコ》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (44)-
《深海の破滅、ジャイルーダ》
土曜日のLegacy Challengeでは、《深海の破滅、ジャイルーダ》の姿もありました。1枚で成立する全く新たなリアニメイトコンボデッキを生み出したのです。しかもベルチャーのように1ターンキルができる力がありながら《魂の洞窟》で打ち消しへの耐性が備わっています。
ただ、《深海の破滅、ジャイルーダ》のレガシーへの影響力はこれ以降観測できない状態が続いています。というのも、《虚空の力線》や《安らかなる眠り》などが絡んだときの挙動にバグがあるため、Magic Onlineでは一時的に禁止されているのです(《墓掘りの檻》とは異なり、本来これらの墓地対策は《深海の破滅、ジャイルーダ》のリアニメイト効果を阻めません)。そのため、存在を周知された後にこのデッキがどれほど力を失うのかは不透明です。
コンボそのものについては、阻むチャンスさえあれば妨害することは比較的容易です。《魂の洞窟》を引ければ《深海の破滅、ジャイルーダ》本体は打ち消し呪文から守られますが、マナ加速呪文に対しては打ち消し呪文を当てる余地があります(特にマナの量・色マナの点で最も優れている《ライオンの瞳のダイアモンド》)。さらに、《深海の破滅、ジャイルーダ》が戦場に出たときの能力がスタックにあるときに《剣を鍬に》や《カラカス》などで対応すれば、残り3枚しかない《深海の破滅、ジャイルーダ》をライブラリーの上から4枚のなかに見つけなければ不発に終わる状況を作り出せます。
新環境での調整
私自身の調整はと言いますと、もはやスニーク・ショーやその他の《実物提示教育》戦略には自信を持てないことが調整からすぐにわかりました。従来からスニーク・ショーにとって最も難しい相手のひとつがグリクシスデルバーでしたが、まさにそのデッキが新環境で最も使用者が多く注目を浴びているデッキとなっていたのです。グリクシスデルバーに限らず、多くの新興勢力がメインデッキに《カラカス》を1~2枚採用することで、自分の「相棒」を除去から守り、相手の「相棒」を場にとどまらせないように意識しており、私の自信はさらに損なわれていきました。新しいスニーク・ショーの構成を考える時間を割かなかったほどです。
青黒スタイフルノート
ソーシャルメディアを介して新環境の発展に関する情報を集めると、私はとうとう土曜日のLegacy Challenge直前に自分用の《夢の巣のルールス》を購入しました。何度もグリクシスデルバーのミラーマッチを苦労して戦うことに前向きにはなれなかったので、急いで《夢の巣のルールス》を使った青黒スタイフルノートを組み上げましたが、4-3という平凡な結果でトップ32に入りました。ルールスミラーにおいては悪くないデッキでしたが、《ファイレクシアン・ドレッドノート》はオーコデッキに対してサイドアウトせねばならず、赤を含まないデッキであるため《稲妻》《戦慄衆の秘儀術師》《紅蓮破》にアクセスできないのも非常に痛手でした。
1 《沼》
3 《Underground Sea》
4 《汚染された三角州》
1 《血染めのぬかるみ》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
1 《沸騰する小湖》
1 《新緑の地下墓地》
1 《カラカス》
4 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《ファイレクシアン・ドレッドノート》
2 《闇の腹心》
-クリーチャー (10)-
ジェスカイルールス
Legacy Challengeのラウンド間、ダニエルとエジガルのグリクシスデルバーの構成を大いに参考にさせてもらいながら、ジェスカイルールスの構築をし始めました。グリクシスデルバーはあまり調整した経験がありませんでしたが、手札破壊ができない「相棒」と《夏の帳》がある世界では《思考囲い》が好きになれませんでした。《剣を鍬に》はミラーマッチに限らず、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を追放し、ジャイルーダコンボを妨害し、ボンバーマンの《オーリオックの廃品回収者》を対処できるため、現環境で理想的な除去だと感じられました。
ジェスカイカラーを試そうと思った大きな理由は、《翻弄する魔道士》の存在です。「相棒」はゲーム開始時に公開されますし、《ミシュラのガラクタ》でライブラリートップの情報が得られるため、メインデッキに入れても良いほどだと感じたほどです。maxtortionことマックス・ギルモア/Max GilmoreとMagic OnlineプレイヤーのArk4nは土曜日に似たような結論に至ったようですが、我々は協力することなくそれぞれで調整しました。
土曜日にリーグに2度参加すると、それぞれ4-1でした。そこでの対戦結果を参考に若干の調整を加え、最終的に満足のいくデッキを完成させました。日曜日には8ラウンドに渡るLegacy Challengeをジェスカイルールスで優勝。勝利の勢いはとどまることなく、月曜日のLegacy Preliminaryでも5-0で全勝を達成しました!
Came back from a seemingly unwinnable spot (see screenshot) in game 3 of the finals to take down today's Legacy Challenge! 🤩🏆
— Jonathan Anghelescu (@JPAnghelescu) April 20, 2020
RUG Delver LWW
UR Delver WW
TES LL
Grixis Delver WLW
Bomberman WW
RUG Delver WLW
UR Delver WLW
TES WW
TES WLW
Yorion Ctrl WW
Steel Stompy LWW pic.twitter.com/Wi3yvOKfih
「決勝の3ゲーム目、絶望的な状況から立て直してLegacy Challengeを優勝!」
Let's keep going! Same list except a better Pyroblast / Red Elemental Blast split. Deck guide article coming soon, hopefully before any bans. 😉
— Jonathan Anghelescu (@JPAnghelescu) April 20, 2020
Bomberman WLW
Mirror LWW
Grixis Delver LWW
BR Reanimator WW
Eldrazi WW pic.twitter.com/HcuMJ0mwrW
「連勝!リストは《紅蓮破》と《赤霊破》の比率を変えただけ。禁止になる前に記事がリリースできますように。」
ではここからはそのデッキの構成を見ていきましょう。この新環境の初期でなぜジェスカイルールスが優れた選択なのかをご説明します。
ジェスカイルールスの最新デッキリスト
3 《Volcanic Island》
1 《Plateau》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《沸騰する小湖》
1 《カラカス》
3 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《戦慄衆の秘儀術師》
3 《翻弄する魔道士》
1 《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
-クリーチャー (12)-
2 《剣を鍬に》
2 《浄化の印章》
2 《仕組まれた爆薬》
2 《トーモッドの墓所》
2 《冬の宝珠》
1 《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
1 《紅蓮破》
-サイドボード (14)- 1 《夢の巣のルールス》 -相棒 (1)-
デッキ構成
「相棒」: 《夢の巣のルールス》
レガシーを8年プレイしてきましたが、ここまでカードパワーが高いものはめったにお目にかかれません。《夢の巣のルールス》はデルバーを使うプレイヤーのゲームへの取り組み方を完全に変えました。脅威でもアドバンテージ源でもある《夢の巣のルールス》は常に好きなときに唱えられるため、妨害とマナがあって脅威がないというバランスを欠いた手札でもキープできるようになったのです。《夢の巣のルールス》は昔ながらのクロックを刻むクリーチャーになることもありますが、真価を発揮するのは《ミシュラのガラクタ》を使い回したり、その後にクリーチャーを復活させたりするアドバンテージ源となったときです。
以前までのジェスカイデルバーは矛盾を抱えていました。《剣を鍬に》で相手のライフを回復させてしまう一方で、《秘密を掘り下げる者》を含む攻撃的な初手で高速のキルを目指そうとしていたのです。しかし《夢の巣のルールス》がいる今、この問題は解消されました。ほとんどの場合、相手のライフは関係ありません。《夢の巣のルールス》を場にとどまらせ、そこからゲームを掌握していくことが基本的なゲームプランとなったからです。一度ゲームを掌握してしまえば、そこから決着をつけることに苦労することはほぼありません。
クリーチャー
《秘密を掘り下げる者》 4枚
《夢の巣のルールス》デッキにおいては《秘密を掘り下げる者》がもはや必要ない可能性すらあるでしょう。ですが、それに代わる《石鍛冶の神秘家》などは《夢の巣のルールス》の構築条件から《殴打頭蓋》を採用できず、魅力が大幅に下がってしまいます。《秘密を掘り下げる者》を序盤に展開する流れは依然として非常に強く、ミラーマッチや氷雪オーコ戦では《秘密を掘り下げる者》に除去を使うか、それとも後々の《夢の巣のルールス》を放置しないように除去を温存するかを相手に迫り、難しい状況に追いやることができます。
ただ、私が旧型のデルバーデッキを使っていたときとはプレイの仕方が変わっていました。以前は1ターン目にキャントリップ呪文を唱えたりマナを構えたりすることなく、《秘密を掘り下げる者》でゲームを始めてプレッシャーをかけることがほとんどでしたが、今は《夢の巣のルールス》でゲームを支配するというゴールを念頭に先々のターンのプランを立てることが求められるようになってきたのです。《秘密を掘り下げる者》を展開するタイミングの判断はマッチアップに大きく左右されますが、特にアグレッシブさをあまり求めないジェスカイカラーにおいては、展開の判断が以前と同じではないという印象を私は持っています。
《戦慄衆の秘儀術師》 4枚
《夢の巣のルールス》とは対象に取る墓地のカードが異なるため、両者は見事に共存しています。フェアデッキを使う対戦相手は《戦慄衆の秘儀術師》をすぐに対処する必要がありますが、先々に着地する《夢の巣のルールス》のことも考えねばなりません。ときには次のターンに出てくることもあるでしょう。
たいていの場合、コンボデッキは《戦慄衆の秘儀術師》を対処する手段がなく、このクリーチャーは妨害呪文を手札にかき集めてくれます。ただ、ジェスカイカラーは《思考囲い》が採用できませんので、グリクシスカラーほど《戦慄衆の秘儀術師》を効果的には使えません。
《翻弄する魔道士》 3枚
先ほどお伝えしたとおり、「相棒」と《ミシュラのガラクタ》がある新世界ではメインデッキに入るカードだと考えています。もともとこのアイディアが浮かんだのは、土曜日のLegacy Challengeの7回戦でジャイルーダコンボに負けたときでした。その後まもなくして《深海の破滅、ジャイルーダ》は一時的な禁止を受けますが、《翻弄する魔道士》はここから続く私の連勝に特に大きく貢献してくれた1枚でした。
デルバーミラーでは使い勝手が良くないことがあるものの、そのミラーマッチでも自分の《夢の巣のルールス》がすでに場に出ていて/除去されていて、相手の《夢の巣のルールス》がまだサイドボードにいるのであれば、それを指定することで《翻弄する魔道士》へ除去を仕向けることができます。《翻弄する魔道士》の枚数が3と4のどちらが良いのかはまだわかりませんが、3枚でも満足のいくインパクトを与えてくれています。
《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》 メイン1枚 + サイド1枚
この枠は4枚目の《翻弄する魔道士》の方が良かもしれませんが、今のメタゲームに《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》はとても合っていると感じています。《ライオンの瞳のダイアモンド》をエンジンとする「相棒」デッキのボンバーマンやジャイルーダコンボに対してキーカードとなるだけでなく、デルバーミラーにおいても驚くほど有用なのです。一度彼女が着地してしまえば、もはや《目くらまし》や《意志の力》をケアする必要がなくなり、《夢の巣のルールス》でゲームを支配するというプランが非常にやりやすくなります。なんと相手の《戦慄衆の秘儀術師》の効果も《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》で防げます!ヨーリオンコントロールが「奇跡」で唱える《終末》を妨害できることもあるでしょう。
ルールスのサポート役
《ミシュラのガラクタ》 4枚
《ミシュラのガラクタ》が初手にくるたび、とても恵まれた手札がきたなと感じていました。このデッキは《夢の巣のルールス》を使ったゆったりとしたゲームも得意としていますが、3ターン目の《夢の巣のルールス》で圧勝するときはたいてい《ミシュラのガラクタ》が絡んでいます。また、先ほども述べたとおり、《翻弄する魔道士》でカードを指定する際に有用な情報を与えてくれる存在です。さらに、《秘密を掘り下げる者》が変身する確率も上げられます。
How to use Mishra's Bauble to help flip Delver:
— Max Gilmore (@maxtortion) April 21, 2020
On opponent's EoT, Bauble yourself.
If it's an inst/sorc, put upkeep Bauble trigger on the stack first so that Delver flips to the card.
If not, put Delver trigger on the stack so that Bauble draws and Delver sees a fresh card. pic.twitter.com/akYjhLeEju
「デルバーを変身させる《ミシュラのガラクタ》の使い方。
相手のエンドフェイズに自分を対象に《ミシュラのガラクタ》を起動。確認したカードがインスタント/ソーサリーだったら、デルバーの効果を先に解決して変身させる。確認したカードがインスタント/ソーサリーではなかったら、先に《ミシュラのガラクタ》のドローを解決し、デルバーを変身させるカードがめくれることを期待する。」
ですが、私がよく使う使い方は、すぐに《ミシュラのガラクタ》を起動して相手のターンにアクセスできるカードをもう1枚増やすことでした。相手のアクションが怖くないという贅沢な状況はめったになく、追加の打ち消し呪文や除去がゲーム展開に影響を与えることは少なくありません。
《ミシュラのガラクタ》の対象は相手にするのが原則ですが、戦場にフェッチランドがあり、特定のカードを探し出したいときや特定のドローを避けたいときは自分を対象にすべきです。ただし、相手のデッキがわからない1ゲーム目の1ターン目に自分を対象に取り、確認したカードをフェッチランドでシャッフルするときは注意を要します。このデッキは基本土地がなく、《不毛の大地》で土地を破壊されたら厄介です。妨害されずにマナを伸ばすことは非常に大切であり、妨害されることがミラーマッチにありがちな負け筋となります。もっとも、最近のデルバーのデッキリストは《不毛の大地》を3枚まで減らしていますけどね。
除去
《稲妻》 4枚
相手のライフ、《大いなる創造者、カーン》、《夢の巣のルールス》、《秘密を掘り下げる者》、《戦慄衆の秘儀術師》。《稲妻》はこれら全てを対象に取れます。新しいデルバーミラーにおいては、《稲妻》を多く引いた方がたいてい勝ちます。《夢の巣のルールス》を採用するようになったことで、《真の名の宿敵》《わめき騒ぐマンドリル》《グルマグのアンコウ》といった対象に取れない/3点ダメージでは除去できない脅威がいなくなったからです。
《剣を鍬に》 メイン2枚 + サイド2枚
先述のとおり、《剣を鍬に》は今やデルバーデッキと噛み合わないカードではなく、むしろ除去枠を完璧なものへと昇華させるカードとなりました。ミラーマッチにおけるクリーチャーへの解答が増加するのはもちろん、《稲妻》で除去された《夢の巣のルールス》を復活させる目的で入っているかもしれない《発掘》、あるいは《再活性》を封じることができます。さらに、《剣を鍬に》はジャイルーダコンボやボンバーマン(特に《オーリオックの廃品回収者》)に対する追加の妨害手段となります。
打ち消し呪文
《意志の力》 4枚、《否定の力》 2枚
この2種は安全弁であるとともに、3ターン目に《夢の巣のルールス》を展開するリスクを軽減させ、《ミシュラのガラクタ》と合わせてゲームを支配するプランを実行しやすくしてくれます。
ゲーム開始時に「相棒」が公開されるため、《意志の力》《否定の力》に偏った初手の評価もやりやすくなっています。ただ、相手が「相棒」として《夢の巣のルールス》を公開したとしても、必ずしもデルバーミラーとは限らず、可能性は低いもののストーム系やスティールストンピィである場合もあるので気を付けましょう。《夢の巣のルールス》の効果や「相棒」というシステムそのものがもたらすカードアドバンテージが加わったことで、この2種がもたらすカードディスアドバンテージは以前よりも気にならなくなっています。
《目くらまし》 4枚
《目くらまし》を早めに使うことによる1ターンのズレがルールスデルバーにおいては痛手になるものの、マナカーブが低いデッキであり、《目くらまし》はデッキに噛み合っています。相手の《夢の巣のルールス》を打ち消すことに長けており、相手は必ず”手札に持っている”ため唱えてくるタイミングが読みやすく、《目くらまし》を構えやすくなっています。後手であっても、ミラーマッチで評価の高い1枚です。
キャントリップ呪文
《渦まく知識》 4枚、《思案》 4枚、《定業》 1枚
古典的なレガシーのキャントリップ呪文です。人によってはこのキャントリップ呪文だけの記事が必要と思うでしょうし、あるいはほとんど説明はいらないと思うかもしれません。《戦慄衆の秘儀術師》を4枚採用するのであれば《定業》の枚数を増やすのも良いでしょうが、《ミシュラのガラクタ》があるため枠に余裕がありません。このアーティファクトは《夢の巣のルールス》でゲームを掌握するという重要なゲームプランを支える1枚です。
マナベース
“定番”のグリクシスルールスのマナベースをそのまま使いました。《目くらまし》が1ターン分のズレを生んでしまうのと同様で、早めの段階から《不毛の大地》を起動することはほぼありません。例外は、先手のときや大きなテンポを得られるときです。
現環境では《カラカス》は非常に強いです。自分の《夢の巣のルールス》を守り、相手の「相棒」をバウンスできるからです(おそらく一番の対象は《深海の破滅、ジャイルーダ》)。グリクシスカラーに比べ、ジェスカイカラーではその有用性が一層高く、《夢の巣のルールス》のマナコストを捻出できるだけでなく、その他の白のカードも唱えられます。枠を作って2枚目を75枚のどこかに採用したほうが良いかもしれませんが、今のところは1枚に抑えておこうと考えています。
デルバーデッキにおいて《Plateau》は扱いづらいようにも思えますが、実際に困ったことは一度もなく、《稲妻》と《剣を鍬に》を4枚ずつ入れた2戦目以降には重要な存在ですらあります。このデッキはデルバーデッキというよりもルールスデッキであり、その《夢の巣のルールス》は《Tundra》《Volcanic Island》《Plateau》という3枚構成から唱えられる選択肢を持っておくべきです。この構成ならば土地を1つ破壊されても、特定の色が出ないという状況を避けられます。
サイドボード
《仕組まれた爆薬》 2枚
非常に汎用性の高い除去であり、ときには《夢の巣のルールス》で墓地から戻せる全体除去になります。ジェスカイはグリクシスと異なり、青・赤・黒・《カラカス》の白の4色で唱えて《大いなる創造者、カーン》や《難題の予見者》などの4マナのパーマネントに触る選択肢が持てませんが、これまでにこの動きが欲しいと思ったことはありません。《夢の巣のルールス》の能力で墓地から戻すときは(X)=2までなので気を付けましょう。
《浄化の印章》 2枚
インパクトの大きさを求めるなら《静寂》になるでしょうが、《浄化の印章》は私が求める役割をきっちりと果たしてくれています。ボンバーマンや《虚空の杯》戦略に対して欠かせない対抗策です。
《トーモッドの墓所》 2枚
グリクシスのように《虚無の呪文爆弾》が使えないのは大きな損失です。このアーティファクトは冠雪オーコ戦略に対してアドバンテージで立ち向かうときに重要な存在だったのです。ただ、墓地対策をしたいのなら《トーモッドの墓所》でも十分に仕事をしてくれます。このデッキに入っている他のパーマネントと同様に(これは言うまでもないかもしれませんが)、《夢の巣のルールス》で使い回せます。
《冬の宝珠》 2枚
コントロールや氷雪オーコと戦う際に最も重要となるサイドカードです。できるだけ早いターンに設置することはほとんどなく、相手が土地を複数タップさせるタイミングを待ちます。その返しのターンで設置すれば壊滅的なダメージを与えることができ、優勢をそのままに勝ちやすくなるのです。
《赤霊破》 2枚、《紅蓮破》 1枚
Legacy Challengeを優勝したときのリストは《紅蓮破》を3枚にしていましたが、これはまだ《スプライトのドラゴン》を使っていた初期の構成の名残でした。《翻弄する魔道士》で《紅蓮破》を指定できるように《赤霊破》3枚に寄せても良いかもしれません。ただ、2:1で分けて採用するわずかなメリットを放棄するほどの価値があるかは疑問が残ります。
サイドボードガイド
私も最適なサイドボード戦略を模索している段階ですので、ここからご紹介するガイドラインは話半分に聞いていただければと思います。
グリクシス / ジェスカイデルバー
対 グリクシス / ジェスカイデルバー
枠を作って《仕組まれた爆薬》と《トーモッドの墓所》を入れても悪くないでしょう。私もたまに投入しています。ただ、上記のサイドボーディングがミラーマッチにおけるお気に入りのプランであり、いまだにミラーマッチで負けたことはありません。
ティムールデルバー
対 ティムールデルバー
ボンバーマン
対 ボンバーマン(先手)
対 ボンバーマン(後手)
ジャイルーダコンボ
対 ジャイルーダコンボ
他の候補は《トーモッドの墓所》と《浄化の印章》です。一時的な禁止がされているため、ジェスカイルールスでジャイルーダコンボと対戦した経験はまだありません。
奇跡
対 奇跡(開発段階)
氷雪オーコ
対 氷雪オーコ(開発段階)
奇跡と氷雪オーコに対するサイドボーディングは(ほぼ同じ入れ替えをしますが)その時々でやり方が大きく違い、最適なプランは見出せていません。《剣を鍬に》《稲妻》《目くらまし》《不毛の大地》《トーモッドの墓所》の枚数は非常に柔軟に変更しますが、先手後手に大きく左右されます。《意志の力》と《否定の力》は《夏の帳》で大損失を被るので、もしかしたら減らしても良いかもしれません。ただ、これらのピッチスペルは《夢の巣のルールス》プランで重要な役割を担う存在でもあります。
TES
対 TES
《稲妻》を4枚とも残すのは、《夢の巣のルールス》への完璧な回答を用意しておくためです。このマッチアップでは《浄化の印章》が素晴らしい活躍をします。《防御の光網》《願い爪のタリスマン》を破壊するだけでなく、タイミングが合えば《ライオンの瞳のダイアモンド》やその他のマナアーティファクトも対処できるのです。
スティールストンピィ / エルドラージストンピィ
対 スティールストンピィ / エルドラージストンピィ(先手)
対 スティールストンピィ / エルドラージストンピィ(後手)
赤黒リアニメイト
対 赤黒リアニメイト
レガシーのこれから
新しい「相棒」たちはレガシーにたちまち大きな影響をもたらし、ゲームへと取り組み方は以前から大きく様変わりしました。私はこの変化を大いに楽しんでいます。もちろん個人的に結果を出せているからというのもありますが、まだまだ改善の余地がある新しく新鮮な遊び方だからというのが大きいです。
とはいえ、「相棒」のなかから1~2種の禁止が出ても構いませんし、驚きでもありません。禁止前後を問わず、あらゆるレガシーの環境を私は楽しんできました。ジェスカイルールスを楽しめる時間があとわずかであったとしても、また愛しのスニーク・ショーへと回帰できます。未来がどうなろうと、私はそれを受け入れて楽しんでいこうと思います。
ヨナタン・アンゲレスク (Twitter)