はじめに
みなさんこんにちは。
先週末からMagic Online(以下:MO)では、モダンを含めた各構築フォーマットChallengeが追加され、より多くの大会に参加することができるようになりました。『イコリア:巨獣の棲処』で登場した「相棒」は、各構築環境に大きな影響を与えています。モダンも例外ではなく、多くのデッキが「相棒」を採用しています。
さて、今回の連載ではModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Challenge #12138051
新メカニズム「相棒」の影響
2020年4月19日
- 1位 Grixis Delver
- 2位 Dredge
- 3位 Bant Snow Control
- 4位 Bant Soulherder
- 5位 Bant Soulherder
- 6位 Golgari Midrange
- 7位 Dredge
- 8位 Jund
トップ8のデッキリストはこちら
「相棒」を搭載したデッキが多数入賞しているなど、『イコリア:巨獣の棲処』が環境に与えた影響は大きく、特に《夢の巣のルールス》を採用したデッキが頭一つ抜けた強さを見せていました。
既存のデッキでは、DredgeやBant Snow Controlが結果を残していました。
Modern Challenge #12138051 デッキ紹介
「Grixis Delver」「Golgari Midrange」
Grixis Delver
3 《湿った墓》
2 《蒸気孔》
1 《血の墓所》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
3 《闇滑りの岸》
2 《尖塔断の運河》
-土地 (21)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《スプライトのドラゴン》
2 《瞬唱の魔道士》
-クリーチャー (10)-
4 《選択》
3 《稲妻》
2 《思考囲い》
1 《コジレックの審問》
1 《発掘》
2 《湖での水難》
2 《マナ漏出》
4 《否定の力》
3 《大魔導師の魔除け》
3 《ミシュラのガラクタ》
-呪文 (29)-
3 《神秘の論争》
3 《トーモッドの墓所》
2 《渋面の溶岩使い》
2 《致命的な一押し》
1 《狼狽の嵐》
-サイドボード (14)- 1 《夢の巣のルールス》
-相棒 (1)-
Delverはレガシーでは定番のアーキタイプの一つですが、モダンではドロースペルに恵まれず《秘密を掘り下げる者》を安定して変身させることが難しく、《目くらまし》など性能の良いカウンターが少ないため競技デッキとしての成立が難しかったアーキタイプでした。
今大会で優勝を収めたGrixis Delverは、『イコリア:巨獣の棲処』からの新カードによって大幅に強化されました。
レガシーと異なり、《瞬唱の魔道士》などアドバンテージを獲得できるカードが多くミッドレンジ寄りの構成となっています。
☆注目ポイント
「相棒」クリーチャーの《夢の巣のルールス》は、カードプールが広く優秀な低コストのパーマネントが多いモダンでは、「相棒」にする条件を満たすのは比較的容易です。
《ミシュラのガラクタ》は《夢の巣のルールス》の能力によって、毎ターン使い回せるので手軽にアドバンテージを稼ぐことができ、自分のライブラリートップを見て不要であれば、フェッチランドを起動してシャッフルすることでドローの質も上げられます。また、《秘密を掘り下げる者》の変身にも貢献してくれます。
軽いスペルを多用するこのデッキでは《スプライトのドラゴン》のサイズの強化も容易で、《ミシュラのガラクタ》と《夢の巣のルールス》の組み合わせによって毎ターン強化することもできるので脅威となります。《発掘》は墓地に落ちた《夢の巣のルールス》を使い回す手段となり、《瞬唱の魔道士》とも相性が良く「サイクリング」できるので腐りにくく使いやすいスペルです。
Golgari Midrange
2 《森》
2 《草むした墓》
4 《新緑の地下墓地》
1 《血染めのぬかるみ》
4 《花盛りの湿地》
2 《育成泥炭地》
1 《樹上の村》
4 《廃墟の地》
-土地 (23)- 4 《呪詛呑み》
4 《闇の腹心》
4 《タルモゴイフ》
3 《漁る軟泥》
-クリーチャー (15)-
4 《コジレックの審問》
3 《思考囲い》
1 《発掘》
3 《暗殺者の戦利品》
1 《突然の衰微》
1 《大渦の脈動》
4 《ミシュラのガラクタ》
1 《虚無の呪文爆弾》
-呪文 (22)-
2 《夏の帳》
2 《集団的蛮行》
2 《減衰球》
2 《魂標ランタン》
1 《大爆発の魔道士》
1 《暗殺者の戦利品》
1 《嵐の乗り切り》
1 《墓掘りの檻》
-サイドボード (14)- 1 《夢の巣のルールス》
-相棒 (1)-
《夢の巣のルールス》が「相棒」になる条件を満たすため、当たり前のように使われていた《ヴェールのリリアナ》など3マナ以上のパーマネントが不採用になっており、Golgari Midrangeの構成にも大きな変化が見られます。
軽い除去、ハンデス、クリーチャーと揃っているデッキで苦手な土地コンボが減少傾向なのも追い風です。
☆注目ポイント
《夢の巣のルールス》は緑黒系のミッドレンジでもアドバンテージ源として重宝します。《呪詛呑み》など軽いパーマネントが中心のアグロ寄りのミッドレンジに調整されており、《闇の腹心》によるライフロスも少なく済みます。
緑黒系のミッドレンジの強みは、《虚無の呪文爆弾》や《漁る軟泥》といった墓地対策カードをメインから無理なく採用できることで、これによりほかの《夢の巣のルールス》デッキに強い構成となります。特に《虚無の呪文爆弾》は、《夢の巣のルールス》によって墓地を対策しつつアドバンテージが取れます。
Modern Challenge #12138057
あなたの「相棒」は?
2020年4月20日
- 1位 4C Contorl
- 2位 Burn
- 3位 Jund
- 4位 Hardened Scales
- 5位 Urza
- 6位 Boros Prowess
- 7位 Grixis Delver
- 8位 Devoted Combo
トップ8のデッキリストはこちら
今大会の前日に開催されたModern Challengeでは、新環境最初の大会だったこともあり試行錯誤の段階だった印象でしたが、「相棒」、特に《夢の巣のルールス》がいかに壊れていたかが一夜にして広まり、今大会ではなんと入賞したすべてのデッキが「相棒」を採用したデッキでした。
トップ32にまで見渡してみても半数がなにかしらの「相棒」を採用したデッキで、マジックの長い歴史の中でも最強クラスのメカニズムと考えて間違いなさそうです。
「相棒」クリーチャーの中でも頭一つ抜けているのが《夢の巣のルールス》です。混成カラーで「相棒」となる条件も緩いため、アグロ、ミッドレンジ、コントロールなど様々なデッキに構成を歪めることなく採用できるのが主な理由です。
Modern Challenge #12138057
「4C Control」「Burn」「Urza」
4C Control
1 《冠雪の山》
1 《冠雪の沼》
1 《血の墓所》
1 《繁殖池》
1 《草むした墓》
1 《神秘の聖域》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
2 《霧深い雨林》
1 《蒸気孔》
1 《湿った墓》
-土地 (22)- 4 《氷牙のコアトル》
3 《瞬唱の魔道士》
-クリーチャー (7)-
2 《コジレックの審問》
1 《発掘》
1 《塵へのしがみつき》
1 《突然の衰微》
1 《マナ漏出》
1 《暴君の嘲笑》
3 《否定の力》
2 《大魔導師の魔除け》
1 《コラガンの命令》
2 《謎めいた命令》
1 《炎の印章》
4 《ミシュラのガラクタ》
1 《仕組まれた爆薬》
4 《アーカムの天測儀》
2 《レンと六番》
-呪文 (31)-
《アーカムの天測儀》と氷雪基本地形による強固なマナ基盤を活かした多色コントロール。レガシーでも定番のコントロールの形で、各色の優秀なスペルにアクセスできるのがこのデッキの魅力です。
このデッキも《夢の巣のルールス》を「相棒」に選んでいます。「相棒」にする条件を満たすために《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《ドミナリアの英雄、テフェリー》《時を解す者、テフェリー》《精神を刻む者、ジェイス》といった強力なカードを諦めていますが、それだけの価値がこの「相棒」にあるということです。
☆注目ポイント
ほかの《夢の巣のルールス》デッキと同様に、このデッキも必然的に軽い構成となっています。3-4マナのプレインズウォーカーが採用されていないため、土地の枚数も22枚と少なめです。《氷牙のコアトル》《アーカムの天測儀》《ミシュラのガラクタ》などのキャントリップに加えて、墓地に落ちたフェッチランドを使い回せる《レンと六番》が採用されているので土地に困ることは少なくなりそうです。《ミシュラのガラクタ》+《夢の巣のルールス》と《レンと六番》によって毎ターンアドバンテージを稼ぎ出します。
《コラガンの命令》は相手のクリーチャーを除去しつつ、墓地に落ちた《夢の巣のルールス》を再利用する手段にもなります。相手の《夢の巣のルールス》を対策するために、墓地対策である《塵へのしがみつき》がメインから採用されています。軽いインスタントなことに加えて「脱出」もあるので使いやすく、環境の多くのデッキが《夢の巣のルールス》を採用していることを考慮するとメインからの墓地対策は必須となりそうです。
除去も豊富で《氷牙のコアトル》や《炎の印章》を《夢の巣のルールス》で使い回せるので、前日のModern Challengeで優勝していたGrixis Delverにも強い構成です。
Burn
《夢の巣のルールス》はなんとBurnにも「相棒」に選ばれています。元々軽いクリーチャーと火力スペルの構成なので、ボロスカラーのBurnにも無理なく入ります。
《夢の巣のルールス》とのシナジーがある《ミシュラのガラクタ》ももちろん採用されており、Bauble Burnとも呼ばれています。
☆注目ポイント
ほかの《夢の巣のルールス》デッキと同様に《ミシュラのガラクタ》使い回すことでアドバンテージを稼げるので、このデッキの弱点である中盤以降の息切れも緩和されています。カード1枚1枚がゲームに与える影響が大きいため、ほかのデッキよりも《ミシュラのガラクタ》で自分自身を対象にしてフェッチランドを起動し、ドローの質を上げるというプレイングは重要となります。
多くのデッキが《夢の巣のルールス》を「相棒」として選択しており、デッキが軽い構成にシフトしているので《大歓楽の幻霊》は脅威となります。自分にもダメージが入ってしまいますが相手の方が被害が大きく、《夢の巣のルールス》の絆魂によって失ったライフの回復ができます。
Urza
2 《冠雪の森》
2 《繁殖池》
2 《蒸気孔》
3 《神秘の聖域》
4 《霧深い雨林》
4 《沸騰する小湖》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《虹色の眺望》
1 《孤立した砂州》
-土地 (28)- 4 《金のガチョウ》
2 《極楽鳥》
2 《貴族の教主》
4 《氷牙のコアトル》
4 《湖に潜む者、エムリー》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《最高工匠卿、ウルザ》
-クリーチャー (24)-
3 《金属の叱責》
1 《大魔導師の魔除け》
4 《謎めいた命令》
4 《仕組まれた爆薬》
4 《ミシュラのガラクタ》
1 《モックス・アンバー》
4 《アーカムの天測儀》
1 《ひっかき爪》
1 《魂標ランタン》
1 《上天の呪文爆弾》
3 《レンと六番》
-呪文 (28)-
強力な「相棒」は《夢の巣のルールス》だけに留まらず、《空を放浪するもの、ヨーリオン》もコントロールやミッドレンジで採用されています。
全体的に「相棒」となる条件が緩い《夢の巣のルールス》と比べると、《空を放浪するもの、ヨーリオン》は20枚もの余分なカードをデッキに入れる必要があり、デッキの構成のみならずデッキ構築の常識そのものを変える必要がある厳しめの条件となっています。しかし、その厳しい条件に見合う能力を持ち合わせている「相棒」であり、場に出たときの能力持ちのパーマネントが多いUrzaにフィットしています。
☆注目ポイント
《氷牙のコアトル》《最高工匠卿、ウルザ》《アーカムの天測儀》など、場に出たときの能力持ちのパーマネントを多数搭載したUrzaでは、《空を放浪するもの、ヨーリオン》は厳しいデッキ構築制限に見合ったアドバンテージを稼ぎ出します。
マナクリーチャーと《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、マナアーティファクトによるマナ加速によって《最高工匠卿、ウルザ》など強力なパーマネントを早い段階から展開することができます。《最高工匠卿、ウルザ》デッキですがソプターコンボなどは不採用で、《大魔導師の魔除け》や《謎めいた命令》といった妨害手段が多数見られ、《謎めいた命令》+《神秘の聖域》のコンボも搭載されているなどコントロール寄りの構成となっています。
《夢の巣のルールス》の登場によってメインから墓地を対策することは重要です。《ひっかき爪》や《魂標ランタン》はドローに変換できるので腐りにくく、使いやすい墓地対策です。
総括
「相棒」は実質初手が1枚増えていることになり、ハンデスによっても妨害されないので流石に強すぎるという意見が多く、果たしてそれが健全な環境と言えるのか懸念するプレイヤーも多い印象です。
特に「相棒」にするデッキ構築の条件が緩い《夢の巣のルールス》は、Burn、Jund、4C Control、Hardened Scales、Boros Prowess、Devoted Comboなど様々なデッキで採用されています。
瞬く間に環境を支配するに至った「相棒」。デッキ構築の常識も変えてしまうほどで、今後の動向にも注目が集まります。
USA Modern Express vol.39は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!