Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/4/28)
奥深き環境
やぁ、マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalhoだ。またリミテッド環境について攻略していこうと思う。今回は『イコリア:巨獣の棲処』だ!
最初に言っておきたいことがある。ドラフトよりもシールドをプレイする機会が圧倒的に多いのは本当に久しぶりのことだ。すっかり夢中になってしまった!なかには本当に奥が深いカードプールがあって、デッキ構築の時間が20分じゃ適正な構成を見つけられないと思うほどさ。色マナサポートが多くある多色のセットは、ただ引いたボムレアに合う2色を選び、隙間を埋めてデッキを完成させる普通の環境よりもはるかに難しいんだ。
1マナの「サイクリング」
この環境を遊び始めて最初に気づいたのは、1マナで「サイクリング」できる呪文の多さだった。このメカニズムは大好きだけど、これだけ1マナの「サイクリング」が多いと環境を歪めてしまっているのではないかと思う。
シールドデッキを組むときは必ずレア/ボムレアを引き込むことを意識している。ありったけの1マナの「サイクリング」呪文を採用してデッキを圧縮し、本来よりもはるかに高頻度でアクセスできるようにするんだ。色が噛み合っていなくても1マナの「サイクリング」呪文を6~10枚詰め込むようになってしまったほどさ!
さらに、「サイクリング」を増やすことで土地の枚数を減らせる(「サイクリング」が本当に多いときは15枚ぐらいにしている)。《彼方見》や《ファーティリド》があれば、もっと枚数を削れるだろう。ここまでは当然のように思えるかもしれないけど、マナフラッドを避けやすくなるメリットもある。ドローが多い環境にありがちな問題と距離を置けるわけだね。
「相棒」
『イコリア:巨獣の棲処』のもうひとつの魅力は「相棒」の導入だ。構築戦への影響は散々語られているようだけど、「相棒」はリミテッドのデッキ構築をするときも重要視すべき要素なんだ。
もう一歩踏み込んで自分なりの考えを言おう。「相棒」は全部使え!リソースの重要性はマジック全般に言えることだが、リミテッドというゲームにおいてはことさら重要だ。初手を8枚にすることは大きなアドバンテージであり、たいていの場合は「相棒」を軸にしたデッキを組むだけの価値がある。
この考え方はシールドにもドラフトにも当てはまる。もちろんシールドでは「相棒」デッキを組めるかどうかは手元のカードプールに左右される(その構築条件を達成できるかはカードプール次第だからね)。
だけど、ドラフトでパックから出たら/早い段階でピックできたなら、全力を尽くして「相棒」を意識したピックを行える。《空を放浪するもの、ヨーリオン》ですらプレイアブルさ。もっとも、60枚のデッキを組むことは他の「相棒」よりも難しいけどね。
リミテッドの観点から、上位4つの「相棒」を並べてみた。
この4枚はカードパワーが高いだけでなく、構築のしやすさでも群を抜いている。
評価の高いドラフトアーキタイプ
さて、ここからは個人的に特に高く評価しているドラフトのアーキタイプを一部紹介しよう。
白赤サイクリング
この環境で一番強力な戦略は白赤サイクリングだ。しかも断トツの1位。さっきも言ったけど、このセットにはちょっと1マナの「サイクリング」呪文が多すぎる。ただ、この戦略を環境のトップに押し上げているのは《天頂の閃光》だ。
盤面の状況が不利?自軍より敵軍のクリーチャーのほうが強い?相手だけ強力なレアや「相棒」がいる?そんなことは関係ない。たった4マナで相手のライフを0にするインスタントの火力呪文があるのだから。環境が速くないことが《天頂の閃光》の強さを助長していて、デッキの大半を「サイクリング」で掘り進めてこの火力呪文でとどめを刺す時間が十分にある。
さらに、「サイクリング」することで効果を誘発するカードは序盤から相手のライフを削るプランに噛み合っているものが多く、こいつらが絡めばゲームを一層早く終わらせることができるんだ。個人的には《天頂の閃光》はレアで良かったんじゃないかと思うよ。
白赤サイクリングを選択するきっかけになる他のアンコモンとしては《雄々しい救出者》と《サヴァイの雷たてがみ》がある。どちらもカードパワーがとても高く、このセット内のベストアンコモンに名を連ねるカードだ。
ここまでに解説した3枚以外にも、白赤サイクリングを選択するなら取り入れたいキーカードがある。それがこの3枚だ。
《罠の戦術家》の評価はとても高い。相手の攻撃を防ぐことができ、フィニッシャーを見つけ出す時間を稼いでくれる。
これらのコモンを数枚採用したら、後は1マナで「サイクリング」できる呪文で埋めていけば良い(2マナの「サイクリング」呪文を使っても良いが、色が合っていなくても1マナで「サイクリング」できるものがあればそちらを選んだ方が良いだろう)。土地の適正な枚数は13~15枚ぐらいだろうけど、デッキ内の「サイクリング」呪文の数に大きく左右される。一回だけ12枚で試したことがあったけど、あれは少しやりすぎだったかもしれないね。
これまでに成功を収めているアーキタイプは他にも2つある。ここからはその2つを見ていくことにしよう。
白黒人間
この環境の”盤面を横に広げる“デッキだ(他のセットでは一般的に白緑が持つ役割)。《防衛線の兵長》は高速で大量のダメージを叩き込むことができる。これは、環境に存在する他のデッキのゲームプランに逆行する動きだ。
優秀な除去をデッキに何枚か組み込めれば、速やかに盤面を支配しやすくなる(優秀な除去とは《平和な心》や《血液凝固》などのことだ。生け贄に捧げるトークンを用意しやすいことから《相互破壊》でも構わない)。
アンコモンに目を移してみよう。《想起の拠点》は残りの数点のライフを削るのに必要な最後の一押しとなる。《聖域封鎖》は《栄光の頌歌》の効果を持ちながら、ブロッカーをどけられる!さらに、《不吉な戦術》はマナコストが軽いうえに、効果の対象に限定がない素晴らしい除去だ。白黒だからこそ使えるカードだね。
青赤スペル
これまでに結果を出してきたアーキタイプとして最後に紹介したいのは青赤スペルだ。
《パイロケラトプス》と《呪文喰いクズリ》は大きなダメージ源となる。《火の予言》や《霜帳の奇襲》といった除去/テンポ獲得呪文が満載のこのアーキタイプでは、この2体のクリーチャーはすぐに手を付けられなくなる。
また、「サイクリング」呪文が多いことにも注目したい。《ドラニスの刺突者》が良い戦力になる可能性がある。ただ、このアーキタイプを極上のものにするのは、この2枚のアンコモンだ。
ドラフトの序盤ではどちらもかなり点数を高めにしてピックし、チャンスさえあればこのアーキタイプに入れるようにしている(みんなが幸運の持ち主なら、《呪文追い、ルーツリー》をパックから出した後にこの2枚を取れるかもね!)。
各色の上位コモン3種
記事の締めくくりとして、個人的な経験から各色で総合評価の高い3種類のコモンを選んでみた。
白
青
黒
赤
緑
おわりに
この環境は本当に魅力的だから、ぜひみんなにも楽しんでほしい!そのときには今回紹介した環境への第一印象を役立ててくれたら幸いだ。これからもこのセットのプレイを重ねて考えを洗練させていくつもりだから、何か気になることがあったらソーシャルメディアを通して聞いてくれ。
さぁ『イコリア:巨獣の棲処』のリミテッドを楽しもう!それから体にも気を付けてね!