はじめに
みなさんこんにちは。
『イコリア:巨獣の棲処』から導入された新メカニズム「相棒」は、構築フォーマットに大きな変化をもたらしました。条件を満たすことで、実質的に初手へ特定のカードが加わるのです。「相棒」を成立させる条件はカードによって異なり、なかにはこれまでのデッキ構成を大きく変えるものもあります。
今回の連載ではPioneer Super Qualifierの結果を見ていきたいと思います。
Pioneer Super Qualifier #12138028
「相棒」によって強化されたアーキタイプ
2020年4月22日
- 1位 Azorius Devotion
- 2位 Azorius Devotion
- 3位 Gruul Aggro
- 4位 Sram Aura
- 5位 Sram Aura
- 6位 Orzhov Pact
- 7位 Lurrus Burn
- 8位 Sram Aura
トップ8のデッキリストはこちら
新メカニズム「相棒」が環境に与えた影響は大きく、『イコリア:巨獣の棲処』リリース前と比べて全く別のフォーマットに見えるほどです。
旧環境で活躍していたDimir Inverter、Sultai Delirium、Bant Spiritsなどは上位から姿を消し、「相棒」により強化されたSram AuraやMono White Devotion、Borosなどが中心でした。
特に今大会でワンツーフィニッシュを果たした白タッチ青信心であるAzorius Devotionは要注目です。
Pioneer Super Qualifier #12138028 デッキ紹介
「Azorius Devotion」「Lurrus Burn」
Azorius Devotion
4 《神聖なる泉》
4 《灌漑農地》
4 《氷河の城砦》
4 《啓蒙の神殿》
1 《港町》
1 《アーデンベイル城》
4 《ニクスの祭殿、ニクソス》
-土地 (34)- 4 《歩行バリスタ》
4 《スレイベンの検査官》
4 《魅力的な王子》
4 《白蘭の騎士》
3 《太陽に祝福されしダクソス》
4 《太陽冠のヘリオッド》
4 《反射魔道士》
4 《秘儀術師のフクロウ》
-クリーチャー (31)-
2 《高名な弁護士、トミク》
2 《疎外》
2 《安らかなる眠り》
2 《ギデオンの介入》
2 《試練に臨むギデオン》
1 《消去》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
Mono White Devotionに《反射魔道士》や《時を解す者、テフェリー》をタッチしたバージョンは『イコリア:巨獣の棲処』が登場する前から見られました。これまでは青を足すことでカードの質を高める狙いでしたが、デッキパワーを落とさずに《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にするためにも今後は2色の構成となりそうです。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》はスタンダード、モダン、レガシーでも結果を残しています。一見すると「80枚」は厳しい条件ととれますが、カードプールが広がるにつれて用途の似通ったカードも増えるため、デッキの安定性を損ねることなく運用できることが証明されています。
しかし、デッキの枚数が増加されたことで《歩行バリスタ》+《太陽冠のヘリオッド》コンボの成立が難しくなります。このデッキはコンボよりも信心要素を取りいれた青白ミッドレンジ寄りに調整がされています。
☆注目ポイント
青を足した恩恵である《反射魔道士》と《時を解す者、テフェリー》は「相棒」の《空を放浪するもの、ヨーリオン》と強力なシナジーを形成します。これらのカードは単体でも十分に強力で、デッキを80枚にするために青を足すことは理に適っています。
ほかにも《スレイベンの検査官》、《秘儀術師のフクロウ》、《魅力的な王子》といった場に出たときの能力持ちのカードが多数採用されているため、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を着地させればカードアドバンテージ面で大きな差をつけることができます。
特に《魅力的な王子》の能力で《空を放浪するもの、ヨーリオン》を明滅させることで、さらにアドバンテージを稼ぎ出せます。色拘束が強いパーマネントが多いため《ニクスの祭殿、ニクソス》によって爆発的にマナ加速することが可能であり、獲得したアドバンテージを活かしやすくなっています。
このデッキの強みはクリーチャーによるビートダウン、場に出たときの能力持ちのパーマネントと《空を放浪するもの、ヨーリオン》によるアドバンテージを稼いでいくミッドレンジプラン、そして《歩行バリスタ》+《太陽冠のヘリオッド》による無限ダメージコンボという多角的な攻めができるところです。Lotus Breachのようなコンボデッキを除いて苦手なマッチアップが少なく、環境の多くのデッキと互角以上に渡り合えます。
Lurrus Burn
モダンやレガシーなどほかの構築フォーマットと同様に、パイオニアでも《夢の巣のルールス》はもっともポピュラーな「相棒」です。
《ミシュラのガラクタ》の不在により毎ターンアドバンテージを稼ぐことこそできませんが、優秀な低コストスペルが多いため「相棒」の条件はそれほど厳しくありません。
☆注目ポイント
《夢の巣のルールス》は元々軽いスペルのみで構成されていたBorosにフィットしており、デッキ強化に貢献しています。除去された脅威を再利用できるため攻め手が途切れにくくなり、中盤以降の息切れに悩まされることも少なくなりました。
モダンと異なり《稲妻》や《溶岩の撃ち込み》などの1マナ3点火力は使えないため火力の質は落ちるものの、追加されたクリーチャーと《舞台照らし》によるカードアドバンテージでカバーしています。Lotus Breachや多くのデッキが《夢の巣のルールス》を使用しているため、《大歓楽の幻霊》は強力なダメージソースとして機能し相手の行動を制限します。
デッキ内にウィザード・クリーチャーが多いので、《魔術師の稲妻》はほぼ《稲妻》として扱えます。サイドに採用されている《灰の盲信者》は各種《夢の巣のルールス》デッキやLotus Breachなど多くのデッキに効果的です。
Pioneer Super Qualifier #12142990
パイオニアでも大活躍Lurrus
2020年4月24日
- 1位 Lotus Breach
- 2位 Sram Aura
- 3位 Sram Aura
- 4位 Azorius Devotion
- 5位 Sram Aura
- 6位 Lotus Breach
- 7位 Yorion Fires
- 8位 Lotus Breach
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『イコリア:巨獣の棲処』リリース以来あらゆる構築フォーマットで活躍している《夢の巣のルールス》。パイオニアでも例外なく、今大会で多数の入賞者を出したSram Auraを大幅に強化しました。
環境の代表的なコンボデッキ、Lotus Breachも安定した成績を残し続けています。Bant Spiritsなど苦手なデッキが減少傾向にあること、コンボを妨害する手段が限られるMono White DevotionやSram Auraが上位に多く見られることが後押しとなっているようです。
Pioneer Super Qualifier #12142990 デッキ紹介
Sram Aura
4 《神無き祭殿》
4 《コイロスの洞窟》
4 《秘密の中庭》
-土地 (19)- 4 《命の恵みのアルセイド》
4 《恩寵の重装歩兵》
4 《憎しみの幻霊》
4 《上級建設官、スラム》
2 《騒音のアフィミア》
-クリーチャー (18)-
『テーロス還魂記』の登場により《命の恵みのアルセイド》や《憎しみの幻霊》が収録されたことで成立したアーキタイプであり、《天上の鎧》や《きらきらするすべて》などのオーラでクリーチャーを強化してビートダウンしていくシナジーベースのアグロデッキです。
原型は高尾 翔太選手によってデザインされたため、製作者名をとり「タカオーラ」とも呼ばれています。今年開催されたプレイヤーズツアー・名古屋2020では行弘 賢選手が使用し、準優勝という結果を残しているデッキです。
☆注目ポイント
元来2マナ以下のパーマネントのみで構成されたSram Auraは構築制限をそれほど受けずに《夢の巣のルールス》を「相棒」にすることができます。キーカードの《上級建設官、スラム》を使い回したりする以外にも、パワー3の絆魂持ちであるためオーラを付ける先としても優秀です。このようにデッキコンセプトにフィットしているため、パイオニアでもっとも《夢の巣のルールス》を強く使えるアーキタイプの一つです。
オーラは付けたクリーチャーを除去されるとカードアドバンテージを失ってしまう弱点がありますが、《上級建設官、スラム》の大量ドローよって補うことができます。
『テーロス還魂記』から加入した2種類のクリーチャー・エンチャント《命の恵みのアルセイド》と《憎しみの幻霊》は1マナと軽いだけではありません。《命の恵みのアルセイド》は除去からクリーチャーを守り、《憎しみの幻霊》は除去されてもカードアドバンテージを失わず、弱点の克服に貢献しています。両クリーチャーともにエンチャントとしてもカウントできるので、《きらきらするすべて》や《天上の鎧》の強化にも貢献します。
Pioneer Super Qualifier #12148139
旧環境の王者の復権
2020年5月1日
- 1位 Dimir Inverter
- 2位 Lurrus Burn
- 3位 Yorion Inverter
- 4位 Lotus Breach
- 5位 Azorius Devotion
- 6位 Hardened Scales
- 7位 Lurrus Burn
- 8位 Sram Aura
トップ8のデッキリストはこちら
Lurrus Burn、Sram Aura、Hardened Scalesなど《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたデッキの活躍が目立ちます。「相棒」を軸にしたデッキが結果を残し続ける中、旧環境で活躍していたデッキも新環境に対応してきています。これまでAzorius Devotionで「相棒」となっていた《空を放浪するもの、ヨーリオン》は、前環境を支配していたDimir Inverterにも採用されていました。
代表的なコンボデッキであるLotus Breachは「相棒」を採用していませんが、Sram Auraなど有利なマッチアップが多数上位に残っていたことでコンスタントに結果を残し続けています。優勝を果たしたのは旧環境と同様のDimir Inverterであり、非「相棒」デッキにもまだまだチャンスがありそうです。
Pioneer Super Qualifier #12148139 デッキ紹介
Yorion Inverter
3 《沼》
4 《異臭の池》
4 《湿った墓》
4 《寓話の小道》
4 《詰まった河口》
4 《水没した地下墓地》
2 《欺瞞の神殿》
-土地 (32)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《タッサの神託者》
4 《真実を覆すもの》
-クリーチャー (12)-
4 《選択》
4 《思考囲い》
1 《思考消去》
2 《英雄の破滅》
2 《中和》
4 《時を越えた探索》
4 《海の神のお告げ》
4 《野望の試練》
3 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《神秘を操る者、ジェイス》
-呪文 (36)-
3 《減衰球》
2 《絶滅の契機》
2 《煤の儀式》
2 《悪夢の詩神、アショク》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
優勝こそクラシックな形のDimir Inverterに譲ったものの、今大会でトップ4に入賞していた《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にしたDimir Inverterを見ていきたいと思います。
Mono White Devotionと同様に、特定のキーカードを必要とするコンボデッキがデッキ枚数自体を増やすことは戦略に矛盾があるように感じられます。ですが、採用したカードも《海の神のお告げ》や《ヴリンの神童、ジェイス》、《異臭の池》とドローに関連するものが多いため、80枚に増量することで《空を放浪するもの、ヨーリオン》の「相棒」条件を満たしつつ、コンボ一辺倒から除去やハンデス、プレインズウォーカーによるコントロール色をより強めたとの見解が正しいでしょう。
タップインランドが多いため、Borosなど高速のアグロデッキは苦手なマッチアップとなります。
☆注目ポイント
20枚のカードを追加しても土地には《異臭の池》や《欺瞞の神殿》があり、《海の神のお告げ》や新加入の《中和》などがあるため、ドローの質を犠牲にすることなくデッキとして成立します。場に出たときの能力持ちエンチャントである《海の神のお告げ》と《野望の試練》は《空を放浪するもの、ヨーリオン》とシナジーがあります。4/5飛行クリーチャーである《空を放浪するもの、ヨーリオン》はコンボ以外の勝ち手段としても十分に機能します。
サイドに忍ばせてある《絶滅の契機》は奇数か偶数のマナコストのクリーチャーを追放するリセットスペルです。黒のスイーパーの中では色拘束も薄く、追放も環境に蔓延る《夢の巣のルールス》を考慮すると今まで以上に重要な要素となります。
総括
各構築フォーマットを激変させた新メカニズムである「相棒」は、パイオニア環境にも大きな影響を与えました。
パイオニアも優秀な低マナ域のパーマネントカードが揃っているため、《夢の巣のルールス》を「相棒」にする条件を満たしやすく様々なデッキで活躍しています。旧環境のトップメタであったDimir Inverterも新環境に対応し《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にしたバージョンが結果を残しています。ほかにも「相棒」を使ったデッキはリーグなどで多数見られるため、いろいろと試すのが楽しい時期でもあります。
USA Pioneer Express vol.4は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいパイオニアライフを!