Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/5/07)
はじめに
先週末、私はマジックフェストオンライン・シーズン2のウィークリーチャンピオンシップに参加し、胸がときめく「ビッグ・アゾリウスコントロール」を使用しました。なんとか10-4を達成し、21位に入賞したことでシーズンファイナルの出場権利を獲得。私が思うにこのデッキはかなり出来が良いように思いました。
昨今は「相棒」が話題の的となっています。アゾリウスコントロールは、ライブラリーの枚数を20枚増やすだけで「相棒」のひとつである《空を放浪するもの、ヨーリオン》を使えるデッキです。
この「デッキを80枚にする」という条件はこのデッキにとってそこまで厳しいものではないと考えています。ドローの確率にある程度の変化が出るのは間違いありません。しかしその一方で、仮に特定のカードを5枚以上採用できるとしても実際にそうしたいと思えるカードはそう多くないのです。そのため、《空を放浪するもの、ヨーリオン》の構築条件がデッキ全体のパワーを大幅に下げることはないだろうと考えています。
デッキ解説
4 《平地》
4 《神聖なる泉》
3 《ラウグリンのトライオーム》
2 《寓話の小道》
3 《啓蒙の神殿》
4 《アーデンベイル城》
4 《ヴァントレス城》
1 《廃墟の地》
-土地 (33)- 2 《夢さらい》
-クリーチャー (2)-
2 《ドビンの拒否権》
4 《吸収》
3 《意味の渇望》
2 《神秘の論争》
4 《空の粉砕》
4 《海の神のお告げ》
3 《メレティス誕生》
1 《払拭の光》
4 《エルズペス、死に打ち勝つ》
4 《サメ台風》
2 《ガラスの棺》
4 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《時を解す者、テフェリー》
-呪文 (45)-
カード選択
《空を放浪するもの、ヨーリオン》
もし《空を放浪するもの、ヨーリオン》が「相棒」ではなく普通のカードだったら、悪くない程度のカードだったでしょう。初手に追加されるカードであるからこそ、これほど強力なのです。このデッキは《空を放浪するもの、ヨーリオン》の「明滅」能力を最大限に活かせるデッキではありませんが、それでも問題ありません。「明滅」させてアドバンテージを稼ぎ、ゲームの形勢を逆転するそのときまでサイドボードで待っていてくれれば十分です。
《サメ台風》
多くの「サイクリング」呪文と同様に、このカードも非常に柔軟性があります。「サイクリング」してサメトークンが出なくても、あるいは小型のサメトークンでも問題ないと思うほどです。また、サメトークンはプレインズウォーカーを攻めるのに適しています。《時を解す者、テフェリー》が戦場にいようとも、相手のターンに展開することすら可能なのです。さらに言えばまるで《ハイドロイド混成体》のような働きをすることもあります。少し言いすぎでしたね、大きいサイズのクリーチャーとしても使えるということです。
《ラウグリンのトライオーム》
《ヴァントレス城》や《アーデンベイル城》をアンタップインさせるために必要な基本土地タイプを持っている点が非常に重要です。パイオニアでは《啓蒙の神殿》よりも《灌漑農地》を優先させることが総意のようですが、《ラウグリンのトライオーム》は《灌漑農地》よりも「サイクリング」コストが1マナ重いですし、パイオニアと違って「城」のように基本土地タイプを要求する《氷河の城砦》はありません。そのため、スタンダードである今大会では《ラウグリンのトライオーム》と《啓蒙の神殿》を併用することにしました。
《中和》
正直に言います。このカードの存在を忘れていました。とてもいいカードだと思います。いまだに私は《吸収》を好んでいますが、少なくとも両者を採用すべきだったでしょう。どちらを重視するかは、《吸収》の3点回復が環境でどれだけ強いかによると思います。
《本質の散乱》
「相棒」を打ち消せますし、総じてとても便利なカードです。
《墓掘りの檻》
《魔女のかまど》デッキ対策にうってつけだと聞いて採用しました。何らかの猫除け対策は必要です。
マッチアップとサイドボードガイド
ジェスカイファイアーズ
vs. ジェスカイファイアーズ
このマッチアップの基本戦略は、《創案の火》を筆頭として、多くの呪文を打ち消すことです。必要がなければ、タップアウトしてはいけません。サイドボード後で気を付けるべきカードは《軍勢の戦親分》と《神秘の論争》です。ジェスカイファイアーズとの相性は悪くないと思います。ただ、適切な解答を採用できているものの、それらを引き込めないと急速に事態は悪化します。
《夢さらい》
デッキ内で最弱ではありませんが、基本的にタップアウトするのは好ましくないですし、ジェスカイファイアーズに対するブロッカーとしても心もとないです。しかし無事に《夢さらい》がいる状態でターンが帰ってくれば、非常に頼もしい存在になります。ですから、みなさんのメインデッキ・サイドボードの構成次第ではサイドアウトしないほうがいい可能性があるでしょう。
《空の粉砕》
このマッチアップで特別強いわけではないものの、状況によっては大活躍します。この呪文でしか脱せない困難な状況もあり得るでしょう。危険な生き方がしたいのであれば、完全にサイドアウトしてもいいかもしれないですね。
ティムール再生
vs. ティムール再生
相性はかなりいいと思います。《時を解す者、テフェリー》が戦場にいれば、エンドフェイズに《荒野の再生》のマナを悪用する動きをほぼ封じることが可能です。とはいえ、できることならば《荒野の再生》は打ち消したほうがいいでしょう。
ジェスカイサイクリング
vs. ジェスカイサイクリング
どうにか序盤の脅威をさばくことができれば、たいていは《天頂の閃光》への打ち消しを構える余裕ができるでしょう。また、《覆いを割く者、ナーセット》の常在型能力がこのマッチアップで活躍します。どちらかが一方的に勝つことが多いため、サイクリングデッキがビッグ・アゾリウスコントロールに有利/不利なのかは確信を持てていません。このデッキは最近流行ってきていますので、おそらく《敬虔な命令》の枠に追加の《ガラスの棺》を入れることになるかと思います。
《エルズペス、死に打ち勝つ》
追放できるのは《夢の巣のルールス》しかいません。ただ、《夢の巣のルールス》は追放する価値のあるクリーチャーですから、《エルズペス、死に打ち勝つ》は1枚残したほうがいいでしょう
オボシュサクリファイス
vs. オボシュサクリファイス
相性は非常にいいという印象です。必要な解答は比較的揃っているように思います。
《霊気の疾風》
オボシュサクリファイスは基本的に黒のカードが大半を占めていますが、「相棒」である《獲物貫き、オボシュ》やそのほかのキーカードが赤であり《霊気の疾風》がヒットします。
ルールスサクリファイス
vs. ルールスサクリファイス
オボシュサクリファイスと共通点を見い出せるデッキですが、このマッチアップでは《エルズペス、死に打ち勝つ》の価値が大幅に下がります。また、このデッキのほうがマナカーブがやや低いため、完全に押し切られてしまう可能性が高くなってしまうでしょう。
バントヨーリオン
vs. バントヨーリオン
お互いに似通ったカード選択をしているので、かなり拮抗した相性だと思っています。ヨーリオンデッキのなかでアゾリウスコントロールが最善であると断言することはできませんが、緑を追加することはマナベースに大きな負担をかけます。
準ミラーマッチにおいてはマナ加速が大きな意味があるため、緑の呪文のなかでも特に脅威となるカードはおそらく《成長のらせん》でしょう。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》も強力なカードですが、少なくとも《覆いを割く者、ナーセット》が戦場にいれば多少は抑え込めますので、全く太刀打ちできないものではありません。
ヨーリオンデッキとしてバントが優れているデッキだとすれば、それはおそらく《自然の怒りのタイタン、ウーロ》によってほかのマッチアップが戦いやすくなるからでしょう。ひとつ例をあげるなら、《魔女のかまど》デッキと対戦する際は、繰り返しライフを回復できることに大きな価値があるはずです。このマッチアップでカギを握るのはプレインズウォーカーになります。打ち消すなり、《エルズペス、死に打ち勝つ》で追放するなり、サメトークンで攻撃するなりしましょう。
ルーカファイアーズ
vs. ルーカファイアーズ
比較的新しいデッキですね。一般的なジェスカイファイアーズと近しいものですが、こちらのほうが強そうに思えます。少なくとも、超ロングゲームを目論むアゾリウスコントロールには強いはずです。そのほかの《創案の火》デッキは《砕骨の巨人》や《予見のスフィンクス》などを採用していますが、これらは大した脅威ではなく、数ターンは放置できます。他方、ルーカファイアーズは《覆いを割く者、ナーセット》や《裏切りの工作員》など、基本的に打ち消しを要求する呪文が搭載されています。
《墓掘りの檻》
《墓掘りの檻》は1枚でもサイドインするのがためらわれますが、少なくとも《裏切りの工作員》がライブラリーから出てこなくなります。弱点は用途が非常に限定的であるうえに、いずれ何らかの方法で《銅纏いののけ者、ルーカ》本体を対処する必要が出てくる場合がある点です。
《本質の散乱》と《霊気の疾風》
このマッチアップではあまり対象に取れるカードが少ない2枚です。通常のジェスカイファイアーズであればたくさん引いて嬉しいカードでしたが、《覆いを割く者、ナーセット》に対してはどちらも無力です。このマッチアップを意識するのであれば、《否認》を追加するでしょう。《軽蔑的な一撃》もいいかもしれません。
おわりに
スタンダード環境は「相棒」の影響が出てまだ間もありません。この先の展望がハッキリと見えるわけではありませんが、ひとつだけ確かなのは《空を放浪するもの、ヨーリオン》がとても強いカードだということです。相手にしたら厄介だという意味では不都合なことかもしれませんけどね。これからたくさんのヨーリオンデッキが出てくることは間違いないでしょう。
グレゴリー・オレンジ (Twitter)