何事にも始まりがあり、そして終わりがある。
これまで“グランプリで初日落ちしてしまったプレイヤーを救済する”といった口上で開催されていたスーパーサンデーシリーズ。これを優勝すると、「スーパーサンデーシリーズチャンピオンシップ(SSSC)」への参加権利と航空券を得ることができる。
過去にSSSCに参加した経験を持つ齋藤 友晴は【「プロツアーより楽しかった」】と自身のレポートに綴り、行弘 賢をして【「夢のような時間」】と言わしめたのがこのイベントだ。
公式記事【プロツアー『カラデシュ』、組織化プレイに関する発表】で告知された「スーパーサンデーシリーズ廃止」のニュース。運営上の問題点から廃止が決定された本イベントの名残を惜しむ声は多い。
小峠「思い出を作りに来たんです」
そう述懐する小峠 達也(東京)もまた、「スーパーサンデーシリーズ廃止」に想いを馳せる1人だ。彼は【グランプリ・北九州2013】で併催された【スーパーサンデーシリーズ】で優勝を収め、見事に“楽園へのチケット”を手にした経験を持つ。
小峠「1度行ったし、もういいかなと思ってずっとSSS予選には参加していなかったんです。だけどこれで最後だって思ったら、最後に思い出作りがしたくなって」
まさか決勝まで来れるとは思わなかったけど、と付け足して笑う小峠。だが、“最初のSSSC”に参加した人間が“最後のSSSC”を巡る予選の決勝まで駒を進めるのは、果たして偶然か、あるいは何かの巡り合わせだろうか?
奥寺「普段はリミテッドばかりなんです。構築もやりますけど、どちらかといえばリミテッダーですね」
偶然にも筆者と奥寺は既知の仲だが、彼を知らない読者のために私から彼を一言で表すなら、“堅実”といったところだろうか。柔和で冷静沈着な彼はその人柄を表すかのようにプレイスタイルも落ち着いており、正確な状況分析に長けたクリーンなプレイヤーだ。
自身はリミテッダーだと語る彼だが、スタンダードの技量も高い。というよりも、その正確なプレイはフォーマットを問わず発揮される。いわばマジックの地力が高いプレイヤーと言えるだろう。
冒頭で語ったとおり、最後の楽園のチケットを手に入れられる決戦の舞台だ。
互いに気力十分で臨むこの試合。勝利を収めるのはどちらになるのか――?
奥寺 太一 vs. 小峠 達也
Game 1
まずはと奥寺が仕掛ける。《発明者の見習い》、《模範的な造り手》、《模範操縦士、デパラ》と軽快にクリーチャーを並べ立て、素早く小峠のライフを削り始め、「マルドゥ機体」の展開力に小峠も思わず苦い表情を浮かべる。
だが、負けじと小峠も第2ターンに《密輸人の回転翼機》を設置すると、続く第3ターンには《武器作り狂》をプレイし「製造」によって戦線を止め、第4ターンには《闇の掌握》で《模範操縦士、デパラ》を除去。徐々にイニシアチブを奪い取っていく。
これに奥寺が痺れている隙に《秘蔵の縫合体》、《武器作り狂》とクリーチャーを並べて一気にゲームを奪いに行く!
だが、ここで奥寺も黙って見ているわけにはいかない。《無許可の分解》で邪魔な《秘蔵の縫合体》を除去すると、続けて小峠の《密輸人の回転翼機》に《蓄霊稲妻》。要所要所で除去を絡め、イージーウィンを許さない。
奥寺 太一
この除去が反撃の狼煙であった。奥寺は《スレイベンの検査官》や《屑鉄場のたかり屋》を一挙に並べ上げ、小峠に容赦ないクロックを浴びせる。
「調査」によって3つ目のアーティファクトを手にし、3/2先制攻撃となった《模範的な造り手》をブロックによって打ち取ることはもはや叶わない。小峠は虎の子の《闇の掌握》でこれを除去し、トップデッキに望みをつなぐ。
そして、小峠は実際に流れを手繰り寄せて見せる。トップデッキした《ヴォルダーレンの下層民》をプレイし、《武器作り狂》によって並んだトークンたちを生け贄に捧げることで一挙奥寺の盤面を更地に。ここまでにライフを消耗しすぎてしまっている小峠は残りのゲームの趨勢を運否天賦に任せる。
しかし、奥寺から放たれたのは無慈悲な2枚目の《無許可の分解》。
これによって《ヴォルダーレンの下層民》が除去されると、奥寺の盤面には再び素早く《密輸人の回転翼機》と《屑鉄場のたかり屋》が並び始める。さらに《密輸人の回転翼機》の攻撃でルーティング能力が誘発し、ダメ押しの《密輸人の回転翼機》が“おかわり”されると、小峠はあえなく沈むこととなってしまった。
奥寺 1-0 小峠
押しも押されぬ第1ゲームを勝利し、奥寺がさっそく夢の世界の入り口へ大きくリードする。
そのデッキは「マルドゥ機体」。『カラデシュ』リリース直後に猛威を振るった「白赤機体」に《無許可の分解》と《屑鉄場のたかり屋》のための黒を足し、安定したクロックが持ち味のアグロデッキだ。
実際に第1ゲームは小峠の繰り出すトークンや除去の嵐をかいくぐり、殴る→除去される→再展開するというサイクルを綺麗に回してゲームを掴み取った。
相対する小峠は悩みながらもサイドボードを行う。使用デッキはこの日のために友人から借りたという「青黒ゾンビ」である。
かつては北海道のコミュニティで逢坂 有祐などと腕を磨き合ったという強豪だが、やはり使い慣れていないデッキをその日のうちに100%の力で回すことは難しいようで、あれでもないこれでもないとサイドインアウトを試行錯誤する。
決してメジャーなアーキタイプとは言い難いデッキではあるが、その分“型”を読まれづらく、メインボードからトリッキーな動きをすることも相まって対戦相手に複雑な判断を要求する上級者向けのデッキだ。
第1ゲームは後手後手に回ってしまった小峠だが、第2ゲームで巻き返しを図れるだろうか?
Game 2
奥寺の《発明者の見習い》を《死の重み》で退場させつつ、《秘蔵の縫合体》、《屑鉄場のたかり屋》、《墓所破り》とその手札から次々にクリーチャーを展開する小峠。
奥寺も負けじと《模範操縦士、デパラ》、《屑鉄場のたかり屋》、《経験豊富な操縦者》とプレイして攻勢に転じようとするが、小峠の《闇の掌握》が《模範操縦士、デパラ》を無情に除去し、攻撃のチャンスを奪い取られてしまう。
小峠 達也
ひとまず最序盤の展開を抑え込んだ小峠はクリーチャー群をレッドゾーンに送り込み奥寺のライフを削り始め、《憑依された死体》をプレイして戦線の拡充を図る。
奥寺はやや抑え込まれ始めているが、2枚目の《模範操縦士、デパラ》を引き込んで攻撃。誘発型能力で2枚のドワーフたちを手札に加えて反撃の糸口を探る。
だが、ここまでに着実に奥寺へとダメージを蓄積させてきた小峠はあと一息で奥寺の8点のライフを奪い去れるところまで来ていた。流れを掴んだ小峠が引き込んだのは《ヴォルダーレンの下層民》!
これを《墓所破り》の能力を起動しながら「マッドネス」で隙無く展開すると、奥寺に一刻の猶予を与えることもなく素早くゲームを終わらせた。
奥寺 1-1 小峠
ここまでの第1ゲーム、第2ゲームとも手に汗握るデッドヒートを繰り広げており、それまで騒然としていたギャラリーもいつの間にか息を呑んで試合を見守っていた。
いよいよ幕を開ける最後の1試合。両者緊張に表情を強張らせる中、静かに第3ゲームの幕が上がった。
Game 3
《模範的な造り手》をプレイしながら2ターン目に《密輸人の回転翼機》という好スタートを切る奥寺。だが、これには小峠から《儀礼的拒否》!
ならばと奥寺が2枚目の《密輸人の回転翼機》をプレイすると小峠は嘆息を漏らすが、その土地が止まっているのを見て《最後の望み、リリアナ》をプレイ!
素早くダイスを手繰って「+1」能力の起動を宣言し、奥寺の唯一の搭乗員だった《模範的な造り手》を除去。もしかすれば、これでしばらく奥寺は動けなくなるのでは……
そんな小峠の目論み通り、奥寺はキープ基準だった《模範的な造り手》と《密輸人の回転翼機》を失って身動きが取れない。
奥寺は《最後の望み、リリアナ》の忠誠度が溜まっていくのを見守ることしかできない。ようやく3マナ目に到達する頃には奥義「-7」能力が起動され、戦場に続々とゾンビトークンが湧き始める。
万事休す。盤面は見る見る間に圧倒的な戦力差が付き、奥寺のデッキにこの状況を打開する手段はなかった。
奥寺 1-2 小峠
スーパーサンデーシリーズ、優勝を収めたのは小峠 達也!
おめでとう!!
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