『基本セット2021』来たる
先週末から『基本セット2021』のプレリリースが開催されましたが、新しいカードたちとの出会いはどうでしたか?魅力的なカードと出会えた方も多いのではないでしょうか!?
しかし、注目すべきは新カードだけではありません。忘れてはならないのは一度スタンダードを経験したものたち、いわゆる再録カードの存在です。再録カードとはその名の通り、過去に収録されたカードたちのことであり、時代を越えて再びスタンダードへと現れたカードたちです。
今回の情報局では、そんな再録カードのなかから《真面目な身代わり》にスポットを当てていきたいと思います。
《真面目な身代わり》とは
《真面目な身代わり》はインビテーショナル02の覇者であるジェン・ソーレン/Jens Thorenによってデザインされたカードです。『ミラディン』で初登場となったこのカードは1枚が2/2のクリーチャーと土地1枚とカード1枚に代わるという、まさにカードアドバンテージを体現したようなものでした。
任意の基本地形をサーチできるためミッドレンジデッキやコントロール、3色以上のジャンクデッキの場つなぎカード兼マナサポートとして活躍しました。出てよし、守ってよしのこのカードは手札を減らさずにマナまで伸ばしてくれる至れり尽くせりなカードだったのです!
『ミラディン』
このカードが最初に活躍したのは『ミラディン』ブロック構築においてです。プロツアー神戸04において黒田 正城選手は《真面目な身代わり》が4枚入ったビッグレッドを使用し、見事日本人初のプロツアーチャンピオンとなりました。
『オンスロート』+『ミラディン』ブロック期のスタンダードは悪名高き「親和」が支配した銀(茶)色の世界。《真面目な身代わり》はミッドレンジ/コンボデッキの場繋ぎ役や3色デッキのマナサポート、場に出た時の能力を使いまわすなどの活躍をしました。
『ミラディン』+『神河』ブロック期に入ると、高速の《歯と爪》を武器にした緑単トロンは一気に環境の中心へと躍り出ました。のちに緑のカードをカウンターとドローへと置き換えた青単トロンが誕生しますが、《真面目な身代わり》はここでもマナ供給源、ブロッカーとして使用されました。アーティファクトであるがゆえに、幅広く使われたのです。
『基本セット2012』
時代は流れて『基本セット2012』が発売されると、ここに《真面目な身代わり》が再録されました。『ゼンディカー』+『ミラディンの傷跡』ブロック期のスタンダードでは《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が猛威を振るっていたため、居場所を見つけました。ほかにも6マナ域が強力なデッキや場に出たときのシナジーを活かせるデッキで使用されました。
しかし、ローテンションによって『ゼンディカー』ブロックが落ち《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》がスタンダードを去ると、その役目にも陰りが見え始め……ませんでした!!『ミラディンの傷跡』+『イニストラード』ブロック期では新たな相棒として《ケッシグの狼の地》を得て、赤緑ケッシグへと生まれ変わったのです。
5 《森》
4 《銅線の地溝》
4 《根縛りの岩山》
4 《墨蛾の生息地》
3 《ケッシグの狼の地》
-土地 (26)- 1 《極楽鳥》
4 《真面目な身代わり》
1 《最後のトロール、スラーン》
4 《業火のタイタン》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (14)-
2 《最後のトロール、スラーン》
2 《解放の樹》
2 《古えの遺恨》
2 《饗宴と飢餓の剣》
1 《ヴィリジアンの堕落者》
1 《金屑の嵐》
1 《内にいる獣》
-サイドボード (15)-
半固定化されたマナ加速により安定して《原始のタイタン》へとたどり着く赤緑ケッシグ。ここでも《真面目な身代わり》は縁の下の力持ちとなり、見事、彌永 淳也選手は世界王者に輝いたのです。同デッキは、優勝者への敬意と2→4→6とマナ加速を安定させるという強いコンセプトから“イヤナガケッシグ”と呼ばれました。
《真面目な身代わり》はデッキの繋ぎ役として使うだけでアドバンテージがとれるお手軽カードにとどまらず、日本人にとっては時代と時代、栄光と栄光をつなぐクリーチャーなのかもしれません。
現代では?
さて、現代のスタンダードに《真面目な身代わり》は活躍の場所を見つけることはできるのでしょうか?《原始のタイタン》のようなわかりやすいゴールはあるのでしょうか?カードプールへと目を移していきましょう。
6マナ域
特に能動的なものをあげてみました。ジャンド城塞は《真面目な身代わり》を採用することで、4から6へジャンプアップ可能となるため《ボーラスの城塞》へたどり着くことができます。《悲哀の徘徊者》とも相性がよく、最適なデッキかもしれませんね。これら以外にも《戦争の犠牲》《目覚めた猛火、チャンドラ》《虐殺のワーム》など、ボードコントロール力の高いカードが並びます。
7マナ以上
《真面目な身代わり》から続くターンにキャストすることはかないませんが、1ターン以上費やす価値のある強力なカードたちになります。『基本セット2021』で一緒に再録を果たした《精霊龍、ウギン》は、制圧力の優れたカードですね。《成長のらせん》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》に加え、《パラジウムのマイア》《真面目な身代わり》とあるためさまざまな形で見かけることになるかもしれません。
最新デッキ
最後に直近のStandard Challengeの結果から、《真面目な身代わり》を使ったデッキを簡易的にご紹介します。
ジャンドサクリファイス
3 《森》
1 《山》
4 《寓話の小道》
4 《血の墓所》
4 《草むした墓》
3 《踏み鳴らされる地》
1 《ロークスワイン城》
-土地 (23)- 4 《大釜の使い魔》
4 《金のガチョウ》
3 《忘れられた神々の僧侶》
4 《波乱の悪魔》
4 《悲哀の徘徊者》
2 《真面目な身代わり》
2 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》
-クリーチャー (23)-
ジャンドサクリファイスにとって《真面目な身代わり》はまさに求められていた1枚でしょう。《フェイに呪われた王、コルヴォルド》のキャストを確定させ、サイドボードに控える《ボーラスの城塞》へ1ターン早くたどり着くことが可能となるのです。生け贄役としても申し分なく、対クリーチャー戦では優秀なブロッカーとなります。
ほかのカードも見逃せません。《村の儀式》によって、《魔女のかまど》がなくともインスタントタイミングで《波乱の悪魔》を誘発させることが可能となったため、相手のプランを瓦解させる手助けとなります。《菌類の再誕》は墓地へ落ちたキーカードを再利用でき、一層粘り強く戦えそうです。
ウギンズ!
《精霊龍、ウギン》を最大限フィーチャーしたデッキをご紹介しましょう。メインボードはアーティファクトと無色カードのみで構成され、《ジンジャーブルート》《鋼の監視者》《結晶の巨人》よろしくアグレッシブに立ち回ります。
しかし、このデッキの真骨頂は《人知を超えるもの、ウギン》をキャストしてからです。このカードが存在する限りメインボードにあるすべてのカードが2マナ軽くなります。《精霊龍、ウギン》はもちろんのこと、《神秘の炉》があれば《未来予知》がごとく次々とカードを唱え続けられるのです!
次回の情報局
今回は再録カードである《真面目な身代わり》にスポットを当ててきました。現代もマナ加速からゴールを目指すデッキやミッドレンジは存在しますが、どのようなデッキに居場所を見つけるのでしょうか。
旧環境では《成長のらせん》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を軸としたシミックベースのミッドレンジ/コントロールが溢れかえっていたスタンダード。一足先にリリースとなったMTGアリーナ/Magic Onlineの動向に注目ですね。
また、今週末には晴れる屋 トーナメントセンター 東京において『基本セット2021』環境初陣戦が控えています。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。