By Atsushi Ito

　モダンというフォーマットは、《意志の力》のように問答無用でテンポを跳ね返せるカードも少なく、妨害に回ろうにもあまりに多種多様なデッキがそれぞれ違った角度で攻めてくる環境のため、多くのデッキが自らのコンセプトを洗練させる方向に進化している。

　それはつまり「やりたいようにやれる」ということでもあり、好きなカードやデッキを好きなように使えるのは、間違いなくモダンというフォーマットの良い部分と言える。

　そしてそんなフォーマットであるがゆえに、好きなカードを使い続け、一つのデッキタイプに特化したプレイヤーが存在することとなる。高石 優里(栃木)もそんな一人だ。

　高石が極めようとしているのは「《ジェスカイの隆盛》コンボ」。《宝船の巡航》が禁止となって以降は下火となってしまったこのアーキタイプを今でも愛用する高石に、デッキへのこだわりについて聞いてみた。

－－「高石さんと《ジェスカイの隆盛》との出会いはどういったものだったんでしょうか？」

高石「マジックについてはもともと引退と復帰を繰り返していたんですが、モダンで《時を越えた探索》と《宝船の巡航》が禁止になったあたりでこのデッキの存在を知って、『ああ、チェインコンボって楽しい！』と惚れ込んだのがきっかけです。カード資産ゼロの状態から集めて、それ以来ずっと使っています」

－－「《ジェスカイの隆盛》コンボは他のモダンのデッキと比べてどういった点が特徴的でしょうか？」

高石「なんといってもデッキが安いですね。値段が一番高いのがフェッチランドとサイドボードの《神聖の力線》くらいで、大量のコモンとアンコモンで構成されているので、ゼロからでも比較的簡単に組めます。あとキャントリップが多く入っているので、デッキ全体で戦う感じが楽しいですね」

－－「デッキの中で工夫されている点がありましたら教えてください」

高石「一番大きいのは《沈黙》の採用ですね。アグロデッキ相手に貴重な1ターンを稼いでくれたり、相手が《突然の衰微》などを構えていたとしても《沈黙》から《ジェスカイの隆盛》を設置して《ギタクシア派の調査》からスタートできたりするので、とにかく強いです」

高石「それから、このアーキタイプは普通はもう少し《手練》が多めに入っていたり《彼方の映像》が入っているなど、チェインコンボが途中で途切れないように構成されていることが多いのですが、私の場合はどこまで相手への対応策にスロットを割けるかというラインを見極めて、そのギリギリを突いている感じのスペル配分になっています。なので、そのままコピーするとチェインは止まりやすいですし、あまり爽快感はないかもしれません(笑)　ですがコンボが途中で止まっても、相手にターンを渡した上で《沈黙》をプレイするなどすれば何とかなったりしますし、オールインが多いモダンでは単純な速度勝負だけでなく、きちんと相手と対話できるこちらの構成の方が勝ちやすいかなと思います」

－－「《秘教の思索》、《よじれた映像》、《収まらぬ思い》といったカードが1枚差しで入っていますが、これらはそれぞれどういった用途なんでしょうか？」

高石「《秘教の思索》は《ジェスカイの隆盛》を貼った状態で無限ルーティングに持ち込めるのと、『バイバック』で占術3を繰り返していればいずれは欲しいカードにたどり着けますから、長期戦に強いのが頼もしいです。《よじれた映像》は3枚目の《手練》のスロットですが、最悪キャントリップになりつつ《呪文滑り》や《貴族の教主》《極楽鳥》を除去できるのが強みですね。《収まらぬ思い》は『マッドネス』持ちなので《ヴェールのリリアナ》に『＋1』を起動されても手札の枚数が減らないのが良いですね。このデッキは手札の枚数もコンボパーツのようなものです」

－－「主要なマッチアップにおける相性について伺ってもよろしいでしょうか？」

高石「感染と親和は五分五分かなと思います。お互い干渉する部分が少ないスピード勝負で、こちらがサイドまで合わせた3枚の単体除去を引けるかどうかが大きいです。ドレッジはやや有利ですね、墓地対策はないですが2ターン目に《沈黙》を挟んであげると相手が大幅に減速します。バーンは無理ですね、《大歓楽の幻霊》を置かれると終了です」

高石「黒緑系は手札破壊に《突然の衰微》と《ヴェールのリリアナ》があるのでやはり厳しいですが、最近は黒緑を使っている人の動画を見ていると黒緑側もそこまで万能ではないことがわかって、気持ちが少し楽になりました。あとはトロン、アドグレイス、リビングエンドなどは有利なほか、ローグデッキ全般に有利です。ローグに強いローグ、といった立ち位置ですね」

－－「最後に、このデッキをこれから使いたい人に向けてアドバイスなどありましたらお願いします」

高石「黒緑系のデッキと当たったときは、諦めない心が大事です！ライフを大事に耐えていれば、めくり合いに持ち込んでなんとかなったりします」

－－「ありがとうございました」