【日本選手権2007】、日本選手権王者のみが参加したトーナメント【バトル・オブ・チャンピオン】そして【グランプリ横浜2013】の三冠を掲げる北山 雅也のフィーチャーマッチ。
そして前々回大会である【The Last Sun 2014】王者である林 隆智のフィーチャーマッチともなった。
スイスラウンドRound 2という早々にして、共にビッグタイトルを肩書きにもつトップ・プレイヤー同士が噛み合った。
「”王者”を相手にするのは、厳しいな」と話す北山。The Last Sunという特殊フォーマットを勝ち抜いた経験を持つ林に対し、挑戦者の眼差しで席に着いている。
後から席についた林は、特別な緊張も見せず、普段通りに振る舞っているようであった。持ち味となる冷静さを保ち続けているようだ。
マジック:ザ・ギャザリングは肩書きの大きさや数、種類でゲームの勝敗を決めるわけではない。そんな当たり前のことをお互いは百も承知した上で、ラウンド開始の合図が待っていた。
Game 1
林が先手を獲得し《森》から《霊気との調和》と繋げ、《島》を探す。『カラデシュ』の”エネルギーカウンター”をフィーチャーしたデッキタイプのようだが、コンボ寄りの”《霊気池の驚異》デッキ”か、アグロを軸にした”ティムールエネルギー”かは、ここでは判断がつきにくい。
《森》から《発生の器》で返す北山。彼の持ち込んだデッキは”昂揚デッキ”か、林と同じく”《霊気池の驚異》デッキ”か。
林は2T目のセットランドに見せていない《山》を置いてターンを渡す。《島》でない理由は、《蓄霊稲妻》の存在だ。
ここで先にデッキのアーキタイプを明らかにさせたのは、北山だ。《織木師の組細工》を着地させ、ライフとエネルギーを3つずつ獲得する。
《霊気池の驚異》のための”ガソリン”が供給されてゆく。2ターン続けて《織木師の組細工》を着地させ、いつでも《霊気池の驚異》のエンジンをかけられる状態にした。
4T目。北山の展開に応えるように、林も自らのデッキのキーパーツを晒した。
《霊気池の驚異》プレイ。
北山とは逆に、ガソリンを受け容れる”パチンコ台”を先に用意した。
お互いにリーチを掛けた状態で、”エネルギー6個と《霊気池の驚異》“という組み合わせに先に手が届くのは、どちらか。
北山 雅也 |
先ずは北山から。《霊気池の驚異》プレイから即座にこれを起動。
めくった6枚のうちの呪文・カードは―……《導路の召使い》と《霊気との調和》のみ。むなしく《導路の召使い》をプレイして、2回目の起動に備える。
一方これによって”標的”の現れた《蓄霊稲妻》2枚をプレイし、エネルギーを6まで一気に溜めた林。《霊気池の驚異》を起動して、一手遅れる分を取り返しにかかるが―……プレイは《発生の器》と、こちらも”外れ”の部類だ。
この時点で北山の盤面には未だ2つの《織木師の組細工》があり、《霊気池の驚異》の起動エネルギーを絶やさない。自らのターンに《織木師の組細工》を起動して、2度目の《霊気池の驚異》起動につなげる。
―……が、まだ”フィーバー”は、ない。
北山の盤面に、《発生の器》が着地する。ハンドから《導路の召使い》プレイして、3度目に賭けるために準備してゆく。
ここで盤面に強く干渉できたのは、林であった。北山が2度目の《霊気池の驚異》を”外した”ターンのエンドに起動した《発生の器》は《発生の器》を落とすに留まったが、そのままメインでハンドから《反逆の先導者、チャンドラ》プレイ。
このゲーム、初めてのエンド・カードとなるパーマネントが登場した。ひとまず「-3」能力で《導路の召使い》を焼き、マナを少しでも縛ってゆく。
北山はこれを意に介さず《進化する未開地》をセット・起動。そのまま《霊気との調和》プレイ、即座にエネルギーを6個へと回復させ、”3度目の正直”となる《霊気池の驚異》を起動する―……
そして洩らした一言が、フィーチャーの席で木霊した。
北山「もうだめだぁ」
嘆きと共にプレイしたカードは、《つむじ風の巨匠》。
決して弱いカードではないが”《霊気池の驚異》デッキ”をして、このカードを”当たり”と形容するタイミングは少ないだろう。しかし、このめくれとは別に、北山はハンドに次手を持っていた。
《反逆の先導者、チャンドラ》プレイ。1番目の起動型能力によって2点ダメージを与えることを選択する。林の《反逆の先導者、チャンドラ》を落として、盤面を作っていく。北山が押しているが、まだ《霊気池の驚異》起動の1枚でどうとでも転ぶ盤面だ。
北山は油断せず、林の挙動を見守る。
林もまた、《導路の召使い》でエネルギーを回復させ、3度目の《霊気池の驚異》起動。
このゲーム両者合わせて6度目の起動。合計24枚をめくった《霊気池の驚異》起動の結果は―……また外れ!?置かれたのは《織木師の組細工》。
林「もう、負けで良いですって言いたくなる笑」
北山「そんなことある?!笑」
自らの不運に嘆き、相手の不運に憐憫し、結果、なぜだか二人は笑顔を浮かべ合っていた。
かくしてコントロールされることなく自らの手にターンが戻ってきた北山。
2枚目の《織木師の組細工》を生け贄に、4度目の起動で6枚を見るやいなや―……即断する。
《約束された終末、エムラクール》プレイ。
念願の起動7度目にして、互いが欲した”大当たり”を北山が獲得した。
《約束された終末、エムラクール》の能力によって林のハンドが北山に公開された状態でターンが始まり、そのターンの決定権の全てが北山が持つ状態でドローが始まる。
林のエネルギー5つ。盤面には《霊気池の驚異》。土地が7つ。ハンド、土地2枚という状態で、林のドローが”見事”であった。
―……コントロールされている状態でなければ。ドローしたカードは、《発生の器》。
プレイから即座に起動し計3マナで《発生の器》はなにも拾わない。《発生の器》が生け贄に捧げられたことでエネルギーを1つ得て、《霊気池の驚異》を起動コストが用意された。
北山はもちろん、《霊気池の驚異》起動を宣言する。
《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
《約束された終末、エムラクール》
《導路の召使い》2枚
《反逆の先導者、チャンドラ》
と土地。
今ゲーム最大の”当たり演出”を見せながら、北山は当たり前のように“なにも唱えない”ことを宣言した。エネルギーを全て失った林は、自らの追加ターンで土地を引き込んでため息を1つ洩らした。
北山 1-0 林
林・北山「ひどいゲームだった」
《霊気池の驚異》のめくれによる”当たりと外れ”の違いがもたらすゲームプランの差は顕著だ。
過去のスタンダードをひも解いてもかなりギャンブル性の高い挙動であり、パチンコとも形容される。先日までスタンダードを席巻していた《集合した中隊》よりも”よりダイレクト”にボムとなる呪文をめくるカードだからだ。
しかし《約束された終末、エムラクール》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》、《反逆の先導者、チャンドラ》までを含めれば”当たり”の数はそこまで低くない。
それゆえ、見た目以上に安定した戦績をもたらすデッキタイプとして再評価されてきているデッキタイプだ。普通に1回で。おおむね2回起動すれば、なにかしらのエンドカードが唱えられる。そのように作られている。
今回のように”3回ずつ外す”というのは、悲しいが稀だ。
Game 2
Game 1で喉から手が出るほど欲した《約束された終末、エムラクール》3枚が押し寄せたハンドを一笑してマリガンする北山。対して序盤の展開が確保されたハンドをキープした林。
《燃えがらの林間地》タップイン同士のスタートながら、林は2T目2枚の《霊気との調和》でエネルギーと土地を一気に確保してゆく。
林のスペルの勢いと相対するように2T目《導路の召使い》、3T目《発生の器》とパーマネントで準備してゆく北山。
先手4T目、林は”《不屈の追跡者》プレイからの《進化する未開地》セット”というパッケージで、プレッシャーを用意する。《霊気池の驚異》自体とも相性が良く、また別種の勝ち筋・アドバンテージ源ともなる《不屈の追跡者》に、北山はどう対応するのか。
北山はこのエンドフェイズに《発生の器》を起動。
《反逆の先導者、チャンドラ》
《霊気池の驚異》
《霊気池の驚異》
《不屈の追跡者》
とめくる。
濃密すぎる4枚だが《反逆の先導者、チャンドラ》を回収し、4T目即座にプレイから《不屈の追跡者》を焼いた。
次なる脅威は示せず、《導路の召使い》プレイでエネルギーを確保してゆく林。盤面は《反逆の先導者、チャンドラ》によって押され気味だが、《霊気池の驚異》にアクセスできれば(そして”当たり”を引けば)、幾らでも取り返せる。
そう信じてプレイを進める林に対し、《発生の器》で墓地を肥やした北山がハンドから《約束された終末、エムラクール》をプレイする。
再びターンをコントロールされる林。
《織木師の組細工》
《織木師の組細工》
《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
《つむじ風の巨匠》
土地3枚。エネルギーは9つ。
《つむじ風の巨匠》プレイをさせられ、合わせてエネルギーは12。《霊気池の驚異》のために溜められていた筈の全てのエネルギーが、飛行機械トークン製造に費やされた。
しかし続く追加ターン。このトークンの総勢アタックで北山の《反逆の先導者、チャンドラ》を落とした。《織木師の組細工》2枚を着地させてエネルギーを補充し、まだまだ林の”逆転の芽”は枯れていない。
林 隆智 |
北山がハンドから《霊気池の驚異》プレイし、即座に起動して”ゲームスピード”を早めていく。めくれた《反逆の先導者、チャンドラ》を再展開して、戦線を保っていく。
劣勢ながら《人工物への興味》で次弾が補填される前に《霊気池の驚異》を割る林。更に、生んでいたエネルギーをトークン製造に費やして、ダメージレース敢行を決意したようだ。《つむじ風の巨匠》本体と5体の飛行機械トークンが北山のライフを削ってゆく。
《約束された終末、エムラクール》対《つむじ風の巨匠》のダメージレース。
林は《織木師の組細工》2枚と《人工物への興味》でライフを計14点回復し《約束された終末、エムラクール》のアタックを2度受けても耐えてゆく。チャンプすることなく《つむじ風の巨匠》とトークン軍団で攻め込む林だが、北山のライフもまた、《織木師の組細工》によって守られていた。
北山の3度目の《約束された終末、エムラクール》アタックには、林も遂にライフを守り切れなかった。
北山 2-0 林
Round 2でおもむろに実現した”王者”同士の対決。勝利した北山が明日の決勝トーナメントへ一歩先んじた。
今回《霊気池の驚異》のツンデレに振り回された林だが、きっとこれで禊ぎを終えて、残るラウンドでは”当たり”の連発を見せてくれるだろう。
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