2016年を振り返るならば。
やはり、彼に聞くしかあるまい。
八十岡 翔太。
【プロツアー『イニストラードを覆う影』】では、トップ4。そして、【プロツアー『カラデシュ』】では、真骨頂とも言える「グリクシスコントロール」を操り、優勝を果たした。その見事な戦い方は、「コントロールマスター」と呼ぶにふさわしいものであった。
そしてなによりも、昨年のThe Last Sun 2015の優勝者である。
The Last Sunは、年末のビッグイベント。今年を振り返る良い機会だ。
早速、八十岡にインタビューをしてみよう。「今年一番の思い出はなんですか?」
■ プロツアーチャンピオン、八十岡インタビュー!
八十岡「ルイス引退、だね」
――「ある程度覚悟はしていましたが、ご自身の『プロツアー優勝』ではないんですね……」
八十岡「ああ、『プロツアー優勝』は、そんなに大きな出来事じゃないよ。初めて個人でトップ8に入ったプロツアー『タルキール龍紀伝』のときは思い入れがあったけど、優勝はいつかできると思ってたから。それが来たか、という感じだよ。一大ニュースではないよね」
――「な、なるほど……」
八十岡「まあ、今年の思い出、という意味では、プロツアーのシステムが色々変わった年、ではあったよね。たとえば、決勝ラウンドの仕組みが変わったけど、今回優勝したのはそれが大きかったね。2回勝てば良かったから。あと変わったことは、デッキリストの登録が早まったことかな」
――「八十岡さんと言えば、”当日の朝にデッキを作ること”で有名ですよね。この変化は、やはり大きかったですか?」
スタン出来た。モダンは風呂入ってから作るか
— ヤソ (@yaya3_) 2016年12月16日
八十岡「大きいね。とにかく、辛くなったよ。プロツアーは金曜日から始まるから、木曜日の昼や夕方に飛行機で現地に着くことになる。これまでは、『仮眠を取って、頭をスッキリさせてから作る』とできていたんだけど、今は『到着して、すぐに作る』という状態なんだ」
――「そう考えると、かなり大きいですね。使える時間がかなり減っているのでは?」
八十岡「減っているね。16時に到着して翌朝8時までに作っていたから、休憩も含めて16時間くらいかけられていたんだ。それが24時締切になって、8時間短くなっている。つまり、作る時間が半分になったようなものだよ。飛行機のあとだから、ゆっくり休憩したいんだけどね」
――「海外遠征を繰り返している八十岡さんにも、やはり”旅疲れ”はあるんですね」
八十岡「そうだね。ただ、”飛行機だから疲れる”のではなくて、”単純に時間がかかったから疲れる”という感じかな。飛行機の時間ロスは、想像以上に痛い。飛行機での移動にかかる時間って、実際に乗っているときだけじゃないでしょ?」
――「そうですね。空港には2時間前にいて、そのためにもっと前に出発して、到着してからも荷物を……といろいろとかかります」
八十岡「そうなんだよ。そうすると、あっという間に片道12時間くらいかかる。往復で1日分。今年は12回以上海外に行ってるから、2週間くらい時間を失ってるわけだよ。とにかく、時が進むのが早い。1年が350日くらいしかないわけだから」
■ 八十岡「時がとまっている」
――「かなりのペースで海外に行かれてますよね。中村 修平さんたちと世界を回っていた時期と比較すると、いかがですか?」
八十岡「同じくらいの速度、かな。なかしゅー(中村 修平)、コガモ(津村 健志)、トモハル(齋藤 友晴)と一緒にグランプリを回っていたんだけど、当時も『時が進むのが早いな』と思っていたよ。……”当時”というのも、少し不思議だね」
――「と言いますと?」
八十岡「あの辺りから、時が止まっているんだよ。数年前、いや、もっと最近のような気もするくらい。だから、『”当時”という言葉を使うのも不思議だな、もう10年も前なの?』と思ってね。今でも、みんなマジックやってるから」
――「しかも同じチームですからね」
八十岡「そうだね。大きく変わったとすれば、トモハルが晴れる屋を作ったことくらいだよ。それ以外は何も変わってない。これからも、きっと変わらないだろうね」
■ 八十岡の目標
――「では、改めて”これから”についてお聞きしたいのですが、2017年はどのように過ごしていきたいとお考えですか?」
八十岡「いつもそうなんだけど、マジックについては、大きく何かを変えていこうと思っているわけじゃないんだ。目標が変わることはあっても、それに対する過程が変わることはほとんどない。ゼロではないけどね」
――「なるほど。では、これまでどおり努力を積み重ねる、ということですか」
八十岡「そうだね。あとは、健康に生きること、くらいかな。生活の半分程度をマジックに割いているような状態なんだけど、割ける生活がなければ、意味がないからね。そして、自分の定めた目標を、来年こそは達成しようと思っているよ」
「では、そろそろお時間ですね。最後に、その八十岡さんの目標を教えてください」
筆者が最後の質問を投げかけると、静かに目標を見定めるかのような目を筆者に向けながら、こう答えてくれた。
八十岡「世界選手権優勝。それだけだよ」
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